IS×A.T   作:u160.k@カプ厨

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Trick:04

「山田先生に貰ったメモの通りならここだな」

 

 IS学園学生寮の1025号室、俺が三年間世話になる(であろう)学生寮、その一室に入るべく鍵を差し込むが手応えがなかった。

 

「おろ? 鍵開いてら」

「別にいいじゃない、さっさと入りましょ?」

「だな」

 

 鍵が開いていた事を不思議に思いながらも部屋に入る俺と鈴。

 一応言っとくけど一年ぶりに再会したから折角なので部屋で寛ぎながら互いの話でもしようとなっただけなので鈴を部屋に連れ込んで変なコトをするつもりは決してない。ないったらない。

 

「おぉ! スゲェ、高級ホテルみたいだ!!」

「入った事あるの?」

「うんにゃ、ねーけど」

「……そうでしょうね」

「ってかなんだコレ!? スッゲェふかふかだ!」

「全く……一夏ってばホントお子ちゃまね」

 

 部屋の豪華さについはしゃいでベッドにダイブしてしまう俺とそんな俺を『しょうがないなぁ』と苦笑しながら鈴もベッドの端に腰掛けた。

 

「あー……寝心地いーぞ、このベッド」

「ホント、さすが国立ね」

「だなー」

 

 つい羽毛布団の魔力で気の抜けた返事になってしまうが鈴の言葉には同意だ。

 

「誰かいるのか?」

 

 疲労と布団の魔力により誘発していた眠気は不意に響いた第三者の声に吹き飛ばされた。

 

「あぁ、同室になった者か。一年間よろしく」

 

 部屋の奥にあるドアが開くとそこから誰かが出て来る気配。

 

 ……ヤな予感がするのは気のせいだと思いたいのだが……。

 

「こんな格好ですまないな、シャワーを使っていた。私は篠ノの……」

「……ほう……き?」

 

 ヤな予感ほど的中するとはよく言ったモノだ。

 

 気配の正体は今日再会したファースト幼なじみの篠ノ之箒(風呂上がりVer)でした。

 

「いつまで見てんの、この……ド変態ッ!」

「とかちっ!?」

 

 突然の事に完全に固まっていた俺は本日二度目の鉄拳制裁を頂戴した。

 

 ―――――――――。

 

 一先ず胴着に身を包んだ箒に射殺さんばかりに睨みつけられながらの質疑応答に『山田先生からの、と言うか政府からの指示でこの部屋に割り当てられた』と正直に答えた。だが、結果は火に油を注いだだけだった。

 

「男女七才にして同衾せず! 常識だ!」

「いつの時代の常識よ、ソレ? ついでに言っとくけど部屋割を決めたのは先生か寮長だろうし、一夏の意思じゃないわ」

「ん? オイ一夏! 誰だ、この女は!?」

 

 激昂する箒にツッコミを入れ、俺には助け舟を出してくれたのは鈴だった。

 紹介するには丁度いいタイミングだな。

 

「あぁ、コイツは凰鈴音。箒が転校した後に知り合ったんだ」

 

 ちなみにA・Tを始めたのもこの頃で、理解と興味を持ってくれた鈴と一緒に走り回ったのはいい思い出だ。

 

「で、こっちが篠ノ之箒。昔通ってた剣道場の師範の娘で鈴と会う前の幼なじみだよ」

「ふーん、この子が……」

 

 二人の幼なじみに互いを紹介する。ちょっと珍しい状況なんじゃないか?

 

「篠ノ之箒だ。よろしくな」

「こっちこそ、これからよろしくね」

 

 ……今二人の背後の技影(シャドウ)が火花を散らしたような……いや、鈴はともかく箒はA・T使い(ライダー)じゃないし……笑顔がなんか恐いのも気のせいだろう……多分。

 

「あ、あー……そうだ箒。そう言やオマエ剣道の大会で優勝したんだってな、おめでとさん」

「……なんでそんな事を知ってる?」

「新聞に載ってたからな、中坊にもなりゃ新聞位読むだろ。ついでに言うと今朝教室に入った時すぐに箒がいるって判ったぞ、髪型が昔と同じだしな」

 

 箒は長い黒髪を一本に纏めたポニーテールと白いリボンが特に印象的だった。

 

「……よく覚えているものだな」

「幼なじみだからな、そりゃ覚えてるだろ」

 

 そう言ったら思いっきり睨まれた。何故だ?

