真・恋姫†夢想 ~黒足物語~   作:みつお・ライブ

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第三歩 黒髪ロングの眼鏡美女

 ―-楊州、呉の孫策の居城にて―-

 

 

 謁見の間、と言うよりは執務室の様な簡素な部屋で、サンジは三人の美女に囲まれていた。

 

 ―-右手に白髪爆乳のセクスィー美女、左手にナイスバディな桃髪の活発美女......んで、目の前には黒髪眼鏡の知的美女が居る......こいつぁ、正しくパラダイスだぜ......!―-

 

 椅子に座り、デレデレと鼻の下を伸ばしたまま、サンジはそんな事を考えていた。

 

 「で、雪蓮。これはどういう事か、私が納得のいく説明をしてくれるんだろうな......?」艶やかな黒髪を腰位の高さまで伸ばした、知的な雰囲気のある美女が、少し語調を荒げて孫策に訊ねる。

 

 「そんなに怒らないでよ~、冥琳......」気まずそうな顔で孫策は弁解する。

 

 「全く......、どうせお前の事だから、勘とか、何と無く気に入ったとか、そう言う理由でしょう」諦めた様子で冥琳と呼ばれた女性が言った。

 

 「フフーん♪ 流石冥琳、良く解ってるじゃない♪」楽しそうに孫策が言った。

 「でも、今回はそれだけじゃ無いのよ」ニヤリと、孫策が笑う。隣で黄蓋が気まずそうな、それでいて何処か悔しそうな顔をした。

 

 

 「......大方、お前か祭のどちらかと戦って、勝ったのだろう?―-祭が悔しそうにしてるってことは、おそらく祭が敗れたのだろうな......。だとしたら、これからを考えると確かに必要かもしれない、けど......―-」冥琳らしき女性が、眉ねにしわを寄せながら言った。

 

 「なんと素晴らすぃ推理! 見目麗しいだけでなく、頭も良いなんて......! サンジと申します、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」興奮したサンジは、我を忘れてその場に方膝立ちの姿勢をとる。その冥琳と呼ばれた才女の手をとり、真面目な顔でそう告げる。

 

 「ぉッ、おい! 手を離せ! ......何なんだこの男は......どうして雪蓮もこんな男を......」少し赤い顔で、憎々しげに美女はサンジの手を払う。それを余所に孫策が、腹を抱えて笑っていた。

 

 「あはははッ! おっかしぃ、サンジくんって♪ 冥琳と初めてかわした言葉が、口説き文句って! ッくく、あっはっははは!」声をあげて笑う孫策。向かいでは、黄蓋も笑いを堪える様子であった。

 

 「ッ、雪蓮ッ! ......はぁ、全く......。姓は周、名は喩、字は公謹。真名は......冥琳だ。よろしくお願いする、サンジ殿。」ため息をつきながら、投げ遣りに周瑜は言った。

 

  「冥琳ちゃんッ! 何て良い響きの名前なんだ! ここで出逢えたのも、一つの運命です! 一緒にお茶でもどうですか、お嬢様」恭しく礼をしながら、周瑜を口説くサンジ。

 

 少し拗ねた様子で孫策が、

 「サンジくん、残念だけど冥琳は私のなの。サンジくんにはあげられないわね♪」と言った。

 「......なるほど、同性愛者でしたか......まぁ、それはさておき、一緒に食事でもどうですか、レディ達? 飯は俺が、腕を奮って用意しましょう!」呟く様に言った後、孫策の台詞などまるで気にせず、サンジは三人を誘った。

 

 「ふっ......、ははッ、はッはッはは! ほんにお主は笑わせてくれる。儂ら三人を同時に口説くなど、前代未聞じゃぞ。ふふっ......、見てみい、策殿も冥琳もポカンとしておられる」腰に手を当て、豪快に笑いながら、孫策と周瑜を指差す黄蓋。つられて、孫策も笑い出す。

 

 「あははッ♪ まさか冥琳と一緒に口説かれるとは、夢にも思わなかったわ。―-本当に、拾ってきて正解だったわ♪―-」コロコロと笑いながら、孫策が言った。

 

 「はぁぁ......、全くもぅ、お前達はどうして......まあ良い、それじ食事にしましょう、サンジ殿」何処か吹っ切れたように、周瑜が言った。

 

 

 「そうこなくっちゃね♪」孫策が締めた。

 

