ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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やあ。
新章『鷲影踏破』、はーじまーるよー!


鷲影踏破
Stay Around Away


「久しぶり! ええと、ヘリ…、ヘリ、ヘリ……ヘリウムだっけ?」

「ヘリアントスだ! ヘリまでしかあってない!!」

 

ガチャリ、と執務室の扉が開かれる。そうして入ってきたのは、森林迷彩を纏った金髪赤目のちみっこ。

しかし侮ることなかれ、彼女はG&K社が別に誇ってるわけではないし誇りたくもない精鋭(イカレ)小隊の一員、P90である。

彼女は502小隊のメンバーの中で唯一ほぼ無傷に近い状態の為、残る面子をメンテナンスにぶち込んでからは方々へ事情説明に回っている。

どうやらそれもひと段落したようで、彼女は執務机の脇に鎮座しているソファにちょこんとのっかった。

 

「あー疲れたぁ。なんだいなんだい寄ってたかってボクに詰め寄っちゃってさ。ここにはロリコンしかいないの?」

「それだけ興味があるんだろうさ。あの激戦区を生き延びた戦術人形に、な」

「あっそ」

「あとお前製造年月でいえばそこらの新米指揮官よりよっぽど年季入ってるだろうが」

「あっ、このっ、人があえて伏せていたことを!!」

 

ごろん、とP90はソファに寝転がる。

彼女は胡乱気な視線をあらぬ方向へ彷徨わせながら、自分の思うことを好き勝手に言い始めた。

 

「でもさぁでもさぁ、製造年月云々はさておいても元を正せばそんな激戦区で生き残る羽目になったのって全部そっちの責任じゃないの? リーダーとMGLはどうだか知らないけど、少なくともボクとMAGはそうだよ」

「それは……すまない」

「あっはっはー、別にヘリアンに怒ってるわけじゃないって」

 

そういって、P90は懐から紙の箱を取り出した。その表面にはかすれた文字で、数年前に販売されていた煙草のロゴが描いてある。

その中から煙草を一本取り出し、同じく懐から出したライターで火をつける。

 

「……いいのか?」

「リーダーも誰も見てないからね。ボクだってストレスはたまるんだよ、一本くらいいいでしょ?」

「私が見ているんだがな」

「だいじょーぶだいじょーぶ。なんだかんだ言ってヘリアンって意外と口固いし」

「見た目的にアウトだろう」

「見た目と年齢は一致しないって自分で言ったばかりだろうに」

 

ふーっと煙を吐く。

器用に白煙でリングを作りながら、彼女は何ということもなしに言った。

 

「……正直な話さ。だいぶ無理やりだけど、こっちに戻ってこれてよかったと思ってるんだ」

「何故だ? お前もアイツらも、人間に対していい思い出などないだろうに」

「シンプルに引き運がなかっただけでしょ。どいつもこいつもあんな風だったらボクはとっくに向こう側についてる。何だったら今からでも出奔しようか?」

「やめろ。マジでやめろ。これ以上何かあったら私は胃潰瘍こじらせて死ぬぞ」

「前代未聞の脅し文句やめようよ」

 

青い顔をしながら胃薬をボトルでラッパするヘリアン。そのあまりに凄絶な光景に、P90はやや引き気味な表情を浮かべていた。

一息にボトルを空けたヘリアンはバリバリと胃薬のカプセルを噛み砕きながら空き容器を近くのゴミ箱へと投げ捨て、

 

「全く、上層部の老害どもはどうにかならんのか……! 唯一社長はまともだがそれ以外がことごとく腐っている!」

「いや、ボクに言われてもなぁ。その辺りは何とも」

 

ぷかぷかと煙草の煙を吹かしながら、のんびりとP90が言う。その姿は、先ほどまで割と死ぬ気で敵を殺しまくっていた時の彼女からは想像もつかない位に落ち着いていた。というか、目が死んでる。110BAみたいになってる。

彼女は短くなった煙草を口から離し、『No Smoke No Life(煙草と発煙手榴弾が私の全てだ)』とプリントされた携帯灰皿にねじ込んだ。ジュッ、という音と共に、先端の火が消える。

 

「……また携帯灰皿買ったのか? いやそれとも手製か。とにかくそれで何個目だ」

「50個超えてから数えてなーい。別に生身と違ってフィルタ変えればそれで済むんだし、いいじゃん」

「よくない。メンテナンスの度にコールタールまみれのフィルタに触る羽目になる整備員の気持ちも少しは考えろ」

「えー」

 

口をとがらせるP90。

彼女は潰れた箱から新しく煙草を取り出そうとしていたが、しばしの逡巡の後に、結局それを吸うことなくしまい込んだ。

ごろん、とソファに寝転がり、彼女は天井を眺めながらヘリアンに問いかける。

 

「──あっ、そうだ。ボク達が遭遇したハイエンドモデルの話だけどさ」

「……奴か。今頃、ペルシカが嬉々として解析しているだろうさ」

「は?」

「私財で傭兵を雇っていたらしくてな。奴に限らず、鉄血工造の造った新型ハイエンドの情報を求めているらしい」

「えっ、なにそれ初耳」

「むしろ16Labと関わりのないお前が知っていたら私はドン引きする自信があるがな」

「MGLなら知ってたかもね」

「やめろ、アイツの情報網は私の胃壁に効く」

「分かったから自分の胃を人質にとるのやめよう?」

「──よーっす、戻ったぞ」

 

ガチャリ、と扉が開かれる。

入ってきたのは、親の顔より見たマシンガンキチのMAG。ソフトウェアへのダメージも特になく、義体の損傷に関しても腕を一本つけ直すだけで済んだため、比較的早くに戻ってこれたようだ。

彼女は手に持った無線機の帯域を弄り回しながら、

 

「ったくよお、ここには人間以下のサルしかいねぇのか? どいつもこいつも口を開けば『解析させろ』『貴様などスクラップがお似合いだ』『解体が嫌なら私に従え』……なんだ、これ以上あたしにキル数増やさせる気か? あたしが手ずからぶっ殺すのはあのクソ豚だけで十分だってーの」

「……殺してないよね?」

「安心しな、P90──」

 

P90の問いに、MAGは親指を立てて腹立たしいくらいに眩い笑顔で言い切った。

 

「──人間には骨が215本もあるって話だし、一本くらいなんてこたぁねぇだろ?」

「大ありだよ!!」

「安心しな、峰打ちだからヒビまでしか入れてねぇよ」

「それでも場所によっては十分すぎるくらい致命傷なんだよなぁ!?」

 

思わず叫ぶ。コイツ一体何をやらかしやがった。

その後、血相を変えて飛び込んできたスタッフの報告に、ヘリアンは早くも薬である程度カバーしたはずの胃にキリキリとした痛みを覚え始めていた。その脇で、P90もソファに座り込んだままなんとも言えない表情を浮かべている。

──おお神よ、出来ることならコイツの体だけではなく頭にも鉄槌を下して欲しかった。




無駄に間を空けちゃったせいでしばらく投稿速度低いけどそこはごめんね!
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