結城勇祐は弟である   作:白桜太郎

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第3話 懐疑と脅迫と逃亡

 

 あのイネスでの出会いから数日後。

 僕は二度目の戦いの最中……いや、敗退間近まで追い込まれていた。

 咄嗟に放った土煙で、僕とアイツらの周囲が酷い視界不良になる。これで少しは時間が稼げた。今の内にこの戦いを振り返りつつ次の一手を導き出さなければ僕は死んでしまうかもしれない。

 

 今回の戦いも酷く惨敗だ。こちらはボロボロ、相手にも幾らかダメージは入れられたが、それだけ。神様が用意したあのデカブツは役には立つけれど僕との連携は皆無。

 なんだって言うんだ。まるで僕を無いものとして進んでいくじゃないか。あの3色の影と戦う姿を見ればそんな悪態が出てくるというものだ。

 挙句は影に容易く刈り取られる始末。

 で、連携のとれない僕はデカブツの横合いからチマチマ殴り掛かるだけ。僕に遠距離武器があればまだしも、あるのは徒手空拳のみ。ふざけるのも大概にして欲しいものだ。

 けれど、あのイネスで出会った3人の笑顔が僕の脳裏にチラついて、僕は悪態を振り払った。あの3人の笑顔を守る為、そして大好きな家族を守る為に僕はどうしてもあの影達を倒さなきゃならない。やるしかないんだ。

 

 

 そして今。舞い散る土煙の中、僕は足元の木の根を掴んで、思い切り引っ張り上げ始めた。ミシミシと木の根が悲鳴を奏で、徐々に剥がれ始めていく。白仮面を被って変身している時じゃないと木の根を引っ剥がすなんて不可能だ。

 さて、少しは意表を突けるといいんだけど、ね!

 

 木の根を放り投げ、一瞬の間を置いてから僕は土煙のカーテンから飛び出す。

 アレはあくまで目眩しで囮。ただし、本気でアイツらに当てに行ってるけども。

 当たるとは思わないけど、当たってくれたらラッキーだなぁ程度だ。期待はしていない。

 

 影達は、僕が投げた木の根を避ける為に3つバラバラの方向へ逃げて行く。そうだよ、この瞬間を僕は待っていたんだ。

 

 

「————ッ!?」

 

「今更気付いたところで遅ぇんだよ!」

 

 

 赤色の影が丁度僕の進行方向へ逃げてきたので、コイツを目標にして飛び掛かる。

 この至近距離なら、この斧は振り回せない。組み付いてしまえばそれこそこちらのものだ。

 

 地面に押し倒すように赤色の影を叩きつける。衝撃で肺から空気を押し出されたかのような悲鳴をあげる赤色の影を、僕は容赦なくストンプしてやった。

 胸がすくような気持ちだ。なにかを殴るのは、ここまで気持ちいいものなのだろうか?

 

 

「ははは、いい気味だ!」

 

 

 僕の事を散々ボロボロにしておいて、一度地面に叩きつけられて顔面を踏まれただけでこれか!攻撃だけは強くて防御力はないなんて、呆れるよ!姉さんだって僕と組手をする時はいい勝負するのに!

 

 

「……次は?」

 

 

 背後から飛んできた影の矢を振り返りながらキャッチしてへし折る。散々僕を苛めてきた礼をすべきは今だ。……こういうのは御礼参りって言うんだっけ?

 相手は世界の敵だ。容赦はしない。

 

 

「紫か!」

 

「------ッ!!」

 

「無駄に突っ込んで来たところで!」

 

 

 槍の矛先が3つに分かれるのだって知っている。さっきはそれのせいで横腹を斬られたんだ。イライラが、さらに僕の脳内を蝕んでいく感触がした。【こんな思いをさせてるのは一体誰だ?】

 決まってる。目の前の影だ!コイツらが全部悪いんだ。僕たちの生活を脅かす、コイツらが……憎い。

 

 

 槍の矛先を寸でのところで避けて、柄左手で掴み、引き寄せる。ようやく捕まえてやった。

 

 

「捕まえたッ!」

 

「------ッ---!」

 

 

 何かを叫ぶ紫色の影を殴り飛ばそうとして、ふと気が付く。

 

 

(本当に、殴っていいのか…?)

