あとは掘りとランキングですが……掘り間に合うかなぁ……。
だん! だんっ! と連続して地面、もとい甲板に着地する。
少しばかり勢いが強すぎた気もするが、そこは気合の回転受け身でカバーした。
「着地成功……! そっちは!」
『……これが大丈夫に見えるか?』
「とりあえず私は大丈夫かな」
うん? と後ろを見てみれば、ブランクを足蹴にする形でMDRが立ってしていた。どうやら着地したブランクを位置関係の問題で背後から蹴り飛ばしてしまったらしい。とりあえず、そもそも甲板に辿り着けずに地面でぐしゃりなんてことにはならずに済んでよかったと考えるべきか。
倒れているブランクの腕を引っ張って無理やり起こし、移動基地への侵入を試みる。
……どうしてだろうか。この施設を明確に視認してから、妙な焦燥が止まらない。
「ほら、早く行くわよ」
『お、おう。……そろそろか』
「? 何か言った?」
『いいや、なんでもねぇさ』
妙に思わせぶりな言動に首を傾げるが、そんな事を気にしている場合ではないと私の中で何かが執拗にせっついてくる。
その焦りに引っ張られるように、私は甲板脇に併設された小型のエレベーターホールの鉄扉を乱暴に蹴破った。
「……エレベーターは使わない方がいいかもしれないわね」
『まあそりゃあな。此処から乗り込むところもしっかり見られてんだ、馬鹿正直にエレベーターなんぞ乗ったらバケットごと爆破されるのがオチだろ』
「……となれば」
私が目をつけたのはその横、分かりやすい場所に併設された螺旋階段。
開いた状態で固定されたその扉には、『人的密度に左右されない屋内戦闘のために分散昇降を心掛けよう』と書かれた張り紙がされてあった。なかなかどうしてリアクションに困る。
まあ実際人口密度が高いとその分だけ武器の取り回しも難しくなるし、そもそも機動力が低下してしまう。そこに手榴弾でも投げ込まれたら一巻の終わりだ。
「まあ、リスクが低い方を選ばない道はないわね」
「うへぇ、こんな大型機の中を階段で走り回るのかぁ……今から気が滅入るよ」
『ああ、同感だ。明日は筋肉痛だぜ』
「明日までに終わるのかしらね」
私がそう言うと、彼らはどこか悲しげな表情を浮かべ、こうつぶやいた。
『
「
それが何を意味しているのかはいまいち分からないが。
きっと、この先には私の未来を決定づけた『何か』があるのだろうということが、確証のない直感でだが感じ取れた。
私はそれ以上何も聞かず、
最初の方は一段一段踏みしめるように歩いていたが、その歩調は少しずつ早まっていき、早歩きで降りはじめ、駆け下り始め、ついには段飛ばしで勢いよく駆け下りていた。
無意識のうちに、私の口からある言葉が漏れる。
「待ってなさいよ……
その時、位置関係と視線の都合で私は気付いていなかったが。
ブランクとMDRはその言葉を聞いて顔を見合わせ、やはり悲しそうに笑うのみだった。
「準備急げ! 事ここに至っては時間はいくらあっても足りん、全速力だ!!」
ヘリアンの怒号が響く。
現在、G&K本社およびその周辺地区では
重機や人員が総動員され、急ピッチで防衛陣地が各所に作られ、今や本社地区は臨時の急ごしらえとはいえ九龍城砦もかくやと言った様相を呈していた。
人形・人間を問わず駆り出されているため、現状リーダーが不在の502小隊もまた全力で助力していた。特にXTRの浮遊盾は資材の上下運搬に、MGLの電子制御処理能力は重機の運転に使う人員の削減に重宝されている。
そんな中で、建材に使う鉄筋を担いで超特急で辺りを駆けずり回っていたP90がヘリアンを発見した。というか、またしても頭を抱えて陰鬱なオーラを漂わせていたので、明らかにその周囲だけ人がいなくてよく目立っていた。
「……今度はどうしたのさヘファイストス?」
「誰が鍛冶神だ誰が……。想定の数倍人員が足りなくてな、困っている」
「具体的には?」
「現状確約できた増援こそ多いが、ネームドなのは1個小隊だけだ」
「うーんダメかも」
「なおかつ人員も貴様らに負けず劣らずのイレギュラーだ」
「いやダメじゃないかも」
「そしてその小隊の隊員にバルカンが混ざっている」
「なんか行ける気がしてきた」
「本社に備蓄している資材にアレを十全に運用できるような余裕はないといっていい」
「と思ったけどそんな事はなかった」
「一応資材面での救援も求めてはいるが……間に合うか……」
「……間に合わないと普通に負けるだろうし、間に合わせるしかないんじゃない?」
