それでとうとう諦めてG36Cを狙い始めたら、五日足らずで二人とも来ちゃいました。
お前ら……。
「404小隊についてだあ? ──色々拗らせちまった人形の集まりだよ、そんくらいアレ見りゃ分かんだろ?」
場所は引き続き、旧司令室。
ダイスロール失敗のショックから復活した指揮官カッコカリと戦術人形を地下牢から連れ出して質問をしたところ、返ってきたのは簡潔極まりない一言だった。
ちなみに地下牢に関しては後から増設したものではなく備え付けの様だった。ただ、おびただしい量の血痕が残っていたことから、ろくなことに使われていなかったのは想像がつく。
「……まあ、アレは確かにそうとしか言いようがないなわね……」
502小隊も含め、今この場にいる殆どのメンツが苦々しげな表情を浮かべる。そうでないのは、能天気にマシンガンのメンテナンスをしているMAGくらいの物だ。お前はブレるということを知らないのか。
何か対処法のようなものを聞ければ御の字だったが……やはり、そう上手くは事は運ばない。となれば、残された手段はほぼ力業だけになるのだが……。
……これは、仕方ないな。
「……ええ、これは仕方ないわね。そう、仕方ないのよ! 他に有効そうな解決法がないから私はゲリラ戦を選択しただけで、別に喜び勇んでやってるわけじゃないの!」
「ちょっと、ちょっとリーダー?」
「ヘイリーダー。輝くような笑顔で工具と罠の材料持ちながら言っても欠片も説得力ないぜ?」
「別にいいじゃない。腕や足の一本や二本吹き飛んだところで構わないでしょ? コラテラルダメージよ、コラテラルダメージ」
「いや致し方ある犠牲だろうが!? ただでさえ
「その場合ボクが一番危ないぞ! 見境なしに煙幕撒き散らすんだからな! ただでさえ
「──いや、オレとしてはそれくらいやってくれた方がいいな。ショック療法が効くかもしれない」
「「いやウッソだろお前!?」」
とんでもないことを言い出した指揮官カッコカリに、MAGとP90が瞠目する。
そういえばMAGがツッコミに回るのは珍しいな──などとそんなことを思いながら、私は再び指揮官カッコカリに問うた。
「ショック療法、というのは?」
「アイツらな、どうも毒電波にやられてるっぽいんだわ。それも好感度反転系の奴。その前からまあ怪しいっちゃ怪しかったんだが、アレにやられて完全にタガが外れた感じだな」
「なるほど、それで……」
「よっしゃマシンガンの出番だな!? 任せとけアイツら全員スクラップにしてやるぜ!!」
「ショック療法だっつってんだろ馬鹿!!」
「イッテェ!?」
案の定マシンガンを構えて暴走しかけたMAGの脛にすかさずP90がヤクザキックをぶち込む。ナイスショット、あれは痛い。
脛を抑えて飛び回るMAGを尻目に、私は戦術人形の方に事情聴取をしていたMGlへ声をかける。
「MGL。そっちはどう?」
「あ、はい。そのですね、どうやらRFB……さんは別口みたいです。そこの指揮官カッコカリさんとは数週間前に出会って、404小隊にロックオンされちゃったのでなし崩し的に同行する羽目になったとか」
「ねえ、そのカッコカリってのどうにかならない? 地味に心に来るものがあるんだけど」
「でも身分証明できないじゃないですか」
「そこを突かれると痛い」
カラカラと笑う指揮官カッコカリ。ベルトリンクで縛られているのにえらく気丈だ。
未だに亀甲縛りされたままのRFBに対して質問を飛ばそうとしたその時、私が耳に装着していたインカムがザザッとノイズを発した。基本的にこれがノイズを発するのは通信接続時にエラーが発生した時くらい──つまり、
……嫌な予感がする。
私はその場にいた全員に通信(らしきもの)が届いた旨を伝え、そのまま備え付けの通信システムと監視システムを起動。
両システムは連携がとれるようになっていて、組み合わせればなんと司令部内はおろか司令部を中心とした半径数十m以内までなら映像と音声をまとめて把握できるのだ。……本当に、廃棄前はどんな施設だったのだろうか?
