「と、言うワケで一年一組クラス代表は織斑一夏君に決定しました。あ、なんか一繋がりでなんかいい感じですね」
『そーですね!』
「い○ともか!?」
俺とオルコットの決戦の翌朝、SHRを進める山田先生の発言にノリノリで答えるクラスメイト達。
朝のSHRはいつからグラサン司会者のお昼の番組になったんだ?
「おりむー、ないすツッコミー♪ サー・ツッコミ伯の称号をあげましょー♪」
のほほんさんからなんかよく解らない称号を与えられたが貰えるなら貰っとこう。
「そいつはどーも」
ノリノリな山田先生とクラスメイト達の発言通り、昨日の試合に勝利した俺は恙なくクラス代表に就任。
専用機がA・T型ということもあり、辞退する理由もなくなったので可能な限り努力することにした。
ちなみに鈴も二組のクラス代表に就任したらしい。
それにしても青いメダルを核にしてそうな甲高い声をした昨日の対戦相手、セシリア・オルコットの変化には少なからず驚いた。
「一夏さんに謝罪させて頂きたいんですの」
教室に入った俺にいの一番で挨拶もそこそこにオルコットは本題を切り出してきた。
「謝罪? ってか一夏『さん』?」
「はい、先日は大変失礼致しました。貴方やA・Tを愛好する方々をよく知りもしないで罵倒するなど貴族として……いえ、人としてあるまじき行為でしたわ」
「え? あ、いや、俺もつい熱くなっちまったし、こっちも悪かった」
昨日までとは真逆な態度で頭を下げるオルコットに戸惑いながらも俺も謝った事で互いに手打ちとなり、オルコットはクラス代表を辞退したことを俺につげた。
「私を打ち倒す程の実力を持つ一夏さんになら安心してクラス代表をお任せできますし、ISは実戦経験がなによりの糧です。少しでも経験を積んで頂く為の機会を譲るべく辞退致しましたの」
オルコットの意見はクラスメイト達に大いに受け入れられた。俺も客寄せパンダになる宿命を受け入れるしかなさそうだ。
しかし、『他のクラスに情報も売れる』とか言った人!
……分け前下さい。
「そっか……ま、やるだけやってみるよ」
どこまでやれるかは判らないけど任された以上、責任持って遂行させて貰う。
ところでなんでオルコットは頬が赤くなってんだ?
「そ、それで……ですわね。それに当たって私がISについて教えて差し上げ……」
「おっと、悪いケドそれには及ばねぇ」
―――――――――。
一時間目の後の休み時間、アタシと一夏は廊下で話し込んでいた。
「……で、なんで断ったのよ?」
内容は一組の朝のSHRでの事、一夏がセシリアのコーチを断った所だ。セシリアの一夏への態度は変わったのは判った。
しかし自らがエリートである事の自負は変わらないハズで、実際にISの操縦に関しては優秀である事も事実。
それ故に言い出したであろうISのコーチの申し出を断られるなど夢にも思わなかっただろう。
どんな理由があるのかなんてアタシじゃなくても知りたくなる。
「理由は昨日の試合、一応は勝てたけど実際は俺の負けだと思ってる」
引き締まった一夏の真面目な表情。
……なるほどね、大体わかった。
「あの子……セシリアは一夏を完全に侮ってたし、試合中の
「……よくわかったな」
「まぁね、一夏ってすぐ顔に出て解りやすいもん」
それだけじゃない。
アタシがどれだけ一緒にいて、一夏の事見て来たと思ってんのよ?
一夏の考えくらいすぐに解るつもり。
「まぁ……けど俺は負けっぱなしでいるつもりは毛頭ねぇ、修行し直してもう一回勝負を挑む」
「あの娘を目標とした上で『次は勝つ、オマエを倒すのはこの俺だ』とでも言うつもり?」
「その通り!」
自信満々に答えた一夏の眼には先日、食堂で試合の話を聞いた時のような刺々しさはなく、互いに切磋琢磨した先の再戦を心底楽しみにしているように輝いていた。
「……はぁ、アタシは頭痛がして来たわよ……」
一夏の発想にアタシは呆れ返った。
けど、キライじゃない。
むしろ一夏らしくて……。
「ちなみに理由はもう一つある」
「そうなの?」
「おう、オルコット達には言ってねーけど、むしろこっちが重要だ!」
A.Tバカで、基本単純思考に定評のある一夏が物事に複数の理由を持つ事は珍しく、少しビックリした。
「へぇ、なによ?」
「俺には鈴がいるからな!」
「……は?」
丁度そこに休み時間終了の予鈴が鳴った。
「っと、教室戻んなきゃだな。じゃあ鈴、また後でな」
「え? あ、うん……」
今、なんて一夏は言った?
『俺には鈴がいるからな』
い、いや、おち、落ち着きなさい凰鈴音!
あの鈍感朴念仁の一夏がそんな事をそのままの意味で言うなんてありえないわ!
……けど……、
「そっか……一夏にはアタシがいるんだ……ヘヘ♪」
ちょっとは……期待してもいいよね?
―――――――――。
俺達は千冬姉の指導の下、ISの実機訓練の授業を受けていた。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑とオルコットはISを展開、試しに飛んでみせろ」
「ウス!」
「はい!」
俺の
「よし、飛べ」
千冬姉の号令に従い、即座に急上昇する二つの機影は遥か上空で制止した。
「何をやっている、白式のスペック上の出力ならもっと速いハズだぞ」
「ウス!」
通信で千冬姉からのお叱りを受ける。
昨日の授業で『前方に角錐を展開させるイメージ』で行うとか習ったけど俺は『大ジャンプ系の
後は俺がもっと
「さすがA.Tを使い熟す運動神経のよさもあって、ISの扱いもかなり上達してますわね」
「そうか? サンキュな」
隣のセシリアからお誉めに預かる。
それにしてもセシリアの試合翌日からの変貌ぶりには驚かざるを得ない、入学初日の態度と違い過ぎて本人かどうか疑うくらいだ。メダルが九枚揃ったのか?
「次は急降下と完全停止をやってみろ、目標は地標10センチだ」
「了解です。では、お先に」
そう言うとセシリアは地上へ向かって飛んだ。その様はまるで鯱が水中を泳ぐように速く、その後の完全停止もソツなく決めていた。
「よし、やってみっか」
身体を反転させて頭を地上に向け、空を足場にするように蹴って駆け出す。
空を駆け、地上10センチの足場に着地するイメージを頭に描く。
『イメージがしっかり出来ていればISはその通りに動く』。
鈴のその言葉通り俺は地上10センチで完全制止の課題をクリアに成功した。
―――――――――。
「次は武装の展開だ。オルコット、やって見せろ」
「はい」
一瞬の閃光の後、その手には『スターライトMk-』が握られていた。
ちなみに白式の武装は常時展開中の『雪片・空我』だけで、俺にはどうにも出来なかった。
ちなみにセシリアは展開の速さはともかく、武器を横に向けて展開してしまう癖について注意を受けたり、近接武器の展開が苦手な事が露見した。
しかし、それを『貴方のせいですわよ!』とかって怒るのは理不尽じゃね?