結城勇祐は弟である   作:白桜太郎

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今更ながら、ゆゆゆメモリアルブック買ったんですけど、エモエモ過ぎて最高以外の語彙が無くなりました。

感想、お気に入り、閲覧、誤字報告。共にありがとうございます。今まで色々とエタったりエタらなかったりしてきたんですけどここまで評価とか感想をもらえる事が無くてですね、どう言えばいいのか分からないのですが、本当にありがとうございます。


第13話 それは舞い散る花弁

 やっと頭が冷えてきた。今の俺の体は間違いなくバーテックスだ。否定しようにも無理だ。あの天の神の『天罰』の影響だろう。俺が姉に俺の状況を話そうとしたから『天罰』を俺に下したんだ。そのお陰で、思い出さなければいけない思い出も、思い出せたのだが。

 クッソ許せねぇ天の神。俺が熱出して寝込んだのも天の神の影響か。しかも俺の体をこんな風にしやがって。姉が俺を信じてくれなかったら不味かったぞ。東郷だってずっと俺に銃向けてたもん。向こうの世界に戻ったら取り敢えず謝らないとな......。

 

(その前にバーテックスだ)

 

 遠くにバーテックスと戦う勇者部の3人が見える。どうやら様子がおかしいが......。

 

(不味いッ!)

 

 レオバーテックスが他のバーテックスを取り込み始めている。単体でさえ俺と同等の強さなんだぞ。悪い予感しかしない。

 だが白面の時ならまだしも、今の俺はバーテックスで、まともに喋れない。姉や東郷となんとか意思疎通が取れたのが奇跡だ。さっきから喋ろうとしているが、声帯がそもそもおかしいのか喋れる雰囲気がない。全部唸るだけになる。

 だから、危険を知らせる声を出せない。咆哮をただ上げても駄目だ。伝わらない。もどかしい。

 だから、とにかくやるしかない。

 

「オオオオオォォッ!」

 

『流星』発動ッ!今は後の事を考えてる場合じゃねぇ。俺のパイルバンカーなら届くッッッ!!

 

(届けッ!!)

 

 

 だが、届かない。

 唐突に爆風が俺を包み込んだ。痛みは、痛覚の鈍さで誤魔化せるレベルだ。だが暴風にも似た風が俺の勢いを弱らせてしまった。これでは届かない。

 それどころかこの爆風は、目の前の合体したバーテックスから放たれた炎弾のモノ。俺は、また一歩遅かった。

 

 やめろ......。

 

 風が爆炎に包まれる。

 

 やめろ......!

 

 樹が悲鳴を上げながら同じように爆煙に包まれる。

 

 やめろ!

 

 三好が爆炎に包まれる。

 その姿が、過去に見た別の誰かと重なる。

 

「あ......アァ............」

 

 勇者バリアは機能しているだろう。だがアレは衝撃と命を失わない程度のダメージは防げない。それは俺が実際に証明した事だ。だがアレがあれば死なない。死なないのは分かっているんだ。だけど、俺の心に隙間を作るのは容易だった。

 

「グ...ァ............」

 

 少なくとも俺は、こんな俺でも仲良くしてくれる彼女達が好きだ。例え、そこに姉という存在がある上での付き合いだったり、俺が犬吠埼姉妹に罪を感じていたり、俺を白面だと疑っての行動だったとしても。俺は少なくとも、彼女達を友達だと思っている。

 

 味方になると言った。そして自分自身に、やれるだけやると誓った。なのにこの体たらく。

 

 

【身を委ねよ】

 

 

 心の奥底から、黒い声が囁く。なんと甘美な声だろうか。言葉に従えば、楽になるのだろう。だがその先は暗闇。よくある話だ。こうやって心が折れ掛けている時に囁く声は地獄への道だと。もっとも、おれはそうでなくても地獄に行くだろうから。

 

 

 

 ------クソ喰らえだ。

 

 

 

 天罰の雷がまた俺に落ちる。

 天罰を落とせば、俺が靡くとでも思ってんのか?面白いジョークだ。エイプリルフールはとっくの昔に終わったぜ?クソ喰らえだ。

 

