ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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公式ツイッター斜め読みしまくってるせいで今回のイベントがステージ時限開放ってこと気付かなかった。


Dio santissimo misericordia de mi 5

──気が付くと、視界はクリアになっていた。

私はその光景を思い出しながら顔に手を当てて天を仰ぎ、思わず叫ぶ。

 

「……いや随分と良いところで切れたわね!?」

 

「何がいいところなんだい?」と興味津々で聞いてくるMDRを誤魔化しつつ、私は必死に頭を回す。

何せ今回のフラッシュバックは目的に関する説明が全くなされていなかった──降下して、あの群衆に何をするのか。あるいは、あの群衆()何かをするのか……そこから考える必要が出てくる。

 

(……さっき見た限りでは地上に施設のようなものは確認できなかった。ということは地下施設? いや、だとすればあそこまでの大人数で侵攻するのはどう考えてもおかしい、あの1/10でも十分事足りる。だったら……)

 

「……地平線の向こうに『何か』ある……?」

『気付いたか?』

「背後から話しかけるのやめてくれないかしらブランク。っていうか私座ってるはずよね? 後ろって何処?」

『ここだここ』

 

コンコン、と硬質な音が耳に届く。

後ろを向くと、機体側面のガラスに外からべったりと顔を張り付けたブランクがいた。

ぶふっ!? と思わず吹きだす私を尻目に、ブランクはぬるりとした動きで機体後部のハッチから機内へと入り込む。どう考えても常軌を逸した光景だが、しかし私と同乗している彼女たちにそれを気にした様子は見られない。

気ままにケータイを弄り回すMDRを肘で軽く小突きながら、ブランクは言う。

 

『あくまでもこいつらはお前の記憶内の存在だからな。それ以上のことは出来ないし、その枠から外れた事象にはほとんど対処できない。この場合、俺のさっきのムーブは「なかったこと」として認識されてるっつー訳だな。最初から』

「いや、ばっちり見えてるけど? なに今の動き、思わず写真撮ってアップロードしちゃったよ」

 

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

 

「ブランク?」

『……~♪』

「おい。口笛を吹いて目を逸らすな。こっちを向け」

『やだよお前絶対今怖い顔してるだろ! つーかなんだよMDRテメェ俺が単独でここに来たときはうんともすんとも言わなかったじゃねぇかよこの野郎!』

「いや、今回はそこに本人いるし」

『もしかしなくともテメェも俺と同じクチだな!? だったらカカシやってねぇで仕事手伝え──って待って! 待ってください110BAさんちゃうんすよ! いやちゃうんすよほんま!!』

「何が違うのよほら」

『ちゃうっちゃちゃちゃうんすよ!! ちょちょっ、ちょっと待って下さい! 待って! 助けて! 待って下さい! お願いします!』

「却下よ」

『アッー!!』

 

そして始まるヘリの機内でどったんばったん大騒ぎ。

過程の説明は省くが、結果だけ言えばブランクの残機はいくつか減り、機内は軽くスプラッタの様相を呈している。

MDRはドン引きしながら惨状へとカメラを向け、

 

「うわぁこりゃ酷い……。『【悲報】死なない系指揮官の恐怖!【王たちに玉座無し】』っと、送信!」

『誰が火のない灰だコラお前』

「……っていうか、ここネット通るのかしら?」

「通るよ? 外の世界の自分を中継器にしてるからね!」

 

なんと。

MDR曰く、私の記憶にいる戦術人形は総じて『現実世界に存在する自身と同系の義体』を踏み台にすることで、ネットを使って外界の知識を得ているのだという。なんだその謎テクは。

どこか寂しそうにしながら彼女は続ける。

 

「まあ、どうやっても『この私』はここで頭打ちだけどね。それでもさ、気になるじゃん? 『未来の私』がちゃんとやってるか。やらかしてないか」

「……仮にやらかしてたら?」

「その時はちょっと義体の制御乗っ取るかもだけど気にしないでね!」

「逆に聞くけど気にしない馬鹿がいると思う?」

『お前らタイムリミットについて考慮してるか? ん?』

 

ブランクが腕時計を示すようなジェスチャーをする。それ以前にあったのか、制限時間。

 

『とりあえず面倒だし今回の概要は降りながら話す! オラ行けテメェら、空挺降下!!』

 

私が反応するよりも早く、ブランクは私とMDRをもろともにハッチから投げ落とした。

重力の糸が私達を引きずり下ろし、風切り音がせわしなく耳元で騒ぎ立てる。

私とMDRが空中でもつれ合いながらバランス取りに四苦八苦していると、その横からスッとブランクが降りてきて叫んだ。

 

