「さて、という訳でだね」
「どういう訳よ。というか何故私はここにいるのこの目の前の痴女は誰なの説明しなさいMAG」
「コイツの素性はまだしもなんでリーダーがここにいるのかはあたしが知りてぇ。おかしいな、あたしら結構シリアスやってなかったか? 今回舞台裏とかそういうノリなのか?」
よく分からないことを愚痴るMAG。舞台裏というのが何を指しているのかは分からないが、とりあえずこの目の前の半裸人形についての説明をしてほしい。新人か?
私のそんな思考を察知したのか、P90がこそっと耳打ちしてきた。
「(いや、新人はいるけどそこの変態じゃないよ。新人はそっちで盾に囲まれてるほう)」
「いることにはいるのね、新人」
「(今回は向こうから押し付けられてきた感じだけどね。ま、後で紹介するよリーダー)」
「そう」
「ははは、そろそろ話を戻していいかね?」
不審女がそう言いながら、懐から何かを取り出した。
それは3つのプラスチックボトルに詰められたカプセル状の媒体であり、ボトルのラベルにはそれぞれこう書いてあった──『スナオニナール』『ヒックリカエール』『ツンデレール』。
それらに特に心当たりのない私達は一様に首をかしげたが、MGLだけは目を剥いて叫んだ。
「げっ!? まさかそれは!?」
「はっは! 恐らく君の思っている通りのものだよマスクドガール! これは少し前に君たちがやらかした性格反転騒動を元に作られた、戦術人形のメンタルマップに作用するナノマシンカプセル! 中々ペルシカも面白いことを考えるじゃないか!!」
そう言って、ボトルをこれ見よがしにシャカシャカと振る麗人。で、結局コイツは一体誰なのかそろそろ教えて欲しい。どうやら私以外のメンバーは全員知っているようだし、疎外感が凄い。
そんな事を思っている間にも、状況は刻一刻と進んでいく。
「ははは! 実を言うとだな、これ自体はもう用済みなんだ。これ見よがしに取り出して見せたのも、ただのパフォーマンスの一環にしか過ぎないということだな」
「用済み……? どういう事よ、というかそもそも誰なのよ結局」
「その質問には後で真摯に堪えさせてもらうとしようブラックレディ、もとい110BAよ! さあ、ショウタイムだ!」
高らかに宣言し、彼女はボトルを全て放り投げたかと思うと今度はあからさまにヤバ気なスイッチを取り出した。
それを見たMGLが慌てた様子で叫ぶ。
「もうすでに仕込み済み!? なんて用意のいい……ッ!!」
「その通り! 既に君たちの食事に雑に混ぜ込んでおいたのさ! 誰も気づかなかったのは正直予想外だったが、しかしこれは僥倖以外の何物でもない!!」
高笑いしながらそう謳うその姿はまさしく大犯罪者のそれであり、不覚にも私はそのパフォーマンスに気を惹かれてしまっていた。
そして、次に聞こえてきたMAGの叫びで正気に戻る。
「リーダー! そいつを止めろッ! 『スイッチ』を押させるなッ!」
「いいや! 『限界』だッ! 押すね──今だっ!!」
そう言って、麗人は手に持ったスイッチを押した。
その瞬間、私は意識が暗闇に包まれているのを自覚して──
「──あら?」
「……あのさあ。いくらなんでも不用心すぎんかお前? ちょっとそこに座れ、修正してやる」
──気付くと、真っ暗闇の空間に正座した状態でブランクからクドクドとありがたいお小言をもらっていた。
そして、現実世界では。
「さあ! さあ!! さあ!!! タノシイ
「いざ! 尋常にィ!! ──参る!!!」(※P90)
「……ああ、空はあんなに青いのに……なんで私はこんな……ブツブツ」(※MAG)
「我が行く末に敬礼を、かの青空へ礼拝を!! アナタはワタシワタシはアナタ、世に知らしめることもなし! 世界は回る回れよ世界、全て溶け墜ち無為へと戻れ!!」(※MGL)
「……ええ……」
──まあ案の定というかなんというか、とんでもないことになっていた。
困惑するアリアンロッド。もしもこの場にリンクスがいれば殴ってでも止めただろうが、しかし残念な蛾は彼女はこの場に居ない。
しかし、天は(非常に残念なことではあるが)彼女を見放さなかった。
「ほら先達ども、若輩者が戻ってきたぞ──どうやら部屋を間違えたようだな、失礼する」
戻ってきたのは、リンクスと同じく所用で席を外していたXTR。
彼女は扉を開けて部屋の中の惨状を目にして──そっと扉を閉じようとした。
しかしそこにアリアンロッドが張り付き、全力決死での妨害を見せる。
「はっは! 浮盾の君よいいところに来てくれた! 実はちょっとワケアリでな、少しばかり手伝ってはくれまいか!!」
「嫌に決まっているだろうなんで私が貴様の尻ぬぐいなんぞせねばならぬ!? 勘弁してくれ、もうゴタゴタはうんざりなんだ!! 大体想像がつくぞ、此度の一件貴様が主犯だろう!!」
『本体様、迫真の拒絶である』
『まあ前回で懲りたからね、仕方ないね』
『懲りたっていうか関わりたくないと思っただけでは?』
『自分を一般人形だと思い込む暗部所属』
「やかましいわ好き勝手言いおってからに!! 騒ぐ暇があるなら手伝え貴様ら―!!」
背後からやんややんやと騒ぎ立てる『声』にXTRが怒鳴りつける。
しかし結局助けは得られず、数秒後には彼女は半開きの扉から伸びた手によって部屋の中へと引きずり込まれた。
たまたまその光景を目撃していたG&K所属の一般スタッフは『往年のホラー映画の中に迷い込んでしまったのかと錯覚した。当分鉄血と戦術人形の顔は見たくない』と言って上司の片眼鏡合コン熟女(胃薬常用者)に1ヶ月の有給申請を叩きつけたという。
人の事を脅したり概念で刺したりすればssが吐き出されると思ってるだろうけど実際その通りな可能性があるからどんどん投げつけてきていいぞ! つまり低確率でssが吐き出されるガチャってことだな!