ほんの少し思い出してもらうだけの話   作:氷陰

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小話というか、時系列順に書くと間違いなく他の話に入れる事はないであろう小ネタを4つ。

本当は6つ入れて「セックス・ピストルズみたいな数の小話」ってタイトルにしたかったけれど文字数が本編より多くなるので断念しました。

全て真面目な話ではないです。原作ネタバレも普通にあります。



群体話集の場合(小話集その1)

 ⒈ラッシュの話

 

 この日が来ないことを願っていた。この前ジョースター家の人間2人とことを構えることになった時は、奇跡的に激しい戦いに発展しなかったから、安心しきっていた。

 

 

「それじゃあ、準備はいいな。仗助、藤堂、ご先祖様」

 

「ジョナサンと呼んでくれていいのだけれど…」

 

「ではジョナサン、と」

 

「こっちはOKっす」

 

「中止しませんか?」

 

 

 日を改めて、がっつり真正面から戦う機会が設けられたのだ。もちろん、承太郎さんとジョナサンのタイマンである。呼び出す俺にフィードバックがくる以上抗議したのだが、承太郎さんの依頼という事と、隣に即治せる仗助君を配置する事で仕方なく承諾した。

 

「たまには力を出さなければ、流石に衰える。DIOの残党に対抗するために勘を取り戻したい、そのための模擬戦だ。君に負担はかかるが、手助けしてもらえると助かる」

 

 彼はそう言って力強い眼差しを俺に向けたのだ。

 多分承太郎さんは、俺が最終的にやりたい事には気づいていて、あえて口に出さないだけなのだろう。家族にも説明せずに遠くへ置いてしまうような人だから、口に出して確認すべきではないと考えるはずだしね。

 

 理由は違っても、向こうが明確な敵(ラスボス)に辿り着いていなくても、倒すべき相手は同じだという事を解っている。向けられた瞳をのぞいた時に、そんな印象を受けた。だから承諾した、俺にもいずれメリットがあるだろうから。

 

 それでも依頼として救護班(じょうすけ)を用意した上で金を貰ってなきゃ、やりたくなかったとは今でも思っている。だって痛いの嫌だし…。

 

 

「今さら止めにするのはこちらとしても君としても困るだろう。金はすでに支払ったからな」

 

「…わかってますよ。言ってみただけです」

 

 

 今回の目的は承太郎vsジョナサンの形で、スタープラチナの性能のリハビリといったところだ。速さと力強さを兼ね揃えたスタンドというのは聞こえはいいが、どちらかが欠けてしまえばとても不安定になる。その全盛期よりは崩れているであろうバランスを整える相手として、承太郎さんが選んだのがジョナサンだった。

 

 曰く、「手近な人間で、本気で殴っても平気そうなパワーとタフネスがあるから」とのこと。まあ俺にフィードバックが来るダメージは、呼んだ人間が受けたダメージからくるものなので、殴り返して相殺したり、ガードして軽減したりして少なくすることは可能だ。波紋なら痛みも和らげられるしね。

 

 つまり、ジョナサンがうまく対処すれば俺が受けるダメージは少なくなるのだ。今回は全力でジョナサンを応援しよ。

 

 

 

 昼間の空き地で、背の高い男が2人、臨戦態勢を整える。俺と仗助君は端っこで廃棄された木材に座って待機だ。俺の意思はあってないようなものらしい。抗議虚しく、そうこうしているうちに仕切り直された戦いの幕が上がった。

 

 

「じゃあ、始めようか。そちらからどうぞ」

 

「遠慮なく行くぜ、ジョナサン! オラァッ!!」

 

 

 軽く(軽くない)1発、スタープラチナの拳が突き出される。その動きは俺の目にはギリギリ映るくらいの速さだが、ジョナサンにははっきりと見えているらしく、スタープラチナの腕を下から弾くことで対処。

 

