あまり関わりが上手くない提督が鎮守府に着任するお話 作:木啄
お元気ですか?まだまだ寒い日が続き、最近はテレビでもあまりよくない情報が多く流れていては、少々不安な先行きだなぁと感じる事がしばしばあります。
これを読んでくださる皆様がご健康である事を祈って、前書きはここまでといたしましょう。
あともう少しでなつやすみ編がおわるかもしれません、もうしばらくお付き合いくださいませ
さんさんと降り注ぐ太陽の日差しの下で、元気よく走り回る彼女達を、提督と鳳翔はパラソルの下で眺めています。
あれから数時間が経過しているというのに、疲れる様子が一向に見られず、これも普段から厳しい訓練や、任務に励んでいるからなのだろうか、と提督は考えているとー。
「ふうーーあっちぃ~~つーかあいつら元気過ぎんだろ・・」
最初にダウンしたのはなんと、遠征から出撃まで、艦隊の旗艦を務める天龍でした。
「お疲れさまです、天龍さん。お茶でも如何ですか?」
きゅぽんっ。と可愛らしい音と共に水筒の頭の部分が外れて、コップ代わりになるタイプの水筒で、トクトクトク・・・と子気味良い音と共に麦茶がコップに注がれていく。
「ん、さんきゅーだぜ」
くいっと一気飲みに近い形でお茶を口へと運んでいき、ぷはーーっと気持ちよさそうな声を上げる。
「ふぅ・・やっぱし冷たい麦茶が最高だぜ・・」
その様子をみて、鳳翔はくすくすと笑いながら再び水筒を傾けてます。
「おかわり、しますか?」
「ん!貰う!」
天龍は頷き、再びそのコップに麦茶が注がれる様子を提督は眺めながら、視線を駆逐艦達の居る海へと視線をゆっくりと向けてみます。
「どーーーん!!!あははは!お二方!どうですかー!!」
「わっぷ・・!!ちょっとぉ!!暁にも被弾したじゃないの!!それ!!えいっ!!くらいなさいっ!」
「やりましたね大潮!私も本気で行きますよ!」
普段は、重たい艤装を身に着け、その手には武器を携えているであろう彼女たちが、今は何処にでもいる普通の女の子のように遊んで、笑って、はしゃいでいる。
「・・なぁ」
突如提督が口を開き、鳳翔と天龍は提督に視線を向けます。
「いかがなされました?提督」
鳳翔の声に、提督は「うむ・・」と少し何かを考えるような間と共にその目線を朝潮達に向けつつ
「いつか・・遠い未来かもしれないんだが」
提督の言葉を、二人は何も言わず、その先を促す。
「私は、彼女達を普通の人間として、この社会に解き放ちたいと思っているんだ」
「・・はい、提督」
「おう」
遠くから蝉の声が聞こえ、提督はゆっくりとその声に耳を傾けるように目を瞑る。
しかし、考えているのは彼女たちの事だ。
ゆっくりと、ゆっくりと、言葉を探すように、そして脳裏に浮かぶは先程の天龍や鳳翔、そして朝潮達の可愛らしい笑顔だ。
「それまでは、私が君たちの親のような存在になれればいいと思っているのだが・・」
「「・・・・。」」
提督の言葉に、天龍と鳳翔は顔を見合わせる。
「妙、だろうか?」
提督は真剣な眼差し二人に向けます、するとなんということでしょうかー
「ぷっ・・はははははは」
「ごめんなさい提督・・くすくす・・・ふふふっ」
二人は突如笑い出し、提督は真面目な顔から一変して困惑の表情へと早変わり
「な・・なにかおかしな事を言ってしまっただろうか・・?」
先ほどまで真面目な雰囲気が漂っていたパラソル一帯が、突然明るい陽気な雰囲気に変わり、二人の笑い声を聞いた駆逐艦達も、何があったのでしょうとこちらを海を泳ぎながら見ています。
「い・・・いや、だってよ、提督が父親っていうのは・・くくっ・・まぁいいんじゃねえの??俺は面白いと思うぜ、なぁ鳳翔」