 

 「ほ~う、こりゃまた大層な調理場だ」感心したサンジがもらす。

 

 しっかりと管理されているだろう調理場は、綺麗に掃除されている。

 食材の保管場所は別にあるのか、ここには腐りにくい物や、調味料しか置いていない。

 洗ってある鉄鍋や、包丁、皿も、きっちりと整頓され整っていた。

 

 「どれ、では遠い世界から来た客人に、呉の料理を振る舞うとしようか」周瑜が、孫家お抱えの料理人に指示を出す。

 

 「調理の様子を見てもいいかな? 雪蓮ちゃん」興味津々な目で、サンジは孫策に聞く。

 

 「そっか、料理得意って言ってたわね。......う~ん、良いわ、好きに見学してきて頂戴♪」ニッコリと笑って、孫策は言った。

 

 「......雪蓮、どういうつもり?」小声で周瑜が孫策に聞く。

 「しっかり見張ってね、冥琳。これで怪しい動きをするようなら、即刻首をはねるわ」ギラギラと光る目で、周瑜に小声で返す孫策。見れば黄蓋も、軽く頷いている。

 

 「なるほど、理解した」周瑜はそう呟くと、眼鏡を光らせ、サンジの監視を開始した。

 

 監視されて居るとは露知らず、サンジは目を輝かせていた。

 

 「ここが倉庫か......なるほど、見たことねぇ食材がたくさんあるな」直ぐ隣にある倉庫を、楽しそうに見て回るサンジ。少し後ろに、先程まで料理をしていた、赤髪に厳つい体つきの中年男がついて来る。

 

 「用がお有りでしたら、何なりと申し付け下さい」赤髪の料理人が、サンジに告げる。見たところ、ただの料理人には見えない、オーラを纏った偉丈夫であった。

 

 「あ~、待ってくれそこの赤いの」サンジが男を呼び止める。

 

 少し間が空く。一瞬、キョトンとした顔を浮かべた男が、自分を指差しながら訊ねる。

 「......赤いの、とは、我輩の事でしょうか?」

 

 「そうそう、あんただよ。ちょっとばかし、この世界の料理について教えて欲しくてな」頭を掻きながら、簡潔に用件を話すサンジ。

 

 「我輩は料理人では無いのだが......まあ良い。姓は程、名は普、字は徳謀だ」自己紹介する程普。鋭い眼でサンジを見ていた。

 

 「男に名乗る名は無ぇんだが......サンジだ。字も真名も何も無え」ぶっきらぼうに名乗るサンジ。

 

 しかし、その態度に気を悪くした様子もなく程普は、

 「はッはッは、良き御仁よ。了解した、この世界の料理を教授しようサンジ殿」豪快に笑い飛ばす程普。齢四十は越える身ながら、まだまだ若々しく見えた。

 

 

 

 ―-二時間後、厨房にて―-

 

 

 

 「あっ、やっと戻ってきたのね」一通り食事を終えた孫策達が、サンジと程普に声をかける。

 

 「おまたせしました雪蓮ちゃんッ! 祭さんも冥琳ちゃんも、すぐにデザートをお持ちします。下準備は出来てますので、少々お待ちを......」デレデレと孫策達に近づくサンジ。遅くなった理由を簡単に話すと、直ぐ様調理場に向かう。

 

 「......どうじゃった徳謀。何か、怪しい動きは見せんかったか?」黄蓋が程普に訊ねる。

 「安心召されい、公覆よ。あれは良き御仁よ、我輩と同じく表と裏がない。腹に一物抱えられん御仁だ」ハッハッハと、程普は笑う。

 

 「そう......貴殿がそう判断したのなら、充分信用に値する。礼を言う、徳謀殿 ―-徳謀殿の人を見抜く眼は、雪蓮の勘より優れている。信用しても良さそうね―-」周瑜が肩の力を抜きながら、ほっと一息つく。

 

 「それにしても、随分と惚れ込んだものですな、伯符殿。まぁ、お気持ちは解らんでもござらんが......」程普が、茶化すように言う。

 

 「ふふっ♪ 面白い拾い物をしたと思わない? 彼、凄く真っ直ぐな目で美女を口説くのよ。でも、一途って訳でもないじゃない? 寧ろ、手当たり次第って感じなのに、不思議と笑ってるのよ」微笑みを浮かべながら、孫策は誰ともなく言った。

