アークナイツが楽しいしSSまで書いてたけどちゃうねん。
ちょっと先の展開に詰まっただけやねん。
本当に申し訳ない(The Metalman)
バタバタバタ、とローターが空を裂く轟音が辺りに響き渡る。
気が付くと、私は輸送ヘリと思しき機体の中で立ち尽くしていた。
「──おーいー? 大丈夫? 起きてる? 寝てたらグーで殴るよ?」
そして、私の目の前では片手に携帯端末を持った少女が、わざと私の視界に入るように目前でパタパタと手を振っている。
私はそれを払いのけながら、
「ええ、起きてるけれど──へぶっ!?」
言った矢先にパーで頬を引っぱたかれた。視界が勢いよく90度右に回転し、それに釣られて姿勢も座っていた状態から大きく崩れる。
私は姿勢を戻し、ジト目で目の前の下手人に向けて抗議した。
「……痛いのだけれど?」
「グーでは殴ってないさ。嘘は言ってない」
ふんす、という擬音が聞こえてきそうなくらいに堂々としたその立ち姿。
自分はいい事をしたと言わんばかりのその姿勢に、私は半眼のまま呟く。
「全く、あんまり人の事をからかってると天罰が下るわよ──
言って、気付く。
MDR。私は確かにそう言った。だが、私は彼女に見覚えなどない。これまでも、そして恐らくこれからも。
……であれば、私は何故彼女の名前を言い当てた?
──ザザッ、と頭痛と共に視界にノイズが走る。
ノイズの走る視界の中で、私は開かれた後部ハッチからテイルローターを眺めていた。
『オラーッ! 空挺降下!!』
ハッチの縁に手をかけ、威勢よくブランクが飛び降りていく。
次の瞬間には銃を構え、下方にいると思われる何がしかへ向けて射撃を開始していた。
……今度は一体何ごとだ。そんな私の疑問とは裏腹に、『私』は手に持った相棒の様子を確かめる。そして、顔をあげずにこう口にした。
『──準備はいいわね?』
『まっかせて!』
その問いかけに、サブマシンガンを両手に持った少女が威勢良く返事を返す。あれは……おそらくだがスコーピオン、だろうか?
そして、『私』は立ち上がり、先ほどダイビングしていったブランクと同じようにハッチの方へと歩みを進めた。
眼下に広がるのは広大な大地。
そして、その大地を一面埋め尽くさんばかりに集う、暴力的なまでの人の群れ。
今の世界情勢からは想像もつかない光景に唖然とする私をよそに、『私』は淡々と呟く。
『世界がこんな有様になっても、人間は争うことを止めないのね。……血は争えない、というヤツかしら』
『まあ、絶賛戦争中だけどね。にっひひ、「第3.5次世界大戦、ここに開幕」!』
今となってはアンティークにも等しい二つ折り型の携帯電話を片手に、MDRはその光景を面白半分でネットへとアップロードする。
『私』はそれを片手で制して、
『軽口はそこまで。さあ、仕事の時間よ』
そう言ったかと思うと、勢いよく大空へと躍り出た。
「GM6だと……! 人形風情がなぜ我々の会談に口をはさむ!?」
その言葉を聞いた声の主の一人──中年の男が、憤懣やるかたなしといった様子で叫んだ。
しかしその発言に対し、リンクスは「チッチッチッ、分かってねぇなぁ」と舌打ちしながら指を振る。
「おーっと、その論は今のオレには通じないぜ? なんせまあこっちも事情が事情でな」
「何を言っている……!?」
そう言って、彼女は胸元から一枚のIDカードを取り出した。
「んじゃ、こっちの顔では初めましてだな? という訳でどうも、
「裏技術開発……馬鹿な、よもや貴様は!!」
「おうさ、IOPの裏側『EN-17』サマのお通りだぜ? おらひれ伏せ愚民ども、崩壊液の実験体にすんぞ」
EN-17/17Lab。
