あまり関わりが上手くない提督が鎮守府に着任するお話 作:木啄
最近はちょっと忙しいので、また投稿ペースが下がりそうですが、少しずつ書いて書いてをしているので、また失踪(?)することは無いと思います。
それでは、続きです。
朝潮に無線を送った後、数刻して天龍達は帰投。
「というわけで、鎮守府近海敵影は無し、今のところは安泰ってところだな」
鎮守府に帰還後、デブリーフィングを行っていた軽巡洋艦の天龍と、秘書艦である朝潮型駆逐艦の朝潮二名は、司令室にてそれぞれの情報共有を行っています。
「取り敢えず、今現在は深海棲艦による襲撃の確率も低いと考えてもよさそうですね」
「あぁ、提督が現場に復帰するまでは荒事が起きないことを祈るばかりだ」
二人の視線はゆっくりとはめ込み窓の外に見える青い海へと向けられます。
「・・数か月前まで、この鎮守府の管理を任されていたのは私で、その後正式に司令官が着任、それから戦力強化の為に大潮や天龍さんが配属されました。」
続けて、妖精さん達の力も借りて暁や鳳翔もこの鎮守府に加わり、少しずつではあるものの確実に成長しているこの鎮守府を支えているのは、あの神楽暁という人物の努力の賜物であることは、全員が知っている事でもあります。
「ですが、私は・・朝潮は、もっと司令官の役に立ちたいのです。」
胸に手を置き、目を瞑る。
瞼の裏に映るその人物は、神楽暁という男。
あの背中に、いつか追い付いて、その隣を歩きたいという朝潮の密かな願い。
けれどもそれは、とても険しい道のりであるということは、彼女自身がよくわかっていてー
「・・ま、俺もお前の気持ちはよく理解しているつもりさ。朝潮」
「天龍さん・・」
「俺だって、あの提督の背中を追っかけてるばっかじゃなくてよ、こう・・なんていえばいいんだろうな・・、俺たちは艦娘だしな、提督やほかのやつらを守るのが、俺達の任務だしな!」
そう言って少し照れくさそうに笑う天龍を見て、朝潮は目を丸くさせます。
(・・そう、そうです)
-そう、司令官の隣を歩くだけではいけません。その先に立って、敵として此方に刃を向ける深海棲艦の魔の手から、司令官や港に住む人たちを守る、これが私たちの最重要任務。
そして私は、誇り高き朝潮型駆逐艦の一番艦、ですがー。
「天龍さんは凄いです。朝潮が思いつかない事を考えたり、他にもいろいろアドバイスなどもいただいたりしますし・・戦闘も上手です」
「ん?別にそんな事無いぜ?俺は普段自由に行動させてもらってるし・・まぁ戦闘はなんだ、暇なときに剣振り回したりしてっから・・つうか、俺からすりゃあ朝潮の方が凄いと思うぜ」
「私・・ですか?」
「おう、こうして今も、提督の為にって頑張ってる、それは十分にすげーことだと俺は思ってる。似た者同士なのかもしれないな」
「え、ええと、それは一体どういうーって、天龍さん・・?」
そういうと、天龍は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、そそくさと扉を開き、こちらを手招くように
「ちょっくら提督の様子見に行こうぜ!お前も心配なんだろ?」
「で・・ですが」
「さっきからお前そわそわしっぱなしじゃねえか、さっきというか朝から、まるでご主人様が居なくなってそわそわしてるわんこみたいだぜ?」
わんこ、と言われて顔を少し赤くなる朝潮がここにはいます。
「ち、ちがいますっ!!朝潮は・・その・・司令官が心配なだけです!」
「はははは!!冗談だよ冗談、ほらほら、もうすぐ夜になるし、おかゆでも作って持っていったら、きっと提督喜ぶんじゃねーの?」
最初からそう言えばいいんです!!!と、朝潮の心の中は珍しく乱れています。かわいいねっ!
