にぼっしーとの絡みばかりになってしまってますね......
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その日は体調が悪く、普通に学校を休んだ。「ゆうくん、あれだけ暴れてたのにテストの成績だけはいいから、馬鹿だけど馬鹿じゃないって判定なのかな?」とは俺が体温計で測った40度近い体温を見た姉の言葉だ。どういう意味だそれ。俺を貶してるのか慰めてるのかどちらだおい。「お布団被って寝てるんだよ?スポドリはここ!お粥も作ってあるからお昼に温めて食べてね!授業終わったらすぐ帰ってくるから!家の外に出ちゃダメだよ!」と姉は足早に学校に行った。殆ど俺の耳に入ってはいなかったが。
昨日、東郷と別れてから非常に身体が重い。何故か痛みには鈍い体質だからか風邪による身体の節々の痛みはあまり感じないが、特に頭が昨日は割れるように痛かった。
「何か、忘れてるな......」
頭がぼーっとして何も考えられない。身体の何処かが、思い出せ!と叫んでいる気がする。
「駄目だ、寝よう」
辛さに耐えきれず、俺は目を閉じる。あの世界に行くかのような浮遊感に包まれながら、俺はすぐに眠りに落ちた。
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『なぁ。おーい』
煩いな。俺は風邪引いて寝てんだぞ。
『あれだけ(雑音)を受けて風邪で済むのかお前......』
誰だよ。どっかで聞いた事ある声なのは分かるけど。
『やっぱ忘れてんだなぁ。私、いつでも起きれるから早く迎えに来いよな』
おい、待てよ。何のこと言ってんだよ。それよりお前は誰だ?
『どうせ言っても忘れるさ。私が干渉出来るのもお前が(雑音)を受けた時だけだし』
おい、雑音が酷いぞ。誰か分からん奴。
『お前のお目覚めの時間だ。さぁ、思い出せ。さもなきゃお前どころか大切なモノまで死ぬぞ』
おい、おい!待て!
『んじゃ、またな』
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「......。死ぬ、か。俺と、何かが」
そう言われても困る。さっきの夢を見て、起きた直後の俺の感想だ。
死ぬと言われても実感が湧かない。そもそも雑音が多くて聞き取れないところもあった。というか誰だアレ。女の声だったけど、聞いた覚えがないのに聞いたことがあるような声だった。
「んんー?」
少しはマシになった頭で思い出そうとしてみるが、どうも記憶が抜け落ちたように思い出せない。気持ち悪い感覚だ。ここ最近にもあった気がするぞこれ。
「ヤバい、ヤバいぞこの感覚は......」
感覚的な話だが、絶対に碌でもない。思い出しても思い出さなくても命に危険が迫る気がする。どうすりゃいいんだ。なんていう事に気付かせてくれたんだよあの声。くそ、どっかで笑われてる気がする。
とにかく、思い出せないなら仕方がない。どうせ天の神の仕業だろ。気にしたところでどうにもならん。なら寝た方がマシだ。
♦︎
放課後の讃州中学、勇者部。
風邪を引いた勇祐の為に友奈は部活を休んだ為、今居るのは新入部員の夏凜を含め4人だ。
「さて、今日も勇者部女子会、始めましょうか」
風が声をあげ、女子会の開催を宣言する。そして夏凜が怪訝な顔をして風に問う。
「女子会って、なにするのよ?」
「まぁ外部にはあまり漏らせない話を、ね。今日は友奈が居ないから、しっかり話しておこうと思って」
「友奈が居ないから......?一体何の話よ」
「......白面について」
夏凜の怪訝な顔はそのままで、空気は重くなる。誰もこの会話をしたくない、と言うかのようだ。夏凜だけがその空気をよく分からずに、ひとまず流した。
