「どうするのよどうするのよどうするのよ!? このままだと私確実に死ぬわよ!? おい! こっち見ろブランク!!!」
『いでででやめろ巻き付くな首を極めようとするないででででで!? 分かった話す! 今死に際で画期的なアイデアが考え付いたからその手を放せこの野郎!』
「こうなったら死なばもろとも……!!」
『お前昔と言ってること変わってねぇな!? なんかあの時も似たようなこと言われた記憶あるぞ!!』
何やらブランクが叫んでいるが、私としては普通にそれどころではない。負傷には慣れ切っているが、高所からの無策での落下となるとどうしても恐怖が勝る。やることなすこと派手過ぎて心がないんじゃないかと方々で噂されているかもしれない私ではあるが、それでも恐怖を恐怖として受け止める感受性くらいはあるのだ。
そして、ブランクはたまたま近くまで接近してきていたMDRのバックパックの縁を掴み、そのままグイッとこちらに引き寄せた。
『ったく、オラMDR! こっち見ろ! っつーかこっち来い! 話がある!』
「え、なに? よく聞こえなーい」
『聞こえんだろ都合よくミュートすんなオラ!! 至近距離だぞテメェ!!』
「はいは~い。で、何さ?」
『聞こえてんじゃねぇかはっ倒すぞ! 我等が110BAサマがパラシュートつけ忘れたんだってよ! だから手ェ貸せ!』
「はーいよっと……」
そして、二人は両手を繋いで円陣を組み、その輪の中に私が入るような格好となった。
現在高度は推定1000m弱。どんどん落ちていく──このままではあと5分と経たずに地面に叩きつけられるだろう。
私が二人の方に伊を寄せると、ブランクが叫んだ。
『行くぞオラ! 1、2の──』
「──さんっ!!」
バシュッ! という音と共に、二人の背負っていたバックパックが弾け、そこから布の塊が飛び出してきた。
それらは上方へと投げ出されたかと思うと風にあおられて広がり、ちょうど∞を描くように展開する。それに伴ってかかった強烈なGに顔をしかめるが、それでも落下速度は少しづつ下がっていっていた。
その様子を見ながら、ブランクは続ける。
『よっし、ぶっつけ本番だがうまくいった! 無風なのが幸いしたぜ! こんな真似は二度としたくねぇ!!』
「どーかん! さって、構えて110BA! 下から対空飛んでくるよ! パラシュート頑丈だから多少被弾して穴空いても大丈夫だけど、破れたりしたら一巻の終わりだかんね!」
「任せなさい!」
下へ向けて銃を構え直し、再び精度度外視の乱射を始める。しかし、それでもライフルである以上連射速度には限界があるため、私は即座に見切りをつけた。
「ちょっと借りるわよ!」
『あっ、テメェおい!?』
ブランクの持っていた光学銃を奪い取り、下へ向けて撃ち始める。システムに登録された正規の兵装ではないためエラーが走るが、封殺して射撃を続行する。
流石のアサルトライフルであり、引き金を引いているだけで段違いの射撃速度で連射が出来る。光の玉が幾重にも重なって飛んでいき、着弾するや否や周りを巻き込みながら拡散・崩壊していく様は一層幻想的にも見えてくる。
その時、MDRが上を見て叫んだ。
「──! 来たよ!」
『ようやくかアイツら!! 重役出勤とは良いご身分だ!』
その言葉が耳に届いた直後、こんどはとんでもない轟音が連続して耳朶を打った。
何事かと上を見ると、パラシュートに隠れて視認しづらいが上空を航空機らしきものが飛んでいる。
「航空機!? こんなご時世にどうして!?」
『ハッ、ビビんなよ! 安心と信頼の太鼓判付、
『ザザッ──空挺降下中の分隊員へ告ぐ! こちらサンダーボルト、現時刻を以て援護爆撃を開始する! 巻き込まれて死んでくれるなよ!』
『誰に言ってやがる! そっちもうっかり墜落なんざしてくれんな、ドッグタグ探すの骨が折れるからな!』
そんな軽口の応酬をした直後。
先ほどまでとはケタ違い、それこそこれが新開発の兵器ですと言われても驚かないレベルの音の奔流が私達に襲い掛かり──次の瞬間には、人の洪水の実に半分近くが消し飛んでいた。
その様子を呆然と見ながら、私はつぶやく。
「……これ、私達来る必要あったのかしら?」
『シッ! 言うな! 言っとくけど俺らにも仕事あるんだからな!!』
「さて、お集まりの紳士淑女……でもなさそうだな、君たちは」
「ぶっ飛ばすぞ? ん?」
「おお怖い怖い──コホン、ではお集まりの皆様!」
これより──『講座』を始めよう! さあ、紙とペンを!
