あまり関わりが上手くない提督が鎮守府に着任するお話 作:木啄
さて、ゆっくりなペースではありますが、更新です。
今回で夏休み編は終了です。
次回からはまた鎮守府辺りの物語に戻ります
あと実はこっそり前作の主人公の名前を入れました、機会があればこちらの話にも織り交ぜていけたらいいなと思います
よろしくおねがいします
「それでは、こちらでお待ちください」
施設の職員によって案内された部屋に入ると、そこは10人程度がくつろげるであろう広々とした和室で、高級料亭などによくある大きな四角い机と、おいしそうな料理が置かれています。
窓に視線を向けると、そこには海が映っており、昼は綺麗な青い海が、夜は夜でまたどこか神秘的な雰囲気を醸し出しています。
「ひえ~・・・すっげえなぁ・・流石大本営の運営する施設っつーか・・」
「暁どこに座ればいいのかしら?」
各々中に入ると驚きの声をあげながらも、きょろきょろと、初めてこういった場所に来たのかもしれません、
慣れない様子であちらこちらと見回しています。
「どこでも構わないぞ、座布団は人数分置かれているようだしな」
恐らく向こうでこちらの人数を事前に把握していたのかもしれないな、と考えつつ、提督もまた、端の方に座ろうとしたときだった。
「おおっと、俺たちの大将が隅っこに座るってどういうことだよ、堂々と真ん中座れよ!真ん中!」
となりから突然提督の腕をつかんだ天龍が、半ば強引に席の真中へと座らせ、その様子を見てほかの人たちはうんうんと頷いています。
「司令官が隅っこじゃあ暁司令官の隣にすわ・・すわ・・えっと・・座ってあげてもいいのよっ!」
「あらあら、暁ちゃんたら、提督の横がいいんですか?困りましたね・・」
「大潮司令官の隣がいいです!!!」
「あ、あの、朝潮は秘書艦なので、司令官の横が・・(?)」
「もってもてだな提督よぉ~!」
「む・・なぜ私の横がいいのかよくわからないが・・ううむ」
てんやわんやの提督を見ながらけらけらと笑う妖精さん達を、工場長がぺしっと頭をたたいていたりしているそんな和やかな雰囲気(?)の中、突如艦娘達は真剣な眼差しで手を前に出し始める。
「いいかお前ら、じゃんけんだぞ。勝ち負けの残酷な世界だが、これが手っ取り早い。」
「はい!!!大潮頑張ります!!」
「え・・ええと、私も参加するんですね」
「もちろんよ!!みんなで勝負するんだわ!」
困り眉毛の鳳翔さんですが、その表情はどこかまんざらでは無さそうで、一方の提督はというと。
「・・工場長、彼女たちは大丈夫だろうか。何か喧嘩でも始めなければいいんだが・・」
「む・・?あぁ、大丈夫でしょう、しかし提督さんはもてますねえ」
「もて・・・?」
一体何を言っているんだろうか、といった表情に。
「・・・はぁ~~~」
わざと、お前それわざとだろうと言わんばかりにおおきな溜息を、とても大きなため息をしながら。
「うわぁ~提督さんどんかんですねえ」
「ていとくさんはどんかんさん」
「ていとくはうどんさん」
そして続けざまに周囲の妖精さんからの理不尽な言葉攻め、というか最後の妖精さんのそれは絶対関係ないでしょうという提督の心の呟き。
「まぁとりあえずですよ。ほら、じゃんけんの勝敗が着いたようです。」
「ん・・?」
そういえばじゃんけんの勝敗はどうなったんだろうか、ふと思い視線を彼女たちに向けるとー。
「あ・・あらあら・・私が勝ってしまいました」
「俺が勝ったか、まぁ勝負は勝負!これも日ごろの行いってやつだな!」
(鳳翔さんに関していえばわかりますけど・・・)
「それじゃあ失礼するぜ~♪」
「ん?天龍か。」
(((日ごろの行いに関していえば一番ひどいのは天龍さんだと思いますけど)))
なんだか納得がいかないといった感じの天龍に対する駆逐艦ずの視線でした。
・・・。
てっきり京懐石かなにかと思っていたら、その予想を遥かに超えて。
「ひゃっはー!!肉だ肉!!しゃぶしゃぶだぜ!」
「これはまた凄い量だ・・」
近くで野菜や飲み物などをしている施設の人間に声をかけてみると
「おかわりもございますので、お気軽にお申し付けください」
(艦娘は人によっては大量に食事をすると聞く・・こういう対応が当たり前ということなのか・・)
