燃える街、跋扈する骸骨。
どこぞの世紀末か、というような普通では到底ありえない光景。
焦げた空気が熱くって、一寸前に焼かれた事実を思い出した。
割と近くで爆発が起きたはずなんだけど、私って一回死んでたりする?それなら、私の身体もそうとう鈍ってる。
今更爆発程度なら死なないと思ってたんだけど。
これが慢心というやつなんだな、失敗失敗。
さて、こんな慢心で人類を救えるのか?!石杖火鉈の人理修復の旅が今始まる!
なんてまあ冗談はさておき、一回死んでいるからといって、こんな街に気づいたらいるなんてことは今までは一度もなかった訳で。
「と言うことは、レイシフトは成功。ここが特異点F、と」
いや、私に元々レイシフト適正なんてものはなかったのだから、やっぱり一回は死んでることになるのかしらね?
ここまで死にごたえのない死は初めてだけど。
でも自分の病気が魔術なんていうオカルトにも作用することがわかってしまったのでとうとう私は死ねないかもしれないな。
ー唐突に通信が入る。
「やっぱりだけど、君は無事だね。
君も爆発をもろに受けていたはずなんだけどな」
「うるさいわ、ロマニ。今更爆発程度で死ぬほど柔くはないわよ。まあ、レイシフトでは一回死んだみたいだけど」
「自分の死をそんなに軽く見てるの君くらいじゃあないか?君のは耐性ができて死なないだけで、レイシフトが出来るってわけじゃない。最悪へんな時代に飛ばされてたかもしれないんだよ」
もう数え切れないくらい死んでる奴に何を言ってるんだ。たった一回くらいで堪える訳でもない。
そのへんな時代とかでも生き延びる自信しかない上に、新しい死に方が出来るならこっちにはメリットにしかならない。
三秒でもあればこっちのもの。身体はひと昔前のものとは違って、しっかり耐性をつけているのであった。
「そっちで回収できるでしょ?私、数万年くらいなら死なないから問題ないわ」
「観測のできない場所に飛ばされそうだから言ってるのに、こっちの苦労をまるでわかってないんだから。現在通信してるのがボクの時点で察してるだろ、君。現状ボクがトップなくらい緊迫してるんだから、本来の仕事くらい果たしてもらいたい」
へーへー、一応上司には従いますよっと。
こちとら雇われ傭兵みたいなものだし、待遇も悪くはないから、そんな契約したしね。
この場合トップの所長も死んでるだろうし、契約は切れるのか、ロマニに引き継ぎかはわからないとこだけど。
「所長死んでるなら、私、雇用契約無効ってことになる気がするんだけど」
「所長代理ってことで、それも受け継ぎ。君には働いてもらわないと困るんだ。何せカルデアの外は全て焼け、爆破テロでマスター候補は壊滅状態だ。戦力である君を手放せると思うかい」
「思わないわ。そこまで酷いんだとは思ってなかったけど」
「それはよかった。君がいれば戦力自体の心配をあまりしなくていいからね。君に勝てるとしたらそれは正真正銘の化け物だろうし」
女の子にむかって化け物と同等とか、ロマンティックの名前が泣くのでなくて?なんて思わなくもないけれど、正真正銘の化け物じみているのは自覚しているので、口をつぐむ。
「それで、仕事、何すればいいの。どうせ殲滅とかなんかでしょ。自分で緊迫した状況とか言っていたくせに」
「おっしゃる通りです。
さて、本題はそちらには合計7騎のサーヴァントの反応があると言うことだ。型落ちしただろう反応も含めて。それの殲滅、およびマスター候補生、藤丸立香とマシュ・キリエライトの保護。
トップサーヴァントでもなければ君と善戦も出来ないとこちらは推測しているから、殲滅自体は急がずに、保護を優先してくれ。
二人の場所の詳細は送る。ボクはあちらのモニターに専念するから、すぐに合流するように」
送られてきたこの街の地図らしきデータに浮かぶ赤の点一つに青の点二つ。
せっかちなロマニは、じゃあねと残して通信をあっさりと切った。
薄情な男だ。燃え盛る街に彷徨う女の子にパックアップもなしだなんて。緊迫した状況なのだから、メンタルケアについても考えるべきだと思う。
殺しても死なないような私といたいけで面倒を長年面倒を見ていた少女なら、そちらを優先するのは当然と言えるが。
それでもその子を保護するのはあくまでも私なのだから、私をサポートしてすぐ救助に向かえるようにした方が確実だとは思わなかったのだろうか。
変なところで爪が甘いのだからと呆れる。
まあ、サポートの有無で差異は出たとしても数秒だろうけど。
「えーっと、この青が保護対象なんでしょ、多分。点はあと二つしかないし私は青だから…。場所は20秒くらいかな」
本当ならタイマーをセットしたいくらいだけど、それで時間を食うのも嫌なのでスタートを意識するよりも早くその場から飛び出した。
バビュン、と空気を裂く感覚は久しく感じていなかったものだから、テンションの上がりようが普段とは違う。
それに景色は赤ばっかり。雪でいちめん白だけの世界に見慣れてしまった私には新鮮に感じられる。
自分がカルデアに居た時間が気づいたらもう10年になろうとしている。それほどの時間を大人しく過ごしていたことは私にとって珍しいことで、それを準備期間に使ったのだからこの騒動は私にとって願ってもない事だ。
元々この戦争のために私はカルデアに来たのだから。使って貰わないと宝の持ち腐れだ。
私がカルデアの兵器に甘んじていると言うのだから、それ相応の事が起こってもらわないと困るのだ。