 そうだよな。クソ喰らえだ。姉も、勇者部も、今は関係ねぇ。これは俺と天の神の喧嘩だ。思い出せよ俺。2年前、天に向かって中指を突き立ててやったことを。

 

 勇者を殺せ?姉を殺せ?うるせぇ。

 体が勝手に動こうとする?根性で止めろ。

 思考がおかしい?根性だ。

 俺の体がバーテックスになってる?知らん。どうでもいい。

 パイセンも樹も夏凜も、怪我はしたが生きている。夏凜以外は身動きをしている。夏凜は......まぁ完成型勇者とか言ってたし生きてるだろ、バリアもあるし。生きているなら、いい。

 

 

「オオオオォォォッ!」

 

 これはただの咆哮じゃない。天の神への反逆の印だ。

 俺は人でありたい。

 勇者部の味方でありたい。

 姉の弟でありたい。

 だからこのバーテックスは殺す。

 

 飛び上がる。狙うはもちろんバーテックスだ。こいつを始末しなきゃ樹海は結界を解かないしそもそも世界が終わってしまう。

 俺としては世界はどうでもいいんだが、姉が居る限りそうもいかない。

 

(だが、まともに近づけんか......)

 

 弾幕とも言える炎弾が俺にいくつも迫ってくる。盾で防げるから今はいいが......。

 

「グァっ......!!?」

 

 炎弾が俺の背中に直撃する。追尾性能を使った軌道修正で俺の背中に当ててきたのか......!しかもこの痛み方......『タタリ』付きか!厄介だな畜生!

 だがな、この痛みももうとっくの昔に慣れてんだよ!俺が痛みに鈍いのもタタリのおかげだもんでなぁ!

 

「オオオオオァァァァァ!!」

 

 パイルバンカーを構え、合体したバーテックスに突き立てる。そして釘を打ち出した。いつも以上に強い衝撃が右腕を襲うがどうってことはない。問題はこのパイルバンカーでさえ、バーテックスを貫く事が出来なかったという点だ。

 

(硬いッ!)

 

 今までのバーテックスが柔かったのか......いや、逆だ。こいつが硬いんだ。特に御霊がある俺が打ち抜こうとした部分が強烈な硬度を持っている。

 

(ガッ!?)

 

 左側面から強烈な一撃を食らった俺はそのままの勢いで吹き飛び、地面にぶつかった。

 流石に痛い。脳も揺れているのか視界が歪む。

 

「勇祐!」

「セン......パ......」

 

 俺が吹き飛ぶのが見えたのか、倒れていた筈のパイセンが俺の元までやってきた。そっちも怪我してる癖に人の事心配してる場合かよ.......!

 

「喋らなくていい!あんた、そんな姿になってまで戦うのね?」

 

 小さく、頷く。

 

「私の声が聞こえてるし、理解出来るのね。なら良かった。勇祐とは敵対したくないもの。どういう事情があるかなんて知らないけど、ちょっとそこで休んでなさい。流石に、私も頭に来た」

 

 バーテックスを睨みつけ、パイセンが叫ぶ。

 

「私の可愛い後輩部員達を痛めつけて、ただで済むと思ってんじゃないわよォォォ!!」

 

 途端に、パイセンの体に根っこのような光が集まっていく。そして集まったかと思えば大きな黄色い花...オキザリスがパイセンの背中に咲いた。

 

「勇者部!あのデカブツを倒すわよ!さっさと起きなさい!」

 

 パイセンの一括に、樹がなんとかその身を起き上がらせようとする。パイセンは起き上がるまでの時間を稼ぐ為に合体したバーテックスに突撃した。衝撃波が伝わる程の突進に、流石のバーテックスも蹌踉めき、その場に倒れ落ちた。

 

(凄い......!)