 一撃目を受け流されても勢いは殺されず、二撃目、三撃目と途切れることなく繰り出される。つまりオラオララッシュだ。かなり早いスピードだが、まだ俺にも目で追えるということは、本当に衰えているらしい。いや、軽い準備運動かもしれないが。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

 

「はあああああああッッ!!!!」

 

 

 ジョナサンにとって目で追えるという事は、対処できる事と同義らしい。同じように自身の拳を突き合わせていた。いやあんた一応生身なのに近い速さでラッシュ返せるって人間かよ。

 

 

「あー、ちょっと手の甲辺りがダメージ蓄積してきてますね、治します」

 

「サンキュー仗助君。お前だけが頼りだぜ」

 

 

 殴り合っている間にも少し切れたり打撲になってたりするらしい。まだ気にならない程度でも、仗助君は治してくれる。神様かな?

 

 ラッシュは勘を取り戻したのか、段々と速くなり、やがて俺の目で追えるスピードを超越した。スピードで時を超えるスタンドだしな、そりゃ目で追えってのが土台無理な話なんだよな。

 

 スピードとともにパワーも先ほどより乗っていっているようで、完全パワー型のジョナサンは少しだけ押し負けているようだ。

 

 

「…オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッッッ!!」

 

「ぐっ…うおおおっ!!」

 

 

 ジョナサンは、ゲームで言うと1発が大きい筋力極振りタイプ。承太郎さんは筋力と敏捷に振ってる定番で強い振り分け。スタンドはゲーム内のステータス振り分けのような自由は利かないから、単純に力と速さを兼ね揃えたスタープラチナが強くなるのだ。いいよねスタープラチナ。

 

 俺自身、ジョナサンの方が力は強いと思っているが、手数が多い相手…つまりスタープラチナとはやや相性が悪いのかもしれない。攻撃を1発当てれば隙もできるし、また違うのだが。

 

 

「大分以前のように打ち込めるようになってきたぜ。もう一回行くぜ」

 

「ああ、どんどん来るといい!」

 

 

 本調子になった承太郎さんが一拍置いてまたラッシュを打ち込む。ちなみに俺はもう目が追いついていない。反応できるかはともかく視認出来てるジョナサンすげー。全てを弾き返しているわけではないのに、最小限の動きと力み方でガードしているようだ。

 

 ジョナサンにも熱が入っているようで、本気で攻撃を打ち返している。多分模擬戦っていうことや趣旨を忘れていると思う、勝ちに行く気だ。ジョースターは負けず嫌いって何処かで聞き覚えがあるな。

 

 連続で繰り出されていたパンチの終わりを見極めていたらしいジョナサンは、その瞬間に防御姿勢から一転、顔面にめがけて輝く拳を突き出した。

 

 

「波紋疾走ッ!」

 

「スタープラチナ ザ・ワールド!」

 

「ちょ、ずるっ…」

 

 

 オイオイオイそこまでするのかよ、嘘だろ承太郎さん!? 時を止めやがった! 口を挟む気も起きなかったが、つい声が出てしまった。

 

 俺は時を止めた世界に入門したわけではないのでどうなったかわからないけど、承太郎さんがスタンドの名を呼んだ次の瞬間には、すでにジョナサンの後ろに回り込んでいた。ジョナサンにも時を止めた間の事は知ることができない。

 

 

「なっ!!? 何をしたんだ!?」

 

「時を止めた。俺のスタンドの能力でな」

 

 

 気がつくと、俺の顎あたりに衝撃が走り、俺は宙を飛ばされていた。多分、ジョナサンがアッパーでも食らったんだろう。同時に飛ばされたから見てないけど。スタンドが吹っ飛ぶと本体も呼応して吹っ飛ぶ仕様、どうにかならない?

