ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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アークナイツのアンソロジー買おうとしたら近所の書店じゃどこにもなかったので偶然見つけた人類最強のsweetheartだけ買って帰りました。いつの間に出版されてたんだ、気付かなかったぜ。


Doll's Defense Line - Outpost Ⅲ

「おーおー、壮観だなこりゃ」

 

大量にやってくるヘリや車両を見ながらMAGがこぼした。

彼女はその手にスコップを持っており、背後には一直線に堀のようなものが築かれている。

 

「ったく、こんなご時世にもなってざんごうぐらしかよ。いつからこの世界は戦時中に逆戻りしちまったんだ? あぁ?」

「いや、人の事は言えないが大戦の経験は貴様にはないだろう」

 

その言葉を聞いたXTRが重箱の隅をつつく。彼女もスコップを肩に担いでおり、何をしていたかは明白だろう。

ザクッとスコップの先端を地面に突き刺しながらMAGがそれに答えた。

 

「記憶はなくとも記録はあるんだよ。ほとんど直近の出来事だからな、その辺の資料室漁ればわんさか出てくるっての」

「貴様がマシンガンの資料を読み込む以外の理由で資料室を利用するとは思えんのだがな……」

「ハッ、その辺りは心配いらねぇ。とっくの昔にコンプしてるぜ」

「そ、そうか……(私の記憶が正しければ並の戦術人形でもすべて読むのに年単位で時間がかかる量だったはずだが……??)」

 

自信満々で言い切るMAGに対し、XTRが首をかしげる。

だが、当の本人はそんな事知った事ではないと作業を再開した。

 

「おらお前も急げよ。例のガラクタ連中が来る前に一通り掘らなきゃなんねえんだからな」

「効果があるかどうかがかなり疑問符なのだがな……本当に意味あるのか、これ?」

「塹壕戦なんざやった事ねぇから知らん。まあ、準備砲撃とかで土地ごと耕されねぇ限りはある程度効果あるんじゃねぇの?」

「そんなものか」

「そんなもんだろ」

 

ははははは、と顔を見合わせて笑う。どう考えても食い合わせの悪そうな二人組だが、意外と馬は合うようだった。

と、そんな彼女たちの前に一台の車両が停止した。

……うん? と首を傾げる二人。

車両の幌部分にはE.A.というロゴが書かれていた。二人が傾げる首の角度がますます深くなる。

首を傾げながら、二人はひそひそと話し合う。

 

「……なあ、なんか心当たりあるか? あたしはない」

「奇遇だな、私もだ。なんだ、脱税の証拠でも見つかったか貴様?」

「やってねぇわ! なんなら金を使ってねぇし持ってねぇわ!」

「あっ……それは失礼した」

「オイ売られた喧嘩は買うぞ? あ゛ぁ?」

「マシンガン風情が私に喧嘩を売るか? ん? 自律稼動型複合浮遊装甲(ワイルドハント)の方に演算は割いているがそれでも貴様一人を締め落とすくらいなら釣りがくるくらいのスペックは保持しているぞ?」

 

訂正、どうやら馬は合いそうにない。

険悪な雰囲気を漂わせる二人。もしもこの場に霊感を持つ、というか場の空気を読むのに長けた人物がいれば、二人の間で散るアーク溶接さながらの火花がばっちりと見えていただろう。

そんな二人はさておいて、車の後部……通常の民生車両であれば荷台とかトランクがある部位から、ひょっこりと誰かが顔を覗かせた。

 

「よぉ! 覚えてるかどうかは知らねぇが16Labで会った時以来か?」

 

目の前の彼女──金髪ロングでオッドアイの少女が言い、それを聞いてMAGが「……?」と首を傾げる。その横でXTRはこの上なく苦い顔をした。

彼女の脳裏によぎるは忌まわしき大惨事。メンテナンス時の不手際によってメンタルモデルの性質がそろいもそろって反転するという、なんとも気の抜けた小さなバカ騒ぎ。

そこに混ざり込んで事態をよりややこしくしたのが目の前の彼女……『M61A2“バルカン”』なのだ。

で、

 

「おいおい、あの騒ぎの事は記憶にない感じか?」

「アレの話をするんじゃねぇ自決するぞコラ」

「お、おう……」

「……んで、誰だテメェ? なんかどっかで見たことあるような気はするが……」

「おいおい釣れないねぇ、いつかの結婚式の時にお互い顔くらいは見てるだろ?」

「……おお!!」

 