 

 話には聞いていたがこれが満開か。溜めた力を一気に解放する機能と聞いてはいるが、ここまでとは予想外だ。

 

「お姉ちゃん!」

「樹!」

 

 樹も、背後に鳴子百合を花開かせながら満開を行う。二人並び立つ姿は、神々しささえある。俺もどうせならこんな醜い姿じゃなくてあっちの方が良かった。今からでも神樹の子になりたい。

 

「行くわよ樹!あのバーテックスを抑えて!」

「分かった!」

 

 犬吠埼姉妹がバーテックスに対して攻撃を開始する。満開により本数が増えたワイヤーがバーテックスを包み、そこをパイセンが大剣でなぎ払おうとする。が、バーテックスは炎弾を次々に吐き出していく。いやいや、待て、元気玉どころか太陽だぞあれ。

 

「硬ぁぁぁ!?」

 

 丁度大剣がバーテックスにヒットしたパイセンが硬さに悲鳴をあげる。そりゃあ俺も貫けなかったんだ。そうもなるだろう。ったくしゃあねぇなぁ!あのままじゃああの元気玉にパイセンと樹が呑まれる!

 

「オオオオオオオォォォッ!!」

「勇祐!?」

「勇祐さん!」

 

 炎弾に向かって左の盾を最大展開、あとは殴るようにバンカーを突き出す!吹っ飛べ元気玉か太陽か分からん炎弾!

 

「バンカアアアアアアァァァァァァァ!!」

 

 これは言えるんだな俺!身体全身が火傷しそうな熱さだけど盾のお陰で何とかなる!なんとか迫り来る元気玉はパイセンと樹へ向かう軌道からは外らせた!

 

「勇祐!ナイス!」

「勇祐さん!お姉ちゃん!危ない!!」

 

 外れせた筈の元気玉が軌道を変えてこちらに突っ込んでくる。そりゃあ、炎弾が追尾してきたぐらいなんだからこのデカいのも追尾してくるよなぁ!

 

「勇祐!?」

 

 悪いパイセン。話せないから無理矢理庇った。後は俺の盾がこの熱に耐え切れることを......ッ!!?

 

「きゃあああ!?」

 

 物凄い爆音が鳴り響き、身体が吹き飛ぶ。元気玉が爆発したと気付いたのは俺が地面に無様に転がった時だった。

 

「ゴフッ.....ゴッ」

 

 口から血が出てきた。量も尋常じゃない。内臓もやられたんだろうか血の色も黒い。体全体も痛い。痛いだらけだな。とにかく、パイセン、は......?

 

「ガッ、はっ......。いったぁい......」

 

 大丈夫なようだ。やっぱバリアの有無は違うか。どうやらタタリを受けた様子もない。一安心、か。

 

「勇祐、大丈夫......?」

「ゴフッ......アァ......」

「大丈夫には見えないけどね......ありがと」

 

 どういたしまして、だ。身体は痛いが、死んでないならそれでいい。

 

「お姉ちゃん!勇祐さ......うわあああ!オバケ!!」

 

 誰がオバケだ。この緊迫した時に冗談を言ってる場合じゃないだろ。

 

「実際.....間近で見るとオバケそのものよね......」

 

 解せん。俺だって好きでこの姿になった訳じゃねぇぞ。

 

 

「ゆうくん!」

「ねェ......サ.........!」

「無理しないで!アイツが、風先輩とゆうくんを傷付けたんだね?」

 

 姉と東郷が俺たちに合流する。......なんか東郷はデカい船に乗ってるんだけど、あれなに?満開であんなの出てくんの?すげぇな。

 姉は強くバーテックスを睨み付けている。あんまり憎しみで戦わないで欲しいんだけどな。

 

「向こうに行ってたバーテックス二体は倒したから、残りはこの大っきいのだけだよ!」

「なら......後は、こいつだけ.......!」

「風先輩は休んでいてください。後は私たちが!樹ちゃん!」

「はい、友奈さん!いつでも行けます!」

 

「私も忘れないでくれない?」

「夏凜ちゃん!」

 

 

 やっと目が覚めたのか三好。お寝坊にも程があるぞ。

 

「なんでオバケみたいになってんのあんた」

 

