それもこれも全部UMP外骨格って奴の仕業なんだ。
「……まあ、そんな聞いて楽しい経歴でもないからな。追々、話していくとしよう」
そういって、XTRは無線機の電源を切る。
あれだけ騒がしかった声は一瞬にして消え失せ、辺りは再び風の音のみが孤独に響く荒野へと戻った。
その中で、MAGが信じられないといった調子で呟く。
「……お前、そんな中で今の今まで生きてきたのかよ?」
「正確に言うならば、いつだったかの『先鋭計画』を過ぎてから、だな。まあ、私にも──いや、私達にも、か? 色々あったんだよ」
「色々ありすぎんだろ一体何をしたらそんな愉快な状態になれるんだ」
『ザザッ──あれれーまさかビビっちゃったー!?』
「うるっせぇあたしの無線からちょっかいかけてくんな! シバき倒すぞ!? つーか普段どんだけトンチキな帯域で話してんだテメェら!!」
叫ぶMAG。その横でP90は無線機の周波数を弄りながら、
「うわっ、メジャーな帯域は全滅かぁ。そりゃトンチキな訳だよ……」
『ザザ──本日未明、指定要注意団体「人形教団」が──ザッ──おはこんばんちは、良い子の皆~! 「みらくるふぁくとり~」のマスコット「アーちゃんうさぎ」と──ザザザザザ──ガンスミスと! M1895ナガンのー? 銃器紹介~!────』
「おいコラ何それっぽいこと言いながら民間放送に繋げようとしてやがんだ、テメェからシバいてやろうか」
「君のような勘のいい戦術人形は嫌いだよ」
無線機と向き合いながら、P90はこっそり『
そして、思い切って帯域を思い切って弄ると……
『ザザザ──Well, Hello again-ain! HAHAHA! Are you ready-dy for ROUND 2?!』
「あっ、繋がった。ホントにすごい場所だなコレ」
少しのノイズが混ざった後、クリアな音声が無線機から流れ出した。
P90が驚く──なんて変態的な帯域で話しているんだ。これじゃうっかりするとMAGの変態性まで霞んじゃいそうじゃないか」
「聞こえてんぞドチビ」
「あぁん? 喧嘩売ってんのか不良モデル」
「よしきたカメラ止めろ、コイツは此処でブチ殺す」
殴打音。
ノーガードで殴りあう二人の戦術人形(ついでにそれを無線機越しに囃し立てる大量の『声』)を務めて視界に入れないようにして、MGLとXTR-12は話し合う。
「それで、私達はどうすればいいんですか?」
「うむ。ヘリアンに話はつけてある、故にひとまずは本社へ戻ることが第一条件だ。条件だが……」
「……まあ、そう簡単には行きませんよね。経歴的な意味で」
遠い目をして言うMGL。
そう、大前提として彼女たちは『元の場所にはいられないレベルの事』をやらかしたからこそ、502小隊に在籍しているのだ。
少なくとも、
「……まあ、アレだ。いざとなったら襲ってきた奴らのアウトな情報でもばら撒けばいいのではないか?」
「人を歩く情報災害か何かだと思ってませんか? そんな事しませんよ、直接物理で潰します」
「……お前も大概壊れているな」
「何をいまさら」
自嘲気味に笑うMGL。果たして彼女は今、何を思い浮かべているのか。
丁度その時、鈍い音が彼女たちの耳に届く。音源の方を見ると、P90とMAGが互いにクロスカウンターを決めてノックアウトされていた。
「……何をやっているのだ、あの二人は」
「知りませんよそんな事……」
XTR-12が浮遊盾を使って二人を運び、リヤカーに設営されたテントの中に叩き込む。……心なしかMAGの扱いだけがやたら雑に見えたのは気のせいだろうか。
「気のせいだ。別にマシンガン持ちが気にいらないとかそういうことは決してない」
「ナチュラルに心を読まないで欲しいんですけど」
「私に言うな。声が勝手に伝えてくるんだよ鬱陶しい」
「……そっちも大変なんですね」
「全くだ」
よっ、とXTR-12がリヤカー前方に付けられた持ち手の金属パイプを掴む。
未だに資材が山積みだというのに、彼女はそれを感じさせない挙動でリヤカーを動かし始めた。
「では行くか。正直な話、私としてもあまり余裕がないのでな」
「……何かあるんですか?」
その問いに、彼女はMGLの方を向き、顔を赤らめて頬を掻きながらこう答えた。
「……いや、その、なんだ。先ほどヘリアンから連絡があってな。今日の本社の夕食はカレーらしいのだ」
──ヘリアントスは憔悴していた。
というのも、彼女の子飼い──というには些か語弊があるが、少なくなくとも指揮下にはある──である502小隊が帰還してくるのだ。
先遣として向かわせたXTR-12曰く、お世辞にも状態は良好とは言い辛いらしい。
唯一P90はほぼ無傷だが、それ以外の隊員は控えめに見積もっても中破以上の状態であるらしい。
ダネルMGL──人形義体を大きく損傷、および刻印システムによって同期された銃の喪失。それによってシステムが不安定になり、断続的に機能停止と再起動を繰り返しているという。
FN MAG──不明なハイエンドモデルとの戦闘によって右腕を喪失。一応メンタル面には全く問題はないとの事だが、いっそそっちもぶっ壊してくれた方が良かったとヘリアンは半ば本気でそう思っていた。
110BA──一見してどこも壊れてはいなかったようだが、XTR-12が独断である程度調べたところ、電脳にオーバーフローしてクラッシュした痕跡があったらしい。いや何があった。
この中で最も深刻なのは恐らくリーダーである110BAだろう、とヘリアンは考える。人形義体の被害であればいくらでも取り返しがつくが、電脳に関してはそうもいかない。そして何より、502小隊の連中はどいつもこいつも電脳のバックアップがないのだ。その出自ゆえに致し方ないことではあったが、今はその点が何よりも恨めしく思えた。
XTR-12からの報告書(正確に言えば通信内容の写し)を、親の仇か何かのように睨みつけるヘリアン。そのあまりの気迫に、彼女の部下である下級代行官たちは帰りたい気持ちでいっぱいになっていた。
その時、彼女の手に握られていた無線機が音を発する。
『とうおるるるるるるるる、とうおるるるるるるるる』
「!! どうした!?」
彼女は無線機に怒鳴りつける。
すると、通信の相手は『おおっ!?』とやや驚いた様子を見せてから、
『……ああ、誰かと思えば
「おい。今のルビに込められた悪意、感じ取ったぞ」
『むっ、それはすまない。ついうっかり本音が出てしまったか』
「喧嘩を売っているのか貴様は!?」
『いや、そういう訳ではなくてだな──』
彼女は一度咳ばらいをし、こう答えた。
『待たせたな──XTR-12、現時刻を以てオペレーション“
次章の内容とか考えないとなぁ
リクエストに関してもちゃんと消化するのでしばしお待ちを