「友奈と白面の関係性が良く分からないんだけど」
「気付かなかった?白面の背格好、髪の毛。友奈...いいえ、勇祐にそっくりなのよ」
「まさか......いや、言われてみれば............」
「誰も、勇祐さんの事だと言いたくは無いんですけれど......でもそう言われたら、そうとしか思えなくて......」
険しい顔で仮定ではあるが、ある種の核心を持って話す風。
俯き、震える手を握りしめる樹の顔は前髪に隠れて見えない。それでも、彼女の顔は安易に想像が出来る。
風も、東郷も、誰も良い顔をしていない。何か得体の知れない妄執に囚われているかのように彼女たちの脳内には、勇祐=白面という式がこびりついていた。
だが、たった1人だけそこに反論出来る存在が居る。
「あんた達、実は馬鹿でしょ」
「は?」
「いや、ただの一般人がどうやって樹海に入るのよ」
「それは.......勇祐にも勇者適性があったから......」
「あったからってなんなのよ。男に勇者適性があるなんて前代未聞だけど、選ばれなかったじゃない。それに勇者アプリも持ってないのよ?仮に樹海に入れるとしても、どうやって変身するのよ」
その言葉に風達は反論出来ない。
勇祐には男性で唯一、勇者適性があった。適正値の順位で言えば中の上。讃州中学勇者部全員の適正が上位であることから多少見劣りはするが、それでも十分にあると言える。だからこそ、勇祐に白面説が出てきたのだが、それすらも夏凜はバッサリと切る。白面は少なくともバーテックスを一撃で屠る武器と東郷の射撃を何発も防ぐ盾を持ち合わせている。服装はともかく、一般人の勇祐には到底用意できない武器だ。
ため息をつき、やれやれと首を振る夏凜。勇祐が夢を介して樹海に入っているなど、誰も想像すら出来ていない。それどころか、彼女達はまだ天の神の存在すら知らないのだ。
天の神という神樹に対を成すものが存在して、それが勇祐を樹海に侵入させるように仕向けているなど、誰が想像出来ようか。
「否定出来る点なら幾らでもあるわよ。敵対理由もそうだし、そもそも敵なのに勇者部になんで来て皆と仲良くしてる訳?スパイ行為とかしてる訳でもないのに?」
実際、勇祐が彼女達に『勇者として何をしているのか』と聞くことは無い。勇祐自身も部外者である自分が関わるのも気がひけるのだろう、と彼女達は考えていた。実際は自分が白面である、とボロが出るのを防ぐ為なのだが。
夏凜にとって、結城勇祐という存在は目の上のたんこぶとも言える。自分の黒歴史とも言える事件を知っている上に『あのような』行為までしたからだ。好きか嫌いかで言えば嫌いであるし、出来れば関わりたくない存在だ。
しかしそれとこれとは話は別。勇者である夏凜にとって彼もまた守るべき一般人のうちの1人。神樹様が守るこの世界に生きる者の1人だ。だから夏凜は彼を信じたいし、疑う事をしない。それは勇者として訓練を続けてきた上での彼女の仁義だ。
「疑う事を止めろとは言わないわ。けど、本人と友奈の前では止めなさいよ。特に友奈。家族の事を悪く言うもんじゃないわよ」
「そう、ですよね...」
樹が顔をあげる。風も、今まで黙っていた東郷も少しだけ顔を明るくする。
「はい、湿っぽい話は終わり!んじゃあ私は帰るわよ」
「なんで帰ろうとしてんのよ。まだ部活はあるわよ」
「待ちなさいよ、もしかしてあんな話した後に何かしようとしてたの?後々の空気とか考えなかったわけ!?」
正論である。
風としても考えなかった訳ではないが、この話も重要だった上に丁度この話を嫌う友奈が居なかったが為に話を始めたのだ。それに夏凜からの情報も得たかったという理由もある。