一番多く食べる・・というより、食べっぷりがいいのは天龍で・・。
「はむ・・あつっ・・ふうーー・・ふうーー・・」
「はむはむもぐもぐ・・ふぉれおいひいれふひれいはん!!(これおいしいです司令官!)」
「こら、大潮。ちゃんとお口のなかをからっぽにしてから喋らないと朝潮は怒っちゃいますよ?」
「そうよ!レディーはおとなしくごはんを食べる物よっ♪・・あちちちちっ!!い、いまのは違うわよ!ちょっと熱かっただけよ!」
「あらあら暁ちゃんも、ゆっくりでいいんですよ」
鳳翔さんはゆっくりと、落ち着いた様子でお肉や野菜を口に運び、少しだけ頬を緩ませながらおいしそうに食べています。
「・・・あ・・・えっと・・提督?なにか私の顔に着いていますか・・?」
「あぁいや、すまない。こうして改めて皆とそろって食事をするのもなんだか以前の食堂での出来事を思い出してな」
それは鳳翔が仲間として加わったときの会の事で、鳳翔もまた、嬉しそうに笑みを浮かべ、そんな二人を見ながら天龍達も笑った。
「まっ、あれからしばらく経つし、大分俺達も馴染んできたよな」
「はい!大潮も皆さんと仲良くできて、とっても幸せです!!」
「朝潮も、大潮と同意見です」
「あはふひもおんなひ・・もぐもぐ・・おんなじよ!!」
先ほどまでレディーといっていた口が大潮とおんなじことをしている事に気が付かないんだろうなぁ、と提督と鳳翔は苦笑いを浮かべてしまいます、とはいえー。
「あぁ、こうして君たちと共に同じ飯を食い、共に戦い、共に生き抜く。だがしかし、私は君たちに支えられている面が多いのは事実だ」
だからこそー。
「だからこそ、私はもっと君たちと共に、この海を守っていけるよう役に立てる努力をしていく。こんな不甲斐無い提督だがー」
「そんなことないぜ、提督。言ってるだろ?お互い様ってな」
天龍がその先を言わせないぜというばかりに口を開き
「えぇ、そうですよ提督。それに・・役に立つ、立たないというお話ではありませんよ提督?」
「私たちの司令官は、暁司令官ですからね!」
「はい!」
「そうよっ!」
各々声を上げる中、再び提督は言葉を失い、そんな提督の肩にー
「もういいではありませんか提督さん。あなたの言葉、あなたの気持ち、彼女たちに十分伝わっています。
あとは行動で示すのみ、ですよ」
彼女たちの言葉をフォローするかのように工場長が肩にちょこんと座り、うんうんと頷いています。
そんな工場長の言葉にすっかり気をよくした天龍は、箸で器用に火を通した肉をつまんでー
「へへっ!そういうこった!・・・っと、ほらほら食おうぜ!!俺があーんしてやろうか~?」
天龍の言葉に朝潮と大潮がびくっと反応、そしてー
「!!!!大潮やりたいです!!司令官にあーんします!!」
「私も・・え・・ええと・・司令官に・・朝潮も・・」
「あらあらあら・・ふふふ」
「と、とりあえず落ち着きたまえ天龍。私は自分で食べるから問題ない・・!」
慌てる提督を見て、工場長含めた妖精さんたちは再びけたけたと笑い、なんとものどかな雰囲気の夕食会が進んでいくのでした。
・・・。
さて、そんな楽しい夕食も終わり、今現在。
「ふぅ~・・」
提督は一人、ペンションに備え付けられている露天風呂に浸りながら、夜空を見上げて今日の出来事をゆっくりと思い出しながら目を瞑る。
「なんだか大変な1日だったが・・」
悪くない1日だった、そんな風に思える。
海軍に入りただひたすら前だけを向いて走っていた自分が、今こうして艦娘である彼女たちを従え、鎮守府という場所の頭となり、海を守る戦いをしていること・・
その為ならばどんな事があろうと、自らを犠牲にしても構わんとすら思っていた自分が、寧ろ彼女たちに大切にされているという事実ー。
男として情けない話かもしれないが、それはそれでお互いに信頼関係を構築していると・・
「思っていいのだろうか・・」
そんな独り言にー
「いいんじゃないんですかねえ」
提督の近くで、工場長が答えます。
「!??」
突然の声に驚き、はっとするようにあたりを見るとー
「こんばんは~提督さん、いいお湯ですねえ」
「やほやほー提督さーん」
「いいおうどんですねえ~」
またもや現れた妖精さん達、そして最後のその妙な言い回しをする妖精さんは先程の?
