ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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SOPMODⅡがLv70になりました。よっしゃ編成拡大じゃあ!

『代用コア:所持数1』

……。


Operation "Antibiotics"Ⅲ

「よーしよし、上手い感じに撹乱できてるね」

 

白煙に紛れながら、P90はそう嘯いた。

実際は攪乱どころか大混乱なのだが、本人は視界不良のせいでそこまでの戦果を上げていることに気がつかない。無線を盗聴してもいいが、そんなことしたら一発で居場所が割れるためにする訳にも行かない。

 

(……ま、リーダーからは好きにしろって言われてるし、元よりそうするつもりだけど? 誰かにあったら即刻発砲OKって気楽でいいねー)

「なっ、貴様どこから──ガフッ!?」

「はーいキミに用はないからちょっと黙ってねー」

 

たまたま出くわした鉄血兵の口に銃口をねじ込み、短く連射。

タララッ、と小太鼓を叩くような短い音と共に、スクラップがまた一つ増産される。

さて、次はどうしてくれようか。

 

(……ともあれ、何があったとしても、あのハイエンドだけは絶対にボクが潰す。リーダーにも一応の許可はとってあるし)

 

本来許可など必要ない(502小隊において上下関係は名目上のものでしかない)のだが、律儀に彼女は許可を得ていた。ついでに、MAGが暴走したら何としても止めろというありがたい(面倒くさい)指令も頂いた。厄介すぎて涙が出そうだ。

 

「……ま、とりあえず陣地(フィールド)を増やしましょ~」

 

間延びした声とともに、辺り一面に発煙手榴弾がばらまかれ、ただでさえ濃密だった煙幕がより一層広く濃くなっていく。曲がりなりにもここら一帯はトラップだらけのエリアのはずなのだが、これほどの視界不良なのになぜ引っかからないのか。

原理は実に単純──三桁に上るほどの物量のトラップの尽くが、P90が引っかかる前に鉄血兵によって発動しているためだ。彼女もこんな感覚式迷路の中だ、トラップによる自爆は当然警戒していたが……まさかここまでとは。

とか言っている間にも、P90の周囲ではドッカンバッコン爆発音が響いている。

一際大きく爆発音と破砕音が響いたかと思えば、トラップで吹っ飛んだと思しき鉄血兵の頭が飛んできた。

 

「おっと」

 

P90はそれを片手で受け止めると、明後日の方向へと投げ飛ばす。

そしてそれが『偶然』近くにセットしてあった焼夷トラップに接触し、起動。巻き込まれた鉄血兵の一人がダミーリンクもろともあっという間に灰になった。

五里霧中にして死屍累々の戦場を悠々と突き進むP90。

目的の相手がいる位置も、ここが戦場のどの辺りなのかすらも判別のついていない彼女だが──まさにそれこそが『白煙残響(スモーキードール)』の危険性。

敵味方の配置も現在地すらも知ることを放棄し、目につく何もかもを鏖殺して突き進むのだ。それ故、彼女は今まで圧倒的な戦果を挙げてきた。無数の味方殺しや、仲間からの信用を引き換えに──彼女は名前付き(ネームド)として扱われるまでに至った。

結果、上層部の中でその戦闘スタイルが危険視され、『鉄血工造の偵察』という名目の下に発煙手榴弾なしで敵陣へと放り出された。簡潔に言えば体のいい捨て駒にされたわけだが……何の因果か、彼女の旅はそこで終わらず、ただ根強い因縁を残すに留まることとなる。

だから、これはその時の清算だ。今度こそこの手であの忌々しいガラクタをぶちのめし、自分のことを捨て駒にしてくれやがったあの元指揮官を見返してやる……!

 

「何処だ、何処だ……!」

 

地の底を這うような低い声と共に、彼女は目についた全てを蹴散らしていく。

だが、やってくるのはどれもこれも十把一絡げの雑兵ばかり。本命は一体どこに?

悩んでいるうちに、彼女は自身の体が煙幕のフィールドから出ていることに気が付いた。どうやら戦場から出てしまっていたらしい。

P90が追加の発煙手榴弾を投げようとした、その時だった。

 

「……ぁぁ……」

「……ん?」

 

声が、聞こえる。

音源は一体何処だ?P90は一時的にクリアになった視界で辺りを見回す。

前方、何もない。右方、同じく何もない。左方も以下略。

つまり……

 

「……後方?」

 

なんだ、敵襲か。向こうがようやく私の居場所に気付いたか。

そう思ったP90は、再び煙幕の中へ突入していく。そして──

 

「……ぁぁぁあああああああああああああああッッッ!!!!」

 

咆哮が一直線に近づいてくる。しかし、P90は銃を構えなかった。

……もう確定だ。こんなアホみたいな絶叫をあげながら突っ込んでくる奴を、彼女は一人しか知らなかった。

あれは誰だ、誰だ、誰だ。美女か? ローマか!?

いや──

 

「──あァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!! 待ってろ愛しのマシンガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!」

「──キチガイだっ!!」

 

ズバンッ!! という音と共に、マシンガンはおろか敏捷に優れたハンドガンやサブマシンガン持ちの戦術人形すらも裸足で逃げ出す速度でMAG(変態)がやってきた。

その変態はガリガリガリッ!! と両足で地面を削りながら急減速。P90の目の前で停止したかと思えば、そのまま四つん這いになって体を低め、弾丸でも撃ち出すかのような挙動で一直線に過ぎ去っていった。

呆れた目で一連の過程を眺めていたP90の耳に、110BA(リーダー)からの通信がこれまた呆れた声色で届く。

 

『……こちら「トラッパー」より「ハントレス」へ。簡潔に言うけど、「レギオン」……面倒、普通に呼びましょう。MAGが禁断症状を起こしたわ』

「……うん、確認したよ。というか目の前突っ切ってったし……。はぁ……」

『なら丁度いいわね。出撃前にも伝えたけど、殺してでも止めなさい』

「念願のアイスソードかよ……」

 

通信終了。

P90は仕方なく、今なお咆哮と共にマシンガンの方向へと突っ走る馬鹿を追いかけ始める。なに、視界不良で居場所が分からない?

大丈夫だ、問題ない──何せあれだけの声量の咆哮なのだ、正確な位置は分からずともどの方向に居るのかは容易く把握できる。

 

「頼むから死なないでくれよ、侵入者(イントゥルーダー)……!」

 

そして、P90は周りから見れば変にズレた、しかし本人たちからしてみれば冗談抜きに切実な願いを胸に秘め、全力で駆けだした。

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