「これには深い訳がね...」
「ないでしょうに」
一刀両断。夏凜としては勇者システムの補足説明と『満開』の仕様についてあらかた話終わった後である為、早く帰りたいという気持ちしかない。勇者部の部活に夏凜は興味はあるが勇者としての役目の方が優先だと考えている為に乗り気ではない。
端的に言えば、彼女は素直ではないのだ。
今日は夏凜引き留め役の友奈も居なければ、煽ってやる気にさせる勇祐も居ない。しかも完全に論破された手前、風達にも夏凜を止める術はなかった。
「んじゃあそういう事だから。ちゃんと渡した勇者システムの説明プリント読んでよね!」
そう言って足早に出て行く夏凜を止められるのは誰も居なかった。
♦︎
寝たらスッキリした。睡眠は偉大だな。学校に行かずに寝てる方がいいんじゃないか?テストなんて教科書見て問題解けばいいんだし。あっ作文は駄目だな。
体温も平熱に戻ったし......あれ、スマホにメッセージ来てるわ。パイセンに樹に、東郷も。心配してくれていたようだ。優しさが心に染みる。ありがとうと返信しておいた。
「んんー、元気になったし、ちょっとギターでも弾いてくるかなぁ」
ベッドの上で背伸び。それから壁に雑に立て掛けられた愛用のギターを見る。
俺の唯一の趣味とも言えるアコースティックギター。奏でられるメロディは俺を虜にして止まない。
折角だし海岸にでも行って弾いてくるか。あっ、その前にお粥食べないとな、姉貴が作ってくれたものを無下にする訳には行かないし。
姉貴で思い出したけど何か言ってたっけ?寝とけだっけ?まぁいいや。今日の俺はワルだぜ。ふへへ、風邪の後でなんかテンションおかしくなってんな。
ギターケースを背負って、普段は使わない自転車に乗ってお気に入りの海岸まで突っ走る。体が一気に解放されたように軽い。気分も良い。最高だ。今日は天気も良いからさらに良い。良い事尽くしだ。たまんないね。
そうしてやって来た海岸。
自転車飛ばして思ったけど、まだ体調悪かったわ。どう考えても体が普段通りじゃないもん。段々と自分がアホな事してるんじゃないかと思えてきたし、姉貴が怒りそうな気がしてきた。震えてきやがったぜ......。たぶんこの震えは風邪、だといいな。
砂浜へと降りる階段に座ってギターケースから相棒を取り出す。一度弦の様子を確かめてからお気に入りの曲を弾き始めた。
心地良い音色が俺の気分を高揚させてくれる。気分が乗って来て、静かな曲から少し激しい曲へと流れるように変えていき、曲調に合わせて忙しなく両手を弦に沿わせ、指を別の生き物のように動かす。
この瞬間、この時だけは何者にも邪魔をされないような気分になれる。
「.........。アンタ、風邪ひいて休んでるはずなのにこんなとこで何してんの?」
誰だ俺の至福の時間を邪魔するヤツは...と思って後ろから掛けられた声に振り返ると、そこには三好夏凜が身軽な服装で立っていた。
「お前こそ何してんの?」
「ランニング。アンタこそ何してんのよ」
「見て分からんか?」
「アホ。そういう事聞いてんじゃないわよ。最初に聞いたでしょうが」
「ギター弾きたかっただけ?」
「疑問形になるな。そもそも具合はどうなのよ。友奈の奴、真っ先にすっ飛んで帰ったわよ」
「平気だけど?」
「アンタねぇ...」
まるで『そういう事を言いたいんじゃない』という顔で溜息をつかれても困る。何が言いたいのかハッキリしない奴は嫌われるぞ。言いたい事は分かるけど。
「もしかして三好って友達居なかっただろ?」
「はぁ!?な、なななんで今そういう話になるのよ!!?」
「たぶん、姉貴が俺の事心配してるのに当の本人がこんなところで油売ってないでとっとと帰れって言いたいんだろうけどさ。もうちょい遠回しに言わずに素直に言った方がいいぜ?」
