ドールズディフェンスライン   作:りおんぬ

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お待たせしました。
心因性ナンタラと暑さのせいで遅れておりましたが更新再開です。


Doll's Defense Line - Outpost Ⅵ

「さってさって、向こうもマジで本腰入れて来てんな……雑魚共に混ざってなんか見覚えあるけど見覚えねぇ連中がいやがる」

「それってあの他と比べて妙にゴツかったり赤かったりしてる集団の事か? 確かになんかすごそうだが」

「いやめっちゃ視力いいなお前。オレでも双眼鏡(コイツ)無いと見えないのにどんなスペックしてんだ」

「いやぁそれほどでも」

「褒めてねぇ」

 

先ほど掘り起こしたオールラウンダーとそんな軽口を叩きながら、リンクスは双眼鏡を覗き込む。彼女の視線の先には、データとは明らかに異なった外見のハイエンドの姿があった。

案山子、処刑人、狩人、侵入者……その他、これまでに確認されているハイエンドのほとんどが戦列に加わっており、なおかつ改造でもされたのか赤いオーラを纏っていた。全体のデザインは踏襲されているが、一目見ただけで分かるほどに凶悪な武装を携えている。

 

「……もしかしなくとも正規軍の奴じゃねぇのか? なんか明らかにゴツいの混ざってるぞどうなってる」

「おー、あれが噂の。初めて見た」

「突っ込まねぇからな?」

 

視線を動かすと、そこには鉄血工造の自律人形、ないし自走機械とは明らかに様式の異なる自律人形や兵器が列をなして行進していた。

鉄血工造式の装甲兵器レイアウトに合わせてかクリーム色を基調に塗装されたそれらを眺めて、

 

「アイギス、ケリュニティス、ヒュドラは鉄血の連中が初期型を工場ごと奪取してたから想定は出来る。それにキュクロプスにダクティルはまぁ、まだ許せるな。だがテュポーンは聞いてねぇぞクソが……」

「テュポーン? どれだ?」

「……でっかい戦車があるだろ、ソイツだよ」

「でっかい戦車……ああ! あれか!」

 

微妙に間の抜けた発言を繰り返すオールラウンダーに調子を崩されながらも、顔を歪めて吐き捨てる。

その後も一人で愚痴を紡ぎ続けるリンクスだったが、そこで腰に吊っていたインカムが再びノイズを放った。

 

「マジでどっからあんなの持ち出してきたアイツら。冗談抜きで正規軍のクソ野郎共も認識してなきゃおかし──あ、いや待て分かった、なんか嫌な考えが思いついた」

『ザザッ──定時連絡、定時連絡! 聞こえているかリンクス!』

「おう、しっかりばっちり聞こえてるぜ」

『こちらはもう少しで出撃準備が整いそうだ! 安っぽい突貫工事だがまあ並のハイエンド程度なら蹴散らせるクオリティのものが出来たと自負しているぞ!』

「オーケイ、その言葉からまたよく分からんビックリトンチキメカ作りやがったってのはよーく伝わってきた」

『増援の方も続々と来ていてな、この分では本陣がスッカラカンの防衛線と言うことにはなりそうにないのも幸運だ。特にS07基地だったか、あそこの部隊が保有している重装部隊が素晴らしい! 重兵器を運用している都合上どうしても支援特化にならざるを得ないが、それを補って余りある火力を有しているのだよ! 現状システムが確立されているのはBGM-71・AGS-30・2B14・M2の4部隊だけだが、中でも彼らが有している重装部隊は特筆して──』

「わかったわかった話は後で聞いてやるから本題に戻るぞ!」

『そう言ってどうせ聞く気なんてないだろうこの*17Labスラング*め!』

「絞め殺すぞテメェ。んで、こっちからもいい知らせと悪い知らせが一つずつある。いや、場合によっては悪い知らせが二つになるかもしれねぇがな」

『よしきた、手っ取り早く話したまえ。これでも私は忙しいんだ』

「マジで殺すぞこのクソ上司が!」

 

閑話休題、本題に戻って。

 

 

「あー、それでだ……いい知らせと悪い知らせどっちから聞きたい。いい知らせだな分かった」

『まだ何も言ってないんだがね……』

「まずはいい知らせだ。少なくとも今回の防衛戦に正規軍は全く噛んでくる気がない」

『ほう?』

 

興味深そうな声をあげるアリアンロッド。リンクスの横では理解を放棄したのかオールラウンダーが堂々と兵装のメンテナンスを始めるが、リンクスはそれを努めて意識から外しながらも会話を続ける。

 

「んで悪い知らせいくぞ。鉄血のガラクタ共、正規軍の人形やら兵器やらを大量にパチってやがる」

『ほうほう。鉄血が正規軍の兵器を大量鹵獲か、了解した……はぁ!!?? 真か!?』

「大マジだ。しかもこれまた見覚えのねぇハイエンドが筆頭についてやがる……なんだありゃ、ぱっと見ボディの感じは計量官(ゲーガー)に近いが……見るからにヤベェ武装積んでやがるぜ、ウケる」

