いつもなら閑散としているそこは、しかし今では激戦区に早替わりしていた。
そこで争っているのは一分の戦術人形、そして九分の鉄血兵。
「数が多いーっ!!」
悲鳴をあげながら手当たり次第に弾丸と焼夷手榴弾をばら撒いているのはMicro UZI。ツインテールとややツンケンな口調が特徴的な少女だ。
それにしたって普段の彼女ならばこんな真似は絶対しないはずなのだが、しかし今回は事情が事情。
見渡す限りの鉄血兵、陸が三分に敵が七分。これではせっかく2丁持ちしている銃火器も気休めにしかなりはしない。
仕方なく、片手で銃を乱射しながら空いたもう片方の手で手榴弾を乱投していた。反動の比較的少ないSMG、そして常人を遥かに凌駕する戦術人形の筋力という二つの条件が揃っているからこそできる荒業だ。
「多いー! 多いよー!」
「言ってる暇があったらもっと投げた方がいいんじゃない……?」
そしてその横で似たようなことをしているのはVector。こちらは無気力そうな表情で乱射乱投をしている。
そうして出来上がったのは炎の舞う地獄の戦場。本日の天気は銃弾の雨ときどき焼夷手榴弾、流石の荒れ模様だ。
しかし銃弾も手榴弾も無限にある訳では無い。
程なくして、カキン! とUZIの持つ銃から甲高い音が響くと同時に弾幕が途切れる。
UZIは何度も引き金を引くが、しかし弾丸は出てこない。
「──やばっ、弾切れた!?」
その横ではVectorが感情の読めない顔で手に持った銃を縦に振りながら、
「……
考えうる限り最悪の状況だった。
ある程度削れたとはいえ敵との物量差は圧倒的。このペースで投げていては手榴弾も直ぐになくなるだろう。
そうなれば、待っているのは
あるいは、それよりも酷いことが待っているかもしれない。
悲惨な未来予想図が脳裏をよぎり、UZIは思わず後ずさる。
「や、やだ……!」
だが、その時。
ゴンッ!! という重い音と共に、すぐそばまで迫っていた鉄血兵の首があらぬ方向へとねじ曲がった。その頭には、それこそ砲弾のような見た目の金属塊がめり込んでいた。
その様子に、思わずUZIとVectorが顔を見合わせる。
そして。
「ヒィーヤッハァーッ!! FIRE IN THE HOOOOOOOOOOOOOOOOOLE!!!」
軽快な叫び声と共に首が折れた鉄血兵に銃弾の雨が降り注ぐ。ほどなくして、チリッと小さな火花が見えたかと思えば、その瞬間に周囲の味方諸共に大爆発を巻き起こした。
それもそのはず──二人は知る由もなかったが、あの金属塊、正体はなんと迫撃砲用の榴弾。以前MAGが敵の迫撃砲をスクラップにした際に、まだ使えそうだった弾薬のみを接収していたのだ。
まさかそれがこんな所で役に立つとは。
「
そんな声と共に鉄血兵を蹴散らしながらやってきたのは、両手にそれぞれマシンガンと鉄血兵の装備であろうガトリングガンを持った少女。ブレザーと軍服の中庸をとったような服装を返り血で真っ赤に染め上げながら、彼女は眩い笑顔でやってきた。
それを見た瞬間にVectorが全力投球で焼夷手榴弾を投げつけてしまったが、彼女──MAGは器用にも首の動きだけで回避して見せた。手榴弾でヘッドショットを狙うほうも大概だが。
しかしそれを気にもとめず、MAGは鉄血規格のガトリングガンで手近な鉄血兵を殴打し、まとめてその辺に打ち捨てる。そうして懐から取り出すのは大量の榴弾。これまで幾度となくスクラップにしてきた迫撃砲、その汗と涙の──訂正、鉄と油の結晶だった。
「そぉら吹っ飛べ!!」
それを一切の躊躇泣く放り投げる。
そしてその直後、金属同士がぶつかり合うとともにそのうちの一つに風穴が開いた。
起爆。
周りの鉄血兵を巻き込む小爆発が連続して起こる。
明らかにMAGの仕業ではない。そもそも彼女はマシンガナーだ、手に持っているそれでそんな器用な芸当が出来るはずがないし、そもそも彼女はそれを構えてすらいない。
──では、一体誰が?
「ハッハァ、いい仕事だリーダー!」
『当然。考え無しに突っ込んでったのをフォローしたんだし、後で埋め合わせしてちょうだいね』
「うげっ、マジでか! リーダーの言う『埋め合わせ』ほど怖ぇモンはねえんだが!?」
『……鉄血のハイエンドとどっちが怖いって聞かれたら?』
「そりゃリーダーだろ? 常識的に考えて」
『……後で覚えてなさいよ。通信終了』
「……やべえ、あたし死ぬかも」
青い顔で小刻みに震え始めるMAG。
彼女の脳裏をよぎるのは、数々の楽しかった思い出。その大半がマシンガンを乱射している風景である辺り、実にらしいというかなんと言うか。
「──っええいやめやめ! リフレッシュだリフレッシュ、こういう時はマシンガンを撃つに限る!」
どうしてそうなる。
そして彼女は警戒心MAXな二人にあるものを投げ渡した。それはやや古びたSMG用のマガジン。これまたスクラップにした鉄血兵から徴収したものだ。
そして彼女は二人へウインクすると、側頭部をぶん殴られてダウンしていた鉄血兵の頭部を迷いなく踏み抜き、それが持っていた銃を拾い上げる。偶然だが、それもマシンガンだった。
そうして両手に持った銃を構え、今なお中隊規模を維持する鉄血へと向けて高らかに宣言する。
「鉄血野郎ども、ようこそ
──発砲。
一対数十という絶望的な物量差の中、圧倒的な殲滅戦が幕を開ける。