 

 

 身体のどこかが、警鐘を鳴らしている気がした。目の前の敵は本当に敵なのか、と。

 

 

 

 考えてもみろ、相手は僕が攻撃するまで、攻撃してこなかったじゃないか。前回だってそうだ。理性があるような行動も見えた。ならこちら側にいる、あのデカブツのような無機質な存在じゃあないだろ、この影共は。

 じゃあなんだと言うんだ、という僕自身への問いかけをしながら、青い影の矢を避ける為に紫の影を蹴り飛ばしつつその場から離れた。

 こいつらは、本当に敵なのか?

 神様が言う事を本当に信じきってもいいのか?

 そんな問いかけがふつふつと湧いて出てきて僕の覚悟を弱らせていく。

 先程までの怒りの熱が、まるで存在しなかったかのように冷えていく。

 2つの影が、赤色の影に駆け寄って行く姿を見ながら僕は明らかな矛盾を胸に抱えてしまっていた。

 

 あんなのは、怪我した友達を心配する僕ら人間と同じじゃないか……!

 

 最早、今の僕に戦えるだけの気力はもう残されていなかった。

 戦える訳ないじゃないか、あんな…あんな、この間出会ったばかりの3人のような姿を見せられたら。ただの小学生の僕が、戦えるはずが無い。

 

 だから僕は、黙って撤退する事に決めた。

 戦意が無くなったのだから当然だろう。自分の体が、霧のように消えていくのをぼんやりと眺めながら僕は樹海の世界から消えて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 

 それが、駄目だったんだ。

 気付いたのは元の世界に戻ったその時だった。

 

 

「あ、がッ……!!?」

 

 

 元の世界に戻ってくるなり、僕の体に雷が落ちたような鈍い衝撃が数秒に渡って走った。

 痛くて、苦しい。それ以上に形容する言葉が無い程に痛かった。

 これが数秒という瞬間的なものであったからこそ耐え切れたけど、もう少し続いたら泣き叫んでたかもしれない。

 

 

「どう、して……?」

 

 

 自然と出た僕の問い掛けは、姿は見えないが確実に僕の近くに居るであろう僕に力と白仮面を与えた神様に宛てたものだ。

 この痛みの正体は神様によるものだと直感的にわかったからだ。そして僕の問いの答えは、酷く単純だった。

 曰く、僕が神様の意思に逆らったから。

 曰く、勝手に逃げ出したから。

 

 つまり僕は、神様に従わなかったから天罰を与えられたのだそうだ。

 

 

「ふざ、け……!」

 

 

 あんな影達を見せておいて戦えって…。無理に決まってるだろう。なんて都合の良い事ばかり言うんだ。

 

 

「あぎっ!?かひゅっ……」

 

 

 もう一度、僕の体に雷のような痛みが落ちた。

 僕の考えなんて見え透いている。やれと言ったらやれ。さもなければお前の家族が死ぬ事になる。そんな言葉がぼくの脳内にこびりつくように聞こえてきた。

 

 そして、次はよく考えて行動しろという言葉と共に、僕は神様から解放されたのだった。

 

 

「ぜぇ…ぜぇ……」

 

 

 息も途絶え途絶えになりながら、僕は僕の部屋の床から起き上がった。

 放課後、急に呼び出されたと思ったらあの戦いが始まって、帰ってきたと思ったらこの天罰染みた拷問だ。反吐が出る。

 

 

「しかもどう考えても途中から最後あたりまでの思考がおかしくなかった…?」

 

 

 思い起こすのは粉塵の中から木の根をぶん投げつつ飛び出した時だ。

 僕はあんなに乱暴な性格はしてないし、そもそも殺しをやるだけの勇気も覚悟もない。

 世界は救いたいしヒーローにもなりたいと思った。けど自分の性格が裏返ったかのような思考と衝動を鑑みるに、あの時の僕が内に秘めたる本来の自分と言うのだろうか。

 それにしたって唐突過ぎるし、むしろあんな僕は嫌いだ。あんな僕になるのなら戦いたくもない。

 

