結城勇祐は弟である   作:白桜太郎

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話のストックがなくなってきました......もう2、3話上げたら毎日更新は止めるかもしれません


第7話 それは完成型勇者と疑いの話

 放課後、ゲーセンで時間を潰した後はそのまま家に帰る予定だったが先生に電話で呼び出され、職員室で説教を食らった。最近はサボらないようになってきたと思ったらどういう事だ、とかなんとか言われたけど全部右から左へ受け流した。俺の聞く態度がなってないから親に相談するとか口から溢して勝手に青ざめたりして俺は解放された。気にしちゃいないんだが早く解放されるならなんでもいい。取り敢えず親の話は姉にはしないでくれと念は押しておいた。

 でも素直に行く俺も俺だな。まぁどの道明日も登校するんだから同じことか。

 

 で、俺は今勇者部の部室にいる。来る気はなかったが姉に職員室で出待ちされていてお説教&お昼の謝罪を受けた後に部室に連行されたのだ。決してぼた餅に誘われたわけじゃない。姉に逆らえる弟はいないんだ。

 

 

 

 ......ほんとだぞ?

 

 

 

 口がモゴモゴ動いてるのは気にしないでくれタマえ。だからタマってなんだ。

 

 

 

 

「ごめんねゆうくん。私達言い過ぎちゃったみたいで......」

「ほれほそふぉめんな。おふぉなふぇないほとしふぉ」

「ぼた餅食べながら喋らないでよ。汚いし何言ってるか分からないわよ......」

「『俺こそごめんな。大人気ないことした』って言ってるよ?」

「なんで友奈は分かるのよ......」

「お姉ちゃんだから!」

「おほぉうふぉはからな」

「『弟だからな』って言ってるよ」

「だから飲み込めつってんの!」

「......なんでアンタが勇者部に居るわけ?」

 

 

 おっ、そこに居るのは木刀暴力女さん。木刀暴力女さんじゃないか。お前こそなんでここに居るんだ?

 

 

「この結城友奈の弟だから?」

「私の双子の弟だから!」

 

 

 たぶんそういうことを聞きたいんじゃないんだろうな、と思いながらぼた餅を飲み込んで答える。東郷、ご馳走さまでした。

 

 

「双子の弟であったとしてもアンタ勇者じゃないでしょ?」

「そうだけど」

「なら邪魔。どっか行きなさい」

「なんで?」

「邪魔だから!」

「そんなんだから木刀振り回して大の男相手に...」

「ちょーっとこっち来なさい!」

 

 

 首根っこを掴まれて一旦部室の外に出される俺。力強いなコイツ。木刀暴力ゴリラに改名させるか?

 

 

「というかお前この学校の生徒だったの?」

「昨日付けで転校してきたの!しかもなんであの時のアンタがここに......!」

「説明したじゃん」

「部外者は邪魔なの!」

「強情だな。そこまで言われると入部届出したくなってきたぞ」

「アンタねぇ......!」

「あっ、そうか。俺が巻き込まれるかもって心配してんのか。大丈夫だって俺はただの一般人......おっ?」

 

 

 木刀暴力ゴリラに胸ぐらを掴まれる。なんだ?俺なんかしたか?

 

 

「あん時の事を誰にも話されたくないから言ってんのよ......!」

 

 

 おっと、そういう事か。だったらあんな暴力事案起こさなきゃよかったのに。よく分からんなこいつ。

 

 

「話されると恥ずかしいってか。笑えるなそりゃあ。傑作だわ」

 

 

 はははは、と笑っていると夏凜の顔がどんどん赤くなっていく。

 

 

「じゃあ、アンタがした事も話していいって訳ね?」

 

 

 あっ墓穴。俺の顔から血の気が引いていくのが分かる。いや、でも、あれごめんなさいしたじゃん!?許してくれないの!?

 

 

「いやいやいや。ちょっと待て。アレはあの場で解決した話で...」

「私は一言も許したとは言ってないけど」

「許せよ!そこは!」

「誰が許すかこのクソ変態野郎!今すぐにあの時の決着つけてやろうか!」

 

 

 ヒートアップしていく俺と夏凜の会話を止めたのは、通りがかった先生だった。うるさい!と一喝された俺たちは「すいませんでした!」と謝ってすごすごと部室に戻る。

 

 

「へぇ、にぼっしーと勇祐って知り合いだった訳ねぇ」

「にぼっしー言うな!」

「色々あったんだよ......」

「色々......色々ねぇ。ゆうくん、どういう事か家に帰ったらじっくり話してもらえるかなぁ?」

 

 

 姉貴!笑ってるけど目が笑ってない!濁ってる!濁ってるぞ!!クッソ、なんでこうも今日は墓穴掘るんだよ!?

