俺が生きるこの世界には人に空を飛ぶ『翼』を与えてくれる二つの大きな力がある。
一つはインフィニット・ストラトス、通称・ISと言うパワード・スーツだ。
10年前にその姿を見せた時は宇宙開発を主眼に置いたモノだったが、最初は見向きもされなかった。
だがISは『とある事件』をきっかけに『あらゆる兵器を超越した最強の力』として今や世界中で研究や開発が進んでいる。
しかし俺のISに対する興味はかなり薄かった。その理由は三つ。
まずISは女の人にしか使えない。つまり、男の俺には最初から縁がないモノなのだ。
次に俺には姉がいるのだが、その姉はISの第一回世界大会で優勝していたりする。
その姉からISの事について知る事を厳しく止められていたのだ。
そして第三にして最大の理由。
俺が何よりも心惹かれ、自らの意思で手を伸ばしたのが『もう一つの力』だったからだ。
この世界にISより少し前に姿を現したその力の名前は
別称『
しかしA.T の最大の魅力はそのスピードではなく、あらゆるモノを『道』にして装着したヤツに『空を飛ぶ』事を実感させてくれる事。
そんなエア・トレックを装着し、空へと到る為に爆走するヤツらを人は『
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しかし、なんの因果か俺は先に述べた『IS』の為の人材育成機関『IS学園』にいた。
「……どーしてこーなった?」
IS学園の制服を纏った俺の溜息は空へと消え、相棒のA.Tも当然答えてはくれない。
思い起こせば数週間前、俺は高校受験の為に多目的ホールにいた。
そこで偶然入った部屋に置かれていたISに気まぐれで触れたのが運の尽き、『世界初のISを起動させた男』として受けるつもりも無かった女の子しかいないハズのIS学園に強制的に入学決定と相成ってしまったのだ。
ふと気が付けばもうすぐ自己紹介の順番が俺に回って来る。
『教師もクラスメイトも周囲は全員女の子』な状況に内心頭を抱えている場合じゃないな。
「では次、織斑君。織斑一夏君」
「ウッス!」
副担任のちょっと幼い感じの眼鏡美人・山田真耶先生に呼ばれて席を立つ。
ちなみに俺の席は中央列の一番前、教卓の真ん前と言う超目立つ所にあるのでさっきからクラスメイト達の視線が背中に突き刺さっている。いや、視線に質量がなくて良かった。
「織斑一夏15才。ISの事は何も知らないから色々迷惑かけると思うけど一年間よろしくッス!」
当たり障りのない自己紹介にクラスメイト達は満足していないのだろう『もっと何か聞きたい』と目が言っている。『目は口程に物を言う』って諺は本当だったんだな……まぁ、確かに俺の言いたい事はこれからだったからいいけどネ。
「ちなみに趣味と特技、っつーか好きな事はA.Tで飛ぶ事ッス!」
俺の趣味を聞いてちょっと驚いているらしい事がクラスメイト達の表情から窺える。
「え、A.Tですか!? それにそのバッジ……もしかして織斑君……」
制服の衿に着けた銀バッジを見つけ、俺の言いたい事を予想したらしい山田先生。
ついでに言うとこの銀バッジは『
まぁ、詳しい説明はまた今度。
「ウス。一、
そう言い切った瞬間、頭に頭蓋骨が粉砕されたかと思う程に強烈な衝撃が落ちてきた。
「自己紹介くらいもう少し静かに出来んのか、この
聞き覚えのある声と脳細胞が一気に消滅しそうな無双の威力に振り向くとそこには武神がいた。
「お館様ァアァーッ!!!!」
「誰が甲斐の虎だ」
「ぎゃふん!!」
俺の頭に再度強烈な一撃が叩き込まれた。
しまった。『お館様』違いで桃色なパラドックスの魔王様の方が中の人的に良かったか?
……中の人ってなんだ?