「工場長か・・突然で驚いた」
「ははは、それはまたご無礼を。」
ぱしゃぱしゃとお湯を叩いてみたり、つんつんとつついてみたり、色々な妖精さんがいますが、よく見ると全員水着をしっかり着用しており、そのあたりはやはりエチケットなのでしょう。
案外しっかりしているものだな、と提督は驚きます。
「彼女たちは間違いなく、貴方の事を信頼しています。これは僕の目から見ても・・そうでしょうなぁ」
「ふむ・・わかるものなのか・・?」
えぇそれはもう、と妖精さんはどや顔でこちらを見てきます。
別にどや顔しなくてもいいんですけどね。
「私も彼女達とは似たような存在。なのでなんとなくわかるんですよ」
”あなたは信頼に足る男だ”ということを。
「だからこそ元帥殿も、貴方を提督として任命したのではないでしょうか」
「・・・そうなのだろうか」
湯気が空を舞い、じっと空を見つめると、星が一つ一つキラキラと煌めき、月が世界を照らす。
何とも言えない心温まるような、そんな世界に目を向けつつ、提督は工場長の言葉に耳を傾けます。
「きっとそうですよ。・・そういえば提督さんと同じように、まだまだ新参者ですが、小さな鎮守府に着任した風変わりな提督さんも居ると‥名前は確かー・・」
「柊優月君のことか」
提督はふと誰かの名前を漏らし、工場長はそれですそれですと頷いた。
「彼は私達妖精さんの波長がとても良いらしく、艦娘とも直ぐに仲良くなったとの噂で・・。」
「噂には聞いている、試験の際に会話をしていたと・・」
「えぇ、ずばり、彼のような素質ある人物も重要ですが、他にも重要なことがあります。」
「重要な事・・?」
工場長の言葉に、提督は視線を工場長へと向ける。
「ずばりそれは・・繋がり、縁ですよ」
「つながり・・つまるところー」
艦娘達と仲良くすること。
更に砕いて表現すると、それはコミュニケーションということになります。
「ふむ・・彼女たちと仲良くする・・ということか・・」
「今の僕から見ると・・あぁようやく氷が溶けてきたのかなぁ、といった感じです。」
「氷・・というのは私の事か?」
「えぇ、貴方と、貴方の心です」
その声は先程とは違い、どこか真面目な。工廠・・もとい妖精ふぁくとりーで作業をしている時と同じ声。
「そのまま、溶かしていってください。そして、心の花を咲かせ、もっと僕たちや、彼女たちと仲良くしてください」
ーあなたと彼女たちのつながりが強ければ強いほど、彼女たちは強くなります。
工場長の言葉に、提督は目を丸くする。
見た目素振りに関しましては、なんともあどけなく、そしてかわいらしさを感じますが、いまの工場長から感じ取れるものは。
(まるで元帥と話をさせていただいたときと同じ雰囲気だ・・)
「・・ふぅ~ちょっと真面目な話をし過ぎてしまいました」
そんなオーラはどこへいったのやら、今はもうすっかりいつも通りの工場長で。
「・・本当に不思議な事ばかりだな」
提督はどこか苦笑いを浮かべながら、視線を工場長から再び空へと向ける。
(いまは夜、そしてもう少ししたらきっと、太陽が空を照らすだろう・・)
そして視線を月は静かに照らす夜の海へと向けるー。