アリアンロッドが高らかにそう宣言し、それは幕を開けた。
「よし、入りはばっちりだな。ははは、ではまず最初の講義だ!」
諸君。
人類の生命の根幹、すなわち『魂』とは何ぞや?
アリアンロッドがそう問いかける。
その問いかけに対し、まず最初に答えたのはXTRだった。
「……魂とは即ち、肉体とは別に精神的実体として存在すると考えられるものだ。肉体から離れることも、死後も存続することも可能であり、肉体とは別にそれだけで一つの実体をもつとされる存在。分かりやすく言うなら、肉体はディスクドライブで魂は中身が書き込まれたブルーレイディスクのようなものだ」
「
であれば! と、かつて人間だった麗人は続ける。
「未だ目覚めぬ眠り姫、その『魂』は何処にあるべきか! これが一番の謎ということだ!」
「通常の戦術人形を基準とすれば、考えられるのは義体内部かバックアップサーバーですが……」
MGLが呟きながら、P90の方を見る。
その視線に気付いた彼女は、自分の胸、
「──ボク達にはバックアップがない。つまり、おのずと選択肢は一つに絞られるわけか」
「そう! よく気付いたおチビちゃん!」
「うん、はっ倒すよ?」
「はっは! 私には幼女に虐げられて悦ぶ趣味はない……と思いたいので遠慮しておくとしよう!」
「願望かよ……」
「コイツぁ手遅れだな。死んでも直らなさそうだ」
「お前も人の事言えないからな!?」
訳知り顔でうなずくMAGにP90が苦言を呈する。しかしコイツの趣味もまた恐らく死んでも直らない類のものなので、残念ながら徒労に終わりそうだ。
アリアンロッドが話を戻す。
「君たち502小隊の戦術人形たちにはバックアップデータが存在せず、それ専用のサーバーと同期しても居ない。つまり、魂はコアの中にあるしかないということ。そう、ならば!」
「もったいぶってねぇで続けろよ変態。オレこの後ペルシカんトコにツラ出さなきゃなんねぇんだからよ」
「だったらなんで君はここで呑気に話を聞いているんだいリンクス!?」
「そりゃお前なんか変なことしねぇように監視してんだよ感謝しやがれ」
「しかも押しつけがましい!」
椅子に座ってふんぞり返るリンクスの発言にアリアンロッドが目を剥く。
しかしづ屋良これもまた初めての事ではないようで、彼女はそれを意識から外して話を戻す。
「はあ、では話を続けよう。聞くところによると、彼女はシステムがクラッシュして昏睡している、というわけだな?」
「ああ、それは間違いないはずだ」
「であれば、答えは単純だ」
そう言って、かつてペルシカやリコリスにも劣らないと言われた稀代の天才は言った。
「今の戦術人形がクラッシュしてもバックアップをサーバーからとってくるからな、こんな事態に発展することはそうそうないのだがね。まあ、昔アイツが持ってきた試験段階の戦術人形ではよくある現象だった」
「よくあったのか、こんなことが」
「そうだとも、マシンガンの申し子よ! あの時3人で首をひねりながら原因を考えていたのが昨日のように思い出せる!」
「分かった分かった! テメェの過去なんざ今はどうでもいいんだ、とっとと結論言え結論を!」
「ははは! では続けよう! 何、初歩的な話だ! この手の機械は何かしらの要因でシステムがクラッシュした時、必ずそれに関するデータを出力する! これがクラッシュレポートというヤツだ! であれば、それを出力してどうするというのか! 実に、実に簡単なことだとも!」
「つまり──これは死ではなく復活の予兆、デバッグモードというわけだな! はっは!!」
このシリーズ書き終わったあたりでドルフロ二次から手を引きたいんですが書き友に跡継ぎ見つけるまで撤退は許されないって言われたので絶賛跡継ぎ募集中です
今なら私が考えたけどお蔵入りしたオリ人形のデータを授けるよ