ちなみに俺は天覇絶槍な彼のあの熱さと爆走具合が好きだ。
「痛ぇ……って、なんで千冬姉がここにいんだ?」
職業不詳のハズだった実姉・織斑千冬様に素直に疑問をぶつける俺。
しかし、返って来たのは三度目の衝撃だった。
「織斑先生と呼べ空気頭。……さて諸君、私が君達の担任である織斑千冬だ。君達弱冠15才を16才になるまでの一年間で鍛え抜き、使い物になる操縦者に育つように指導する事が仕事だ。逆らってもいいが、私の言う事は聞け。いいな」
我が姉の目茶苦茶な自己紹介にクラスメイトの女の子達は困惑どころか歓喜と供にヒートアップしている。
うーむ、この娘達の将来が心配だ。
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そんなこんなでSHRは無事終了した。
この後、入学式の日からいきなり授業があるのも国の未来を背負うエリート達の通う進学校なのだから当然だろう。
しかし『クラスメイトからの一撃を白刃取りで防ぐ』と言うワケの解らない状況は一体何なのだろうか。
「……随分面白いマネしてくれんな。どーゆーつもりか説明してくれないか、篠ノ之箒=サン?」
「それはこちらのセリフだ! 何故A.Tなどと言う不良の道具を履いている織斑一夏!」
屋上に呼び出した上で竹刀でいきなり切り掛かってきたクラスメイト、篠ノ之箒は俺の幼なじみだったりする。
コイツは幼少時に千冬姉と一緒に通っていた剣道場の師範の娘で、互いに切磋琢磨し合った仲だ。
小四の終わりに家庭の事情で箒が引っ越してから約六年ぶりの再会なのだ。
「A.Tは不良の道具じゃねぇし!! ってか竹刀を丸腰相手に振り回す方が不良の所業じゃないかと思うんですけど!?」
「貴様自分の事を棚に上げて私を不良呼ばわりするか! あまつさえチームに入り臆面もなく『自分は暴風族だ』などと……何故そこまで腐った!!」
「別に腐ってないっつの!」
箒がこんな風にお冠なのには理由がある。
A.Tは壁や手摺り、鉄柵から『街』と言う名の空間全てを『道』として疾走し、自分の『走りの記憶』を『傷』にして残す。それがライダーの誇りにもなるのだが一般人からしてみればそれは『器物破損』でしかないのも事実だ。
それ以外にライダー中にはA.Tの力を悪用する輩もいて、犯罪の増加が社会問題になっている。
それと『暴風族』にはチーム同士の抗争、『
それらを取り締まる為に『暴飛靴新法』と言う条例やそれに伴い設立された『マル風Gメン』なる警察組織まで存在する。
A.Tのそんな負の一面しか知らない箒のような人間は先の解釈しかしない。
「テメェは一昔前の『バイクは不良の乗り物』とか言ってるおばあちゃんか!」
箒のような意見の
基本的に俺や中学時代からの親友・五反田弾を含めてライダー達の多くはA.Tで『飛ぶ』事や、誰かの『
それにA.Tは世界的プロスポーツにもなってるし、特撮なんかにも使用されていたりもする程にシェアがあったりするのだ。
更にA.Tは老若男女問わずユーザーがいて、日本だけでなく世界中で様々な技術応用が研究されたりもしているので一概に箒の言う『不良の道具』なんかでは決してないのだ。
「似たようなモノだろう! それに誰がおばあちゃんだ!!」
「全然違うわ! MAMURASAKI SPORTSとかでパーツ売ってんの見たトキとかNFAぐれー知ってんだろ!!」
NFAってのは『
「知らんわ、そんなモノ! それよりも貴様のA.Tを出せ、そんな物は捨ててやる!!」
「っざけんな! 寝言は寝て言え!!」
「黙れ、
「
六年ぶりの幼なじみとの
〈キャラ紹介〉
織斑一夏
本作の主人公。小学生の頃、とある
原作では朴念仁の難聴系シスコン主人公だが、本作では思考の9割がA.Tに占められているA.Tバカ。
『超獣』の二つ名を持つライダーの庇護下にいたが、今でもそのライダーとチームメイトを尊敬している。
『王』かどうかは現在不明。