専用装備持ちを育てまくってたら時間食いました。
ところでまた大規模イベだそうですね。我が司令部は100レベは14体くらいいますが編成上の問題で防御面に不安が残ります。SMG育成しなきゃ。
「……ねえ、聞きたいことがあるのだけれど」
「……何よ」
旧司令部最上層、通称『アンノウン・プレース』。
そこで、椅子に縛られ、ホラー映画耐久マラソンに強制的に参加させられている二つの戦術人形。
先ほどから上で盛大にドンパチやっているらしく、断続的に銃声と爆発音と振動がこちらに届いてきている。
そこで、110BAはふとHK416にこう問うた。
「貴方たちはあの男が目当てでここまで来たのよね?」
「当たり前じゃない。それとも何、他の目的があるとでも?」
「──興味深いわね」
「は?」
不愉快そうに眉を顰めるHK416。
それに対して、110BAは心の底から不思議そうな顔をしながら、こう言った。
「私達は戦術人形、兵器でしょう? 本来、『感情』なんて物は不要なのでは?」
「……、」
「生憎と私は欠陥品だから、その手の類の感情が欠落しているの。でも、ないからこそ思うのだけれど──」
──恋愛なんて、必要ないじゃない?
416は激怒した。必ず、この目の前で平然としているふてえ野郎を殺してやらねばと決意した。相変わらず椅子に拘束されている状況は続いているため、どうしようもないのだが。
110BAはそんな416の様子に気付くことなく、あらぬ方向を見つめながら、
「むかしむかしの話だけど、『王は人の心がわからない』って言った騎士がいたらしいわね? 人がなった人の頂点は、人の心がわからなかった。けれど、何よりも人を想っていた王の心もその騎士には伝わっていなかった」
「……、」
「同じ人どうしでさえこうなのよ? であれば、人と人形、同一にして逆反対である私達が、相互理解なんて出来るわけないじゃないの。私達は兵器。ただ命令に従って破壊を巻き散らせばいいの」
──ま、そんな風に生きれたら苦労はしないのだけれどね。
よっと、と軽い調子で、110BAは腕を引いた。
それだけで、つい先程まで彼女を強固に戒めていたはずの拘束具が呆気なく弾け飛ぶ。
信じられない光景に、416は自らの目を疑った。
「……どれだけ最適化したらそんな真似ができるのよ……?」
「さあね。面倒だから80%を超えたあたりからカウントしてないから、忘れたわ」
「……それだけ最適化しておいて、なんでダミーの一つも持ってないのよ」
「隊の方針。というか、ダミーに関してはそっちも人の事言えないでしょうに」
その通りだった。
404小隊も502小隊も、ダミー無しの本体一本勝負という点ではそっくりである。現状、行動理念があまりにも正反対だが。
……というか、本部は何を思ってこんな奴らを使役してるんだ? 馬鹿なのか?
416はなおも自分の方の拘束を破壊しようともがいているが、残念ながら
110BAは無線機を手に取り、通信を繋げた。
「MAG。聞こえる?」
『おーすリーダー、聞こえるぞ! ──っぶぇ、かすったあっぶねぇ!!』
「そっちはどう?」
『わかってて言ってんだろコラ!! 普通内部機構って脆いもんじゃねーのか、パーツ単位でさえ7.62mmの至近弾を弾くとかマジでなんなんだあのデク人形!? 実はオリハルコンとか使ってますとか言われても信じるぜ!?』
「やけ気味に作った作品なのよね、その子。正直何使ったか覚えてないのよ。でも、ハイエンドモデルを含んだ鉄血の小隊を単騎で壊滅させてた時はさすがにビビったわ」
『ンなモン基地内で起動してんじゃねえアホーーッ!!』
MAG、魂の叫び。あまりの音量に、110BAは思わず無線機から耳を離して顔を顰めた。聴覚センサが悲鳴をあげ、キーンと耳鳴りのようにハウリングを起こしている。
なおも文句を叫ぼうとしたMAGだったが、再び口を開く前に強引に通信が遮断された。
今度は何事か、と嫌そうな顔をする110BA。
『あっ、あー! 誰か聞こえる!? メーデーメーデーSOS!! ヤバイよヤバイよ誰か応えてよー!』
「落ち着きなさいP90、今度は何よ」
『あっリーダー! えっと、それが──』
その時。
バツンッ!! という音とともに照明が全て真っ赤に──非常灯に切り替わる。
そして、壁に設置されたスピーカーがけたたましい音量でがなりたてた。
『緊急事態発生! 緊急事態発生!!
「は?」
突然の事態に思考がフリーズする110BA。
そんな彼女を他所目に、無線機はP90の声で、申し訳なさそうに報告した。
『その……地下区画にあった赤いボタン、踏んじゃった☆』
「は?」
『……えっと、その……』
「は??」
『……そ、そのー……』
「は???」
『ご、ごめんなさーーーーいっ!!』
通信切断。と同時に、110BAのあまりの握力に耐えきれなかった無線機がバキリと音を立てて砕け散る。
416は110BAの顔を見るなり「ヒッ!?」と短い悲鳴をあげたかと思えば、そのまま泡を吹いて気絶してしまった。一体彼女は何を見たのだろうか。
110BAは416を拘束していた拘束具を引きちぎり、彼女の体を肩に担ぐと、近くに落ちていた
そして、
「……覚悟してなさい、P90」
ドスの効いたというレベルでは済まないド低音だった。
ちょうど同時刻、P90は旧司令部の外で謎の悪寒に襲われたという。彼女は無言で階段まで歩く。
階段は既に半ば以上崩れ落ちていたが、知ったこっちゃない。そんなことは私の管轄外だ、とでも言わんばかりに、そのまま階段跡を飛び降りる。
──着地。
バキャッ!! というとんでもない音と共に、110BAは何かを踏み潰したことを自覚した。
辺りを見回すと、そこにはボロボロのUMP45を担いだこれまたボロボロのMGL。
で、足元には鉄血工造の戦術人形『Aigis』に酷似した自律人形の残骸。恐らく旧司令部に備え付けられていた自衛機構だろう。……ホントに何してたんだこの司令部?
「りっ、リーダー!?」
「MGL。無事だったのね」
「アッハイ、どうにかこうにかハーモニカ。この通り生きてますのことです」
「ああ、下らないギャグしか言えないほどに損傷したのね……可哀想に」
「前代未聞のけなされ方!!」
「嘘よ。とりあえず無事なようで何よりだわ」
『「自浄」まで、残り8分』
スピーカーから声が届く。
それと同時に、旧司令部という建物全体が嫌な振動をし始めた。
……これは、まさか。
「──事情説明はあとにした方が良さそうね。急ぐわよ、MGL」
「えっ、あっはい了解!」
片方は機敏な動きで、もう片方はおぼつかない動きで旧司令部から脱出していく。
残されたのは、その場に倒れ伏す戦術人形だったもののみ──
110BA
最適化率91%。壊れているのは感情。
P90
最適化率86%。壊れているのは精神。
MGL-140
最適化率70%。壊れているのは身体。
MAG
最適化率89%。壊れているのは思想。