にじさんじにハマってたりアークナイツにはまってたり別シリーズ書いてたりと散々アレでしたが続きできました。
爆撃機の編隊が通り過ぎたあと。
人の海に覆い尽くされていた大地には、綺麗な空白の線が何本も走っていた。
踏むもののいなくなった地面は投下された爆弾の威力を物語るかのように赤熱し、蜃気楼を棚引かせている。
その光景を絶句しながら眺めつつ、私たちは地面へと着地した。
『――っと、着地成功か』
「パラシュートはもう捨てていいよねこれー?」
「別に畳んで持って帰ってもいいとは思うけれど、何に使うの?」
「ハンモック」
「牧歌的が過ぎる。ああブランク、これ返すわ」
『おぅサンキュ。んじゃ、無事に着地も出来たことだし第二フェイズ開始だ。さっさと行くぞ』
私が銃を返すと、ブランクはそう言って先に進み始めた。
その後ろに追従しつつ、私は問いかける。
「……それで、結局今回の作戦とやらの目的はなんなの?」
『おっ、よくぞ聞いてくれた』
ブランクは「よくやった」とでもいいだけな無駄に腹立たしい表情を浮かべ、自信満々にこう言い放つ。
『それなんだがな、正直な話俺にも分からん』
「おらっ!」
『イデュバッ!?』
もう何度目か分からない鉄拳がブランクの顔を穿ち、不思議な悲鳴をあげながらそこそこガタイがいいその体が棒きれのように吹っ飛ぶ。
その様子をMDRが半笑いで写真に収め、
「あはー、良いネタゲット! 『自分の事をメタルマンだと思い込んだ一般兵士』、送信!」
『しまいにゃはっ倒すぞMDR……』
「その前に私がお前をはっ倒すわよブランク。もう一度聞くわ、今回の目的は?」
『それはな、俺にも――』
「二度目は笑いを超えるわよ?」
『真面目に話しますゴメンナサイ!!!』
一瞬で土下座の姿勢に入るブランク。無駄に見事な身のこなしだった。
で、彼が言うにはこの大移動の陰に隠れて凶悪テロリストとやらが密入国をかまそうとしているらしい。
その時点で中々豪胆なことだが、なんとテロリストどころかその居城(移動式)までもがこの軍勢に紛れこんでいるんだとか。何をどうしたらそんな荒業が出来るのかと聞いてみれば、どうやら地下を通らせているとのこと。その為、旧式の移動型居住ユニットが地下の廃坑道を辺りにガチョンガチョンと騒音を撒き散らしながら進んでいるというシュールな光景が広がっているらしい。
「まあでも、考えたわね。これほどの人の海だったら、騒音も振動もさほど目立たない筈よ」
『代わりに熱源探知でばっちり割れた訳だけどな。いくら表層が熱源反応で埋め尽くされてるとはいえ何の対策もせずに堂々と動いてたらそりゃバレるっつの』
「笑えるよね~」
事態としてはあまり笑えるような状況でもないのだが、まあ確かに笑ってしまいそうなほど間抜けな方法で事情が露見してしまっているのは確かだ。
『さって、じゃあどう動く』
その問いかけに、私は懐からあるものを取り出しながら端的にこう答えた。
「決まっているでしょう。たかが旧式のユニット、正面からぶっ潰すわよ。なぜかは知らないけれどちょうど手元にイイモノがあることだし」
それは、いわゆるセムテックスと呼ばれる類のプラスチック爆薬。それを義体の出力任せに地面へとねじ込み、信管を差し込む。
距離をとりながら、私は懐から起爆装置を取り出した。
そこまでやってようやく私の意図を理解したようで、MDRが慌てて距離をとった。ブランクは信じられないものを見るような、しかし
『おい……おい。まさかとは思うがお前まさか――』
「――Fire in the hole!!」
――起動。
同時、轟音と共に大地が爆ぜた。その下には、予想通りぽっかりと空洞が広がっている。
ただ予想外だったのは、炸薬の量を誤ったのと想像以上に地盤が脆かった点だった。
ビキビキと不穏な音が私の足元から響く。しまったと思ったときにはすでに遅く、崩落する地面に巻き込まれながら私は呟く。
「……しまった」
『そんな軽いノリで済むような話かーッ!!!???』
「デバッグモードだぁ? ンなモン搭載してたか戦術人形」
その言葉を聞いて、MAGが首をひねる。
それは他の面々も概ね同意見の様で、各々が首を傾げたり考え込むようなそぶりを見せたりしている。
アリアンロッドはその様子を眺めながら、
「まあ基本的に使用を前提とした運用はされていないだろうし、知らなくとも無理はない。それに、基本的にメンタルモデルに何かあったらクラッシュレポートだけ抽出してあとはバックアップからデータを復元してハイおしまい、が常だからな」
「いくらなんでも対処が雑過ぎない? それでいいのかIOP」