「そのつもりだ。念のためにIOPに重装部隊の増援も要請した」
「重装部隊?」
一体なんぞや、と首を傾げるP90。
それを見てヘリアンは半ば現実逃避気味に説明を始めた。まあ、どれだけ処理しても一向に低くなる気配のない書類の高層マンションが目の前に何棟も築かれている状況だ……現実逃避の一つでもしたくなるだろう。
「大雑把に説明すると単騎での運用が難しい兵器を取り扱うための部隊だ。対戦車兵器、迫撃砲、擲弾投射器……それらを用いて火力支援を行う事を主目的としている」
「ほうほう」
「元は偏向障壁……パラデウスとかいう連中が持ち出してきたシールド技術に対抗するために大急ぎで研究していたもののようだが、状況が状況だ。幸い向こうの戦況は現状そこまで深刻ではないようだからな、いくつか此方でピックアップさせてもらった」
「……つまり、その偏向障壁とかいう謎テクを鉄血連中が持ってるってこと?」
「確証はない。だが、可能性はゼロとは言えない」
マジかぁ、と天を仰ぐ。偏向障壁とやらが具体的にどのような効力を持つシステムかは不明だが、こちらでいう所のフォースシールドなどと概ね同じとみていいだろう。それを? 鉄血が持っている? ……悪い冗談だ。
「また厄介なことになってるなぁ」
「今に始まった事ではないだろうさ。全く、どうして貴様らは厄介事しか持ち込んでこない」
「えっボクらの所為になるのこれ!? 外患誘致!?」
「行ってみただけだ、気にするな」
「いや気にするよ……」
もしも一連の事件の原因の大元が502にあるとすれば、事後に弾劾裁判的なものが待っていてもおかしくない。あれ、そういえば帰還途中で露骨に怪しいハイエンドと接敵してたような……。
その辺りでP90は考えるのをやめた。これ多分掘り下げてもろくなことにならないし誰も幸せにならない奴だ。
P90が静かに頭を悩ませていると、そこに新手がやってきた。
「はっは! 久しぶりだなヘリアントス、私が来たぞ!」
「げぇっ!? 貴様はアリアンロッド=アレサ!? コーラップス弾頭を起動させてELIDや正規軍を道連れに自爆したはずではなかったのか!?」
「なんだその末路は!? 張本人の私ですら初耳だぞ!?」
「噂に尾ひれがつきすぎて芭蕉扇みたいになってんじゃねぇか、ウケる」
やってきたのは、戦術人形AR-57……もとい変態研究者集団
そしてリンクスが懐から端末を取り出すと、液晶部分をこちらに向けた。すると、
『どーも。私もいるよ』
その画面に表示されたのは変態じゃない方の研究者集団、もとい16Labに所属するペルシカリア。なんとまぁ、ヤバい奴とその部下と凄い奴の3人がそろい踏みした豪華な救援だ。
「わお、こりゃまた色んな意味ですごい面子だ。で、何の御用で?」
「はっは、そんなもの決まっているだろうベリースモールリトルキュートガール!」
「はっ倒すぞド変態」
「うーん手厳しいっ! ――とまぁじゃれあいはさて置いてだ。鉄血の進行を食い止めに来たのだよ」
「……2人で?」
「2人でだ!」
「いや無理じゃない?」
「任せたまえ、私にいい考えがある!」
自信満々にそう言い切るアリアンロッド。それを聞いて、その場にいたほかの面々は──リンクスでさえも──非常に苦い顔をした。さもありなん、このド変態の自信満々とか厄ネタ以外の何物でもない。
だが、彼女はそのさらに斜め上を行った。
「いいか、私の考えはこうだ。まずは──……」
それを聞いた4人は最初は疑わし気に、しかし途中からなるほどと感嘆し、しばらくするとうん? と首を傾げ、最終的には胡散臭い物を見るような表情になっていた。
簡潔に言おう。
──それはどうしようもないほど非現実的というものではないが、しかし最終的にP90までもがかつてない程に真剣な顔つきで正気を疑うレベルでぶっ飛んだ計画だった。以前リンクスが自信満々に『働き方改革』のプランを語った時のそれに通ずるものを感じる。まさかとは思うが、ぶっ飛んだ作戦立案は17Labの中では定石だとでもいうのか?
そして、説明を終えた彼女に対して、代表してヘリアンが言う。
「──というわけだ!うまくいけば、これだけで相当な時間を稼げるぞ!」
「貴様、もしかしなくともただの馬鹿だな?」
「なにおう!?」
多分次話から次章に入りますです、はい。
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