「……はあ、なるほど」
数刻後。
『喫茶鉄血』では、502小隊と鉄血工造のハイエンドモデルが一堂に会していた。ある意味で非常に歴史的な瞬間だ。
「私達の事は結構有名だと思っていたけど……まあ、そういう事もありますか」
「オイそりゃどういう意味だ? ああん?」
「MAG、ステイ」
ため息をつくエージェントに、MAGが額に青筋を浮かべて食ってかかる。それを、私は横になりながら制止した。
そのすぐそばでは、ドリーマーとウロボロスが『私は無関係の人に迷惑をかけました』と書かれた看板を首にかけられた状態で石抱きの刑に処されて半泣きになっていた。あまりにも前時代的すぎる。
エージェントはため息をつきながら、
「……どうやら、事情を知らないというよりも根本から認識に差異がありそうですね」
そう言って、彼女は説明を始める。
私達は耳を疑った。
え、鉄血工造は事故による壊滅じゃなくてクーデターによる解体? 何それ聞いてない。
従業員・自律人形は大多数が共存の道を選んだ? じゃあ私たち何のために僻地で頑張ってたの?
エージェントはこの喫茶店のマスターで、ハンターはAR-15の恋人で、エクスキューショナーは医療関連の施設の護衛が生業で、アーキテクトとかゲーガーとかは鉄血工造の後進的存在『17Lab』で頑張ってる? ええ……???
何もかもが初耳すぎて理解が追い付かない。
「……P90。ちょっと私の頬つねってくれないかしら」
「ん、分かった」
P90が頬をつまみ、ひねりを加えながら思い切り引っ張る。痛い痛い痛い。
……夢じゃないのか……。
その様子を見ながら、こういうことが稀に起こるとエージェントは言う。
「なんでしょう、並行世界からの転移、あるいは漂流? そういうのが度々あるんです」
「……ああ、いっそ夢であってほしかった」
「マジか、異世界とかマジか。え、あたしと気が合いそうな奴とかいる?」
「異世界じゃなくて並行世界なのですけど……まあ、マシンガン(推定)であればM61A2バルカンと名乗る戦術人形がつい先日」
「なっ……バルカン……だと……!?」
「どうしました?」
「……ドエレ──“
「はあ。そうですか」
「……うん? いや待ってください、なんかおかしくないですか?」
そこでそう疑問を呈したのはMGLだ。
彼女は顎に手を当てて、感じたことを赤裸々に話す。
「『並行世界』と言うからには、おそらく『戦術人形』や『PMC』、『鉄血工造』などの必要最低限の事象は恐らく重複してるとみていいでしょう」
「そうなりますね。でなければ、あなた方も私たちもここに揃うことはなかったでしょうし」
「はい。ただ、そうなると此処で疑問点が生じます」
ピンと人差し指を立て、MGLは続ける。並行世界論で行くと、致命的な矛盾が発生するという持論を。
「恐らく約2週間前、鉄血工造からの襲撃が途絶えたのとほぼ同タイミングで私達は旧司令部ごとこの世界線に転移したものと考えられます」
「……まあ、考えられるとしたらその時よね」
「そして、リーダーがヘリアントスと通信、ここ……S09地区における『戦術人形専門店利用許可証』を受領したのがつい一昨日かそのあたりになります」
「そうだな。リーダーがしかめっ面で通信機に向かってたのを覚えてるぜ」
「となると。何故、
「──!!!」
そこで、この場にいる全員がその事実に気が付いた。
確かに、此処は私達とは何ら関係の無い世界観のはず。であれば、彼女が私達のことを知っているはずがないのだ。
では、何故……?
「あーっ!!」
とそこで、横から大声で割り込んでくる影があった。
声のする方を見てみれば、そこには正座した足の上に積まれた石を半分くらい脇にのけ、驚きの表情で私たちを指さすウロボロスの姿。
「思い出したぞ! 貴様ら、イントゥルーダーの言っていた『502小隊』とかいう奴らじゃないか!?」
「……イントゥルーダー?」
「何を勝手に石をどかしているのですか。これはお仕置きの追加が必要ですね?」
エージェントはすかさず、先程の倍の高さに積まれた石をウロボロスの足の上に積み重ねる。
「重み倍プッシュ!? じゃなくて、それどころではない! 証拠なら、恐らくだがそっちの方から送り付けてきたろう! エージェントなら覚えているはずだ、この前急に16Labに送られてきた形式不明のハイエンドモデルだ!」
「……ああ!」
エージェントも思い出したらしく、ポンと手を打った。
それにしても、イントゥルーダー……うん……?
……あっ。
「なんかあったっけか」
「MGLはともかくお前は絶対言っちゃダメだろその台詞。この前、どこかの司令部の戦術人形を二人救助したじゃんか」
「……そんな事あったっけか」
「おーいリーダー」
「待て待て分かった思い出す思い出すから! アレだろ、あたしが暴走した時だろ!? 確かになんかそれっぽい奴と殴りあってた記憶があるぞ!」
「「嘘でしょ……」」
そんなMAGの発言に、エージェントとウロボロスはドン引きしていた。その脇で、ドリーマーはその名の通りに鼻ちょうちんを膨らませて夢の世界に旅立っていた。
……うん、そう言えば鹵獲したハイエンドモデルを一体、送り先不明の状態で本部に郵送したんだったな。
私謹製の電磁捕縛装置で電脳を破壊することなく身体機能だけを無力化して、段ボールに詰めて送り出したんだ。
どこも壊してないので、多分箱の中で元気に騒ぎ立てていたのだろう。野郎ぶっ殺してやる、みたいな感じで。
なるほどそこで繋がるか……。多分電脳の中までしっかりチェックしただろうし、だとすれば私たちのことも触りくらいは知っていてもおかしくないだろう。詳細は不明だが、どこぞの防衛戦で単独行動してる戦術人形がいる、という感じで。
なるほど、なるほど……。
全員で納得していたその時、扉が外から開かれた。
外から乗り込んできたのは、アサルトライフルの戦術人形達だ。AR-15、M16A1、SOPMOD2、M4A1、RO635……あれ。
これ、もしかしなくてもAR小隊?
「やっほー、遊びに来たよ~ってうわぁ! 何この状況!!」
「よお異教徒。見ての通り修羅場だぜ」
「マシンガン持ちじゃないからって初対面で喧嘩を売るのはやめなさいMAG。そんなにドラム缶に詰め込まれたいの?」
「すまん言いすぎた」
「お、おう……それで、何が起こったんだ?」
「ウロボロス、ドリーマー、ドア、衝突」
「オーケーだいたい察した」
どうやらこの手の事故はこれが初めてではないようで、彼女たちは一様に遠い目をして天を仰いでいた。そんなにか。
ともあれ、私もだいぶ本調子に戻ってきた事だし……。
横になっていた体を起こし、パンパンと手を叩く。
こちらに視線が集中するのを感じながら、私は取り敢えず出来る限りの笑顔を浮かべ、告げる。
「──それでは。異世界交流を始めましょう?」
……おい、今小さく「ヒェッ」て悲鳴上げたの誰だ。私だって傷つくんだからな。
コラボ回なのに超シリアス。コラボ先様の作品はほんわかした雰囲気が特徴のはずなのに。