 けれどあの最後の捨て台詞めいた言葉が非常に気になる。

 つまり「従わなきゃテメェの家族がどうなるか分からねぇなぁ?」と今時珍しい西暦時代のヤクザ映画のような脅しを神様がしてきたのだ。しかも僕に天罰を与えているという前例を提げて。

 

 

「勘弁してくれよ……」

 

 

 酷く重くなったように感じる身体をなんとか起こした僕の足は、まるで産まれたての子鹿と呼ぶに相応しい程に震えていた。

 なんとか床からベッドに移ることが出来た僕は、天井を眺めながら震える両手で顔を覆った。

 痛みと恐怖。そして人質。人を無理矢理従わせるのにこれ程簡単かつ効果が高いものはない。

 

 僕は痛みを忘れるように、恐怖にこれ以上怯えないように目を瞑って必死に寝ようとした。結局暫く痛くて寝れなかったけれど、僕の思考は微睡んで、闇に落ちていったのだった。

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

「姉さん、大丈夫?最近怪我が多いけど……」

 

「大丈夫、へっちゃらだよ!これぐらいの怪我なんて痛くないよ!」

 

 

 あの日からまた1週間程経って、家族…特に姉さんが何らかが原因で怪我をする事が多くなった。

 その原因のどれもが、相手が意図していなかったりだとか偶然であったりとか。そんな怪我ばかりだ。だから僕は余計に怖くなった。日に日に酷くなる姉さん達の怪我が正に神様の言う通りになっているからだ。

 

 

(僕が、戦わなかったから、なのか……?)

 

 

 頬に切り傷、両腕両足に擦り傷、背中に打撲。僕が知っているだけでそれだけの怪我が姉さんの体に刻まれている。母さんや父さんは紙で手を切ったりとか、そんな些細な怪我だけだけど……。

 

 

「…勇祐も、気を付けなさいね。友奈はお父さんに似てお転婆なんだから……」

 

「もう!最近はあんまりはしゃいでないんだよお母さん!ちょっとその…運が悪い、とか?」

 

「尚更よ、友奈。あんまり怪我が増えるとお家に閉じ込めなくちゃいけなくなるかもしれないのよ?」

 

 

 そんなぁ、とブー垂れる姉であるが、それって所謂監禁というやつなのでは……?僕には何も言う権利がないので今は黙っておく。姉さん達の怪我は間接的に僕の所為なんだから……。

 

 

「まぁまぁ母さん。子供は腕白なぐらいがいいのさ。なぁ友奈?」

 

「そうだよー!お父さんの言う通りだよー!」

 

「…もう、あまり調子に乗ってると今晩のビールはなしですよ義景さん」

 

 

 ガハハハと豪快に笑いつつも「それだけは勘弁だ!」と謝るのは筋肉達磨な父、義景。ザ・大和撫子な母さんとザ・体育会系の父さんは本当に感性やら価値観やらがトコトン噛み合っていないのだが、結婚して10年以上経っているのに新婚のように若々しく僕らの前でみイチャイチャを止めない。まぁ僕らは慣れてるからいいんだけどね。仲が悪いよりよっぽどいいよ。

 

 

「ごちそーさまでした!お母さんお風呂入ってくるねー!」

 

「お粗末様でした。お風呂で転ばないように、ね?」

 

「はーい!」

 

 

 先に晩御飯を食べ終わった姉さんが笑顔で風呂場へと歩いていく。いつもながらウキウキな足取りで、後ろめたいことなんてなにもないかのように。

 羨ましいなぁ、と思う。

 僕と違って姉さんは何も知らない。何も背負っていない。でも、それが普通。僕だけが違う。父さんも母さんも、学校の友達も。みんな……僕だけが異常なんだ。

 

 だからこの胸の奥で沸き起こっている怒りのような感情は的外れなんだ。そのはずなんだ。だから今は心の奥底に閉じ込めよう。

 

 

「勇祐、どうしたんだ箸が止まっているぞ?」

 