『笑っている場合か! ……つまり、悪い知らせが二つ、というのは……』

「まあそう言うことだな。正規軍連中、どうやらオレ達に自分のケツ拭かせるつもりらしいぜ」

『SHIT!!』

 

まあ、あれだけの量の兵器群を一挙に鹵獲されておいて報復に走らないということはそう言うことなのだろう。最悪の可能性ではあるが、正規軍がG&Kと鉄血の相打ちを目論んだが故にわざと鉄血に引き渡した線さえある。

マジで一回滅んだ方がいいんじゃねぇのか人類、と毒づきながら、リンクスは双眼鏡片手に観察を続ける。

彼女がそれに気付けたのは、正しく奇跡だった。

 

──視線。

 

ふと意識をそちらに向けると、青い瞳がこちらを見つめていた。

息が止まる。冷や汗が垂れる。コアの横に併設された疑似心臓の鼓動が明瞭に感じ取れた。

まるで世界が凍り付いたかのような静寂の時間の中で、視界の向こうの少女は肩に担いでいた巨大な砲を構え──

 

「やっべ──!?」

「何が──」

 

直後。

比類なき轟音と共に、大地の一角が文字通りに消し飛んだ。

リンクスの姿は大量の土砂に覆われて伺えなかったが……

 

「うわ待てやめろふざけんなヤな感じぃ──!?」

 

オールラウンダーは土砂と共に巻き上げられ、その勢いを維持したまま明後日の方向へと吹き飛ばされていった。

そしてその様子を、冷めた目で眺める少女が一人。

 

■ ■ ■

 

 

『何故撃ったのですか』

 

無線が静かな疑念を吐き出す。

鉄血工造侵攻軍の総大将である代理人(エージェント)が詰問するが、しかしその相手である銀髪蒼眼の少女──放浪者(ストレイド)は今なお砲口から煙を棚引かせる巨大な砲撃ユニット──多薬室滑空砲『アースクエイク』を構えたまま、

 

「……、」

 

感情の読めない瞳で音声を紡ぐ無線機を眺めるのみだった。

一向に返事が来ない事に苛立ちを覚えたのか、エージェントはそのまま問い詰めの姿勢に入る。

 

『……いくら我々が隠蔽不可能なほどの大部隊で移動しているとしても、わざわざその存在を誇示する必要はなかった筈です。 隠れたつもりでいた緑のネズミを一匹追い払うためだとしても、テュポーンはおろか『アースクエイク』まで加えた一斉砲撃など明らかに過剰火力。……もう一度問いましょう、()()()()()()()()()?』

「……最低限の指示には従う」

 

口を開く。感情を感じさせない表情のまま、しかしこの上ない激情を秘めた言葉が彼女の口から紡がれる。

 

「だが、お前たちは手を出すな。これは私の戦争で、私の闘争で……きっと、私の道筋の終局だ」

 

一方的にそう告げ、ストレイドは通信を切断した。

後方を見る。

戦女神の盾(アイギス)月女神の鹿(ケリュニティス)九つの首持つ毒蛇竜(ヒュドラ)単眼の巨人(キュクロプス)韻を踏む指先(ダクティル)星々を跨ぐ巨人(テュポーン)

正規軍の所属を名乗る者達が薄ら笑いと共に引き渡してきた、当時はいずれも半壊状態だったそれらを眺める。

その他にも、エルダーブレインが独力でハッキングし奪取してきたものも多いが、しかし彼女は半ば廃品回収気味に押し付けられた彼らにこそ親近感を抱いていた。

 

「……私もお前たちも、とうの昔に朽ちているはずの者同士か」

 

 

過去の思いは遥か遠く。

どれだけ足搔こうとも等速に残酷に明日は来る。歩き疲れた者達には少しばかり酷と言うものだろう。

私はとうの昔に死んでいたはずだった。……だったら、つかの間の悪夢のような第二の人生……闘争の中で華々しく終わらせるというのも、いいじゃないか。

 

 

「征こう。正しき運命を決めるんだ」

 

 

その言葉に、彼女の指揮下にある人形たちはアイカメラを不気味に輝かせる。

ハイエンドモデル放浪者(ストレイド)率いる、正規軍鹵獲人形・兵器連合師団。

それが、組織と言う名のレールを明確に外れて動き始めた。

 

「……そうか。君はその選択を選んだか」

 

 

「終局を見失った放浪者よ、善き旅を」

 

 

そしてそれを、道化師は遠く離れた巨獣の背から傍観し、その征く先を静かに言祝いだ。




と言う訳で今回のコラボ相手はガンアーク弐式様作『MALE DOLLS』でした。いやはや書くのが遅くなってすいません……。
あともう何人かで役者は全員出揃いますかね。そろそろ本戦に入れそうです。
コラボ先の作品が気になる人は以下のURLからどうぞ!

・MALE DOLLS
https://syosetu.org/novel/199272/

・MALE DOLLS外伝集
https://syosetu.org/novel/207272/
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