 

 

「ていうか俺まだ聞いてないんだけど、このぼくと...いやそんなに睨むなよ。こいつがなんでこの勇者部に居るんだ?」

 

 

 まぁ大体、というか理由は分かっている。あの世界でボコボコにしたのこいつだもん。

 

 

「私の名前は三好夏凜!完成型勇者よ!私が来たからには勇者部は私の指示に従ってもらうわ」

「あっそ。俺勇者部じゃないからお前の指示は聞かねーわ」

「じゃあ部室から出て行きなさいよ!」

「とのことですが、どうなんすかパイセン?」

「居てもいいに決まってるじゃない。むしろ入部届書きなさいよ。三好だって書いたんだし」

 

 

 書いたのか。おい、目逸らすなよ三好夏凜。お前絶対何かに釣られたか騙されたかで書いただろ。

 

 

「私のぼた餅には誰にも逆らえない...敗北が知りたいわ......」

「うっわぼた餅で釣られてやんの」

「ゆうくんもじゃない?」

 

 

 本日三度目の墓穴。えぇい、笑うな三好夏凜。シバくぞ。俺はまだ入部届書いてな......やめろ東郷、笑いながらぼた餅を近づけるな!やめろ!あっ......。

 

 

 

 

 もち......うま............。

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 何度目かのぼた餅ネタを披露したところで話を進める。要は三好夏凜は大赦から派遣されてきた5人目の勇者であり、これからは自分が仕切る、と気合いを入れて(駄々を捏ねて)いるようだ。ぼた餅で釣られた癖に生意気だな。

 そこに部外者たる俺が以前の痴態を知っていたもんだから大騒動になったというわけで。

 あの暴力事案に関しては、俺も知られたくない部分があるから後で今後一切蒸し返さない事を条件に協定を結んだりした。

 

 

「でも、そういえばあの白い仮面を被った人は本当になんなんでしょうか......」

 

 

 樹がふと、そんな事を口にする。俺の事なのでドキリとするが平常心を保つびぃくーる...びぃくーる......。少なくとも姉はすぐに俺の心を見抜くのでせめて表情を出さないようにしないと疑われてからの姉弟特有の読心コンボで俺が死ぬ。

 

 

「三好?アンタは何か大赦から聞いてないわけ?」

「私も、というか大赦も敵か味方か図りかねてるってぐらいしか情報は持ってない。大赦の識別名称は白面。バーテックスを封印の儀なしに一撃で仕留める程の攻撃力を持ち、勇者にも襲いかかる。人なのか、それともバーテックスなのか、それすら不明。分かるのは神樹様の力を授かった勇者ではない......ということぐらいね」

 

 

 わお、俺白面とか名付けされてんのね。そういえば顔合わせたときに言ってたっけ。

 というか俺、まだ襲いかかるのは未遂なんだけど。そも1回目はやる前に逃げたし、2回目はそれこそ三好夏凜が先に攻撃してきたからだ。本来はもう少し悪役ロールプレイをする予定だったんだけどな。

 今思えば、1回目に比べてだいぶ思考誘導......はあったけど、操られている感覚はあんまりなかったのは救いか。意識していれば逃れられるって事か?そうとしても油断は禁物だ。

 また姉を殺そうとしてしまうのは勘弁願いたい。

 

 

「大変だなぁ......」

「そりゃあ、部外者のアンタからすればそうでしょうね。ま、安心なさいな。アンタの姉も含めて私が守ってやるわよ」

 

 

 いや不安だなぁおい。あれだけ俺にボコられといてそんな事言えるのかお前。

 

 

「でも夏凜ちゃん、あのしろ...はくめん?にボコボコにされてたよね?」

「ちょっと!折角こいつ知らないのに言わないでよ!」

 

 

 知ってるけど。

 

 

「私の事、チンチクリンとか言ってたの、気にしてないけどあの時鼻血出てたよ!」

「えっ嘘!?合流する前に拭いたはずなのに!」

「嘘だよ?」

「あんたねぇ!」

 

 

 その顔は気にしている顔だぞ姉。

 流石に笑うわこんなの。なんで白面の話からコント始まってんだよ。

 

 

「あんたも笑うなぁ!」

「無茶言うなよこんなの笑うだろうが。あまり強い言葉を使ってたら弱く見えるぞ」

「まぁまぁ、落ち着いてください。話の要点がズレてますよ」

 

 

 そうだよ。流石は東郷、話を戻してくれたな。取り敢えず白々しく話でも振っとくか。

 