 知らん。俺が聞きたいぐらいだ。むしろよく俺だって判ったな。でも刀を呼び出して一瞬斬り掛かろうとしてたのは見逃さないからな。

 

「い、色々あったんだよ!こう、雷がバーンしたり!」

「友奈は説明下手くそね、相変わらず。まぁいいわ。正気があるってんなら今はどうでもいい。けど、無くなったらその瞬間叩き斬るから。後で説明もしなさいよね」

 

 正気をずっと保っている自身はないけどな。今も身体中の痛みとタタリで意識が飛びそうだし。だが、やるしかない。正気を失わず、理性を保ち続ける為にも、な。

 

「げほっげほっ......じゃあ封印、頼んだわよ皆。勇祐!あんたは封印の儀が始まって御霊が露わになるまで待機!出てきたらあんた自慢のその釘打ちで貫きなさい!」

 

 そうして、風を除く勇者部がバーテックスを封印する為に散っていく。

 

「ねぇ、勇祐。あんた一体、何を抱えてる訳?そんなバーテックスになってまで、何をしようとしてるのよ。私には、それが分からない」

 

 今、俺が話せない状態で良かった。話せてたら、たぶん口を滑らせていただろう。俺が今回思い出したほぼ全ての『2年前の記憶』。そして恐らく、『俺を殺した方がいい』って結論に至るはずだ。実行するしないは別としてだが。

 そもそも俺はパイセンの親の仇だ。

 

「ごめん。答えられないって分かって聞いてる。でも覚悟して。勇祐は大赦に敵として認定されてる。向こうに戻ったら、酷いことになるわ」

 

 

 ......あっ、そうだ。話せないならスマホがある。

 懐からスマホを取り出して、パイセンにチャットを送る。

 

『俺はパイセン達の味方でありたい。例えこの身が敵であって化け物であっても』

「勇祐......」

『向こうに戻ったら、たぶん学校にも勇者部にも戻れない。俺はもう化け物ってバレたし。それどころか姉貴にも会えないだろうから、ごめんパイセン。姉貴の事ちょっと頼むわ』

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

『じゃ、またな』

「勇祐、待ちなさい!勇祐!!」

 

 すまんけど、もう封印の儀が始まったんでな。待てないんだわ。

 もうちょっと仮部員で居たかったが、しょうがない。人間、素直になっとくべきだな。俺はもうバケモノだろうけど。ははは、笑えてきた。

 

 

 

 やるか......これは、俺の喧嘩だからな。

 

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 

「えぇぇぇぇぇ!?」

「嘘、でしょう?」

「何ですかあの大きさ!?」

「しかもアレ、宇宙にあるんじゃないの!?畜生!あんなもんどうすればいいのよ!」

 

 勇者部達は、封印したバーテックスの御霊があまりにも巨大すぎるどころか、事もあろうに宇宙に出現した事に絶望を隠せずにいた。

 

「大丈夫。いつものように壊せばいいんだよ。東郷さん!」

「えぇ、私のこの船で、友奈ちゃんを連れて行きます」

 

 まるで自分が破壊してくると言わんばかりに言う友奈。そしてその意図を把握した上で友奈に船の使用を提案した。

 

 が、そうなる事を事前に予測し、動く存在が居た。もっとも、風以外の勇者部の彼女たちはその時、その存在に気付いていなかった。

 

「あれっ、風先輩から電話が?」

『友奈!ごめん、止められなかった!!!』

「どういう......まさか!」

 

 友奈は、自身のスマホに掛かってきた風からの『止められなかった』の一言に一瞬の戸惑いを見せたがすぐに理解した。そして、やはり自分の弟なのだ、と。他者のために容赦なく自分の身を犠牲に出来る子なのだと改めて理解した。

 

(ゆうくんは、1人で戦う気なんだ!)

