あまり関わりが上手くない提督が鎮守府に着任するお話 作:木啄
木啄です。
今回は1話にまとめるのもかなり長いと思ったので二分割にして投稿します。
皆様はしっかりと食事睡眠とっていますか?
今回はそんな提督達のお話です。
その日、鎮守府内に天龍の声が響き渡る。
「ぬぁああああああああああああああんだってええええええええええええええええ!?」
突然の天龍の叫び声にも近いそれに、妖精さんも思わず手に持っていたお菓子を落としてしまう程の大声です。
「おいおいおい!!提督ぶっ倒れたってまじかよ!!!」
「まじです、原因は過労で、大潮もびっくりしました!そして天龍さんの声にもびっくりしました!」
食堂室にて、現在鳳翔率いるご飯作る隊(鳳翔、暁、朝潮)がご飯を作っている間、軽巡洋艦である天龍、そして朝潮型駆逐艦2番艦である大潮が提督の事に関してお話をしています。
「はぁ~~・・・どうせあれだろ・・?”私ばかり休んでいてはいけない(キリッ)みたいなやつだろ・・?」
「まさしくそれみたいです。先ほど朝潮姉がそれに関して大変おこおこの様子でした~・・宥めるの大変だったんですよ~~」
「ったくよぉ・・はぁ・・んで、いまの艦隊の指揮は誰がやってんだ?」
「とりあえず朝潮姉が今現在の総指揮権を持っています。提督から無理やり言わせたらしいです」
・・・。
「こほ・・っ・・しかし・・私が・・やらねば・・」
「いいですか司令官、今ここで、朝潮に全艦隊運営の指揮権を朝潮に任命すると仰って下さい」
「なっ・・けほ・・しかし、それは」
「はい?」
「いや・・・だからだな・・」
「はい??」
「だから・・その・・」
「何か仰いましたか????」
「いえ・・・なんでもありません・・わかった・・」
「はい♪」
(恐ろしいな・・)
・・・。
「またおっかねえことしやがるぜ・・・」
「どうも朝潮姉、司令官の考えてることとか手に取るようにわかるようになっちゃいまして」
「まぁ・・秘書艦やってればそうなる・・のかね?」
ううむ・・と天龍はうなり声をあげつつ、大きく溜息を吐く。
「まぁ・・あれだな。とりあえず提督にはいい薬だろ」
「そうですねえ~~、無理は禁物。ということがわかりますね!」
「だな」
ーというわけで。
「本鎮守府の艦隊運営、および鎮守府近海に関する警備などの緊急会議を開こうと思います」
「まぁ・・そうなるな」
「提督が体調不良の今ですからね・・なんとかしないと」
「暁も全力でサポートするわよっ!任せて!」
「大潮も!あげあげですよー!!」
「気合引き締まっているとこ申し訳ないんですが・・僕がここに呼ばれた理由はなんででしょう?秘書艦」
近くまでホワイトボードを持ってきて、大きく”艦娘による緊急鎮守府運営会議”と書かれたボードの前で、何故か工場長が座らされている現状。
「工場長はここの工廠の総責任者です。」
「まぁ‥確かに・・というより、妖精ふぁくとりーです」
「確かそのような名前でしたね、なので、ここに居る義務です」
「な・・なるほど・・」
朝潮の普段とは違うオーラに、流石の妖精さん代表である工場長も言葉が出ないようです。
というのも、怒ると怖い朝潮、忠犬でありながら、最近はその鋭さに磨きがかかってきたと提督がお墨付きを出すぐらいでー。
というよりそのお墨付きは一体なんのお墨付きなんだ、という工場長の突っ込みです。
「とりあえず、です。工場長さんには工廠の運営の大半を任せていますし、連携が極めて重要、ということです、なので、お力を借りたいと」
「まぁ、ふむ・・そうですね、ごもっともな意見ですね。わかりました、この工場長、皆様に役立つならひと肌脱ぎましょう」
「ありがとうございます、では工場長の言葉もいただけましたし、本題に移ります」
まるで言質を取りました、次に行きますといった完璧な流れに、工場長は内心してやられたと思っています、はい、思っています。
「まずは資材のローテですね、これは主に鎮守府近海の遠征任務に関してですが、正直手が足りません、エラー猫の手も借りたいという状況です」
・・・ん?エラー猫?