 

「その白面って奴は強いのか?大赦から派遣されてきた完成型勇者とか名乗ってる奴がそう易々とやられるとは思えないんだが」

「強かったわ、それも、『非常に』という言葉付きよ。私の射撃が見事に避けられたもの」

「私もです。捕縛したと思ったら投げられて...」

「私もだよー。殴ろうとしたら突然消えちゃってビックリ!」

 

 

 こういう形で俺の行動を聞くとやはり現実だったんだな、と再認識させられるな。ナイフを首元に突き付けられてるようで本当に嫌なんだが、どうして俺はこんな事になってるんだろうな。ちょっと気になるけど考えるのは今は止めとくか。ここで碌でもない事を考えたら姉に察知されそうで怖い。

 

 

「で、完成型勇者さんはボコボコにされたと」

「うっさいわね。次は逆にボコボコにしてやるんだから!」

 

 

 あっそ。絶対お前には負けてやんねーわ。

 変な闘争心を燃やしながら姉達の会話に耳を傾ける。次に白面に会った時の対処法を話し合っているようだ。こういう話題には混ざれないから少しだけ疎外感がある。でも一緒に戦う事は出来ずとも、手助けする事は出来るだろうしな。焦る必要はないか。

 

 

 ふと、東郷が視線を俺に向けて来た。複雑そうな顔だが何かあったか?

 

 

「どうした東郷?」

「うぅん、なんでもないんだけれど、服、ちょっと汚れてないかしら?」

 

 

 服?まさかあの時東郷に撃たれたペイント弾か?そう思って右袖を見るが何も汚れてはいない。じゃあ別のとこか、と見える範囲で探ってはみても何処も汚れていなかった。

 

 

「どこも汚れてねぇぞ?」

「ご、ごめんなさい。汚れてるように見えたから」

「そんな動揺すんなって。怒ってるわけじゃないからさ」

「そ、そう...よね。ごめんなさい勇祐くん」

 

 

 なーんか様子がおかしいな東郷。姉もどこか感じが暗い。いつもなら能天気に天然ボケをかましたり東郷とわちゃわちゃする筈なのにどこか引け気味だ。

 

 

「.......。あっ、もうこんな時間か。んじゃあ俺はそろそろ帰るわ」

「んー?なんか用事あるの?ちょっと手伝って欲しいことがあったんだけど」

「洗濯物取り込み忘れててな。今週末は雨の予報だろ?だから晴れの予報だった今日に布団も干したんだよ」

 

 

 ならしょうがないわねー、とパイセンが仕方なしに言う。姉も姉で「そうだ!忘れてた!」と思い出したようだ。部員でもないのだからパイセンの許可を得なくてもいいのだが、この雰囲気から帰ろうとするなら一言ぐらい言った方がいい。

 

 

「あっ、勇祐くん。帰るのなら私も連れて帰ってもらってもいいかしら?」

「んん?いいけど、ヘルパーさん今日いねぇの?」

「急に用事が出来て家に帰る事になったのよ。それヘルパーさんを呼んでいたら遅くなるから......良い、かしら?」

 

 

 東郷が俺に帰宅の手伝いを頼んで来た。本来ならヘルパーさんが専用の車を出して東郷の送り迎えをしたりするのだが、東郷本人が部活で遅くなる帰り以外はあまり使われない。姉が東郷を連れて一緒に歩いて登校したい、という希望と東郷自身がヘルパーさんに手伝ってもらうのをあまり好まないからだ。

 俺としても断る理由はない。東郷に苦手意識はあるが、ただそれだけだ。ぼた餅の礼もあるし引き受けるべきだな。

 

 

「いいぜ。どうせ帰り道は同じなんだしな」

「ありがとう勇祐くん」

「いーなーゆうくん。私も一緒に帰りたかったー」

「友奈は今度の幼稚園でのレクリエーションの準備があるでしょ?わがまま言わないの」

 

 

 パイセンが文句を言う姉に仕事が残っていると伝えるとぶーぶー言いながら次のレクリエーションで使うのだろう折り紙を折り始めた。

 

 

「ほら、三好も座って作業手伝いなさいな」

「なんで私が......」

「入部届書いたんだから部長の私には従ってもらうわよ?」

「分かったわよ!」

 

 

 そこで素直に聞き入れるだけ、三好夏凜という存在の根の善性が見てとれるな。あれだけ口を悪く勇者部のメンバーをごっこ遊びだとか言っているのも、危険だから注意を促しているんだろうな、とふと思い当たった。それにしてはなんとも雑で逆に怒らせる言い方だけど。もしかして友達いないんじゃねぇか......?俺も勇者部以外、友達と言えるような連中居ないけどさ。