 

 何のために、かは分からない。1人で行く理由も。だがその行為はきっと、誰かの為を想っての行動なのだろう、と友奈は考えた。

 

「東郷さん!急ごう!」

「......えぇ!友奈ちゃん!」

 

 だからこそ友奈は東郷の船に乗り、最大船速で宇宙にあるバーテックスの御霊へと向かう。少なくとも1人で戦う意味はないと思うからこその行動だった。

 

「東郷さん、ごめんね。さっきも守ってもらっちゃって」

「いいのよ友奈ちゃん。私は友奈ちゃんの為ならなんだって出来るもの」

 

 そうやって笑う東郷の表情は硬い。なにせ2体のバーテックスを実質的に彼女は1人で倒していた。不意を突かれた友奈と、遠くで見えた合体したバーテックス、落とされた他の3人と勇祐。その状況からの巻き返しを図った彼女は必然的に『満開』を使わざるを得なかったのだ。彼女がもっとも恐れる、満開を。

 その為、肉体的疲労と精神的疲労は従来の戦闘では考えられないほどのモノになっていた。

 

 だがそれでいいと東郷は考えていた。使わざるを得ない状況だったからこそ、選択肢がなかったからこそしょうがないのだと。

 それは勇祐という例外を除き、幼き少女である東郷には凡そ似つかぬ覚悟だった。

 

(謝る方は、こっちなのに......)

 

 彼女は風や夏凜と同じく、大赦から派遣されてきた。とある密命を帯びてこの勇者部にやって来ていた。その密命を知るのは彼女と、その親友である少女の1人のみ。その重さ故に、彼女は尋常らしからぬ覚悟と決意を胸に秘めていた。

 

(もし、この戦いが終わったら、謝ろう......。許してもらえるか、分からないけれど。『散華』の事も......)

 

「東郷さん!アレ!」

「御霊が攻撃を.....!迎撃を......!?」

 

 東郷が主砲を発射する前に、前方が爆発する。一体何事かと思えば、遠くに白い人型の存在が見えた。

 

「ゆうくん!」

「援護するわ!友奈ちゃん捕まってて!」

 

 最大船速のまま、東郷は主砲を乱れ打つ。あの人型は先行したと思われる勇祐だろう。なら攻撃を加える訳にはいかない。

 

「乱れ打ちます!」

 

 本来であれば主砲の一点集中射撃で全てが屠れる密度。だがその選択肢は東郷には取れない。

 

「東郷さん!ゆうくんごと撃って!」

「友奈ちゃん!?」

「ゆうくんなら大丈夫だから!撃って!」

「ッ......。分かったわ。主砲、目標正面。全砲門......てぇーっ!」

 

 友奈の意図が分からぬまま主砲を勇祐に向けて放つ東郷。そして着弾と同時に爆発した。そして勇祐の事を案じていると、船体が小さく揺れた。

 

「勇祐くん!」

「確かにさ、撃ってくれてありがたかったけど俺を直で狙うのはやめろよ!俺はバリアなんてないから流石に死ぬぞ!」

 

 バーテックスの顔ではなく、通常の白面に戻った勇祐が非難の声を東郷に捲したてるように叫ぶ。どうやらなんとか避けて東郷の船に乗り込んできたようだ。

 

「ゆうくんなら大丈夫だと思って私が頼んだんだよ!」

「そ、そうなのか......すまん東郷。疑っちまって」

「い...いいのよ......。それより、戻ったのね勇祐くん」

「おう、まだ安心は出来んけどな。たぶんすぐに天罰でも食らうさ」

「天罰......」

「そーいうことさ、『須美』」

「えっ......!?」

「あれ、ゆうくんが東郷さんの名前呼ぶの珍しいね。どうしたの?」

「いやまぁ、色々とな。それよか姉貴、行けるか?」

 

 もちろん!と答える友奈と今の状況が把握できない東郷。2人の顔は正反対だった。

 

「ちょ、ちょっと勇祐くん!?」

「わりぃ、あと......頼むわ。姉貴」

「うん!行こうゆうくん!」

 

 東郷を置いて、勇祐と友奈は船から飛び出した。

 

「満開!」

 