「そっ、そうよ!でもそれと友達居なかったは関係ないでしょ!!?」
「部室でも思ってたけど態度がきついんだもんお前。あの夜に会った時は単純にイラついてるかなんかだと思ってたらこれだもんな。どうせコミュ障拗らせて部活もサボってきたんだろお前」
あの夜と同じような顔で口をパクパクとさせる三好夏凜。明るいところで見ると更に面白いなその顔。わなわなと震えてるのも面白ポイントが高い。芸人を目指せそうだぞ。
「図星なんだな」
「うぅ...そうよ!何か悪い!?」
「いや別に」
「なっ......」
「部活サボるのも、サボって鍛錬の時間に充てようとも、自由にしたらいいだろ。部長のパイセンからすれば責めるべき事だろうけど、それを甘んじて受け入れるのは自由の代償だ。あと、俺も人の事言えるような行動をしてる訳じゃねぇからさ」
自分で責任が負える範囲なら自由にすべきだ、というのは持論だ。最近は手に負えない案件が山ほど出てるし、以前は「そんな事知ったこっちゃねぇ!ロックンロール!」とか言ってたりしたから今更な持論なのだが、それでも俺はこの持論が正しいと思っている。
「なぁ、三好」
「なによ」
「俺が敵だったらどうする?」
「殺す」
「おっと直球」
「私は勇者よ?そりゃあ殺すでしょ」
「人類と世界の敵になるんだもんなぁ。そら殺されるよなぁ」
「アンタが敵かどうかなんて今はどうでもいいのよ。それより鍛錬に付き合いなさい」
「俺ギター弾いてるし風邪ひいた後なんだけど」
「家で弾けばいいし仮に倒れても連れて帰ったげるから平気よ」
やべぇこの女マジでヤル気だぞ。待て待て待て。木刀出すなおい。背中に背負ってた長細い袋は一体なんだ?って思ってたら木刀かよ。それも二本。止めろ。マジでヤベー女じゃねぇか!仮にも俺は一般市民で喧嘩慣れしてるだけだぞおい!
「ギター置いといた方がいいわよ」
「......一先ずケースに仕舞わせてくれ」
「しょうがないわね。さっさとしなさいよ」
「おう、ちょっと待ってろ............、先手必勝ッ!」
「うわっぷ!?貴様ァ!」
秘技砂かけ!ここが海岸に降りる階段で良かった!細かい砂が山程あるからなぁ!小石とかあったら怪我するからな!
あの時は先頭回避出来なかったが今は違うぜ!木刀持った狂人に正攻法で挑んでられるかボケ!逃げるが勝ち!
「逃すかァァ!」
「っ!?そこは逃がしてくれよ!!」
「断る!」
「何がお前をそう奮起させてんだよ!?」
「あの時の恨みィ!」
「それは俺が悪いな!でも逃げるわ!」
相変わらずの縦横無尽に走る剣戟を、素手で受ける訳にもいかないので避け続ける。片目にしか砂が入らなかったのが悪かったか。状況判断力が凄い上に、砂浜に逃げ出そうとしたら追いつかれたし身体能力も半端ない。完成型勇者の名は伊達ではないと思い知らされる。面倒だし厄介だな!これ絶対仮面被った俺に良いようにやられたの根に持ってて、推定白面である俺に八つ当たりしてんだろ!?八つ当たりじゃないけどさ!
「ワンモアセッ!!」
「二度目!?」
二度目の砂かけだ!今度は最小限の蹴りで顔面にぶっかけてやったぜ。予備動作がほぼほぼないから予測も出来なかっただろう。砂浜である以上、足場は悪いが砂はかけ放題だ。流木やポイ捨てされたであろうゴミもあったりするから投げるものには困らない。投石とは人類が編み出した最高の武器だ。
「しゃらくさい!」
「うわっ!?テメェ!俺の手を真似やがったな!」
二度目の砂かけを左手でガードする事によって被害を最小限に抑えた三好が、俺に砂かけの逆襲をしてきやがった。適応が早いな。しかし付け焼き刃での砂かけなんぞ俺には通用しねぇ!