「え、あっ……うぅん。なんでもないよ」

 

 

 流石に雰囲気が暗過ぎたかな……。反省反省。気分を変えよう。

 

 

「体調が悪いならすぐに言わんと駄目だぞ? 勇祐は友奈みたいに身体が強いほうじゃないんだからな?」

 

「分かってるよ、父さん」

 

 

 嘘だ。

 家族皆が、僕のせいで怪我をしてる事で気分が優れないのは当然だ。それにあの天罰を受けた日以来、僕の身体全体に鈍痛が常に走るようになっている。

 身体を蝕み続ける痛みで、最近笑顔が少なくなってきたようにも思う。

 

 

「最近、疲れやすいんだ。それだけだから、大丈夫だよ」

 

 

 無理矢理笑う。出来る限り自然なように。父さんと母さんの2人に心配を掛けないように。

 

 僕が笑うと、父さんも母さんも微笑んでくれた。またいつも通りの夕食が始まった。

 そうだ。僕はこの風景を守るんだ。その為にあの影を倒さなきゃいけない。

 僕は勇者に、ならなくちゃいけないんだ。痛いのも、辛いのも、苦しいのも我慢して。

 守る為に。僕だけで。

 

 

「お母さんパンツ忘れた!」

 

「こら友奈。だからって裸でお風呂から飛び出して来ないの!」

 

「ごめんなさーい!」

 

「はははは!いいじゃあないか、元気があって!」

 

「はははは……」

 

 

 ずっと、ずぅっと。この家族が、そして僕が。今みたいに笑顔で居られる為に。

 

 

 

 

 

 そう、思っていた。

 

 

「……本当、ですか?」

 

 

 深夜、トイレに行く為に起きた僕は、リビングから母さんと父さんの声に漏れ聞こえてきた。

 

 

「あぁ。さっき電話があった。友奈と勇祐が、なんらかの影響で『タタリ』を受けた…そうだ」

 

「そんな…あの子は何もしていないのに……」

 

「だが日に日に増えていく怪我を見ていてはもう看過は出来ん。明日の朝1番に友奈を大赦に連れて行く」

 

 

 タタリ……聞き覚えはないけれど、どこか引っかかるように感じた。

 僕はリビングの扉まで近付いて、聞き耳を立てた。

 

 

「勇祐は、どうなんですか?あの子は…辛そうな顔が増えていますけど……」

 

「まだ、確定ではない。ないが、恐らくな。勇祐は頑固な子だ。意地を張っているんだろう」

 

「そんな、どうして…私達の子が……!」

 

「母さん。まだ友奈と勇祐が死ぬと決まった訳じゃない。媒介元が特定出来れば、隔離してしまえば半年程で良くなるらしい」

 

 

 死ぬ……?姉さん、が?

 

 

「俺達にも少なからずタタリの影響があるらしい。一応は大赦の職員だからか、進行は2人に比べて遅いが…兎に角友奈と勇祐だけでも大赦に保護して貰おう」

 

 

 駄目だ。それじゃあ姉さんは良くならない。どう考えても、僕が原因だ。僕が神様の言う事を聞かなかったからこうなったんだ。

 姉さんと一緒のところに居たら、駄目なんだ。

 でも父さんと母さんのところにも居られない。人の居るところには居られない。

 

 

 僕は、どうすればいいんだ。

 僕は……僕は………。

 

 逃げ、なきゃ。

 

 逃げるんだ。

 

 兎に角、この家から離れるんだ。僕1人だけで。

 

 

 僕は1人で部屋に戻って、パジャマから着替えて準備した。

 出来る限りのお小遣いと、いくつかの着替えをリュックに詰め込んで。

 どうなるか分からない。どうするかも何も考えていない。

 でもこの家から逃げなきゃいけない。

 家族皆から離れなきゃいけない。

 父さんは「隔離すれば助かる」と言ってた。これが本当に正しいかどうかは分からないけど、少なくとも僕は明日、姉さんと一緒に大赦に連れていかれる。

 そうしたらもう逃げ出せない。その後のことを考えれば、体の震えは止まらなくなる。

 