 

 

 

 

 

 

 再び身体に衝撃を受けて、俺は意識を取り戻した。身体のあちこちがやたら痛い。怪我はしていないようだが…。

 

 

「起きたっすか、藤堂先輩」

 

「おはよう仗助君。もう終わった?」

 

「いーや、まだっす。先輩が気絶してから2時間は経ちましたけど、まだそこで殴り合ってます。ちなみに寝てる間の傷は『治し』ておきました。どっか痛いところあります?」

 

「ああ、ありがとう…。肩のあたりがまだ痛いから頼む。俺が気絶してたのに何でジョナサン引っ込まなかったんだろう…」

 

「ところで先輩」

 

「何かな後輩」

 

「これ、いつまでやるんですかね…」

 

「2人が飽きるまでかなあ…」

 

 

 未だ拳をぶつけるどころか突進だの足払いだのしてガチの喧嘩になっている。負けず嫌いにもほどがあるでしょこの野郎。心なしか2人とも笑ってるように見えるし。おい関節決めるのと背負い投げはやめろあああああああああああああ゛ッッ!!!!!!

 

 

 

 休日の朝に始まったこの騒動は、日が沈むまで続いたのだった。終始痛かった俺は腹いせに追加料金を請求したが、承太郎さんはどこか清々しい顔で、仗助君がいなければ払うことになっていたであろう治療費くらいの金額をポンと渡してきて、俺に向かって言うのだった。

 

 

「またいつか頼むぜ」

 

「藤堂一茶はクールに去るぜ…!」

 

 

 なおクールに去れなかった模様。承太郎さんって時々容赦ないよね。楽しそうだったからまあいいけどさ。とりあえずこの金で仗助君とトラサルディーにでも行くか…。

 

 

 

 

 

 

 ⒉モテるモテない

 

(※ギャグです

 ※恋愛要素はこれにもこれからも入れる予定はないです

 ※作者は恋愛弱者)

 

 

 とある日。俺は学校の裏庭に、後輩たちを集めていた。ある催しを実施する為である。

 

 

「はーい! ではこれより過去数多の女性を落としてきた、スケコマシ先輩ことシーザーさんによる〜…ナンパ講座あ〜!!」

 

「待ってましたあ!」

 

「ええ〜…何だそりゃ、おれはパス」

 

「仗助君はモテるもんね。ぼくは…いや、今は女の子はいいかな…」

 

「お前らノリが悪いなっ! チクショー、これだからモテる奴と女がいる奴は!!」

 

「いないですってば! …まあ、由花子さんが原因なのは認めますけど」

 

 

 東方仗助はモテる。流石はジョースターだな! と仗助君的には嫌味になりそうな台詞を吐き捨ててやりたいが、俺が知っているわけがない事なので言えずにいる。

 

 康一君は、アレだな。可愛いと思って油断したらヤンデレだかメンヘラだかに引っかかって、命の危険を感じたばかりだしな。ちょっぴり可哀想なのでノリが悪いのは許してあげよう。

 

 

「一茶、お前に頼まれたし、俺が女性(シニョリーナ)の扱い方を教えるのはいいが…。まさかお前自身も…? 顔立ちは悪くないと思うんだが」

 

「そう思います〜? …ラブレターなんて貰ったことないし、女の子とそんな雰囲気になったことすらないですよ」

 

「マジすか!? 康一、それって普通なのかよ?」

 

「え? うん、ぼくも由花子さんに告白されたのが初めてだったし。仗助君が異常なんだよ」

 

「グレート…」

 

「仗助、おまえは黙ってろよ! 毎日のように下駄箱にラブレターが入ってんの知ってんだぞ!」

 

「これは有罪」

 

「あーもう、億泰! 余計なことばっか言ってねーで話聞いとけよ!」

 

 

 俺こと藤堂一茶という男は、生まれてこのかた異性にモテたことはない。前世まで遡ってもない。可愛い幼馴染も隣人も、なんならクラスのマドンナも義理の姉妹もいない。浮いた話ゼロ! 言ってて悲しくなってくるね。

 

 今回の講座参加者は俺と億泰の2人。世の中要領いいやつばっかだよな。同窓会で久し振りに会ったら、クラスの半分くらいは結婚して子供までいたりする。訳がわからない。どこで出会ってナニしたんだよお前ら!? 俺がプラモで遊んでる間に!