 

 カシャカシャと、何かを混ぜるリズミカルな音が、調理場から聞こえてくる。

 

 「ほう......確かに手際が良いのう。料理が得意と言うのは、どうやら嘘では無いようじゃのぅ」感心した様に、黄蓋が漏らす。同じ様な反応を、周瑜や孫策も見せる。

 

 「本当だ......あんなに早くかき混ぜてるのに、中の液体全然が溢れてない......」口を丸く開き、驚いた顔で孫策が呟く。

 

 鉄鍋に油をしくサンジ、香ばしい匂いが辺りに広がる。混ぜていた液体を鍋に入れ、回しながら薄く伸ばしてゆく。

 

 「ふぅん......見たこともない料理だな。味の見当が全くつかん......」周瑜が、眼鏡を軽く上げながら、眉ねにしわを寄せて呟く。

 

 「素直に楽しみって言えば良いじゃない♪ 冥琳ってば、素直じゃないわねぇ」ニッコリと笑いながら、孫策が茶化す。

 

 「お待たせ致しました。デザートに、この地で採れた新鮮な"ブラッドオレンジ"と"オーシャングレープ"俺特性の"ホイップクリーム"を包んだ、"三色のクレープ"になります」サンジが、綺麗に皿に盛り付けられた、クレープを孫策達の座るテーブルに置く。

 

 丁寧に畳まれたクレープには、海の果物"オーシャングレープ"と、新鮮な"ブラッドオレンジ"が、見ただけで食欲をそそるように、彩り鮮やかに並べられている。一緒に包まれた"ホイップクリーム"もサンジの手により、丁寧に装飾されそれらを包むクレープ生地も、焦げ目の無い綺麗な狐色に焼けていた。

 

 オレンジや、グレープの良い香りはもちろん、クレープ生地からも、美味しそうに焼けた匂いが漂ってくる。

 

 毒味も忘れて一口、口に含む黄蓋。食べ方がよく解ら無いのか、クリームが溢れたり、口についてしまっている。

 

 「......なんじゃこれは。今まで食べたことの無い、しかし、確かに......」続いてもう一口食べる黄蓋。

 「旨いッ! これはなんとも言えん美味じゃ!」子供のように頬張る黄蓋。それを見た孫策等も......

 

 「......パクっ !! 美味しい! サンジくん、凄く美味しいわ、これ!」興奮した様に孫策が騒ぐ。指にクリームがつくのも構わず、ドンドン口に運んでいく。

 

 「確かにこれは美味しいな......初めて食べる味だ......」がっつく二人を横目に、丁寧に食べる周瑜。が、鼻についたクリームに、気付く様子は無い。

 

 「どうですか、レディ達。俺のデザートは、お気に召しましたか?」答えは解っているだろうサンジは、自信に溢れた表情で―-しかし、鼻の下は伸びたまま―-孫策達に訊ねた。

 

 「ええ、美味しかったわ♪ これからも期待してるわね、サンジくん♪」とびきりの笑顔で答える孫策。周りの人も明るくする、そんな気持ちの良い笑顔だった。

 

 「うむ! 甘くて、ふわふわしておった。"くれーぷ"じゃったか? 旨かったぞ!」満面の笑みを浮かべ、黄蓋がサンジの背中をバシバシ叩く。サンジは嬉しそうにしている。

 

 「ここまで美味しかったのは久しぶりだ。礼を言う、サンジ殿」微笑みながらお辞儀する周瑜。孫策が言うには、周瑜のこんなに落ち着いた笑顔は、久しぶりだったそうだ。

 

 

 

 

 

 ―-三者三様の反応に、満足した表情をするサンジ。この世界でも楽しくやっていこうと、再び思うサンジであった―-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「......我輩には、無いのだが......」

 

 

 「てめぇで作れ。材料は置いてある」

 

 

 「......ほんに気持ちの良い御仁よ。ハッハッハ! ......せめて作り方だけでも、教授してくれぬか......」

 

 

 

 

 ......サンジは孫策達に夢中であった......

 

 





 姓  名  字


 程(てい) 普(ふ) 徳謀(とくぼう)

 恋姫には出てこないオリキャラです。赤髪黒目、肌はかなり色黒、歳は四十三。
 料理や、釣り、象棋など多岐にわたる。一人称は我輩。


 ではまた次話で。あでゅー。

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