しかしどうしたものか。
逃げられない以上、相手しないとどうしようもねぇ。殺す気は無いのだろうが、本気で鳩尾とか首とかを狙って来ているので洒落にならない。
あと『流星』は使わない。あれを使うと非常に疲れるのと、思考が汚染されていく気がするからだ。使うときは慎重にしなきゃいけない。しょうもない使い方はしたけど。
対長物相手のやり方も多少は心得ている。ただ相手が実は達人級の相手でなければ、だが。この三好もどうやらそういう相手だったようだ。姉より弱いと思ってたんだけどな。どういうことだ?攻め手に欠ける程度には強い。というか防戦一方だ。
ここはいっその事腕の一本ぐらい覚悟すべきだろうか?そうすれば、三好を気絶させる事ぐらいは出来る。いや、姉を心配させる訳にはいかない。たぶん姉のことだ、怪我をして、更にその相手が知り合いであったらどういう反応をするか想像も出来ない。きっとよくない事になる。
そして、俺が三好を怪我をさせるのもまた同じ。叱られるどころではなく、失望されるだろう。そこに如何なる理由があろうとも、だ。
「なんで攻撃しないの!?」
「うるせぇ、な!出来る訳ねぇだろ!アホかてめぇ!」
ただ、それらの理由なんて、全部後付けだ。最初から逃げに走ったのも、ちっこい意地があるからだ。
こっ恥ずかしくて言うに言えない。けど、東郷には言った。『俺はお前らの味方であり続けたい』って。
そう言った翌日に掌を返すのも良くない。
コイツも、狂人のように今は木刀を振るっていても、勇者部の部員だ。
だから、だからこそ。
「いっ...づぅッ!捕まえたァ!」
「アンタ!?」
あの夜と同じように、木刀を素手で捕まえる。今度はとてつもなく痛い。グローブもないし、そもそも完全にこちらを害する程の力が乗っているのでしょうがない。これも必要経費。自由の代償だ。
「よぉ、木刀暴力狂人女......ご自慢の木刀を両方掴まれた気分はどうだよ?」
「離しなさいッ!」
「嫌だね。離したらまた殴りかかってくるだろうが......?」
「なによッ!?」
「いや、お前......何にビビってんだ?」
「ッ!?」
図星か。目がちょっと震えてたからカマかけてみたけどその通りなのかよ。分かってきた。分かってきたぞ?大赦だな?それか白面の事だろ。
いや、両方か。さぞかし面倒な話なんだろうな。
「あの夜の恨みってのも、あるんだろうけどさ」
一呼吸開けて、本題を話す。
「回りくどいのはナシだ。何があった?俺に話せないはナシだぞ。なんつったって、俺にこうして殴りかかって来てんだからな」
「だから、それは......」
「前置きはいい。本題を話せ。話さないなら無理矢理にでも聞いてやるからな」
姉達は無理矢理にでも話を聞く事を嫌う。でも俺は違う。今回は俺に何かあるようだから余計にだ。
仮に俺以外の全てが俺を勇者の敵にさせようとしても、俺は味方であり続けたいから。
俺が『結城勇祐』である限り。
俺が、『人間』である限り.............。
♦︎
結論から言うと、既に状況は切羽詰まっているらしい。大赦が、俺という存在を白面に結びつけたのだ。確かに勇者部にすら疑われるレベルなので遅かれ早かれ大赦に認識されるだろうと思ってはいたが、あまりにも早い、と思ったが考えればむしろ遅い方であるだろう。
三好から俺の現状を聞いた俺は「そうか...」としか言えなかった。俺が本当に白面だと言うつもりはない。言ったら最後、俺は三好夏凜に殺されてしまうからだ。
------それは駄目だ。
姉が悲しむからだ。だから言えない。
「つっても、私はアンタが白面だなんて信じちゃいないけど」
「そうなのか?」
「当たり前でしょ。確かに髪の毛の色とか身長とか似てたけど、バーテックスがアンタの身体を真似て造形したって言われた方が信じやすいわよ。戦い方も似てた。ただ俊敏さが足りなさすぎる。足捌きも下手。喧嘩慣れはしてるっていう動き方ね。白面の戦い方の方が洗練されてる」