「提督は時々変わったことをお考えになられますから・・私もびっくりしてしまって・・ふふふ、失礼しました・・提督、突如笑ってしまって、許してください」
「い・・いや、それは構わないんだが・・むう」
やはり突然の事でおかしな事を言ってしまった事は自覚しているようで、その様子を見ていた妖精さん達はげらげらと笑っています。
「ですが・・そうですね、皆さんを守ってくださっている提督は・・確かにお父さん・・のような存在なのかもしれません」
「ちょっと頼りねえけどな」
「ていとくさんたよりないですか?」
「そんなことないかと!りっぱなぼくらのりーだーですたい」
「なむあみー」
天龍の言葉に反応する妖精さん達に対して、鳳翔はあらあら、と笑みを浮かべていると。3人の足音が近づいている事に気が付き、視線を妖精さん達から、海へと向けるー。
「さっきから何を話してるの?暁も混ぜて!」
「大潮も楽しいお話したいです!!!」
「任務のご内容でしたらこの朝潮、是非お教えください!!」
元気のいい駆逐艦組も集まり、提督は少しばかり困り眉毛。
「ていとくさんはおとうさんになるですか~」
「おとうさんおとうさん」
「おとうさんっておいしいですか?」
・・・最後の質問だけ妙に違うような気がする、と提督は心の中でつっこみを入れながら周囲を見回してみると、ぼちぼち人が減りつつあることに気が付く。
「そろそろ夕方になるだろー?飯でも食いに行こうぜ~」
「あぁ、もうこんな時間か・・そうだな」
提督はカバンからスマートフォンを取り出しては、今現在の時間を確認しています。
「大潮もおなかすきましたー!!」
「暁はレディーだけど・・お腹はすくものね、仕方ないわ!」
「朝潮も同意します、司令官。」
「それでは提督・・?」
鳳翔の声掛けに、提督も頷く。
「よし、それでは各自荷物を持って一旦施設に戻り、シャワー等で体を綺麗にしてから1階に集合するとしようか」
「おう!それじゃあ行くぜ!」
「「はーーい!!」」
天龍の声掛けに、元気よく答える暁と大潮、そしてそんな二人を楽しそうに見つめる朝潮と、提督の荷物をこっそりフォローする鳳翔一行は、夕暮れ時の海を後にするのでしたー。
-。
ー。
というわけで、海から一旦宿泊施設へと戻り、各自着替えや簡単なシャワーを済ませた後、1階の談話室で提督や妖精さん達はのんびりと彼女たちを待っていると。
「ところで提督さん」
「む?」
机の上で熱心に何かの手記を見ていた妖精さん代表”工場長さん”は、提督の手の平に止まり、じっと提督を見つめます。
「このお休みが終わった後、再び建造等はお考えですか?」
「ん・・そうだな、確かにそれもいいかもしれない。」
というのも、提督が率いる艦隊には未だ人材不足・・というよりかは艦娘不足、という言葉がいいかもしれませんが、圧倒的に戦力が足りていない現状。
そのため、そろそろ建造をすべきか否か、と提督は執務の休憩中に漏らしたのを、妖精さん達が聴いていたのでしょう、それを工場長に伝えたという経緯があるそうです。
「なるほど・・」
「建造でしたらお任せください、以前より多少グレードも上がりましたし、即戦力として活躍できる”艦”達も応えてくれるかもしれません」
以前も説明していた建造に関することをふと思い出します。
それは以前、工廠・・もとい妖精ふぁくとりーで言っていた工場長さんの言葉ー。
”「そうですねぇ・・艦の記憶とでも言いますか、残留する思念といいますか。そういった形ある思いが結晶化されたものをもとに戻す・・というのが近いのかもしれません。だから私たちも、どんなかんむすさんが出てくるのかわからないんです」”