「……よし。つなげるわよ」
「待ってリーダー。ボクすごく嫌な予感が──」
インカムの通信システムを旧司令部の物とリンクさせ、システムを起動。
監視システムおよび通信システムから得た映像・音声がプロジェクターとスクリーン、そしてスピーカーを通じて、私たちに届けられる。
予感が外れていればいいのだが──果たして。
『ミ・ツ・ケ・タ❤︎』
「「「ヒェッ」」」
映し出されたのは、戦術人形と思しき少女の顔、その一部分のドアップ。より具体的に言えば、目。
ハイライトが行方不明でかつ瞳孔全開の目を映したスクリーンは、心の奥底に潜む根源的な恐怖を呼び起こすには十分だった。
SANチェック、の文字と共に六面ダイスがテーブル上に複数転がる光景が脳裏をよぎる。
それと同時、鋭い発砲音と共に映像シグナルがロストした。
しかし盗聴ユニットの存在にまでは気付かれなかったようで、少女たち──404小隊の話し声と思しきものがスピーカー越しに耳に届く。
『……どうだった?』
『うん、ビンゴ。指揮官は此処にいる』
「いや、一方通行の監視カメラ越しに何で把握できるんだよ……!?」
『貴方を褒めるのは癪だけどよくやったわ、ナイン。それで、指揮官? 聞こえているでしょうけれど──絶対、ニガサナイカラ❤︎』
『それと、そこの泥棒猫……うん、5人位かしら? 分かっていると思うけど、首洗って待ってなさいね?』
『えへ、えへへへへ……今行くから待っててね、しーきかーん……?』
『指揮官……また一緒に寝ようよ……? 今度こそ、ずっとずっと一緒だよ……』
その直後。
ガリガリガリガリ!!! というすさまじいノイズ音と共に、映像に続いて音声も沈黙する。慌ててシステムチェックをすると、通信システム・監視システムともに一番外周に存在するユニットが一つずつオフラインになっていた。訂正しよう、盗聴器の存在までしっかり把握されていた。
おそらく向こうは話し合いをする気など毛頭ないだろう──間違いなく対話の線は消えた。たとえ何が障害物として立ちはだかろうと、彼女たちはその全てを鏖殺して指揮官を奪取する気だ。
「コンディションレッド発令! 総員、甲種戦闘配置ッ!!」
「うっはやっべぇ、ハイエンドモデルなんざ目じゃねえ修羅場だなこれは!! パチ公、ひっさびさの出番だぜ!」
『ワオン!』
「MGL、発煙弾と焼夷弾をそれぞれ一丁ずつに装填! 適宜こっちで指示出すから、屋上でポイントマンよろしく!!」
「はっ、はい!!」
「おい待て、待て待て待て!! これ! これ解いて!!」
「私もー!!」
ドタバタと、今までとは比べ物にならないレベルで旧司令部が騒がしくなる。
時刻はすでに夕暮れ時──もう少しで、戦場は暗闇と濃霧に包まれることになるだろう。
そうなれば、防衛する側である私たちは極めて不利になる。旧司令部は502小隊の四人だけでカバー出来るほど小さくはない。
であれば、取れる手段はただ一つ──
完全に夜になる前に短期決戦を仕掛け、そして殲滅する。これしかない……が、向こうもプロ。おそらくそう上手くは行かないだろう。
私はMGLとともに旧司令部の屋上に陣取り、照準器を
ナイトスコープ越しの緑がかった視界に映る、4つの影──間違いない、404小隊だ。
私はその姿を視界にとらえたまま、インカムで指示を飛ばす。
「現時刻を以て
『こちらP90、いつでも行けるよ!』
『こちらMAG、パチ公ともども準備OKだ!』
『ワオーン!!』
「MGL、オーダー・コンプリート! さあ、カオスの始まりサ!」
──さあ諸君、戦争をしよう。
ドルフロだとどうしてライフルにナイトスコープ付けられないんでしょうねー。