とまぁ、冗談はさておき、もう少しで日暮れとなり、この鎮守府に夜が訪れます。
鎮守府の台所を担っているのは鳳翔さんを中心としたメンバーで、基本的に大潮がサポートをしていて、天龍は予め提督の体調も含めて、今晩はおかゆでもどうだとアドバイスをしていたりと、何だかんだ仲間想いで、そのくせ口には出さずに色々と手を回す系の艦娘だったりします。
「はいどうぞ♪提督によろしくお伝えください、天龍さん、朝潮ちゃん」
「ありがとうございます鳳翔さん。この朝潮、司令官にしっかりとお伝えします!」
「さんきゅーな!っと、それじゃあいこうぜ」
厨房に置かれていた提督の晩御飯を朝潮は大切に持ちながら、その隣を天龍が歩きます。
「提督の奴、ちゃんと休んでるかねえ」
「はい、私が今朝方すこしきつめに・・その、言ってしまったので」
「なるほどな、まぁいいんじゃねーの?こういうのは言われないと理解できないもんもあるだろうしな・・っと」
恐らく休まれているかと思います、と、どこかばつが悪そうな顔をする朝潮を横目に、天龍達は提督の私室の前で足を止める。
「んじゃ。入るぜ」
「はい、お願いします」
軽くノックをする、中からもぞもぞと人の動く気配、そしてー。
ガチャリと開かれた扉の前に立っているのは、少しばかり疲れた顔をした提督が立っていました。
「・・朝潮?」
「は・・はい!その・・ごはんをお持ちしました!その、天龍さんと」
何故か慌てふためく朝潮を見ながら、もうひとりの姿を見ようと提督は辺りを見回してみますが。
「・・天龍は居ないようだが」
「・・あれ?ええと・・おかしいですね、今先程まで・・」
「まぁ・・なんだ、中に入るか?」
どこか困ったように立ち尽くしていた朝潮を見て、何か思った提督は中へと促し、朝潮はそのまま部屋へと入り、近くの机の上に御粥を置いて、提督の方へと振り向きます。
「すまないな、わざわざ持ってきてくれたのか・・」
「いえ・・!これぐらいの事は当然です。あの・・それより司令官は今日一日、しっかりお休みになられましたか?」
「む・・?あぁ、まだ少し熱があるようだが・・朝に比べたら多少は良くなっているとは思う」
「わかりました、それではまずお食事にしましょうか」
朝潮の言葉に、提督は頷き、厨房からもってきた蓮華を提督に手渡す。
「天龍さんが、提督はまだ重たい物は厳しいだろうと、鳳翔さんに頼んでおかゆにしてもらったんです、それなら司令官もしっかり食べられるだろうって」
「なんだか手間をかけさせてしまったようだな・・いただきます」
普段と比べ弱々しい手つきで蓮華を手に、おかゆを口に運ぼうとする。その時
「・・っと・・」
「!!大丈夫ですか!?司令官!」
蓮華の中のおかゆが少しこぼれてしまい、朝潮は急いで服に落ちたお粥を拭い、提督の手に握られた蓮華を一度手に取ります。
「この朝潮が、司令官のお食事をお手伝いします!」
「む・・いや、しかし・・」
「何を仰いますか、今だっておかゆこぼしちゃったじゃないですか」
こんな時ぐらい、朝潮を頼ってくださいと言わんばかりに提督を見つめ、提督は困り眉毛になりつつも、頷きます
「・・どうですか?熱くありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。しかし・・美味いな、これは」
「鳳翔さん曰く、出汁をしっかりとってから作っているそうです。ご飯も食べやすいように土鍋で炊いたものを」
随分と手が込んでいるのだな、これはー。と、提督が驚きつつも、朝潮が運ぶおかゆを口に運んでいきます。
「司令官はもっと御自分をご自愛ください、じゃないと、この朝潮、心配で夜も眠れません」
「あぁ、そうだな・・こうして朝潮やほかの皆にも心配をかけてしまった」
「暫くはお昼も朝潮と一緒に食べましょう!そしたら私達は安心します!」
「な・・む・・うむ。。」
彼女の半ば強引な決定に、提督はやむを得ないような形で承諾し、その言葉に朝潮は大潮達には見せないような笑顔で提督の口元へと蓮華を運び、無事完食。
「ご馳走様でした、・・とてもおいしかった」
「はい、よかったです!それじゃあ食器は片づけてきますからー」
朝潮はそのまま立ち上がろうとしたとき、提督はそっと朝潮の頭に手を置いて
「今日は一日、鎮守府の運営に関して・・よく頑張ってくれた。」
「司令官・・?」
ありがとう、朝潮。
目を細め、とても大切な存在を見るかのようなその笑みを朝潮は見てー。
(あ・・あれ?おかしいですね、朝潮・・どうしたのでしょうか)
普段は滅多にこんなことをしない提督が、もしかしたら熱の影響もあるのかもしれません、
誰かに触れるということを、この時初めてしたのです。
「あ・・の・・司令官、もう少しだけ・・続けてもらっても宜しいでしょうか・・?」
そんな未知の経験をしてしまった朝潮は、もっと提督を独り占めしたいという独占欲なのか、それともこの不思議な感覚をもっと感じていたいのか、定かではありません。
「ん・・?あぁ、いいぞ」
しかしー、そんな提督の事を受け入れる彼女は、そこに居て。
(なんだか不思議な気持ちです。でも・・悪くありません・・なんでしょう・・これは)
優しくそっと、宝物に振れるように頭の上に手を置いて、よしよしと撫でる提督と、そんな提督の愛撫に、目を閉じて嬉しそうにする朝潮の、二人だけの静かな時間。
そんな出来事があった翌日には、すっかり提督の体調も回復し、朝潮は再び秘書艦として、鎮守府運営にいそしみます。
「熱も引いた、今日から再び私が指揮権を持つことになる。よろしく頼む、朝潮」
「はい!司令官。この朝潮、司令官についていきます!」
「・・なぁ、昨日と比較してどうだ、あの姉は」
「すっごいキラキラしてますね!!!かっこいいです!!朝潮姉!!」
「なにかいいことでもあったのかしら?」
「あらあら・・♪」
いつもよりどこかキラキラしている朝潮を見て、天龍含めた他艦娘達は頭の上にはてなマークをつけたり、うふふと笑ったりしていますが、その真相は闇の中。
その答えは、朝潮だけが知る、朝潮だけの、秘密。
「それでは、本日の朝礼を始めましょう。司令官」
「あぁ、そうだな」
こうして始まる提督による鎮守府運営、司令室の窓から見える海は青く煌めき、その先に見える水平線は、いつもより輝いて見えるのでした。