 

「ね、ねぇ一夏!」

「あん? どったの?」

 

 鈴が何か慌てるように話に入って来た。

 

「わ、私との約束も……覚えてる……よね?」

 

 何かと思いきや突然小学生位の時に交わした約束の事を聞いてくるどこか不安そうな鈴。

 フッ、千冬姉に『空っぽ頭(エアヘッド)』と呼ばれているが『約束は忘れない事』がモットーの俺にそれは愚問と言うモノだぜ。

 

「あぁ、『毎日鈴の作った酢豚を食べさせてくれる』ってヤツだろ?」

「な!?」

「……覚えててくれたんだ」

 

 鈴はそう言って嬉しそうに笑ってくれた事にまた心臓が大きく跳ねた。

 

『笑ってる女の子はそれだけで奇跡』

 

 こんな女尊男卑の世の中で特に酷い扱い(自業自得な部分は多々あるが)をされてる『あの人』が言ってた言葉を俺は今漸く理解出来たような気がした。

 

「い、いやー俺ってば、その約束を『鈴が俺の所に嫁に来る』とかって深読みしちまってさ」

「「よ、嫁!?」」

「そーなんだよー、我ながらとんだマセガキだよなー」

 

 まぁ、それもあって忘れないでいられるんだけど、これは黙っていよう。

 

「笑っちまうよなー……って、あの……鈴? 箒?」

「……」

「……」

 

 なぜか急に黙り込んでしまう二人。

 なんか悪い事言ったかな、俺。

 

「……あのー」

 

 数分の沈黙の後、先に口を開いたのは鈴だった。

 

「……篠ノ之さん、だっけ?」

「あ、あぁ。なんだ?」

 

 ハッとして身構える箒に対して鈴の口から出たのはとんでもない要求だった。

 

「部屋替わって」

「……は?」

「いやね、篠ノ之さんは男と同室なんて嫌なんでしょう? その辺アタシは平気だし、替わってあげようかと思って」

「べ、別に嫌とは言ってない! それに……」

「一夏! 一夏もアタシと一緒がいいよね?」

「ふざけるな!」

 

 話し掛けておきながら自分の言葉を遮り、今度は俺と話し始める鈴の態度に怒りを覚えたらしい箒。

 荒げ始めた声から察しなくても機嫌が悪くなって来ている。

 

「だって約束通りご飯作ってあげなきゃだもんね」

「さっさと自分の部屋に戻れ!」

「ねぇ、さっそくだけど今夜は何が食べたい?」

 

 箒が激昂するのもお構い無しに楽しげに、かつ一方的に話を進める鈴。ちなみに俺はまだ一言も発してなかったりする。まずい。箒が竹刀を手に取ったぞ!?

 

「えぇい、無視するな! こうなったら力ずくで!!」

「え?」

 

 とうとう堪忍袋の尾が切れた箒は怒りのままに切り掛かる。

 

 くそっ、間に合うか!?

 

 ―――――――――。

 

 炸裂音が室内に響いた。

 

「な!?」

「……危機一髪ってか? 鈴、大丈夫か?」

「う、うん……」

 

 私の視界には竹刀を蹴り止め、(ファン)を守るように抱き寄せた一夏の姿が映っていた。

 

「こら、箒。いくらなんでも生身の人間に竹刀を振り回すヤツがあるか! 危ないだろ!」

「う……」

 

 一夏に正論を説かれた私は思わず顔を背ける。

 

「……ふぅ……鈴も箒もこの部屋がいいなら二人ともこの部屋に入ればいいだろ」

「……は?」

 

 突拍子もない事を言い出した一夏に思わず間の抜けた声が出てしまう。

 

「だから、三人でルームシェアってのをすればいーんじゃねーか? ベッドは箒と鈴が使えばいいよ。俺はどうせ一月もしたら個室に移動する予定だし、ソファーで寝るからさ。だからオマエら少しは仲良くしろよ?」

「う、うむ……」

 

 怒りに任せて自制心を無くした手前、反論の出来ない私は渋々だが納得せざるを得なかった。

 

「よし、決まりだ! ま、三人で仲良くやろーぜ! 鈴もそれでいいだろ?」

「……」

「……鈴?」

 

 返事がない事に一夏は首を傾げるが、それも仕方がない。

 何故なら、私の一撃から守る為に抱き締められる格好となり、そのまま一夏の腕の中に凰はいる。

 

「あれ、鈴?」

「……キュウ」

「……なんだよ、寝ちまってら」

「いや一夏、それは寝ていると言うより気絶しているのではないか?」

 

 いや、正しくは『ときめいて死んでいる』、もとい『ときめき過ぎて気絶している』、であろう。

 私は凰は確実に自分と同じく一夏に恋い焦がれていると確信した。

 

 そんな凰が一夏に守られ、しかも抱き締められたりすれば気絶するのも当然だろう。

 一方、一夏は凰を片方のベッドに寝かせるとドアの方へと歩き出した。

 

「一夏、どこへ行くのだ?」

「ん、あぁ。鈴寝ちまったろ? 食いっぱぐれたら可哀相だし、俺と鈴の分の夕飯取りに行って来んだよ。ちょっと鈴の事頼む。……あ、ちゃんと箒の分も貰って来るから安心しろな」

「え!? あ、オイ一夏、待っ……」

 

 私の制止も聞かずに一夏は部屋を出て行ってしまった。

 

「えへへ〜……いちか〜♪」

「……」

 

 凰の嬉しそうな寝顔と寝言にため息を吐く。

 初恋の相手と同じ部屋なんて嬉しいハズなのにどこか腑に落ちない私の感情に構うことなく、入学初日の夜は更けていった。

 




原作では『鈴は二組なのでいない。』とされてしまう。

ならば寮室くらいは一緒でも良いでしょう?
それが二次創作の特権だ(某全裸大佐風)
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