ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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わーちゃん欲しい


After Antibiotics

後日談、というか本作戦のオチ。

トップである侵入者(イントゥルーダー)以下、指揮系統が軒並み壊滅して指揮能力を喪失したためか、鉄血大隊はほどなくして全滅。残されたのは不発弾と化した罠の数々と多量のスクラップのみとなった。

そのせいで私たちは当分の間不発弾処理に追われることとなるのだが、まあそれはさておき。

こちらの被害は大量に消費した資材、中破したMAG、およびMAGに洗脳された戦術人形二名のみ。恐ろしいことに自爆損失以外は何も被害がない。

既に煙幕も霧散した中で、燃え盛る戦場を背景にP90が帰還してきた。ズタ袋を二つ引きずって。

 

「状況終了。帰ってきたよ、リーダー」

「……ごめんなさいね、止めは私が刺す形になっちゃって」

「あれは仕方ないって~。ボクだってあんな状況だったら二人まとめて動きを止めてるよ」

「「マシンガンを讃えよ! マシンガンを讃えよ!!」」ズンドコズンドコ

「「…………、」」

「「マシンガンを讃えよ! マシンガンを讃えよ!!」」ズンドコズンドコ

「……とりあえず、あれも止めましょうか」

「……そだね」

 

未だに宗教的儀式を繰り広げている『焼夷同好会』の二人。いい加減近くで騒がれるのも鬱陶しくなってきたので、私たちは二人がかりで目を覚まさせることにした。

そうして効率的かつ物理的な手段に講じること暫し。

 

「──はっ!? ここは何処、私は誰!?」

「ここは不在防衛線(ドールズディフェンスライン)で貴方は戦術人形のMicro UZI。少なくともマシンガンでないことは確かね」

「……頭痛い」

「ごめんねー、ちょっと物理で解決しちゃったからねー」

 

どうやら二人とも目を覚ましたようだ。

そして、彼女たちに事の仔細を告げる。敵大隊を殲滅したこと、特にそっち側に被害が出ていないこと、約束通り資材を譲渡すること……etc.

トラップを設置したことくらいしか仕事をしていなかった二人は大きく疑問げだったが、どうやらちゃんと受け取ってもらえるようだ。後で契約不履行とか騒がれてもお互いのためにならないし、向こうも分かってくれたらしい。

だが、その前に司令部へ報告をしたいらしく、通信設備の貸与を求められた。

そこで、私たちは大きく困ることになる。

というのも、私たち502小隊は全員がMIA(戦闘中行方不明)KIA(戦死)AWOL(無断離脱)という聞いていて馬鹿らしくなる超法規的処分を受けたロクデナシだ。今更通信をつなげてもろくな扱いをされるとは思えない。最悪スパイ判定もありうる話だ。一応上層部には話は通っているが、はてさてその上層部が末端まで情報を通達しているかどうか……。

 

「……どうする、リーダー? ボクはリーダーに従うだけだけど」

「……つなげてみましょう」

 

通信設備を起動。

久しく使っていなかったために操作が覚束ないが、どうにかオンラインネットワークに復帰できた。しかしここで終わりではない。

困ったことに、ここの通信設備はセキュリティクリアランスレベルが異常に高く、何をするにしてもセキュリティレベルを最低三段階は下げないといけないのだ。常々思うが、放棄前は一体何をしていたんだ、此処は?

躍起になって格闘することしばし。ようやく平常運用できるレベルにまでセキュリティレベルを格下げし、いよいよ通信を試みる。

私はUZIとVectorに席を譲り、脇から様子を眺めることに。

「うわっ、だいぶ旧式だね……」とか「ここをこうして……あ、やばっ」などの不安すぎる言葉とは裏腹に、特に大過なくどこかの司令部と通信がつながった。

 

「よーし繋がった! HQ,HQ! こちら偵察部隊γ、戦況報告に来ました!」

『偵察部隊γ……何ぃ!? 二人とも無事だったのか!』

 

通信機越しに届くのは快活そうな青年の声。……人間の姿を見るのは久しぶりだ。私はP90と顔を見合わせる。どうやら彼女も同じらしい。まあ、彼女が502小隊に入ってから随分と経つし、それも仕方がないか。

何やら向こう側の話題で話し込んでいるが、どうやらそれも終わったようだ。少し盗み聞きしたりもしてみたが、内容はいたって普通。無事だという報告と、今まで何をしていたかの近況報告程度だった。ところで、会話の節々に「大量の作戦報告書」とか「過労死」だの「脱走」とかの不穏なワードが聞こえてきたのはあれはいったい何でしょうか。なに、もしかして最近の前線基地は奴隷でも飼ってるんですか?

まあそれはさておき……要件を話すために、私たちはUZI達と席を替わる。

 

「話は終わったみたいね」

『……君たちは?』

「私は110BA。で、隣のちびっこいのがP90。言っても分からないと思うけれど──まあ、気が向いたら『502小隊』で調べてみなさいな。一定以上のセキュリティクリアランスさえあれば、きっと私たちの真実が見れるわ」

『……そうか。それで、君たちが彼女たちを助けてくれた部隊という認識でいいのかな?』

「まあ、そうなるわね」

『そうか。では、まずそのことについて礼を言わせてくれ。君たちの助力がなければ、私たちは大事な仲間を失うところだった』

「(……仲間、ねえ。あっさりボクの事見捨てといてよく言うよ)」

「(……じゃあ、彼が?)」

「(いいや、全然赤の他人だけど?)」

 

険しい表情で黙り込むP90。

もしやと思って声をかけたが、どうやら私の杞憂だったようだ。彼女を見捨てたのはもうちょっと規律に煩そうな男だったらしい。私にはそれが誰かは分からなかったけれど、かつての上司だった片眼鏡の女を連想した。アイツは今どこで何をしているのだろうか。あの時異動のお礼に鉛球をぶち込んでやれなかったのが今でも悔やまれる──今なら迷うことなく眉間をぶち抜いてやれるのに。

おっと、思考がそれた。今は『彼』の話を聞いてあげないと。

 

『そのうえ資材までもらえるとなっては、私たちも相応の返礼をしなくてはならないだろう。なにか頼みたいことがあれば、何でも言ってくれ』

「あらそう? ……じゃあ」

 

──上層部につないでくれるかしら。

私は、面と向かってそう言った。

P90が驚いた表情で私のほうを見る。が、関係ない。私には私の狙いがある。

 

ふふふっ。

死んだはずの、()()()()()()戦術人形(わたしたち)から強請られるなんて──()()()()には、いい薬でしょう?




年始一発の投稿できますかねこれ……
まあお正月特番でも書きますか。
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