(いつかこの海にも・・平穏を取り戻すその日まで)
「・・取り敢えず今は・・ゆっくりするか」
「えぇ、えぇ。ゆっくりしましょう」
例え軍人といえど、人間ですからね。
工場長はそう呟くと、ぷかぷかと浮きながら
「はあぁ~・・温泉は最高ですねえ・・」
なんとも親父臭い事を言う。
しかし提督は笑うことなく
「あぁ・・。そうだな」
工場長の言葉に、提督も頷いたのでした。
「おんせんおんせんえいえいほー」
「いやぁ温泉さいこーですねえ」
「これはうどんもゆがけそうですねえ」
「こーら君たち、うどんをこの中に入れてはいけませんよ、普通のお湯にしましょう」
いや突っ込むところそこなのか工場長。
なんとも言えない、先ほどまでの空気はどこへやら、提督は表情を崩して、やれやれといった感じに目を瞑り、妖精さん達のはしゃぐ声と、遠いところで聞こえる潮騒に耳をすませてー。
その体を暖かい温泉に包むのでした。
・・・・。
「おっしゃああ!!!!俺の勝ちぃ!!!!」
「も・・むううーー!!!強すぎなのよ!!天龍さん!!!」
「あ~・・また大潮ババ抜きでドべさんです~~」
「私は3位ですね・・」
「あらあら、天龍さんお強いですね♪」
温泉から上がって少ししてから、天龍は一体どこから持ってきたのかわからないトランプでババ抜きをはじめ、今現在ババ抜きで連勝中とのことでー。
「ふっ・・俺に任せりゃこれぐらい余裕のよっちゃんだぜ」
「うわっ!!その表現古いですよ!!天龍さん!!」
「にゃにおう!!!」
(こっちはこっちで賑やかなものだな・・)
彼女たちは彼女達で先程のじゃんけん同様、勝負ごとに燃えているようで。
「おっ!!提督戻ってきたぜ!!!」
「おかえりなさい!司令官!!」
「おかえりなさーーーい!!司令官!!大潮待ってましたーー!!」
「おかえりなさい、司令官。」
「おかえりなさい、提督。お風呂いかがでした?」
「あぁ、ただいまみんな。中々いい湯だった。悪くないものだな」
各々の言葉にまとめて返事をした後、提督の裾を大潮がひっぱる。
「司令官も大潮達とトランプで遊びましょう!!楽しいですよー!!」
「む・・?私も参加するのか?」
「それはいいわね!!暁たちと遊ぶのよ!」
「む・・、皆が良ければ」
「ふっ・・!!俺様のトランプバトルに勝てるかな!!」
「あ・・あらあら」
そんな和気あいあいとした様子を遠くから眺める妖精さん達。
「・・・あの様子では、もっと早く氷は解けるかもしれませんなぁ・・提督さん」
・・・・。
「よし、あがりだ」
「なっ・・嘘だろ・・」
「ふふふー!!大潮2番!あがりです~!!」
「朝潮は3番です」
「あら・・私もあがりました」
「暁もあがり!!どべは回避ね!!」
「お・・おいっ!?まじかよぉ!!??」
先ほどまでの威勢どこへやら、天龍の手元に残った大量のトランプとジョーカー。
「くっっそおおおおおおおおおおお!!!!!!」
天龍の悔しそうな声と同時に楽しそうに響き渡る笑い声。
「ちきしょう!!もっかいだ!!もっかい!!!」
その声は夜が更けた後も絶える事無く、静まり返ったのはもう少しで朝が来るであろう時間帯との事でしたー。