それを聞いて、我が意を得たりといった調子でポンと手を叩くMAG。それに対して、バルカンは荷台から銃本体……実銃の方のバルカンを引っ張り出してウインクした。

 

「なるほどテメェかバルカン! こうして顔突き合わせて話すのは初めてだったか?」

「ああ、そのはずだぜ」

「いや、MAG貴様、塹壕掘りはどうした。立ち話もいいが間に合わなくなるぞ」

「んじゃ早速で悪いが質問だ」

「いいぜ、来いよ!」

「いや人の話を聞かんか!?」

「その心意気やよし! あたしが訊きたいことは一つ、たった一つのシンプルな問いかけだ。──即ち、」

 

銃撃戦において最も重要視されるもの、それはなんだ?

MAGの問いかけに、バルカンはパチパチと何度か瞬きする。そして、ニヤリと笑みを浮かべてこう答えた。

 

「おいおい、馬鹿にしてんのか? 私が言える答えは……()()()()()()()()……MAG……そう、たったひとつの単純(シンプル)な答えだ──」

 

「火力・弾幕・気持ちよさ。これに尽きる」

 

……。

 

「……三つではないか!?」

 

少し遅れてXTRが突っ込む。しかし悲しいかな、生粋の火力バカ二人にはその言葉は届かなかった。

ガシッ!! と二人そろって良い笑顔を浮かべながら固い握手を交わす。それを見たXTRは今のコイツらに何を言っても無駄だということを悟り、完全な無の表情を浮かべて一人塹壕掘りを再開した。

そんな折、輸送車両の助手席の方の窓がゆっくりと開く。

そこからバルカンそっくりの顔がぬるりと飛び出し、

 

「おーいー! あんまり長いこと話してると置いてくよー!」

 

その姿を見たXTRは「また火力厨が増えた……」と悟ったようにも諦めたようにも見える表情を浮かべ、ほとんど思考停止に近い状態で塹壕掘りを続ける。

そして、その言葉を聞いたバルカンは「オーケー、すぐ戻るぜM134!」と返し、MAGの方を向き直して

 

「っし、じゃあちょっとペルシカんとこに顔見せてくるわ。後でちょっと話そうぜ」

「オーケイ、朝から晩まで心と薬莢の躍る語り合いだな……くっそマシンガン撃ちたくなってきた! XTR、ちょっとあたし少し離れ──」

「させると思うてか?」

 

スッ、とMAGの首筋にナイフが添えられる。

それを見たバルカンとバルカン二号(仮称)が顔を青くするが、本人たちにとっては色んな意味でそれどころではなかった。

 

「ま、待て、落ち着け。話せば、話せば分かる!」

「問答無用とは実に素晴らしい言葉だ……貴様もそうは思わんか……?」

「言わんとしてる事は分からんでもないが落ち着け! マジで!」

 

助けを求めるようにバルカンの方を見るMAG。だが、彼女はそそくさと車両の荷台に戻り、「じゃあまた後でなー!」と去っていった。

 

「くっそあの野郎逃げやがった! これはもう来たるべきマシンガン対決で雌雄を決するしか──」

「その前に、やることが、あるだろう? ン?」

「Sir, Yes Sir!」

「誰がサーだ誰が! 終いにはどつき回すぞ!?」

 

MAGの尻を蹴り飛ばすXTR。

 

「バカなことを言ってないで続きだ続き! 一周掘り終わるまで戻れんからな!」

「……ちなみに今どんくらいだったっけ?」

「聞いて驚け、半分行ったかどうかだ」

「めんどくせぇええええええええええ!!!!」

 

MAG、魂の叫び。

……結局、塹壕が掘り終わるまでに日が暮れて月が天頂に来るほどの時間を要したという。

その後本当にマシンガン談議が行われたかどうかは、定かではない。




番外編のネタをいくつか利用していますが、本編では110BAがあの有様と言うのもあって時系列や状況などが異なっています。ご了承ください。

と言う訳で最初のコラボ相手はoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』でした。最近リアルが立て込んでてろくに読み込めずに書こうとした結果かなり迷走したのはここだけの話
コラボ先の作品が気になる人は以下のURLからどうぞ!

・破壊の嵐を巻き起こせ!
https://syosetu.org/novel/180532/
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