『敵の潜水艦を発見!』
『駄目だ!』
『Negative!』
『Nein!』
『Нет!』
そんな声と共に、複合装甲が私の背中を覆うようにして浮遊する。どうせなら私の背中ではなく背後の要救助者を守ってもらいたいものだが……。
「私の事はいい。それよりも、そこの戦術人形を護衛しろ」
『了解!』
『了解!』
『了解!』
『敵の装甲車を発見!』
『了か──違ぁう!!』
非常に騒がしい。
だが、一応指示には従ってくれるようだ──私の装備である浮遊装甲のうちの何枚かがMAGの周囲に留まり、ジョイント部分のライトを青く明滅させている。
……ふむ。であれば、でーあーれーばー……まずは、艦砲の首から沈めるか。流石にあの威力の弾を何度も喰らうのは避けたいところだからな。
『ンなこと言って、どうせ全部無傷で受けるつもりなんだろ? ケケケ』
当然だ。いちいち傷を負ってやる義理など何処にも無いからな。まあ、今は要救助者の兼ね合いで回避が一切できないから、その辺りが面倒と言えば面倒だが。
さて、目の前のコイツはどう料理したものか。
【キリギグィ──ァ────!!!】
金属をこすり合わせたような甲高い叫びをあげながら、重火器の照準を一斉に私へと向ける。
その内の一つ、『マウザーM1918』がいち早く発砲しようとするが──遅い。
『チィィイッス!!!』
『こんちはーっ!!』
声と共に、下あごを突き上げる勢いの一枚、そして上あごを叩き落とす勢いの一枚がそれぞれヘビの頭に直撃した。
その勢いたるやすさまじく、頑丈なはずの対戦車ライフルの銃身は中ほどであっけなく寸断され、14mm弾は口内で暴発。
ボムン!! という音と共に、鼻の穴から恐ろしい勢いで黒煙が吐き出された。コントか。
【~~~~~~~~~!!?】
「ふん、他愛なし」
目の前まで垂れ下がったきた首をひっつかみ、その口をこじ開ける。その中にショットガンの銃口をねじ込み、容赦なく引き金を引いた。
くぐもった音とともに大蛇の体内で12ゲージが散乱し、手当たり次第に内部機構を蹂躙していく。
どうやら弾薬を直撃したようで、爆発による内圧上昇に耐えきれずに頭はあっけなく木っ端微塵に四散した。破片がいくらか私の柔肌を傷つける……が、どうせ直せば直る程度の損傷でしかない。
「次」
『おっほえげつねぇ! 相変わらず情け容赦ない戦法だ! 俺達が思わず躊躇っちまうようなことも平然とやってのけるッ』
『そこに痺れる!』
『憧れはしないかな……』
声が懲りずに囃し立てる。頼むから『良識派』はもう少し自己主張してほしい──さっきから『奔放族』の声しか聞こえてこないわけだが。
脳内でそう訴えると『良識派』の声は申し訳なさそうに、
『すいません、私にはどうにも……』
諦めんなよ。
……とにかく、首は残り6本。どうやら骨格が破壊されたと思しき1本を除外するから、残りは5本だ。
ひとまず、狙いは変わらずこの中でも唯一盾で受けきれない艦砲。これをどうにかしない事には何も始まらない。
受け止めることは出来るが、正直な話いちいちキャッチするのも面倒だしとっとと潰しておきたい。
「征くぞ」
『イクゾー!!(デッデッデデデデッ)』
『……カーンが入ってないやん!?』
やかましい、いいから黙れ。
──砲撃。150mm弾が私を、ひいては要救助者を撃ち抜かんと放たれる。
私は盾に指示を飛ばし、砲弾を受け流すような形に配置させた。そしてその刹那──ギャリッッ!!