 

 いかん、前世っぽいのが一瞬出てきた、気を取り直そう。俺の人格や記憶は前世から引き継いだものも多いが、引き摺ることはない。俺の最期は確かスーツを着ていたはずなので、社会人の年齢であったと思う。しかし大人としてのプライドみたいなものが一切表に出てこない。

 

 今世では、子供の中で遊べば普通に子供らしく過ごせるし、小中高と学年が上がっても年相応に勉強サボったり時に真面目にやったりと過ごしている。

 親に文句もわがままも言うし、子供らしい喧嘩もした。

 

 だ が し か し 恋 愛 は 出 来 な か っ た 。

 

 

 周りに違和感ない程度に子供であった俺だが、かっこいいと思うものや好きだな、と思うものの感性は前世成分高めだった。さらに倫理観も他人より身についているので、子供達やその保護者たちにも「みんなのまとめ役」とか「オトン」、もしくは「ちょっとズレた人」みたいな扱いをされた。

 

 悪いことではないが、それが恋を遠ざける要因でもあった。喧嘩の仲介とかいじめが起こりそうならそれとなく緩衝材になったりとか。「みんなのヒーロー」ではあったが、「白馬の王子さま」という柄ではなかったという訳だ。

 

 

 しかし、シーザー大先輩の仰る通り、俺の顔は仗助君やシーザー程ではないが、整っている部類に入る。まあ、彼らと比べるのは烏滸がましいというものだ。それでも10人中6人くらいはカッコいいと言われるくらいのレベルだし、顔に不満はない。おいそこ、微妙すぎるとか言わない。

 

 

「そうだなあ…一茶、ちょっと女の子を褒める台詞を考えて言ってみろ」

 

「? 『笑顔が可愛いね!』とか?」

 

「普通すぎる」

 

「普通」

 

「ひねりが足りない」

 

「何で!? これじゃダメなの!!?」

 

 

 何で!!?? 純愛派とやらの仗助君どころか億泰君にすらダメだしされたんだが!?? こころおれそう。

 ここでシーザー先輩からのアドバイスと億泰君からの横槍が!

 

 

「ダメって訳じゃない、足りないだけだ。もっと膨らませろ」

 

「『お前っていつもニッコニコしてて、明るいよな〜! これお前のイメージっぽいしあげるわ』っつってオレンジっぽい色入ったアクセ渡す、とかあるだろ」

 

「女性をお前呼ばわりは感心せんが、一茶よりはいい」

 

「億泰君にも負けてんの俺? キーホルダーとかじゃダメなんですか!」

 

「それは流石に子供っぽいと思いますよ…」

 

「ガキかよ先輩」

 

 

 うおああっ、後輩たちにすら呆れられる。後輩の為に時間を取ったのに俺が一番アホ晒してるこの状況、おかしいだろ! 俺の対女スキルが全然ないのがバレてしまっただろうが! 誰だよナンパ講座開いたの……俺だった。

 

 

「モテたいなら、もうちょいこういう事も勉強しような? 手伝ってやるから」

 

「あぁんまりだあぁぁぁぁ!!」

 

 第1回ナンパ講座、俺がシーザーに同情されるだけで終わる。え? 第1回があるなら2回目以降もあるかって?

 

 この事は念入りに『忘れた』から、しばらくは『思い出せない』だろうさ!