あれ、そんなに戦い方違うか?と思ったが、あの姿でいる時は体が異常に軽いので当然か、と思う。思考も呪縛から解き放たれたように明瞭になるからあの姿の俺の方が強いのだろう。
「ま、急に殺す気で向かって悪かったわね。本気で殺す気は半分なかったけど、大赦からアンタを調べろって言われたからしょうがなかったのよ。はぁーー、肩の荷が降りたわ。これで白面と同じ動きされたら殺すしかなかったもの。大赦から指示されてすぐにアンタを見つけられてよかったわ。呼び出すのも面倒だし」
「半分.....ってお前さぁ」
「あの夜の事忘れたか?」
「すんませんっした。というか俺が木刀止めなきゃどうしてたんだお前は」
「ん?そのまま殴ってたわよ?」
その、さも当たり前でしょ?っていう顔やめろてめぇ。マジでヤる気だったのかよ。人としてどうかと思うぞそれ
「アンタならどうにかすると思ったのよ。じゃ、大赦への報告は任せときなさい」
「......なぁ。三好。なんでお前は」
「結城勇祐13歳。結城友奈の双子の弟。クラスメイトからは不良と呼ばれていて素行は悪い。中学1年生後半までは授業をサボることも警察のお世話になることもしばしば」
俺の言葉を遮るように喋り出した三好。
そして、でも......と三好は言葉を続ける。
「1年生の後半からは以前の凶暴性の形は無くなった。授業も受けるようになり、行事も不満気な顔ながら参加。生徒達からのレッテルは未だ晴れないが、正義感もあり、イジメの現場を見て止めに入ったりもした。姉想いで姉妹仲はとても良い。2年生からは勇者部の活動も助っ人という形でこなす事も多くなり、笑顔も増えた......。こんな存在、人間でなくてなんだって言うのよ」
確かに話はその通りだ。でもお前それどっから聞いたんだよ。恥ずかしいだろやめろよ。
「だから、よ。あと、友奈のあんな楽しそうにアンタの事を話す顔を見たら疑う気も無くなった。だから大赦には『問題なし。姉想いの彼は人間である』って伝えてあげる。感謝しなさい」
そう言うなり、三好は木刀を袋に閉まった。
正しく、勇者なのだろう。三好夏凜という存在は。おそらくこの短期間で俺を調査して、俺が敵ではないと結論付けたのだろう。そして戦闘力という不審点があったからこうして殴りこんだ、というところか。
「ところで、アンタのスマホ、さっきから凄い勢いで鳴ってるけど出なくていいの?」
「...........。あっ」
今気付いた。ギターケースの側で、心なしか怒気が籠っている着信音が俺のスマホから流れている。急いで駆け寄り、画面を見ていると『友奈』の2文字。
ヤバい、嫌な予感しかしない。履歴も30件ぐらいある。もしかして三好から逃げている間ずっと鳴ってたのか.....?
「もしもし......?」
「......何処にいるの?」
ヒェッ......これは怒ってる声だ。
「あの、姉貴......?」
「言い訳は後で聞きます。帰ってきて」
「はぃ......」
いつもとは違う口調と雰囲気の姉の声。怖い。
姉に勝てる弟は、幻想なんだなぁ......。
弱い弟
家に帰ってフローリングの上で正座。
姉に勝てる弟は居なかったよ......。
強い姉
弟が部屋に居なくてガチ焦りしたけどギターとケースが無くなっている事に気付いて目のハイライトが無くなった。
ビクビクしながら帰ってきた弟を正座させて小1時間説教。その後、一緒にご飯を食べて罰と称して一緒のお布団で寝た。
風先輩
勇祐が敵と信じたくないけどそうとしか何故か思えない。でも夏凜に諭されて、それもそうだなと思えるようになった。
樹ちゃん
せっかく仲良くなったのに敵なんて信じたくなかった。夏凜先輩に諭されてお姉ちゃんと同じ状態に。勇祐さんのギターをもう一度聞きたい。
東郷さん
そう、ですよね。普通は......そうですものね。