「エラー猫はやべえぞ朝潮、とりあえず猫だけにしておけ」
「・・・それもそうですね、それでは猫の手も借りたいということで」
いや、いまのやり取りは必要なの?という工場長の再度つっこみ。
「というわけで、工場長には新しい艦の作成を依頼したいのです」
「ま、待ってください秘書艦。流石に創造艦ともなると、提督のお力がー」
新しい艦娘の生成・・つまり、艦の記憶を海底からすくい上げ、人の形にするという事。
その機能を備えた設備が工廠、もとい妖精さん達で言うところの妖精ふぁくとりーにあり、簡単に言ってしまえば妖精さんだけでも艦娘は作れたり作れなかったりするということになるものの・・。
最終的な決定権を持つのは提督であるというのは変わずというものでー
「”レシピ”を投下するだけですよね?」
「え・・えぇ、まぁ大雑把に言いますと・・」
「それは、朝潮でもできますよね?」
「ま・・まぁ?できると思いますし、更に言えば同じ艦娘である彼女の心に反応する艦も少なからずある可能性は高いです」
朝潮型という存在の長女たる彼女の・・”朝潮”に反応する魂が存在しないとも限らない。
「同じ艦・・ふむ・・なるほど・・それでは後程工廠に行くとしましょう、とりあえずそうですね。
遠征は後回しにして、鎮守府近域の警備を最低限行いましょう。鎮守府内の警備は私がまとめて引き受けます。」
「りょーかい、んじゃぁ旗艦は俺だな。とりあえず装備編成は俺に任せろ」
天龍の言葉に、朝潮は「お願いします」と軽く頭を下げる。
「任務開始時間は定刻も過ぎてますし、この会議が終わり次第出撃してください、何かあれば直ぐに連絡を」
「おう!」
「任せてよね!」
「大潮がんばりまーーす!!いつもより!!あげあげ!!ですよお!!!」
「皆さんのカバーができるように、私も精進しますね」
各自気合の入った声を聴いて、朝潮は安心したように微笑む。
(流石司令官、こういう時も皆さんの士気は下がっていません)
これもきっと、司令官が普段頑張っている賜物なのでしょう。
「では、緊急会議はこれにて終了します、各自行動を開始してください」
「「「はい!!!」」」
こうして、提督が熱で倒れ、提督不在の中、艦娘達による艦娘達の鎮守府運営がスタートしたのでした
・・・。
そんな最中
「ううむ・・・」
ー果たして彼女たちはうまい事やってくれているだろうか。
自分自身の体調不良等そっちのけで、彼女たちの事を心配している病人がここに一人。
「しかし・・」
睡眠時間や食事の時間を削り鎮守府復興及び大本営から資材を工面してもらえないだろうかといった様々な工作を行っていただけでこの様とは。
(情けないな・・私という男は・・)
過労による熱によって体が赤ランプを灯しているからかは定かではないが、視界が少しばかりぼやけたまま天井の蛍光灯をただ無言で見つめていると
「やぁやぁ提督さん、お身体の調子いかがですかな」
突然虚空から現れ、ひょいと提督の枕元にちょこんと座り、こちらを可愛らしい顔でじーっと見つめているその正体は言わずもがな。
「・・工場長か。一体どうした?」
「はい、ちょっとした報告に参りまして・・これはお見舞いですよ」
提督の枕元に置かれた茶色い小さな瓶、何やら白いラベルなどが貼られた飲み物?のような物で、ちらりとその名前を見るとー
”ようせい印のげんきの素ですが?”
・・いや、なぜ疑問形なのだろう、誰かが突っ込んだのだろうか、これはなんですか?と。
きっとその時、彼らは伝えたのでしょう
ーようせい印のげんきの素ですが?と・・、いや、二度もタイトルコールのように言う事もない、と提督は頭の中で一人漫才をしていることをいざ知らず。
「飲むと元気になります、我々からのささやかなプレゼントですよ、提督さん」
「・・有難くいただくとしよう・・」
むくりと起き上がり、はいどうぞと言わんばかりに工場長は丁寧にキャップを外し、提督の手元へと持っていきます。
「あぁ、すまない・・ん・・っ」
ひょいと持ち上げ、勢いよく口の中へと運びます。
苦かったり甘すぎたりするのだろうかと思っていたが、自分の体調不良に合わせて調整されているのでしょう、栄養ドリンクにもにた甘さを仄かに感じるものの、苦も無く飲み干せる味でした。
「よし、これで一晩しっかり休めば明日には快調ですよ」
「あ・・あぁ、ありがとう」
何だかんだ面倒見がいいのがこの工場長という存在で、何か困ったときや手持無沙汰な時にひょいと現れては提督の相手をしたりするので、案外一緒にいる時間帯は秘書艦には劣るかもしれませんが、中々といったもので
