ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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免疫反応
ERROR 502


──目標をサイトに収める。敵は見慣れた鉄血の戦術人形だ。『人形』という割には犬っぽい四足歩行のメカがいたり四輪走行の小型タンクが混ざってたりするが、まあよくある事。

別段慌てることも無い、いつも通りの汚れ仕事だ。

 

「……、」

 

──発砲。

標的の頭部が丸ごと吹き飛んだのを確認しながら、ボルトを操作して次の弾丸を装填する。同時、サイト越しの視界が別の鉄血を捉える。

装填、捕捉──発砲。

装填、捕捉──発砲。

三回目あたりで向こうもようやくこちらの存在に気付いたようだが、関係ない。

どの道、ライフルも持ってない相手が1kmも離れた相手にできる反撃などたかがしれている。たまに迫撃砲が混ざっていたりするけれど、基本的にはその手の類を真っ先に破壊するように私はしているから、心配はない……はず。

装填、捕捉──発砲。

装填、捕捉──発砲。

装填、捕捉──

装填──

──

 

「……敵小隊の全滅を確認」

 

……3つのプロセスから成り立つ単純作業を幾度となく繰り返した結果、見渡す限りの視界から鉄血兵の姿は無くなった。残ったのは辺りに散らばる無数の残骸だけ──撤退はおろか潜伏すら許さない、我ながら完璧な鏖殺だった。

その場でしばらく周辺警戒をした後、私は耳元の通信機に手を当て、スイッチを入れる。

途端にバリバリとド派手な発砲音が耳朶を叩き、思わず顔を顰めた。

しかし挫けることなく、私は通信を試みる。

 

「……あらかた片付いた。そっちはどう、P90」

『んー、こっちも大体は仕留めたよー。110BAもその様子じゃミスってはないみたいだね』

「当然」

 

声をかければ、やかましい騒音と共に帰ってくるのは快活そうな声。唯一の相方、P90の物だ。が、この騒音自体は彼女が起こしているものではない。

つまり、もう一人仲間が居るのだが──

 

『斉射掃射速射高射乱射ァァあああ! ヒャッハー!! マッシンガーン、たーのしーいなー! やっちまえー!!』

『……また発作起こしてるし……』

「……、」

 

──正直な話、アレを仲間とは思いたくない。

今まさに最前線で轟音とともに弾丸をばらまいているだろう馬鹿の名前はFN MAG。眩い笑顔と共に片手持ちした10kg超のマシンガンを振り回す変態だ。

しかも思考パターンもマシンガンに汚染されているのか、大火力を正義と信じて止まない大艦巨砲&弾幕主義者。

どうしてこんなのとチームを組むハメになったのか。私は数ヶ月前に引き込むことを決めた自分を殴りたくなった。

しかし愚痴っていても始まらない──私は通信機を弄り、今なお通信機越しに音響テロを仕掛けてくる馬鹿に声をかける。

 

「MAG。撤退」

『イーハーッ!! ──ああ、なんだってー? よく聞こえねーぞー!』

「だったらまず引き金から指を離しなさい馬鹿」

『なんか耳がキーンとしてきた……』

『あー、ちと待て。すまんな、あと一匹仕留めりゃ終わりだ』

 

その言葉と同時に、弾丸が金属を引き裂く嫌な音がより一層強くなる。

程なくして、ぱったりと発砲音が止んだ。

突如として訪れた静寂の中で、その怒涛の発砲音を撒き散らしていた下手人の声が届く。

 

『うーっし、状況しゅうりょー。んで、何の話だ?』

「作戦終了。とっとと撤退して」

『りょーかい。その辺の残骸はどうするよ』

「……使えそうなモノがあったら各自持って帰るように」

『オーキードーキー。んじゃ、旧司令部(ポイント0)で集合な』

「そうね」

 

通信終了。

P90にも同じ事を伝えて、私はその場から離れる。

──戦術人形は貴重な資源だ。

人形本体は分解してしまえばオイルと鉄材と少しのパーツになるし、銃は持っていけば弾薬も手に入る。だから私はこうしていつもヘッドショット一発で済ませているわけだ。まあ、一度に持ち運べる量には限度があるから、何往復もする必要があるけれど。

 

『うげっ、全部スクラップじゃねぇか。一体誰だよこんな惨いことした奴は!』

『うん、どう考えてもキミだよね!?』

「鏡を見なさい馬鹿」

 