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 昼から夕方に変わろうとする時間帯。ちょっと長く洗濯物を干し過ぎたなと考えて、午後の授業をサボってゲーセンに行くぐらいなら洗濯物を取り込んだ方が良かったと軽く後悔した。

 東郷とは特に会話もなく、俺が歩く単調な音と聞き慣れた車椅子の車輪の音が静かに聞こえるぐらいだ。車椅子の東郷に為に車通りの多い道は歩かず、少し遠回りだが歩道がしっかりとある道を選んでいる。流石に鉄の塊の車には勝てない。

 

 

「ねぇ、勇祐くん?」

「なんだ?東郷」

「えぇっとね......」

 

 

 言い淀む東郷。なんだ、やっぱり今日はおかしいな......。大体の理由は、察せるけど言うべきか言わないべきかで悩む。そう思っていたら先に東郷が意を決した顔持ちで後ろから車椅子を押す俺に振り向いて来た。

 

 

「勇祐くんは......私達の味方?それとも敵?」

「藪から棒だな。急にどうしたんだ?」

「その、今回の戦いで少し...不安になっちゃって......」

「成る程なぁ。でもそう言われると難しいな。俺だって生きてる人間だ。対立する事もあれば支持する事だってあるさ。例えば、姉貴と東郷が喧嘩して、どちらも同じくらい悪いって状況になったら間違いなく俺は姉貴の立場で立つだろうよ」

 

 

 嘘偽りない、本音の言葉。俺にとって姉とは『全て』だ。あえて声に出して言わないけど姉が天の神側について、世界の滅亡を望んだのであれば間違いなく俺はそちら側につく。

 

 

「でも俺は、姉貴...いや、勇者部の味方でありたい。こんな役目を背負わされたんだ、例えお前達が世界を守らない選択肢を選んでも、俺はお前達の味方だよ」

 

 

 ま、そんな選択は最初からないだろうけど、と付け加える。

 

 

 ------『こんな役目を背負わされた』とは勇者部と俺、いったいどちらの事を言っているんだろうな自分は。

 

 

「こんな答えで大丈夫か?」

「ありがとうね......ごめんなさい、急にこんなこと聞いちゃって」

「いいよ別に。不安になるのもしょうがないさ」

 

 

 意味のわからない人型の敵と戦っているんだ。こういう不安にも陥るだろうさ。下手をすれば、勇者部以外が敵にすら見えるかもしれない疑心暗鬼も生まれるだろうに。

 

 

「東郷達は強いよ。だから大丈夫だ」

「......私達の戦い方の事かしら?」

 

 

 それもある。けど声にも顔にも出さんぞ。態々こういう事も聞いてくるって事はつまり、そういうことだろう。

 

 

「精神的な話だよ。だってそうだろ?唐突に勇者にさせられて、バーテックスと戦って。なのにお前達は笑顔になれるし、普通に生活してる。十分強いじゃねぇか」

「そうかしら」

「そうだよ」

「......ふふ、今の声、友奈ちゃんそっくり」

「そうか?でもまだ声変わりしてないから似てるっちゃ似てる...のか?」

 

 

 東郷の顔に笑顔が戻ったところで、一旦止まっていた歩を進め始めた。

 やはり東郷は、俺が白仮面を被っている事に気付いているのかもしれない。こういうところには聡いから、俺は東郷の事が苦手なんだ。

 もしかしたら勇者部がたまに開く女子会とやらは、あの世界での俺と、こちらの世界での俺との関連性とか、そういうのを話しているのかもしれない。

 

 

「私はもし勇祐くんが敵になったとしても、必ず助けて正しい道に引き戻してあげるから」

「そうか、そりゃあ期待しとかないとな」

「もう、それは敵になるって事?」

「ぼた餅が人質じゃなかったら敵かもなぁ?東郷のぼた餅は美味いから俺にぼた餅を献上する限りは味方で居てやろうぞ?」

「調子に乗らないの!」

 

 

 二人揃って笑い出す。

 あの世界で会う時は、立場で言えば敵同士かもしれない。でも俺は勇者部の味方であり続けたいと思う。

 でも俺はあの世界に呼ばれる事を自分から止める事は出来ない。

 拒否すれば、『あの時』のようになる。

 俺は、それがとてつもなく恐ろしい。

 

 

 

 あれ、『あの時』って......まさ【記憶を消去】

 

【叛逆の意思を認める】

【対処開始】

 

 

【------------】

 

 

【終了】

 

【征け】

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