『もう先に言っちまうが今回のテーマは「()()()()」!! 下にある人の海が見えるな、鎮圧と銘打って入るが実質的には鏖殺だ! まあ暴動っつっても正確に言えば民兵の集まりだからな、「敵兵」である以上は遠慮はいらねぇ! 手当たり次第にぶっ殺しちまえ!!』

「後で覚悟しときなさいよ絶対にぶち殺してあげるから……ッ!!」

『ハッハーッもう死んでるから怖くも何ともねぇなぁ!! おら行くぞテメェら、我接敵セリ我接敵セリ、各員一層ノ奮起ヲ期待スル!!!』

 

そのまま、私達三人は暴力的な人の波へと突っ込んでいった。

 

■ ■ ■

 

「さて、粛清はこんなもんでいいか?」

 

頬に飛んだ返り血を拭いながら、リンクスはそう嘯く。

会議室は惨憺たる有様だ──壁も床も天井も穴だらけ。あちこちに血しぶきと肉片が飛び散り、贅の限りを尽くしたであろう調度品は見る影もない。

 

「ひっ、ひっ、ひぃいいい……」

 

そんな中で、情けない声をあげながらへたり込む髭面禿げ頭の中年が一人。言わずもがな、リンクスの采配で『生かされた』生贄だ。

そんな彼におもむろに歩み寄ると、リンクスはその手にサブマシンガンを一丁握らせた。

 

「──さて。アンタは錯乱して銃を乱射、同僚を撃ち殺した。んで、オレ達がたまたまその光景を目撃し、これを鎮圧した。だよな?」

「ひぃ、なん、何を……」

「安心しな大統領。後始末する連中は一流だ──持ってた銃と残された弾痕の口径が一致しないなんざ、()()()()()()()()()()()?」

 

その言葉に、ただでさえ青かった男の顔が紙のように白くなった。

不規則に浅い呼吸を繰り返す男を眺めながら、麗人はあくどい笑みを浮かべる。

その背後から、MAGが声をかけた。

 

「……で、仕事はこれで終わりか?」

「応さ。これで処理は完了だ、あとは勝手に自浄するさ」

「あっそう。なんでもいいけどボク疲れたよ……MGL胸貸して。その無駄にデカい胸」

「言い方!! 私の胸に何か恨みでも!?」

「……まあ、その、なんだ。気にするなよP90」

「気にするわッ!! どいつもこいつもなんだその胸部装甲は! 見せつけてんのか、ボクに対する当てつけか!? ボクだってこんなボディに押し込まれる前はもう、その、アレだ、すごかったんだからな!!」

『ほーん』

『で、本当のところは?』

「すいません今までもこれからもつるぺったんです──何言わせてんだぶっ殺すぞ!!!

『wwwww』

『貧乳はステータスだからね、仕方ないね』

『希少価値は?』

『(なくは)ないです』

『草』

『草』

『草ァ!!』

 

思い思いの事を話しながら、彼女たちはその部屋を後にしていく。

しかしMAGだけが退出する前に立ち止まり、男の方を振り返って告げた。

 

「じゃあな、名前も知らねぇ誰かさんよ。テメェらは何もかもここで終わり、どん詰まりだ。だが、あたしらは前を見るぜ」

 

言うだけ言って、MAGもまたその場を後にした。

最後には呆然とした表情を浮かべる男だけが残され……しかし、彼もまた半日と経たずにその消息を絶った。

その後の彼の行方は杳として知れず。

こうして、G&Kは人知れず改革を成し遂げた。

 

 

 

さて、その表に出ない立役者たる彼女たちはというと……。

 

「んでさ、結局『アイツ』ってな誰の事なんだ? あたしは知らんが、お前なら知ってんだろ化け猫」

「ああ? ああ、アイツの事なら誰よりも知ってるぜ。あと誰が化け猫だはっ倒すぞ」

 

MAGからの蔑称(?)に地味に殺気立ちながらも、リンクスはその正体について口を開こうとする。

その時、P90が何かを感じ取った。

 

「……?」

「どうしました?」

「いや、なんか聞こえたような……?」

「私には何も聞こえんがな。おい、そっちはどうだ」

『いや、聞こえるっつーか、これは……』

「? なんだ、分かっているならとっとと話せ」

『いやあこれは、僕らが言わなくともすぐわかるのでは?』

 