ああ、紹介が遅れた。

私はサベージ110BA──ライフル持ちの戦術人形であり、性能と引き換えに大事なものを喪失したいわゆる『コワレモノ』であり──この誰もいない防衛線(ドールズディフェンスライン)を守護する部隊、502部隊の隊長だ。

私たちはずっと前からこうしてきた。きっと、これから先もこうしていくのだろう。

さあ続けよう、栄光無き防衛戦を。

 

いつか世界に平和が訪れる、その瞬間まで。

 

「待たせた」

「お疲れ様ー……って、ええ?」

「おーっすリーダー、突然で悪いが緊急の案件だ。……これ、どうするよ」

『ワン』

「……何それ」

「うわっ、何処で拾ったのそれ? 凄いすり寄られてるけど」

「いやあ、武装のわりに見た目がファンシーすぎっから民生品パチって改造した鉄血の所のワンコロだと思うんだけどよ。完スルーして目に映った鉄血のヤツら薙ぎ払ってたら懐かれた」

「「ええ……」」

『ワフッ』

「おっ、そいつぁ弾薬か! いい子だパチ公、このバッテリーをやろう!」

『ワン!』

「なんか名前付けてるし、餌付けまでしてるし……しかもそのバッテリー何処から持ち出したのさ?」

「んー? 110BAの自室からちっとばかし拝借してな……あっ」

「オーケー、少しお話しましょうか」

「しまった墓穴掘った!?」

 

……その前に、この駄人形をどうにかする必要がありそうだ。

人の部屋からバッテリー持っていくとか何を考えているのだろうか。




502小隊
語源はインターネットにおいてサーバーの連携ができていない時に発するエラー『502』から。転じて、連携もクソもあったもんじゃない一匹狼の集まり。

サベージ110BA
種別:RF
対物ライフルじみた何か。.338ラプア・マグナム使用で、最大有効射程は約1700m。本作オリジナル人形。
黒髪ロングに黒曜石じみた黒眼で、常にレイプ目。服も黒い軍服で、夜間に鉢合わせたらビビる。実際それでトラウマを植え付けられた人形も多数。あまりにも独断専行が目立ったために半ば左遷気味に書類上だけの存在だった502小隊へ異動させられたが、本人は自由にやれているので割と満足。気に入った人員を小隊に引き込めるという権限を保持しているが、今までに二回しか使ったことが無い。

P90
種別:SMG
某ピンクのチビが使うことで有名なPDW。オリジナル人形。
別作品における持ち主に似たのか、その有り余る敏捷性で残像を残しながら相手を蹴散らしていく変態となった。目下の悩みは自分の撃った弾を追い越してしまうとかいう訳の分からないものだったりする。ちなみにチビではあるが全身ピンクではない。
また、発煙手榴弾でテロるのが大好き。戦場で不自然に煙があがったらそれは奴が来たサイン。『白煙残響(スモーキードール)』の名と共に、鉄血はおろかグリフィスの人形にも『もし見たらすぐ逃げること』と教えこまれている。
単騎での潜入任務に失敗し、大破状態で逃走しているところを110BAによって保護。そのまま彼女しかいなかった502小隊へと異動することになった。

FN MAG
種別:MG
本作のブッチギリでヤベー奴。オリジナル人形。
自他ともに認める火力信者。機関銃があればなんでも出来ると素で言い切る程に思考が終わってる。
しかしその大火力には目を見張るものがあり、単騎がけで鉄血の部隊を丸ごとひとつ壊滅した時には一体どんなトリックを用いたのかと騒がれた。本人曰く『オープンボルトの神様の加護だ!』。ちょっと何言ってるか分からない。
その性質上団体行動は著しく不向きで、孤立しながらやけっぱち気味に弾丸をばらまいていた所を110BAに保護され、502小隊の仲間入りをした。

パチ公
鉄血人形。見た目はDinergateそのものだが、妙にカラーリングがファンシー。
それもそのはず、元を正せばパチ公は鉄血工造の作った人形『Dinergate』を参考にして作られたペットロボット。……だったのだが、鉄血工造は何を考えたのかこれを接収。AIを弄って武装を外付けで追加して、あっという間に戦闘用に仕立てあげてしまった。
これに伴いペットロボットとしての性質はほぼ喪失してしまったが、『飼い主に懐く』というプログラムだけが生き続けた結果、FN MAGを飼い主と誤認して502部隊に入り込むことに。ちなみに武装は曲がりなりにも鉄血工造の新型なため、見た目の割に制圧力は高い。
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