オルコットと戦う事が決まったその後は特に何事もなく授業を終えた。
話は変わるが俺がISを使える事は世界的ニュースになったらしく、教員から生徒まで学園関係者は全員俺の事を知っているらしい。
朝からずっと廊下に他のクラスの生徒だけでなく、二、三年の上級生まで集まって人だかりが出来ているのはその為だろう。
俺としてはできるなら『ISを使える男』としてじゃなく
そう言えば先の休み時間、オルコットに絡まれている時に思い出したセカンド幼なじみ。
アイツは俺がA.Tを始める事を認めてくれた初めての相手だった。
携帯を開くと待受画面に弾達A.T仲間とチームを結成した時に撮った写真が表示される。
その中で俺と肩を組んで笑ってる二人。
一人は親友にして悪友の五反田弾。その逆サイドにいるツインテールが印象的な少し小柄な女の子。写真の中ではない、本物のソイツの笑顔になんだか会いたくなった。
アイツは小五の頃に転校して来て、中二の終わりに家庭の事情で引っ越して行った。
確か引っ越し先は母方の実家の中国だったか?
そこでISの適性が高かったとかでISの勉強をしてるとか言ってたっけ……。
「今頃何してんのかな……アイツ」
「アイツって誰の事?」
「俺の二人目の幼なじみだよ。よく一緒にA.Tで走ったりしてたヤツでさ、今は中国でISの勉強してるらしーんだ」
「……気になるの? その娘の事」
「まぁな。アイツとは大事な約束もあるし……ん?」
今、俺は誰と喋ってんだ?
微妙に聞き覚えがある声なような……。
「ふ、ふーん。そーなんだ……帰って来た甲斐があったかもね♪」
俺の前から聞こえるその声は確かに覚えがある。
ソイツと初めて会ってから五年間、ほぼ毎日聞いていた声だ。
「……鈴?」
「うん。ただいま、一夏」
携帯から視線をずらした先、そこには会いたかったセカンド幼なじみ、
「けど……」
「へぐっ!?」
鈴の声質が変化したと思いきや背後に一瞬で移動した上にチョークスリーパーホールドをキめて来た。
笑顔なのに額に青筋が浮き上がってたのは見間違いじゃなかったか。
「いくら別のクラスだからって会いにすら来ないってのはどーゆー了見かしら〜!?」
「ぐほっ!? り、鈴! ……ちょ……マジ入っ……」
鈴の細い腕は上手く俺の首を絞めあげ、俺は苦しさからその腕に(多分)ダメージを与えない程度の強さでタップするが絞める力は緩む兆しすら見えない。
「それだけならともかく何女の子に囲まれて鼻の下伸ばしてんのよ! それに誰よ、あの黒髪女!? 黙ってないでキッチリ説明しなさいよね!!」
黒髪女ってのは多分箒の事だろう。しかし、俺はいつ鼻の下なんか伸ばしたんだ?
それよりも今最も重要な事がある。鈴にはそれを伝えるのが先決だ。
「……鈴、話を……」
「何よ、変な言い訳で私が納得すると思わない事ね!」
「ち、違……」
「じゃあ、何よ!?」
「オマ……胸……やわっこいのが当たって……」
チョークスリーパーホールドとは背後から腕で相手の首を絞める技だ。それを見たり、かけられたりされた事があるヤツなら解るだろう。
そう、さっきから鈴の(俺好みサイズの)ポニョポニョしたのが俺の背中に当たっているのだ。
正直スリーパーをかけられていなければずっと堪能していたい位キモチイイのだが、大分息苦しくもなって来たので断腸の思いでその事実を伝える事にした。
「はぁ!? そんなワケの……」
最初は抜け出す為の俺の嘘と判断していた鈴はふと自分の状態を客観視しているようだ。
そして……気付いたらしく、慌ててスリーパーを解いて離れる。ちょっと、いや……かなり残念。
「……っ!」
「っくはっ!……ゲホッ……ハァハァ……あー、死ぬかと思ったぞ。ちょっとは手加減しろよ、り……ん?」
ようやく解放された俺の視界には片手は胸を隠すように抑え、そしてに片手の拳からは某東照権現の特殊技発動時並の波動を放っている鈴の姿。
さっきまでの笑顔は消え、俺を射殺さん程に睨むその涙目と羞恥に赤く染まった表情は何故かそそるものがあったが今はそれ所じゃない。
「……一夏」
「な、なんだ?」
「遺言は言わせない。私も……聞けなかったから」
「凶王!? じゃなくって、落ち着け鈴! 言わせなきゃ遺言なんざ聞け……」
「この……
「それキャラが違、くぎゅぅうぅぅぅうぅぅっ!?」
鈴のその鉄拳は『サイクロプス・ハンマー』の異名を持つライダーのパンチを軽く越えていた気がした。
―――――――――。
「ほら一夏、さっさと帰るわよ!」
放課後の教室で鈴から帰宅のお誘い。一年ぶりだがかなり久々な感じだ。
「ま、途中までだけどな」
「え、なんでよ?」
不思議そうな顔で俺を見る鈴。
「俺は来週までは自宅からの通学なんだよ。個室も用意出来るまで一月くらいかかるらしくてな」
設備とかも女子用のしかないだろうし、何より年頃の男女が一緒の部屋ってのはマズイだろう。
「そう言えばそうよね……でも……」
なぜか急に言い淀む鈴。顔まで赤くしているが何を考え込んでるんだ?