 

 

 

 

 

 

 ⒊仗助のリーゼントって…(上の続き)

 

 俺がモテない理由を理解してしまった現実から目をそらすのに、自分自身の能力を使えばいいと思いたつまでの間で、もう一悶着起こった。

 

 

日本人(ジャポネーゼ)は男も女性も奥手だからな。時代にもよるが、やはり強い男は頼り甲斐がある。

 スタンドと言ったか? それがあれば戦えるだろうが、身体は鍛えておくべきだと助言しておくぜ」

 

「その点、仗助君はいい身体してるよなあ〜っ。承太郎さんもガタイいいし、血筋ってやつか? それとも筋トレしてんの?」

 

「まあ多少は鍛えてるけど、いつのまにか筋肉はついてんだよな…」

 

「JOJOもおれより年下だったが、体格は一丁前に良かったからな。遺伝もあるんだろう」

 

「億泰君も力強いよね」

 

「おう! おれは鍛えねえと、兄貴が『弛んだ体で歩き回ってんじゃあねえッ!』って言うからよ、毎日筋トレしてんだよ。今でも続けてるぜ」

 

「努力してんなあ〜。康一、お前も見習えって」

 

「ぼ…ぼくだって頑張ってるんだよ!? でも身体からして…」

 

 

 俺が悔しさと切なさでダウンしている傍らで、何故か体つきの話になっていた。康一君はまともに筋肉をつける事自体諦めている様子。へ、へん! 男前度はともかく、筋肉量はそこそこついてるんだぜ!

 数年の波紋呼吸の修行によって、そこらの不良に絡まれても1人で相手取れる程の力を手に入れた。ツェペリさんホントありがとう。

 

 講座というかもうただの雑談だが、こういうのもたまにはいいか。

 

 

「仗助は女性に優しくしているだろうな? JOJOはその辺なっていなかったからな…聞くのも不安だが」

 

「おっおれは女子に優しくしてるぜ!?」

 

「まあ仗助君は元から人には優しいからね」

 

「ならいいが。それにしても、髪型はいつもそれに? さっきから思っていたが、リーゼントと言ったか。()()()()()()()()()()、流行ってるのか?」

 

「「…あっ」」

 

「あっやべえ、仗助!」

 

 

 

「…今この頭のこと、なんて言った!」

 

 

 

 ファンならご存知だが、一応説明しよう! 仗助君は過去に自分を助けてくれた恩人を尊敬しており、自身の髪型を同じリーゼントにしている。その髪型を貶されると、恩人を馬鹿にされたと感じ、心の奥底でプッツンきてしまうのだ!

 

 ちなみに時々「それ貶してるか微妙じゃね?」みたいなレベルのセリフでもキレるので要注意だ。(EOH知識)

 

 

 一度見たことのある友人2人は知っていたとはいえ止める術もなく避難することにしたらしい。シーザーは、仗助君が怒っているのはわかるが、どの言葉がキーになったのか、イマイチピンときていないらしい。少し距離を取るくらいで済ませてしまっている。

 

 

「なあ、一茶! どうして彼は怒っているんだ。教えてくれ」

 

「髪型貶したのが悪いんです! 仗助君、髪型を悪く言われるのが一番嫌いなんですよ。あと周り見えてないです! 多分あんたが倒れるまで攻撃してきますよ!!」

 

「なるほど! すまない仗助、貶したつもりじゃあなかった! お前の誇りを傷つけたなら何度でも謝る!」

 

 

 声が聞こえているのかいないのか、いや聞こえているわけがない。仗助君は全く反応せずに真っ直ぐシーザーへと歩みを進めていく。このままだと顔面整形コースだ。シーザーも反省しているためか、拳を受ける気のようだ。まあ当事者が納得できるならそれで…いや、待てよ……。

 

 ……シーザー先輩が攻撃を受けたら俺にもダメージが来るのでは…? 半減とはいえ、クレイジー・ダイヤモンドで『治した』部分は俺にどう言う形でフィードバックされるのだろう。少なくともこの前スタプラのパンチを間接的に食らった時すら人間業じゃない速さを感じた。

 

 

「シーザーッ! 攻撃受けたら何もしてない俺にまでダメージくるから避けてくれ!? 頼むから!」

 

「え? ああ、そういえばそうだったな!」

 

 

 ちなみに全員の位置関係だが、道路沿いのフェンス側が仗助君、直線上のグラウンド側にシーザー。仗助君に巻き込まれない距離をとって校舎の方に寄っているのが億泰君と康一君。