『うおぉおお怖ぇ! クッソ怖ぇ!? ちょっと削れたぞ!?』
『そう何回もできる策ではないですね……あまり回数を重ねると装甲が持ちません』
「やはり150㎜は無理がある、か」
『むしろ
声が悲鳴を上げる。やはり『彼ら』でも受けきるのは難しいらしい──であれば、やはり最優先目標は艦砲のまま、か。
まあ、不慮の事故が起きても困りものだしどのみち潰すがな。
「……いや、むしろこれはコアを貫いたほうが早いか?」
『このゴッツイ図体の中からピンポイントでコアを徹甲出来ると思うならいいんじゃねえか? 俺は出来るとは思わんが』
「奇遇だな、私は出来ると思っていたところだ」
『は?』
残弾と共にマガジンを排出する。それと同時に、新たなマガジンを叩き込んだ。
銃口を大蛇へ突きつけ、私は言う。
「12ゲージスラッグ。……
発砲。
ズドンッ!!! という轟音とともに、大蛇の胴体部分に風穴が一つ空いた。
正直どこにコアが格納されているかはさっぱり分からないが……まあ、片っ端から蓮根さながらに穴だらけにしてしまえばどこかしらから見えて来るだろう。
【───!!】
絶叫しながら、なおも向かってくる大蛇。
私はその叫びを意に介することなく、ひたすら撃って、撃って、撃って、撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃ち続けた。
「もっと……もっとだ、パーツ1つ残さない……!!」
『はいそこまでー』
「! 何を──!?」
だが、私の行動を阻むかのように盾が私の体を押さえつける。
「離せ……はっなっせっ!!」
『もうやめとけ、そいつの
「知るか……そんな事私の知ったことか!! 忌々しい鉄血のガラクタなど、破片一つ足りとてこの世界に残すわけには──!!?」
的確に盾の縁で顎を打ち抜かれる。
視界が揺らぎ、暗闇に包まれ……て…………。
「……なんだったんだ?」
あたしは困惑していた。
颯爽と現れたかと思えば、よくわからん空飛ぶ盾を使ってあっさり首を一本スクラップにして、かと思えば狂ったように銃を乱射し始める。
いや情緒不安定ってレベルじゃねーぞ。なんで自分の装備に取り押さえられてんだよ。聞いたことねぇぞそんな人形の話なんざ。
とそこで、あたしはようやくインカムに走るノイズに気がついた。
「……??」
基本的にジャミングでも受けてない限り、コイツが音を発する時は何かを受信してる時だ。ジャミングするにしても、目の前でスクラップになったヘビ野郎を見るに、些か遅すぎるんじゃねえか?
って事は……通信か。
インカムの周波数を弄る。……全然繋がんねぇ、一体全体どこの周波数で飛ばしてんだよ……。
「……っと、これでOKか?」
30分くらい調節を続けてようやく、ノイズが混ざらない帯域に辿り着けた。すっげぇなオイ、こんなイカれた帯域で通信飛ばしてるやつ見たことねぇ。
『アーアー、えーっと? ゴミムシども、聞こえてるかな?』
「喧嘩売ってんのかオイ。ハチの巣にすんぞ」
開口一番剛速球で喧嘩を売ってきた声に対して、あたしは出来る限りの笑顔で返答した。
コノヤロウ見ず知らずの相手に喧嘩を売ってくるたぁいい度胸だ。逆探してぶっ殺してやる。
『あれれーまさかビビっちゃったー? ハハハッ!!』
「ウッゼェ……」
おっと本音が。
咳ばらいをし、あたしは通信相手に言う──オラとっとと要件話せ、でないと通信ぶち切るぞ。
その要請に対して、通信相手は……
『ああ、別に取って食おうって訳じゃない。そこは安心してくれ』
「テメェの言動から安心できる要素がひとっつも出て来ねぇんだよ言わせんな恥ずかしい」
『ギャハハッ! あれーそうだっけー!?』
「やかましい」
軽薄な調子でところどころ煽りも交えつつ、そいつはあたし……いや、あたし『達』に対してこう伝えた。
『で、だ。──ヘリアントスからの依頼で、