本年もイカれた奴らをよろしくお願いいたします!
Trickster of Grenade!
『焼夷同好会』を資材とセットで元居た基地に送り返し、
「おっすリーダー、体調も良くなってきたしマシンガン撃たせろ」
「秒で帰れ」
「キハハ、着任祝いでグレネード撃っていいかな?」
「秒で帰れいや誰だお前!?」
以上の慎重極まりないやり取りの末に、502小隊に新しい仲間が加わった。
ジト目のP90、発作が収まっても相変わらずマシンガンキチのMAG、そして以前と何も変わらない死んだ魚の目をしている(自覚のある)私の前で、彼女は優雅に一礼。
メイド服と軍服を合わせたような一風変わった服を風に棚引かせ、こう言い放ってみせた。
「遊びましょ! 遊びます! こちとら狂ったグレネーダー、おやおや貴方はアリスさん? いつでもどこでもだれとでも、世界は進むし舞台は回る! つまり私はチェシャキャット、MGLのお通りサ! あ、言い辛いし
「……ヘイリーダー、今度は何やらかした?」
「別に。ちょっと上司を強請っただけよ」
「ならいいか」
「いいの? 上司強請ってんのに『ならいいか』で済ませちゃうの?」
「マシンガンが撃てりゃなんだっていい」
「そうだねキミってばそういう奴だったね! ボクが馬鹿だったよ!」
「っつーかグレネードっつったか? 戦術人形にグレラン持ちがいたなんて話は聞いたことねえが」
「いやいやいや……FALとかFAMASとか普通に居たじゃんか……」
顔の右半分を仮面で覆った戦術人形、MGL-140……コイツが、ヘリアンすら匙を投げるド級の地雷。……らしい。
傍から見れば変わった服装のピエロにしか見えないが、実際のところはどうなのだろうか。
私は興味本位であることを問いかけてみた。
「MGL。ヘリアンの隠し事って知っている?」
「そりゃもう当然! 人の後ろ暗さを明かすのは大変得意なものでして。ヘリアンってば実は夜な夜な某指揮官の私室に入り浸ってはバレないように〇〇〇を×××してそっと△△△──」
「カメラ止めてー!!」
とんでもないネタが飛び込んできた。具体的に描写するとR-18タグをつけないといけないようなのが。
あまりの衝撃にMAGは手に持っていたマシンガンをとり落とし、P90が飲んでいた紅茶を噴き出す。P90はともかく、『あの』MAGが意図的でなくともマシンガンをぞんざいに扱ってしまうというレベルの厄ネタ──といえばその爆弾の規格外さがよくわかるだろう。
「これは……結構な大物が来たわね……!」
「リーダー? いかにも戦闘中ですみたいな感じの笑み浮かべてるとこ悪いけど、ここ司令部だからね?」
P90が呆れた様子で私を諭す。……言われてみればその通りだ。
その横では、MAGがとり落としたマシンガンを拾い上げて簡易的にチェックしている。あ、部屋を出た。これは外で乱射してテストする気だな。
……は、さておいて。
「……コホン。ようこそ、502小隊へ」
いったん場の空気を入れ替えよう。私は死にかけの表情筋を動かし、精いっぱいの笑み(なお主な用途は威嚇)を形作る。
両腕を大きく広げ、何時ものようにこう言い放った。
「歓迎しましょう、盛大にね?」
「さて、ではイカれた野郎どもを紹介しましょう」
「もうお腹一杯だよリーダー」
「貴方たちの紹介よ」
「じゃあいいか」
「彼女はP90。502小隊の特攻隊長ね」
「P90、P90? ワーオ、サプラ~イズ! なんとたまげた、あの『
「リーダー離してコイツ殺せない!」
「落ち着きなさいP90! 殿中! 殿中よ!」
反射的にP90を羽交い絞めで取り押さえたが、どうやら勘が当たったようだ。PDW片手に暴れるんじゃない、暴発したらどうする。
で、そのまま流れるように絞め落としつつ、私は自分の紹介に入る。
「部下が失礼したわね。私は110BA、この小隊の隊長を務めているわ」
「うん、まあ、知ってるよ。悪名高い『
「急にテンション下がったわね……」
「キャラ作るってのもなかなか大変なんですヨ? こちとら爆弾満載した軍用車みたいな人生送ってますもんで」
「要するに撃てば爆ぜる特大の地雷ってことじゃないの」
「そりゃ勿論」
先ほどまでとは打って変わって疲れきったような表情で座り込むMGL。
やはり彼女も修羅場は経験してきたのだろう。だが、こちらだって修羅場の10や20経験している。
というより、自分たちで作ってる。
その最もたる原因が──
「帰ったぞリーダー! リハビリがてらその辺の鉄血兵を軽ーく3ケタくらいスクラップしてきたが、あたしもようやく本調子に戻ったみてぇだ!」
「この火力キチ……それ以外にやる事はないの?」
「ったりめぇよ! あたしにゃこのマシンガンがありゃ十分だ! 火力は全てを解決する!」
「それで解決できるのは荒事くらいよ。……はあ、それで、この火力信者がMAG。502小隊が誇るぶっちぎりのキチガイね」
「誠に遺憾である」
「遺憾も何も事実でしょうに」
「まあ実際そうなんだけどな」
認めるのかよ、否定するんなら最後までし通せよ──そう言いかけたが、すんでのところで思いとどまる。
気を改め、私はMGLに502小隊についてを説明しようとしたのだが……
「よし、じゃあ新入り! テメェにこの小隊の何たるかをあたしが教えてやろう!」
「オウ、マジェスティック! いっちばん連携も何もあったもんじゃなさそうな人に教えられるとは意外だヨ! 意外だネ!」
「何か言ったかコラ? ──まあさておき、いくぜ? 師匠直伝、『もしもじゃないときにも使えるマシンガン五ヶ条』!!」
「「……はい?」」
「ひとーつ! 鉄血兵を見かけたら迷わずマシンガンを撃て!
ふたーつ! なんか影を見たらとりあえずマシンガンを撃て!
みーっつ! 敵に囲まれたら一片も躊躇わずにマシンガンを撃て!
よーっつ! 敵味方入り混じった乱戦でも構わずマシンガンを撃て!
いつーつ! 特に理由がなくとも撃ちたくなったらマシンガンを撃て!
──以上だ!!」
「「いや待て待て待て待て!?」」
いつから502小隊はそんなマシンガンキチの集いみたいなモットーを掲げだした!? 隊長の私も初耳だぞ!? っつーかそれ以前に『師匠』!? この馬鹿のさらに上をいく馬鹿がいるというの……!?
私が衝撃の事実に愕然としている間にも、状況は進行していく。
「ようし覚えたな!? 早速実践だ!」
「いや待って話を聞いてそもそもわたしグレネードの戦術人ぎょ──!!?」
MAGはMGLの腕をつかみ、そのまま拉致っていく。
バタン! と乱暴にドアが閉じられ、部屋には私と私が絞め落としたP90だけが残された。
念願の仲間(?)を見つけたことではっちゃけたMAGに果てしない頭痛を覚えながら、私は一人こぼす。
「……ヘリアン、貴方の気持ちが少しだけわかったわ……」
少しじゃなくて全部分かれ貴様──という声と、MGLの悲鳴が聞こえた気がした。
よーし新年のあいさつも終えたし夜戦4-4nまで攻略しよっと