 そして友奈が満開を発動。彼女の背に桜の花が咲き誇ると、そこには巨大な両腕を抱えた友奈が居た。そして頷きあった2人は声を荒らげながら御霊に向かって吶喊した。

 

「おおおおおおおっ!」

「私は、みんなを守って!」

 

 勇祐がパイルバンカーで御霊の外殻にヒビを入れる。そこに、東郷の援護砲撃が突き刺さりそのヒビを更に広げた。

 

「姉さん!!」

「勇者になああああある!!」

 

 そのヒビを友奈の拳が破壊していく。2人が広げた穴が、友奈によって掘り進められていく。

 だが暫く殴って掘り進めたところで、唐突に御霊が硬くなった。

 

「硬い!?」

「任せろ!!」

 

 友奈の後ろからついて来ていた勇祐が友奈と位置を変え、渾身のパイルバンカーを振りかぶった。

 

「勇者部五箇条、ひとおおおおつ!」

 

 勇祐がが、大声で勇者部五箇条を歌い、息を揃えた姉弟は祝詞のように叫んだ。

 

「「なるべく!諦めない!!!」」

 

 勇祐の叫びと共にパイルバンカーが御霊に突き刺さり、盛大な衝撃波と共に硬かった御霊が瓦解していく。

 

「さらに勇者部五箇条、ひとおおおつ!成せば大抵!!」

 

 友奈が勇祐と位置を交代し、今度は友奈が五箇条を詠み上げる。

 

「「なんとかなああある!!」」

 

 そして御霊の中心部にたどり着いた2人は、そのまま揃って右腕を振りかぶって、御霊を殴り飛ばした。すると、友奈によって浄化されたのか御霊はいくつもの光となって消え去っていった。

 

「やった、な。姉貴」

「うん......やったね............」

「あとは帰るだけ、だけど......」

「うん、分かってるよゆうくん。暫く、帰ってこれないんだね?」

「ったく......。最初っから分かってたんだな姉貴」

「当然。私はゆうくんのお姉ちゃんだから」

 

 その言葉を受けて、もう顔を隠す意味もなくなった白面を勇祐は顔から取る。そこには本来の勇祐の顔があった。

 

「だよなぁ。姉貴には、叶わねぇわ」

「でしょ?だから、遅くならないうちに帰って来てね。『また』、探しに行っちゃうよ?」

「そりゃあ勘弁だ。......家に帰ったら、全部話すよ。姉貴にとっても辛いかもしれない。よくないことが起こるかもしれない、けど......無理矢理にでも、聞くんだろ?」

「うん」

「しゃあねぇな......んじゃ」

「うん、気を付けてね」

 

 そうして勇祐は唐突にその場から姿を消したのだった。

 

 

 




勇祐
白面になったり天罰を受けたりバーテックスになったりタタリを受けたり天罰を受けたり血を吐いたり白面になったり勇祐になったりと忙しかった子。お家に帰ると約束した。

友奈
弟が変なのになったり雷がどかーんしたり凄かった。けど家に帰って来ると約束したから信じてる。健気な子。

東郷須美
漸く名前が出た子。美森じゃなく、須美。勇祐を攻撃しないでという部長の決定を何度も無視しかけた悪い子。でも良い子。苦悩の子。頑張って。あの後友奈と一緒に帰還した。


勇者部のために頑張ってた。殆ど場面外だったけど。白面が勇祐で最悪を予想したけど案外なんとかなっちゃった。勇祐に友奈を託される。止められなかったけど君は悪くないよ。


勇祐見るなりオバケ呼ばわり。彼も好きでオバケになった訳じゃないんだよ。それはそうと文化祭はオバケ屋敷でもいいかもしれないとかふと考えちゃった子。空から落ちて来た友奈と東郷をワイヤーで助けた。

夏凜
気絶して封印を手伝っただけ。あんまり活躍できなかった完成型勇者。友奈と東郷をワイヤーで受け止めていた樹を応援して、現実に帰ったら大赦に報告したり色々した。勇祐の事をどう報告しようかと悩んでたら報告不要って言われたらしい。なんでだろうね。
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