IOP社において16Labと並ぶ大型技術開発部門であり、なおかつ16Labなどの表沙汰になっている部門では到底できない後ろ暗い研究を行っている開発局だ。その研究同様に組織自体もかなりの深度まで秘匿されていたが、彼ら重役たちはそのポジション故に辛うじて存在だけは知っていた。
そんなIOPの中でもほとんど表沙汰に出ることの無い大御所の突然の登場に、先ほどまで罵りあいを続けていた重役たちの顔がサッと青ざめる。
そんな中で、重役の中でも比較的新入りである一人が果敢に吼えた。
「貴様……裏の所属が、一体我らに何の用だ!」
「いや、大体想像ついてんだろ? あのクソ野郎……改めクソ尼……もといウチのトップがあの連中にいたくご執心でな──これ以上ちょっかい出すってんならオレとしてもテメェらを黙らせるしかねぇってこった」
「何を……」
「ほら、例えばそこのハゲチビ──デブは足さなくていいか──あー、とにかくそこのオッサン。こんな話があるんだが知ってっか? 資金横領、公文書偽造、人形に対するわいせつ行為……おいおいこれは良くないぜ、テメェもそう思うだろ?」
「ま、まさか……何故貴様がそれを知っている!! 証拠は全て握りつぶしておいたはずだ!!」
ペラペラと手に持っていた紙束をめくりながら、彼女が知っているはずのない事柄を列挙する。
その内容を聞いて、ハゲチビ……もとい、重役の一人は激しく狼狽し始めた。ということは、つまり。
リンクスは笑顔を浮かべて、
「はい自供頂きましたー。いやぁ、書類だけだと逃げられる可能性が無きにしも非ずだかんな、勝手に自爆してくれて何よりだせ。ハハッ、ウケる」
「きっ、貴様ぁ……人形風情が私を謀ったか!?」
「いんやぁ別にンなことはしてねぇよ? オレはただ実際にあった不正のケースを読み上げただけ。で、アンタはそれに勝手に反応居て自爆した。ドゥー・ユー・アンダスターン?」
「ぐっ、ぐぐぐ……!!!」
煽るような表情と口調でリンクスが言う。
「ま、とっくの昔にアンタらの裏なんざこれ以上叩いても埃も何も出やしねぇレベルまで探り切ってあるし、正直な話言質ももういらねえんだよな。あの鹿野郎勝手に人の事猫の子かなんかみたいに貸し出しやがって、この仕事終わったら絶対一発ぶん殴るからな……」
「な、何を言って──」
「ん? ああいや、テメェらが気にするような事じゃあねぇ、ただの独り言だ。それでだが──まあ、なんだ」
パチン、とリンクスが指を鳴らす。
それと同時、バンッ! と暗闇に包まれていた部屋が照明の眩い光によって照らし出された。
突然の閃光に、空いた扉から差し込む光があったとはいえ目が暗闇に慣れ切っていた重役たちは一様に目を細め、腕で目元を覆って影を作るなどの措置をとる。
その直後、ガッシャァン!! と甲高い音を立てて窓ガラスが勢いよく砕け散り、外からの光を遮断していた分厚いカーテンを巻き込み引きちぎりながら何者かが部屋へと侵入する。
「強盗の時間だオラァ!! 金は要らねぇその薄汚い命だけ置いてけ豚共ォ!!」
「お前らは完全に包囲……はされてないけどまあいいや! 両腕を頭の後ろに置いて地面に伏せろ! 今すぐに!!」
「クヒヒハハハ! あらま残念悲しき事案、情報戦はワタシの勝利! 絢爛豪華に剣林弾雨、残虐無道な悪逆非道! 進め集まれ捻れて歪め、銀の弾丸祈って沈め!」
「心臓を捧げよ。貴様らに出来ることはただ一つ、その命を以て未来の人類にとっての希望の旗となることだ」
『コロセ』
『やめろー! 俺を撃つなー!』
『俺は味方だー!(大本営発表)』
『シュリュウダンヲナゲロ』
『手榴弾だー!!』
「シリアスな時くらい黙るかまともに話すか出来んのか貴様ら!?」
そんな光景を滑稽な喜劇を見るような目で眺めていたリンクスは、相も変わらず挑発的な笑みを湛えながらこういった。
「──じゃあ、手っ取り早く死んでくれ?」