「あー、あー。あーあーあーあーあー」
霧深く日は遠からじ。
今の状況にこれほど似合っている言葉は中々ないだろう。こんなことわざ無いって? いいんだよ、今ボクが考えたんだから。まあ実際の所は霧じゃなくて煙なんだけど、それはさておいて。
「やっちゃった、煙幕使い切っちゃった」
今、ボクの周囲には発煙手榴弾『だったもの』が大量に転がっている……『だったもの』と表現した理由は単純、不慮の事故によって全部が誤作動してしまったからだ。懐に入り切らずにリヤカーの上に雑に積んでおいた発煙手榴弾から撃ち出すための本体がご臨終してしまったために放置されていた40mmグレネードまで、おおよそ『発煙系』にカテゴリされるものは全て吹き飛んだ。何だこの悪意ある誤爆は。どうしてこうなった。
「お陰でこっちは大損害だ。普通の発煙弾はともかく『ミラーハウス』まで誤爆するとか運が悪すぎるよ」
多分だけど、原因は流れ弾。さっきからボクは一発も撃っていない訳だけど、向こうは残弾なんぞ気にしてんじゃねぇ!! とばかりにバカスカ撃ってくるからね。何があってもリーダーとMGLには当たらないでくれって思ってたけど、二番目に当たって欲しくないやつに吸い込まれるように直撃した。
しかも、最悪なことに当たったのはよりによってグレネード。発煙手榴弾の山に突っ込んだグレネードは山の中で起爆し、すぐ近くに積んであった40mm発煙弾を巻き込んで盛大に炸裂した──結果、この始末。
見渡す限り辺り一面が真っ白で手に負えない。なんだ、ここは産業革命真っ最中のイギリスにでもなったのか。
「はい隙だらけ。背後から接近してるからって油断し過ぎ」
【!!?】
背後から忍び寄ってきた自律人形を細切れにして、ボクはもう一回テントの方へと戻って行った。この状況だと、下手に打って出るよりも保守的に行った方が効率的だ──どうせ、敵は向こうから寄ってくるわけだし。
……さて、ここからどう状況を打開しようか。
とりあえず、向こう側が自律人形を際限なく投入してきてるのはほぼ確定。さっきから倒しても倒しても一向にいなくなる気配がないしね。
MAGの方もなんかすごいのと戦ってるみたいだし。なんだあのエグい銃声。っていうか本当に『銃』なのか? アイツのマシンガンだってもうちょっと控えめな音だったぞ。
「……まあ、苦労してそうだなぁ向こうも。あと、いい加減気配の消し方を学べポンコツ」
【──!!!】
こっそりテントの中に侵入しようとしていた自律人形の首根っこを引っ掴み、四肢を切り落とす。そして、力任せに胸板に右拳を叩き込んでコアをぶち抜いた。
はっはっはー、脆い脆い。これ本当に自律人形か? ちゃんと金属装甲使ってる? どこぞのL85みたいに軽量化という名のケチりでポリマー使ったりしてない?
その時、ドドドドド……と地響きのような音がボクの耳に届いた。ボクは音のする方に顔を向けると──
「──ったばりやがれぇッッッ!!!」
「なっ、あべっしゃぁっ!!?」
──次の瞬間、ボクの頬にはMAGの構えたマシンガンの銃身がめり込んでいた。
ボクの体はボールのように吹っ飛び、地面をゴロゴロと数メートル転がってなおも止まることなく、リヤカーの車輪に顔面を強打する形でようやく停止した。痛い。
「この野郎何やらかしてくれとんじゃオラァ! 見ろこの惨状を! 見渡す限り煙幕で何も見えやしねぇ!!」
「いてて……いやそれは不慮の事故で──」
「だまらっしゃい!! 不慮の事故で済むと思ったら大間違いに決まってんだろこのアホが! どうするんだコレ!? 発煙手榴弾オール誤爆ってどうするんだこれから!? オイオイここら一体煙幕で埋め尽くされてるわ半日は歩き通さねぇとこれ脱出できねぇわ!!」
「ご、ごめん……」
「ごめんで済むなら警察もPMCも要らんわァ!! マジでどうすんだコレ煙幕の中で接敵しちまったらあたしが好き放題にマシンガン撃てねぇじゃねえかよ!!」
「てんめぇ本音はそれかーッ!?」
ぎゃいぎゃいと二人で怒鳴り合う。
その声につられてどんどん自律人形が寄ってくるけど、それは視界に入った瞬間秒でスクラップだ。その気になれば弾丸だって追い抜かせるボクの敏捷性なめんな。
……そういえば、何かとても大事なことを忘れてるような気がするけど……なんだったっけ。
まあいっか、忘れてるって事は所詮その程度の重要度だったってことでしょ。
非常に残念だがP90が忘れているのは極めて重要度と緊急度の高い案件である。
今、パチ公は荒野を全力疾走していた。
そしてその背中を、八つの頭を持つ超巨大な竜──自律人形『
【オォオオオオオオッ!!!】
『ワッファアアアアッ!!?(特別意訳:What's the Fuck!! 畜生どうしてこうなったーっ!!?)』
時折、パチ公は背中に搭載した機関銃を乱射する。が、5.56mm弾の嵐は鉄壁の装甲を貫けず、わずかに凹みを作る程度にとどまった。向こうが自分から突っ込んできている分の相対加速度を加味してもなおこの程度のダメージしか入らないとは、果たしてあの大蛇はどれほどの装甲を持っているのやら。
【サレェェエエエエエエイ……!!】
『キャン! キャイン!(特別意訳:来んなー! 来んなこの野郎ー!!)』
全長5mオーバーの巨体からはとても考えられない速度で迫りくる大蛇に、パチ公が悲鳴を上げる。
パッと見る限り、加速装置の類は一切積んでいない。レースカーでいうニトロや某身体が闘争を求めるゲームでいうVOBの類を一切用いず、純粋に這うスピードが恐ろしく速いのだ。一体どういうカラクリを使えば5.56mm弾をはじく重装甲とこれだけのスピードを両立できるのか──機動性論者で装甲などそこらの民生自律人形にすら劣っているパチ公は、内心嫉妬で臍を嚙みまくっていた。
しかし、そこは軽装甲&高機動型自律人形の底力で、『
このままその辺の谷底にでも落とせば大丈夫か──そう思った直後。
【ウォォオオオオオオ!!】
バキン! という音と共に、大蛇の頭の一つの口が限界を超えて開かれ──そこから、にゅっと一本の極太砲身が姿を覗かせた。
『ファッ!!?』
予想外の出来事に、パチ公の口(?)から不思議な声が飛び出す。それと同時に、大蛇は頭を──ひいては口から伸ばした砲身をパチ公へと突きつけ──
【ンンムゥウウオォオオオオッ!!!】
──咆哮と共に、かつて『ボフォース40mm機関砲』と呼ばれていた砲が唸りをあげた。
深層映写、始まりましたね。
予約投稿なのでこれが投稿されたときどれくらい進んでいるかはわかりませんが、まあE2-4辺りをヒイコラ言いながら回っていることでしょう。
それと、近日登場予定のSGちゃん(仮)ですが……思いのほか難航しています。
ええとですね、元ネタにする銃は決まったんですけど、キャラクターがイマイチ定まらないというか、なんというか……。
そんなわけで、もう少し登場には時間がかかりそうです。まあどのみちこの章が終わるまでは登場の予定はありませんし、多分大丈夫でしょう、はい(希望的観測)
……そろそろリク短編も書かないとなぁ