「こほん、ところで・・報告だったか」
「あぁ、そうでした。実はですね」
・・・。
「ふむ・・艦娘のレシピを回すという事か」
「えぇ、彼女・・朝潮ならば悪用はしないとは思いませんが、やはり提督さんのお耳にも入れたほうがいいと思いまして・・」
”司令官の体調が回復するまで、緊急案件以外は伝えないようにしてあげてください”という朝潮の命令を無視した工場長の行動に、提督は静かにうなずく。
「最終決定権は今なお提督さんが持ってますし、即刻中止となれば止める事も出来ますが・・」
「・・いや、そのまま続けてくれ。」
「わかりました、それでは引き続き稼働させておきます。」
「あぁそうだ、少しいいか」
「はい、なんでしょう?」
先ほどの報告内容に入っていた、朝潮という艦に反応してという言葉に、提督は気になる所があったのでしょう、それはどういう意味なのだろうかと尋ねてみると、工場長はその可愛らしい顔のまま真面目なオーラを醸し出し始めます。
「1943年のとある海戦について、提督さんはご存じでいらっしゃいますか?」
「あぁ、知っている」
「その際に散っていった駆逐艦朝潮の記憶、そして、その朝潮が沈んでいる海底で、同じように眠っている”彼女達の繋がり”や、”朝潮型による姉妹の繋がり”が反応するかもしれないということです」
「ふむ・・」
「彼女たちはのつながりは途絶えているようで途絶えていない。その見えない線は未だ海底で燻っていて、提督さんや、彼女たちの心に反応するかのようにその線は繋がり、艦娘として生まれ変わる・・なんてこともあるんですよ」
その暗き海底で眠る想いは、決して美しいものとは呼べない負の感情だって存在する。
「深海棲艦と呼ばれる存在は、そんな感情から生まれた、などと噂されている事もあるほどに、想いや気持ちという力は、底知れぬパワーを秘めているのですよ、提督さん」
「あぁ、私もそれは信じている」
だからこそ、彼女たちを信頼しているのだから。
「さて、今は提督さんが病に伏している状況で、長話をしてしまうとお身体に障りますので、僕はそろそろ」
「あぁ、わざわざすまない工場長」
「いえ、提督さんは早い復帰を・・と言いたいところですが、ゆっくり休むという事も覚えるべきでしょうなぁー」
工場長はそう言い残すと、ふわりと宙に漂うと思えば、いつの間にか姿は消えていました。
そして再び訪れた静かな空間。
「・・・」
”お互いの繋がり”かー。
提督は心の中でその言葉を呟きつつ、次第に意識は薄くなり、そのまま目を瞑るのでした。
ー。
「やぁ朝潮さん、状況はいかがですか?」
提督とのやりとりを終えてから、工場長は工廠へと戻り、普段提督が捜査しているタブレットを逐一チェックしながら資材等の確認をしている朝潮に声をかけます。
「はい、ええと・・そうですね。私が何か急いで対応するということはなさそうです。殆ど全て。・・これは司令官がスケジュールを組んでいるのでしょうか?」
「時折僕とも打ち合わせをしたりしますが、そうみたいですねえ。この鎮守府に着任した当初から、色々どうしたものか、と考えていたようですし」
「やっぱり・・朝潮達にも教えていただけたらお手伝いするのですが・・」
「まぁまぁ、その辺りは僕からお伝えしておきましょう・・それよりもレシピを回す件ですね」
タブレットに表示されたレシピに関する内容についてご説明します、と工場長は朝潮の肩に座る。
「そこに表示されている数値をある程度選択していただいて完了を押すだけです、あとはこの機械が自動的に動きます、ポッドの内容は企業秘密ですね!」
「・・・なるほどです」
海軍に企業も無いでしょうという突っ込みはしない方がいいのでしょう、と朝潮は頷きます。
「さて、この時間が0になったとき、このポッドから新しい艦娘さんが出てくるのですが・・正直なところ、我々にもどんな艦が出てくるのかはわからないのです」
「そうなのですか?」
「はい」
工場長は手元にある資料らしきものをぺらぺらとめくりながら、ふーむと可愛い唸り声をあげます。
「こればかりは機械の気分と、あとはどの艦の記憶が応えてくれるのか・・なので」
「そうなのですね、わかりました・・それでは・・そうですね、時間になるま一先ず執務室で秘書艦の任務をこなしてきます」
「えぇ、時間が経過しましたらこちからお伝えしますので」
工場長の言葉に、「おねがいします」と、朝潮は頭を軽く下げてそのまま工廠を後にし、
そんな彼女の後姿を見えなくなるまで見続けた後。
「・・さて」
くるりと視線を再びポッドへと向けます。