 

 それでさっきまでいじけてた俺がいるのが校舎側なのだが、いじけるだけあってそこそこ離れていた。

 

 よって、シーザーに近い方にいるがフォローが間に合わない場所にいた。俺の能力で呼んだ、コストが高い人間を消す時は、少なくとも2m間にいなくては消すことはできない。その日の体調が良かったり、別の条件下ならばまた範囲も広がるが、今回は近づかなくてはシーザーを引っ込められなかった。

 

 

「ドラァ!」

 

「シャボンランチャー!」

 

 

 ズガガガッ!

 

 クレイジー・ダイヤモンドのパンチを、波紋を流したいくつかのシャボン玉で受け流す。攻撃を受けたシャボン玉はぐにゃぐにゃと形を変えて、歪な形に『治される』。

 

 しかし攻撃は当たらず、シーザーの波紋が軽く仗助君へと伝わった。側から見ると、波紋が流れた仗助君が雷のようなスパークを纏って光っているように見える。

 

 強い衝撃ではあるが、加減はしたらしく仗助君は無傷だった。同時に衝撃を受けたことで仗助君は一応正気に戻った。少し逆立った髪の毛を櫛で整えている。

 

 

「知らなかったとはいえお前の誇りを傷つけたらしいな。悪かった」

 

「…え? あー…ああ、まあ、謝ってくれるんなら、許しますよ。俺、髪型のこと悪く言われると目の前が真っ赤になっちまって…」

 

 

 何とか事態は収束したらしい。横の方で見ていた俺たち3人は同時にほっと息を漏らした。よかった、またラッシュ対決の時くらい痛い思いするかと思った。

 

 

 余談だが、歪な形になったシャボン玉が動物の形になってたり、誰かの顔に見えたりしたのが面白くて、皆でしばらく遊んだ。

 

 波紋も切れて割れたら、またシーザー先輩にシャボン玉を作ってもらって、ついでに俺もシャボン玉作る練習させられ。作ったシャボンは仗助君が『治して』変形させたり。

 さっきまでのどの時間よりはしゃいでた気がする。めっちゃ楽しかった。(胸いっぱいの童心)

 

 

 

 

 

 

 ⒋考古学洗脳

 

「なんだって! 石仮面を作った文明人がいたって本当かい!?」

 

「人とは言えませんがね。俺はよく知らないですけど、1940年代ごろに長い眠りから覚めた彼らを倒したのがジョセフ・ジョースターだそうです」

 

「ぼくの孫が! よく無事で!」

 

 

 そういえば石仮面について深く研究し、深く関わっていたのはジョナサンだった。そう思い立って彼に2部の顛末を教えると、大げさに驚いたり心配する姿を見せた。

 

 これらの情報が伝聞の形なのは漫画知識であることもそうだが、本当に聞いたことだからでもある。歴史の偉人を試し呼びしていた時にスピードワゴンも呼び出していたのだが、貴方が死んだ後の時代ですよと伝えると、聞いてもいないうちからジョースターの事やら財団の心配やら話し始めたのだ。

 

 玄孫まで居ると知ったスピードワゴンはそれはもうやかましかった。持っている情報量は多いし話自体は面白いが、同時に聞いてはならない機密のようなことまで呟くのだから小市民の俺はかなり怯えた。

 解説王の名の通り感情いっぱいにわかりやすい説明で教えてくれるので話にイメージ出来ない部分がないのが余計に。

 

 聞いた話をそのままとは言えないが出来る限りジョナサンに伝えると、彼は熱心に聴きこんだ。全て話した時にはワクワクが抑えきれないと言った子供のような顔をしていた。

 

 

「…柱の男達のことに興味がありますか?」

 

「それは勿論! その中には12万年もの間生きていた者もいるんだろう? 歴史的発見だよ」

 

 

 まだ今も(宇宙で活動も出来ず考えるのをやめたけど)生きているのだが、言ったら宇宙まで行きそうなので黙っておこう。流石に俺は連れていけない。

 