「でも?」
「な、なんでもない! さっさと帰るわよ!」
「お、おう」
良かった。『私は相部屋でも構わないけど』なんて言われてもどうしたらいいかわかんねーし。
つーか話は変わるけど『男子三日会わざば刮目して見よ』って良く言うけど女の子も絶対そうだろ。
あの後一緒に昼飯食ったりしたけど鈴の何気ない仕草とかに何度も目を奪われた。
それだけじゃなくて『コイツこんなに可愛かったか?』とこの数時間で何回思った事か。
つーか今も目ぇ奪われてるし思ってる。
昔から鈴は可愛かったけど今はもっと……。
「……一夏、もう……一夏ってば!」
「っとと……ワリィ。な、なんだ?」
「なんだ? じゃないわよ、何人の顔じっと見てんのよ?」
「な、なんでもねーよ」
チクショー。なんでこんな心臓がバクバク言ってんだよ、なんか顔も熱いし……ホント、ワケわかんねーっつの。
「あ、織斑君、まだ教室にいたんですね。良かったです」
「山田先生?」
帰ろうとした所に現れた山田先生。
先生の話ではどうやら俺は政府からの指示で今日から学生寮に入る事になったらしく、まさに寝耳に水な話だった。
「そーなんすか、なら荷物取りに帰らねーとな」
「それなら私が用意しておいた、有り難く思え」
「ち、千冬さん!?」
「織斑先生と呼べ」
山田先生の後ろから現れた千冬姉。
今朝もいきなり現れたけどこの姉は忍者かなんかなのか?
ちなみに鈴も千冬姉がここの教師だと知らなかったらしく、いきなり現れた事も含めて驚いている。
「まぁ、着替えと携帯の充電器だけあれば十分だろう」
「ウス! あざっす!!」
「礼ぐらいちゃんと言えバカ者」
普通に頭を下げて礼を言ったハズなのに千冬姉からゲンコツを頂いてしまった。何故だ?
それに千冬姉ってばもしかしなくても俺の部屋を勝手にいじくったって事か?
いや、小遣い(バイト代)は殆どA.Tに注ぎ込んでるから疚しいモノとかはないから別にいいけど。
ちなみにA.Tの整備用工具やある程度の交換用パーツはA.Tを収納するバッグに入れていつも持ち歩いてたりするので無問題だったりする。
山田先生から食堂の利用時間とか大まかな説明を聞いた後、千冬姉達と別れた俺と鈴は寮へと向かう事にした。
そこでまたとんでもなく面倒な事があるとも知らずに……。
〈キャラ紹介〉
2組に所属する中国代表候補生にして一夏君のセカンド幼馴染み。
酢豚が得意なので味噌汁プロポーズをするも結果は……
一夏君をぶん殴りたいと思った最初のイベントでした。
他にも色々と原作者様からの扱いがヒドイ不憫な娘。
拙作『俺嫁日記』では唯一無二の一夏の嫁のヒロインであることからおわかりのように僕の推しキャラです。
鈴ちゃん可愛いよ、鈴ちゃん
本作では一夏君の理解者であり、
ただ、王なのか、どの系統の道を走るのかは現在不明。