 

「ごめんなさい、父さん、母さん。姉さん」

 

 

 父さん達の優しさを無碍にしてごめんなさい。こんな親不孝者な僕で、ごめんなさい。

 別れも告げず、書き置きも残さず、僕は家を飛び出した。

 満月の春の夜は少し肌寒かったけど、僕は無我夢中で走っていた。

 

 

「どう、して……こんなこと、に…!」

 

 

 走って、走って。息が切れて走れなくなるまで走った僕は、息も途切れ途切れに、いつの間にか呟いていた。訳の分からないぐちゃぐちゃになった感情が僕の心に中に渦巻いている。

 どうすればいいのか、分からなかった。

 火照った身体に、酸素の足りない脳ではこの感情を制御出来そうになかった。

 

 

「やぁ。どうしたんだい?」

 

 

 ふと声を掛けられた。知らない人の声で良かった。僕が家から飛び出したことがもうバレたのかと思った。

 けど小学生がこんな夜中に息を切らしてるんだ。偶々散歩してた人が僕を見つけて声を掛けてもおかしくない。

 

 声の主を見るために、僕は顔を上げた。そこには深めに白いパーカーのフードを被って、口元をマスクで隠した人だった。声からしてたぶん男の人。明かに不審者だ。

 

 

「不審者に話す言葉はないよ」

 

 

 僕は強く出た。不審者にしか見れないのもあるし、舐められたくないという気持ちがあったからだ。

 

 

「それは弱った。君を助けたいんだけど…君は今、理不尽に巻き込まれているね?」

 

「なんなんですか…貴方は?」

 

 

 僕の全てを見透かしたように淡々と言葉を紡ぎ出していく。

 

 

「月のように明るい存在さ。太陽程ではないが、まぁそこはいいだろう。私はただのお節介焼きだよ。君にお節介を焼く理由かい?理不尽に飲まれても家族に会いたいが為に踠く姿に見惚れてしまってね……。君なら、輝く星々よりも強い光を示してくれると思ったのだよ。だがそんな君が真実を知る前に、輝く原石にもならない内に潰れてしまうなど了承できる筈もない!【アイツ】は人の輝きを忘れてしまった!尊さを忘れてしまった!許せる筈がない!私はいつだって人の可能性を信じてきたと言うのに!」

 

 

 何を、何を言っているんだこいつは。気でも狂っているのか?

 

 

「我々は少なくともそういう存在だ少年よ。傲慢なのだよ。ふふふふ。安心したまえ。私の気が狂れていたとしても私は君の味方だ。『今も戦い続ける君』の、ね」

 

 

 唐突に詰め寄ってきた男が、僕の顔を掴んだ。夜の闇より深いすぐそこにあるというのに、見えないフードの奥の顔は歪んだ笑顔な気がした。

 

 

「何すんだよ!」

 

「私は太陽みたいに『冷たいことはしない』さ。だからメリットもデメリットも話そう。メリットは人を超えた身体強化を施せる。やろうと思えば体が捥げる程に力も出せるだろう。細胞の活性化も出来て傷も早く治る。つまり負けにくくなって死ににくくなったわけだが、デメリットは寿命だ。使用の度に加速度的に縮むだろう」

 

 

 分からない。怖い。なんなんだ、なんなんだよ。こいつは僕に一体何をしようとしてるんだ!?

 

 

「絶対に必要になる力だ。さて、君のこれからを考えての忠告だ。『躊躇するな』。絶対に。すれば君は永遠に後悔する事になる」

 

「あっ、がっ!?」

 

 

 頭が電流が走るように痛み始める。

 

 

「そして逃げ続けたまえ。願わくば、君の未来に救いが訪れん事を。君の人としての輝き、尊さが失われん事を願い続けよう」

 

 

 

 そして僕の思考は一瞬にして闇に落ちた。

 何がなんだか分からない内に、僕は気絶してしまったのだ。

 

 

「私に、どうか人間賛歌を歌わせてくれたまえ、結城勇祐少年、白面の君よ———」

 

 

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