XTRが無数に従える『声』が困ったようにぼやく、

その言葉通り、答えはすぐさまやってきた。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」

「……ん? 今なんか聞こえたぞ。あたしも」

「あー。なんか嫌な予感するぞオレ」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」

「また聞こえた!」

「これ、もしかしなくても近づいて来てますよね……?」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」

「ヤベェマジで来やがったアイツ!? こんな場所に居られるか、オレは部屋にこもr──」

 

そして、次の瞬間。

 

「おぉぉおおおおおおおおおおおおおいッッッ!!!!」

「うおぉ想定の数倍速度が高っ、ごふぇあっ!!!?」

「なっ、なんだぁ!?」

 

白い影が視界を猛スピードで通り過ぎたかと思うと、リンクスがとんでもない勢いで吹っ飛ばされた。

その勢いのままゴロゴロと転がっていき、しばらくするとその回転がぴたりと止まる。

そこで、ようやくMAG達は気付いた──白い麗人がリンクスに馬乗りになっている!?

麗人はリンクスの襟首をつかんでがっくんがっくん揺さぶりながら、興奮した状態で何やらまくしたてる。

 

「はっは! 来てやったぞぅ我が愛しの最高傑作(リンクス)! どうだ見るがいい、私もこの通り性別とついでに種族の壁を超越せしめた!」

「ぐえっ、テメェその話何回目だと思ってやがる! もう聞き飽きた──とか言いながら服に手を伸ばすんじゃねぇぶっ殺すぞクソ野郎!!」

「あふんっ」

 

そして、その白い麗人の顔面にリンクスの右拳が突き刺さる。

おいおい、と顔を見合わせるMAG達を他所に彼女は吹っ飛ばされながらも空中で姿勢制御し、何事もなかったかのように着地した。

そのまま、何事もなかったかのように話を続ける。

 

「ははは! いつも君の挨拶は過激だなリンクス! 惚れるぜっ!」

「騒がしいですぶっ殺してあげましょうかクソ所長殿。それで、結局今回は何の用があってわざわざお越しになってくれやがったんですかこのクソ野郎」

「うーんこの敬語と見せかけた罵倒の嵐! あの頃と何も変わっていない! 懐かしい快感だ!!」

「オイマジで誰だコイツこっちによこしてきたの!! エリアンサスは一体何やってやがった!!」

 

その時、俺の名前はエリアスだ──と悲痛な叫びが聞こえたような気がしたが、別に知った事ではないしあんなあからさまな不審者とかかわりあいたくもないのでMAG達はその幻聴を黙殺した。

だが、現実は非常である。ぐるん!! と麗人はこちらの方を向き、胡散臭さ前回の笑顔を浮かべながら挨拶してきた。

 

「──さて。それで、君たちが502小隊だね? 私はAR-57……改め、EN-17現所長アリアンロッド・アレサだ。君たちの噂はかねがね聞いているよ」

「オイオイどうするよP90、アイツがヤベー奴だってこと以外まるっきり理解が及べねぇよあたし」

「奇遇だね、ボクも全く一緒だよ。さてどうする? 逃げる?」

「それが良いのでは? 潜在的な脅威度で言えば、恐らくあの人がぶっちぎりでトップですよ現状」

「はははは! おやおやこちらも好印象を抱いてくれているようで何よりだ!!」

「「「いやウッソだろお前!!!?」」」

「ああ……こういう手合いか……」

 

衝撃の発言に驚愕する3人を他所に、XTRが額に手を当てて嘆く。

まあまあ酷い発言をしているというのに、これで第一印象がいい方とは。ワーストは一体どうなっているのだ──と彼女たちは戦慄した。

それを見てふふん、と何故か得意げにしている麗人──アリアンロッドの背後で、リンクスが立ち上がりながらひとりごちる。

 

「……あー、来ちまったモンは仕方ねぇ。どっかその辺の部屋がいるな、コイツは……」

 

ふらふらと微妙におぼつかない足取りで歩いていくリンクス。それを横目でチラリと確認してから、アリアンロッドは胸を張ってMAG達へと手を差し伸べた。

そして、口を開く。

 

「では、ある話をしよう。これは、君たちにとっては明日の出来事だが──私にとっては、残念ながら昨日の出来事だ」




現実世界は新たなる局面へ。
されど幻日世界は歪に捻じれ、記憶という名の深淵へと沈み込んでいく。

さあさ、これよりお立合い。
彼女が沈むが先か、彼女たちが引き上げるが先か──これは素晴らしい見物でしょう?

まあ──これもまた、一線の価値にもならない戯言だけれど。所詮私は『影法師(ミラージュ)』、騙る言葉も語るに落ちる」
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