 

「石仮面はわかる限りで破壊しているようだし、もう誰もディオのようなことにはならないだろう。作り出せる者もいないのだからそれは安心だ。

 考古学的には少し勿体無い気もするけれどね」

 

「あっ、ちゃんと危機感はあるんですね」

 

「なんのことだい?」

 

「いえ、何も」

 

 それこそ考古学的な面しか見てないと思ってたとか言ったら、流石に怒られるぞ。俺は口を慎んだ。

 

「考古学って面白いですか?」

 

「それはもう興味深い分野だよ! 人類の歴史を辿って未知の文明が見つかれば、遺跡からどう生活していたか、工夫をしていたかわかる。そこから現在の生活に繋がることだってある。

 ロマンがあるとは思わないかな?」

 

「ロマンですか、まあ俺も男だしわからないことはないですね」

 

「だろう? それに歴史には…」

 

 

 水を得た魚のようにマシンガントークを始めるジョナサン。この分だと永遠に話し続けてしまいそうだ。早めに止めてしまおう。

 

 

「わかりましたわかりました! 今度図書館からそういう分野の本を探してきて自分で読みます。先人にネタバレされると楽しみが半減じゃないですか」

 

「…おっと、自分から調べてくれるのかい? それは嬉しいな。周りは皆興味のある人がいなかったし、ディオに至っては金にならないなんていわれたよ」

 

 

 抜け出せない沼へ招待されたような気がするが、気のせいだろう。別に興味がないわけでもないし。

 

『ジョジョ』はサスペンス・ホラー。石仮面を始めとして『弓と矢』や、別の世界になるが『悪魔の手のひら』など物語のファクターとして、奇妙なものが関わっている。

 それらは学術的な面でも研究者達の知的好奇心を刺激するものだ。特に石仮面は1部と2部でSPW財団によって保管・研究されていたような描写もある。

 

 スタンドを有効活用出来れば多大な利益をもたらせるし、悪用すれば甚大な被害を引き起こす。万一の場合が起こる前にできるだけ知り尽くしたい気持ちはわかるのだ。

 それに、やはりロマンだ。うまくいけば自分で、誰も知り得ない新たな要素を世界に送り出すことができる。ファン的にはスタンド使いを生み出す矢を自らの手で調べられるのだ。

 

 

「博打みたいなところはありそうですけど、楽しそうですもんね。そういう分野に進むのも悪くないかもしれないな」

 

「なら博物館でも行こうか。…いや、それよりSPW財団に頼んだ方がいいかな。サンタナという柱の男はまだいるのだろう? さあ今すぐ…」

 

「やめて! お願いしますやめて! まだSPW財団と関わりたくない!!」

 

 

 

 将来、順調に考古学を専攻することになり世界中で埋蔵金や隠し財産を発見することになるのだが、学生の俺にはまだ知る由もないことだ。




小話集その1と銘打っていますが、その2の執筆は未定です。小ネタ集って思ったより文字数増えることに初めて気がつきました。

オラオララッシュ
……『主人公』の場合 にてやり忘れていた展開だったため書いた。また戦闘描写を長々と入れられないためにこういう形に。実質お祭りゲー。

モテる奴と仗助のリーゼント
……これもやってなかったなって思い立ったから書いた。とくにリーゼント貶し。シーザーの貶した時のセリフはゲーム『アイズオブヘブン』より。やったことないけど。

考古学のやつ
……ほのぼの書きたいけど今のところ他の話にほぼ関係なくて導入にすら入れるタイミングがなかったもの。主人公の将来どうしようという想いから書いた。

ジョースター家族会議はもうちょい先になるかな。

今4部アニメの視聴進捗はハーヴェスト回辺りです。漫画と同じくらい吉良登場時が怖かった。2次創作で角が取れてるのに慣れすぎて忘れていた恐怖。来週にはこの辺りまで書きたいと考えてます。

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