「何がでるかなー」
「わくわくでっすねえ」
「ふふふのふーん」
妖精ふぁくとりー(工廠)でえっさほっさと色々な妖精さん達が働く最中、工場長と妖精さんの一部は提督不在の中で稼働しているポッドをまじまじと眺めながら
「さて、今度は何がでるのやら」
「かっこいいのがでるといいですか?」
「おいしそうなお菓子もすてがたいですねえ」
「ふふふのふーん」
「お菓子も捨てがたいですが、きっと出てくるのは艦娘さんだよ」
「つっこまれましたぁーあいええー」
・・という、なんとも気の抜けるような会話をしている妖精さん達。
そんな妖精さんの一人が、工場長に視線を向けます。
「こうじょーちょー、ていとくさん元気になるですか?」
「それぼくもきになってましたぁー」
「ふふふふんふーん」
「あぁ、それはもう、我々ようせい印の”あれ”を飲ませたので、直ぐに元気になるんじゃないかなと」
「おぉーーあれですかぁーー・・ところであれってなんですかあ??」
「それはもうあれしかないでしょう」
「「「”ようせい印のげんきの素ですが?”」」」
・・・・。
さて、鎮守府内部は普段よりも少しばかり妖精さんや、艦娘達の動きが慌てふためいているところが見受けられるものの、艦隊運営に支障は出ていない様子。
それは海上も似たようなもので
「んー・・いまのところ敵深海棲艦はゼロって感じだが・・鳳翔なんか反応あるかー?」
索敵機を飛ばし、敵深海棲艦や不審な敵影が居ないかどうかを空からの目で監視しているものの、特に不審な点は無し。
「特にあの子たちからの反応もありませんね」
「大潮も異常なしですね~」
「暁も同様に異常なしねっ、私たちに恐れをなしたのかしら!」
「とりあえず陣形崩すなよ、油断もするなよー?」
「「はいっ!!」」
二人の可愛らしい元気な声に、鳳翔もあらあらと笑顔になる。
「おっしゃ、このままポイントを回るぜ~」
海上を滑るようにして4人は進んでいき、その上空を鳳翔の索敵機が飛んでいきます。
聞こえる波の音も心地よい物で、このまま戦闘が起きなければいいのに、と願う4人の艦娘達。
「司令官はちゃんと休んでくれているでしょうかー?」
大潮はすいすいと進みながら、提督の話題を出してみます。
「流石に司令官も朝潮のきっつーーいお説教に従うしかないと思うわ!時にはレディーの言葉に従うのも、紳士のたしなみよ!」
それは紳士の嗜みなのか・・?などと天龍は考えつつ。
「・・っと、前回深海棲艦と戦闘した海域に入る。周囲警戒!」
「・・はい!」
「はい!」
「はい」
それぞれ返答をしながら、辺りに不審なものが無いかどうか目を配っていきます。
一般人と比較しても、艦娘の視力は非常に優秀で、海上ではその視力の良さを活かして、敵が侵入してきていないかどうかの警備が行えるというわけです。
「んー・・特に不審な点は見当たらねえなぁ・・」
「油断は大敵ですね、このまましばらく様子を見ましょう!」
「えぇ、そうねっ」
「索敵機の方も反応無し、このまま上空を哨戒させます」
他の海域に比較すれば安全海域ではあるものの、それでも尚時折はぐれの深海棲艦や、こちらの勢力を視察するような動きを見せる敵深海棲艦も時折発見、戦闘が発生したりしている。
実際に前回の鎮守府近海警備の際、はぐれ深海棲艦2艦と戦闘が発生、敵深海棲艦撃破、こちらの損害は特にないという結果ではあるもの。
(実際に戦闘は起きたし、なんたって今は提督不在だからな・・敵からすれば攻めるのにうってつけっていう状況だ・・)
なるべく集中力を切らすことなく、辺りに目を光らせ。鎮守府近海のエリアを転々としていきます。
「大潮、暁、敵の様子はあったか?」
天龍の言葉に、二人は「ありません!」と大きな声で返事をします、続けて鳳翔さんにも声をかけると
「いえ・・敵深海棲艦らしき敵影は無し・・といったところでしょうか」
「よし分かった、それじゃあそろそろ時間だ、いったん鎮守府に帰還するぜ」
「「「はい」」」
素早い返事と共に陣形を再び組みなおし、天龍達は来た道を戻る準備をします。
そらからゆっくりと鳳翔の元に戻ってくる索敵機を眺めながら
「まっ、平和が一番だよな」
天龍はぼそりと、独り言のようにつぶやくと
「えぇ、そうですね」
天龍の声が聞こえたのでしょう、鳳翔は頷き、無事全索敵機を戻したところで、彼女たちは鎮守府方面へと足を運び始めます。
「よっしゃあ、そんじゃあ朝潮の所に戻るぜ」
「「おーー!!」」
二人の元気な声は響き渡り、鎮守府近海の警備、異常なし、という無線が朝潮の元に届いたのでした。