というもの。
「とりあえずこの休暇が終わった後稼働させてみよう、その時は頼む、工場長」
「任せてください、ぼくたち妖精さんの力でなんとかしてみせます」
「あいあいさーー」
「まっかせてよーーていとくさーーん」
机の上でくるくるくるくる、提督にお願いされたのが余程嬉しかったのか定かではありませんが、何故か喜びの舞?をしているのは見受けられます。
「お待たせしました司令官!」
一番最初に降りてきたのは朝潮で、提督を見つけた瞬間に敬礼を行い、提督はすこしだけ考え込むようにしてから頷いてから
「私たちはオフなのだから、そんなに固くならなくても大丈夫だぞ?朝潮」
提督の予想外の言葉に、朝潮は一瞬びっくりするように目を丸くさせながら、慌てて口を開きます。
「で、ですが司令官。朝潮は艦娘で、司令官は上官で・・えっと・・」
「つまるところ、俺みたいになればいいんじゃねえの?肩の力抜けってな、待たせたな提督」
吹き抜けから声が聞こえ、降りてきたのは天龍、そのあとに続いて鳳翔と暁、
そして大潮の残り全員が下りてきています。
「天龍さんは抜けすぎなのよっ!」
「あらあら」
暁の突っ込みに、天龍は「へいへい」と軽く流しながら提督の隣に座り、ぞんざいな扱いをされた暁は
なによなによー!!!と”ぷんすか!”状態です。
「ほらほら暁ちゃん、可愛らしいお顔が台無しですよ・・?」
「だって・・!天龍さんが暁の事無視するんだもの!!」
「悪かったって・・ほらほら、許せよ暁~」
ほっぺんつんつん、そして天龍のお顔はすこし意地悪そうににやにやしてます。
「も、もぉ~~!!!暁のほっぺつんつんしちゃだめなんだから~~!!!」
そんな様子を見て大潮が困ったような笑みを浮かべながら提督に視線を向けつつ
「あらら~また始まっちゃいました~~」
最早恒例行事、天龍が暁にちょっかいを出して、暁がそれに対してぷんすか!そしてそれを見て天龍は更ににやにやするという悪循環です。
「ほらほら、天龍もそこまでにしてやりなさい、暁もお腹が空いているのだろう?そろそろ行こうじゃないか」
提督がわざとしびれを切らすように立ち上がり、二人に声をかけます。
「っとそうだった、へへっ!飯行こうぜ!飯!」
「もう!都合いいんだからー!!」
「暁さんも司令官と一緒にご飯しましょう、ね、大潮」
流石は長女と言わんばかりに暁をそっとフォローし、そのまま大潮に声をかけることで連携を行います。
「はい!!行きましょう~!!アゲアゲですよ~!!!!どーん!!!」
「ひ、ひっぱらなくても暁はついてくんだから~!!大潮ちゃん~!!!!!」
本当に賑やかですねえ、と提督の肩の上で艦娘達を見つめる工場長。
その言葉を聞いて提督は口元に笑みを浮かべてー
「本当にいい子達だ、私が提督で申し訳ない程にな」
提督の言葉に工場長は軽く首をふるふる横に振って、ちょこんと可愛らしく立ち上がります
「何を仰いますか提督さん。」
「うん・・?」
「提督さんだから彼女たちは着いて行っているんじゃありませんか」
これもあなたの人徳ですよ、提督さん。
妖精さん、もとい工場長はにこーっと可愛らしく笑い、再び提督の肩に座る。
(やれやれ・・)
こういう時、彼女達ならばどのように反応するんだろうかー。
夏の夜に浮かぶ月が、提督達を優しく照らし、その先を示す航路はとても静かな道、けれどもそれはとても暖かい道で。
提督もまた、彼女たちのぬくもりに触れて、その心は次第に彼女たちの色に染まっていくのでした