事実上の最終章『鉄血戦線』開始です。
Doll's Defense Line - Outpost
ヘリアン達が集まる少し前のこと。
……ヘリや運送車両で続々と近隣の基地から人員や資材が送られてくる。現状でも通常の戦闘だけなら向こう半年は持つような物量だが、しかし鉄血工造との事実上の決戦ともなればいささか不足感が否めない。
「さて、間に合うかな?」
そんな事を呟きながらコーヒーを飲んでいるのは、16Labの研究者ペルシカリア。事態の発覚当時、彼女は戦術人形本体の研究に一旦区切りをつけて次は何をやろうかと考えていたところだった。そこへこの一報が入り、否応なしにその他の予定を一切合切キャンセルしてとりあえず仕上げて放置していた重装部隊へとシフトすることになったのだ。
「まあパラデウスの方は現状比較的おとなしいからね……この機に乗じて攻め込んでくるみたいなことでもない限りは、まあ大丈夫だろう」
「はっは! やあペルシカ、私が来たぞ!!」
言った矢先にバァン!! と勢いよく扉が開かれた。ペルシカは驚きのあまりコーヒーを吹き、着ていた白衣の一部が茶色く染まる。
何事かとそちらを見てみれば、すっかり複数の意味で恥を知らない容姿になってしまったアリアンロッドがこちらを見ながらひらひらと手を振っている。
「……全く誰かと思えば、君かアリアンロッド。仕事はいいのかい?」
「その辺りは優秀な部下がいるからな! 全員一緒に寝て……ゲフン、心を込めてお話すれば快く首を縦に振ってくれたとも!」
「誤魔化しきれてないぞド変態」
「照れるぜっ!」
「褒めてない」
このバカはあろうことか自分の部下に対して枕営業を仕掛けたらしい。コイツに一般的な倫理観とか常識とかそういうものは備わっていないのか?
というか17Labって暗部のわりに比較的大規模な組織だった気がするんだが、まさか……。
「……一応聞くけど、何人?」
「正確に言えばエリスロポエチン君には逃げられたから全員ではないな。だがそれでもまぁ、100人は行くと思うぞ」
「頭おかしいんじゃないの?」
「照れるぜっ!」
「だから褒めてない」
「さて、では本題に入ろうか」
「うわぁ急に落ち着くな!」
スン、といきなり素面に戻ったアリアンロッドに思わずペルシカが言う。ついでにどこからともなく俺の名前はエリアスだ、という叫びが聞こえた気がしたが、まあ幻聴だろうと頭の中で処理した。
さて、それで結局コイツは何の用で16Labに乗り込んできたというのか。
「それでだ。パラデウス、と言う連中が確かいたな?」
「……まあ、いるけど」
「私に考えがあるんだがな、この体だけでは現状火力も機動力も耐久力も何もかもが足りん。これでも人間体だった時よりも肉体的性能ははるかに向上しているんだがな」
「何が言いたいの?」
「パラデウスが所有する兵器の残骸。おそらく貴様なら既にいくつか調達していることだろう? それが欲しい。出来る限り大型で耐久性がありそうなものならばなおよしだ」
何を言いだすかと思えば、コイツは本当に何を言いだした。なんか何を考えているのかは薄々わかってきたが、正気なのか?
ただ、とペルシカは考える。丁度、パラデウスが運用していた兵器や人形の残骸をいくつか接収して解析し終えたところだ。
実地試験での検証を名目にアリアンロッドに適当に押し付けておけば、スクラップの処理と実際の運用データなども得られて一石二鳥なのでは?
「ああ、あるとも……それも飛び切りのがね。戦闘で破壊されたスクラップ品をさらに分解やらなんやらしまくったせいで状態は劣悪に近いけど、それでよければいくつか工面するよ」
「それはいい! 破損はしていても構わない、その辺りはこっちで面倒を見るさ。なんなら側さえ残っていれば内部構造は好きに組むさ」
「それはもう素直に新造したほうが早いんじゃないのかい……?」
言いながら、ペルシカは部屋を出る。アリアンロッドもそれにぱたぱたとせわしなく付いていき、はたから見ていればまるで親子連れか何かの様だった。内実は大きく異なるどころか、普通にアリアンロッドの方が一回り年上なのだが。
エレベーターに乗り込み、行き先の階を指定する。ほどなくしてエレベーターは動き始め、すぐに目的の階へと到達した。
扉が開くと、そこは真っ暗闇。だがペルシカは特に焦ることもなく、エレベーターの扉脇に設けられた照明のスイッチを入れる。
少し間をおいて、ガンガンガン! と次々に高めに設定された天井の水銀灯が強烈な光を放ち始めた。
それが照らしあげた先にあったのは、
「おお、これが……」
「パラデウスが所有・運用していた兵器。解析した内部システムから判明した情報だけど、名前は右から順番に『
破壊された兵器の残骸が整然と並べていた。パラデウスの首魁の方針なのか趣味嗜好の問題なのか、白を基調としたデザインの外装が目立つ。
その中でも、アリアンロッドはウーランとドッペルゾルドナーに興味を示したようだ。駆け寄り、装甲をぺたぺたと触りながら検分している。
「なるほど、
「いや、そんな話は聞いていないね。むしろそれを積んでいたのはそっちに置いてあるロデレロの方だったそうだ」
「ふむ。普通なら弾薬に依存しなくていい光学兵器の類を一つくらいは積んでおくものだが……となると、元は何か別の用途だったものを接収したか転用した可能性があるな。となると、元は土木作業用に近かったのか? それならば機動力も要らないし、腕部ユニットの換装だけである程度幅広い対応が行える。逆に新造したのはロデレロの方か。既存のレイアウトからは大きくかけ離れているからな……というか、この構成はいつだったか風の噂で聞いた『低濃度崩壊液感染者機械兵化案』に似ているか……? つまり、こっちの一見してただの外部ユニットに見えるバックパック部分が本体の可能性もある訳か。中身の人型部分は生体ユニット、と言うかジェネレーターに近い役割を担っていたのか? 容姿を人に寄せていれば場合によっては多少なりとも相手の忌避感を誘い出すこともできるだろうし、運用の上での汎用性も大きく向上するからな……。それでウーランだが、これはもしや正規軍の旧式戦車か? この履帯部分の構造は見覚えがあるぞ。確かテュポーンの前身の……なんだったか、タルタロス? がこんな構造をしていた気がするな。結局耐荷重と走破性に難があったせいで現行のテュポーンに差し替えられたらしいが……まあ、轢くのがELID相手ではなく戦術人形の1個小隊程度であればこの程度でも支障はないか。というか、この時代は俯角も問題なかったんだな……どうしてああなった。うーん……」
「そろそろいいかい?」
アリアンロッドが長考モードに入ってしまったため、ペルシカが声をかけて元の世界に引き戻す。アリアンはその声を聴いて「おお!」と彼女の方を向き、
「……まあ、ここにあるのはだいたい解析も終わったからね。好きに扱ってくれて構わないよ」
「恩に着るぞペルシカ! さあ、目指せSOPMODジャイアントだ! はっは、わが胸の内で少年心がほとばしる!!」
「ちょっと待て君何をしようとしてる!?」
焦ったようなその問いかけに、稀代の大天才にして大変態、アリアンロッド=アレサはウインクしながらこう答えた。
「決まっているだろう? ──とびっきりのサプライズだ!」
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