ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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レベリング終わらなーい
前書きに書くことも思い浮かばなーい


Operation "Antibiotics"Ⅱ

『いたぞおおお、いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

『どうした何がいたのさ! 透明化する未確認人型知性体でもいたの!?』

 

無線越しにMAGの大声が届く。報告にしたってもうちょっとどうにかならなかったのか。物理的に耳が痛い。

負けじとP90が叫ぶ。

それに対して、スッと平静に戻ったMAGが淡々と報告していく。

 

侵入者(イントゥルーダー)だ。野郎、ガチで一個大隊分引き連れてきてやがる! くっそ二個小隊分もマシンガナー引き連れてるぞ!? 羨ましい! 銃だけでいいから半分よこせ! ついでにアイツのゲテモノもだ! あたしには分かるぞ、あれもマシンガンだとなぁ! ハッハーッ!!』

『……リーダー、アイツに聞いたボク達が馬鹿だったかも』

「……というか、長時間マシンガンに触れてないせいで禁断症状が出始めてるわね……」

 

そう、MAGは重度の重火器依存症。それ故に、最低でも2日に一度はマシンガンを持っていなければ禁断症状を起こしてしまい、最終的には半径数km以内に存在する発砲可能なマシンガンの反応を検知して一直線にそちらへと向かってしまうのだ。重度というかもはや末期。

以前、諸事情で末期症状を発症したことがある。その時MAGはたまたま検知範囲ギリギリを通っていたハイエンドモデルを一体フルボッコにして銃を奪い取り、あろうことかその指揮下にあった鉄血兵を一体残らず血祭りにあげてしまった。その際強奪した銃はスクラップになってしまったが、MAGは大破しながらも

 

「すっげぇ気持ちよかった(意訳)」

 

というコメントを残している。正直何を言っているのかさっぱり分からなかったが、少なくとも表情は今にも昇天してしまいそうなほどに蕩けていた。そこまでか。

それはさておき、どうやら向こうは私たちがこの前線に潜伏していることを既に看破しているようだ。その行軍に一切の迷いがないことが何よりの証拠。

盗聴でもしていたか、それともどこからか高倍率スコープごしに覗かれたか。

まあそんな事はどうでもよろしい──私たちはただ敵を鏖殺するのみだ。

 

「MAG。出せるわね?」

『おうさ。あたしが出れねえのは死ぬほど不満だが、まあ肝心の武器がねぇんだから仕方ねぇさ。だから──』

 

『──あたしの分まで頼んだぜ、パチ公っ!!』

『ワオオォーンッ!!』

 

その声と同時に、近くの塹壕から一つの影が飛び出した。

それは四本の足で地面を蹴り、ファンシーなカラーリングをした見た目からは想像もつかない速度で突っ走る。

その正体は誰であろう──MAGのペット、Dinergateことパチ公である。

その姿を視認すると同時に、私は迷うことなく全員に指令を飛ばした。

 

『──作戦開始ッ!!』

 

■ ■ ■

 

『敵襲! 敵襲ーッ!!』

 

無線越しに響くJaegerからの一報。

それとほぼ同時に、部下から敵に関する情報が届けられる。

 

『十時方向より敵襲! 敵は単騎で──ってDinergate!?』

「どういう事だ!」

『分かりません! ただ妙にファンシーな塗装のDinergateがこっちに向けて一直線に──ぐわぁああああああーーーっ!!』

『ベ、ベスパダイーーン!!』

『なんだアイツ、なんなんだアイツ!?』

『速すぎる! 敵性個体、通常の三倍の速度でこちらに接近中!』

『なんでこっちを襲うんだ、味方のはずだろ!?』

『じょ、冗談じゃ──ウワーッ!?』

 

まさに阿鼻叫喚。

たった一匹のDinergate相手に、こちらは大混乱に陥っている。

これでは蹂躙される一方だ。そう考えた侵入者(イントゥルーダー)は、すぐさま全員に指示を飛ばす。

 

「チィッ、総員一旦退きなさい! ただしGuard、お前らは残れ!」

『了解!』

『了解!』

『了解!』

 

その言葉に、Guardを残した全員が一斉に後退していく。

しかし、その時だった。

──ピン、と短い金属音が響く。

たまたまそこに目を向けたRipperが見たものは──

 

「……しまった、トラッ──」

 

トラップか、と言い切る前に、ワイヤートラップに接続された破砕手榴弾がRipperを巻き込んで盛大に爆発した。

大隊に激震が走る。

 

『何事だ!?』

『トラップ、トラップだ! ワイヤートラップがそこらじゅうに仕込まれてやがる!』

『なんでだよ、さっき通った時には何も無かったはずだろ!?』

『なんだ、発煙手榴弾だと!? 煙幕ごときでどうにかなると──ぎゃああああっ!!』

『13番が殺られた! 誰だ!?』

『分からねえ、煙幕で見えなくなったと思ったら急に死んじまったんだ!』

『アッツ、アツゥイ!? 畜生、焼夷手榴弾だ! ここは俺に任せて先に行け!』

『分かった、先に逝ってくる』

『何処に逝ってんだテメェは戻ってこい!』

 

その時、侵入者(イントゥルーダー)は全てを悟った。

放棄されて久しいはずの司令部と、そこを中心として形成される原因不明の最前線。

そして、侵攻する大隊の後を追うようにトラップを張り巡らす、民生品は愚か軍用の戦術人形でも到達できるか怪しい異常な作業速度。

そして、その中に仕込まれた煙幕トラップと、煙の中に潜む正体不明の暗殺者。

その理由を、彼女は知っていた。その正体を、彼女は識っていた。

所属人数、僅かに三名。しかしそのどれもが折り紙付きの破綻者。

人罠戦線(ドールトラッパー)』、『白煙残響(スモーキードール)』、敵性コード『弾幕火力教徒(トリガーハッピーエンド)』──あろう事か所属する全員が名前付き(ネームドアーミー)

並外れた危険度故に敵は愚か味方からすらも疎まれた異常者の寄せ集め──そう、その正体(小隊)は。

怒りのままに、侵入者(イントゥルーダー)は堂々たる姿で屹立する前線基地へ向けて咆哮する。

 

「──謀ったな、502ィッ!!!」




【朗報】MAGも二つ名持ち(ただし敵性コードなので本人は自覚なし)

【悲報】敵からも味方からもキチガイ認定

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