「技術の進歩に比例してメンタルモデルに直接影響を与える事例もあまり見なくなったから知らなくとも無理はない。というかうっかりするとペルシカリアも忘れている可能性があるからな……むしろ私だけでも覚えていたのが奇跡のようなものだ」
「つまりあれか、そんな揃いも揃ってうっかり忘れてたような頼りねぇシステムがリーダーの命綱だってのか? あ゛ぁ?」
「落ち着けMAG、忘れてたということは裏を返せば少なくともシステムの完成自体はとうの昔にしてあるはずだ。でなければこのMAD連中が放置などするものか」
『おっそうだな』
『その割に俺ら忘れ去られてる気がするんやけど』
『匙を投げられたの間違いやろ』
『KU↑SA↓』
「貴様ら少しは黙るということが出来んのか!」
目の前のド変態に殴りかかろうとしたMAGをXTRが諌める。その様子を彼女の周囲で所在なさげに漂う防盾の『声』がここぞとばかりに囃し立て、たまらずXTRは怒鳴りつけた。
その様子を見て眉間にしわを寄せながらMGKが問いかける。
「……それで、そのデバッグとやらはどれくらいで終わるんですか? ことと場合によっては私も殴りますよ?」
「はっは、仮にも戦術人形になった私だが流石に総出でフルボッコにされてはなすすべもないのでな! その問いには正直に答えよう!」
「はよ答えろスカタン」
「君は君でいつまで残っているつもりなんだリンクス!? ……ゲフン、まあいい。ではこの私、EN-17現所長、アリアンロッド=アレサがその問いに対する答えを提示しよう! 即ち――
ガバゴシャキン。
ほとんど同時に事が起こったためはたから聞いていればそんな感じの雑音の集合体としか感じられなかっただろうが、事はこの様になっている。
ガッ! と椅子を立ったMAGがアリアンロッドの胸ぐらをつかみ、
バゴン! とそれを見たXTRが盾でMAGの頭を殴りつけ、
ゴシャン! とよろけたMAGをMGLとP90が同時に蹴り飛ばし、
ゴキン! とリンクスの鉄拳がアリアンロッドの後頭部にめり込んで鈍い音を立てた。
結果、MAGはイスやテーブルを巻き込みながらあらぬ方向へと吹っ飛び、アリアンロッドは頭を押さえてうずくまり半泣きになる。
「いったぁ! な、何をするリンクス!」
「何をするじゃねぇこのアホ。なに自信満々に自分のバカさ露呈してんだぶっ殺すぞ」
「バカとは失礼な! これでも私は学力には自信gイッタイ!? 二度もぶったな! 親父にだってぶたれたこと……いや普通にあったな」
「やかましい。オラ詳細話せ、わからん一辺倒じゃ何も通じねぇぞ」
「ハハ、それもそうか」
リンクスの手を借りてどうにか立ち上がり、アリアンロッドは半泣きのまま説明を続ける。
「……すまない、今のは言葉が悪かった。『ただ分からない』というよりかは、『事例によって結果がバラバラ過ぎて予測が出来ない』と言うほうが正確だな。とにかくケースによってまちまちで、しかもことがそんな統計を出せるほど起こっていないというのもある。ダメ押しに、そのほとんどが現行のものよりも1世代は古い旧式人形のものばかりだ……これではとても予想が出来ん」
「いつつ……むしろ逆になんで現行の奴にも搭載されてんだよそんな旧式システム」
「もともと世代間の互換性もある程度考慮して構築されているからな、そのまま搭載しても問題ないプログラムもあったのさ。その内の一つが例のデバッガーというわけだな。……彼女が倒れてからどれくらい経つ?」
「……大雑把だけど、1ヶ月過ぎたくらいだと思う」
「ふぅむ……そこまで来たらそろそろ目覚めてもいいとは思うんだがな……もとよりデバッグモードの起動において前提になっているサーバーとの接続がない状態だ、むしろオフラインモードでも正常に起動してくれただけでも御の字か……?」
「分かりやすく結論を言え、結論を。オレはまあテメェの直属だから言ってる事は理解できるが、502の連中はその手のことに疎いのもちょいちょい混ざってんだからな。見ろよあのマシンガン馬鹿のアホ面、まるで馬だぜ」
「ぶっ殺すぞ全身緑化計画」
「ネーミングセンスがカッ飛び過ぎだろ、ウケる」
半ギレでMAGが返し、それを聞いてリンクスが笑う。
結局、今回の講義は『彼女の中で何かが起こるまではどうしようもない』という結論に達して終了した。
――その『何か』は、少しずつ彼女たちへと迫っている。
秩序乱流始まりましたね。
インストールで事故って一度アンストする羽目になるなどのトラブルもあって少し出遅れましたがこちらは順調です。
今回こそは手っ取り早くイベ限の装備や人形を全確保してランキングに挑みたいところ。