「今回はヴァジラさんです、いつも一緒とのことなので例外として相棒ガルジャナも連れてきてもらいました」
「がおー!」
「まぁ、とりあえず一言いい?」
「む?」
「1年間お役目ご苦労様でした、なんか最後に余計な目に遭ったけど」
お役目の交代のときを思い出すグラン。ヴァジラもそれに釣られて、あの時のことを思い出していた。
「いやぁ、あの時はびっくりした」
「まさか、よくわからん女が、よくわからん機械を使ってよくわからん攻撃方法で辺り一面火の海にしたからな」
「休みだなんだと言ってるのにも関わらず、ワシ達の家を燃やそうとしたからの」
「チビ達大丈夫だった?」
「大丈夫!まぁちょっと家が元通りになるまでの間に、騎空艇に居座らせてもらってるけど」
「あんな可愛らしい子達を酷い目に合わせるのは頂けんぜ」
グランは珍しく少し不貞腐れながら愚痴を零していた。要約すると、フライデーと名乗る女が謎の機械、エビフライを使ってヴァジラ達の家を燃やしたということがあったのだ。無論、ちゃんと懲らしめたのだが反省せずそのままどこかに消えてしまっていた。
「グランには可愛がってもらってるからなぁ、みんなグランのこと気に入ってるみたいだよ」
「そりゃあ良かった……というか、今はその着物なんだな」
「まぁ、寒いし」
「そりゃそうか……っと、とりあえず序盤の挨拶が終わった所でお便りを読上げてみよう」
「わーい!」
可愛らしく両手を上げて喜びながら、ヴァジラはワクワクを隠しきれないようで、耳をピコピコ揺らしていた。
「まず1通目『ガルジャナとはどのように意思疎通を図ってるんだい?』シロウだね、嫁さん大事にしろよ」
「意思疎通?」
「まぁ第三者から見たら、ガルはあまり吠えないからな。ガルが吠えてない時でも、完璧な意思疎通が出来てるしそこが気になったんだろうし」
「とは言っても……長い間一緒に暮らしてきたから、としか言い様がない」
困ったかのように首を傾げながら、ヴァジラはずっと耳をピコピコさせていた。グランはそれをずっと眺めており、ヴァジラに気づかれない程度にソワソワしていた。
「ずっと一緒に暮らしてきたから、相手の考えていることが分かると?」
「グランにもそう言った人いるでしょ?」
「……確かに、ビィと一緒にいたらお互いなんとなく相手の考えがわかったりしてる場面が幾つかあるなぁ……」
「表情を見るだけで分かったりする、そういう物じゃないかな」
「なるほど……」
「次行ってみよう!」
「んー……『撫でさせて欲しい』……ユーステスか」
「ワシをか?」
キョトンとした顔をしながら、ヴァジラは自分を指さしていた。言葉が足りないせいで、余計な誤解を招いてしまっているとグランは思った。あとからイルザやゼタ達に弄られるのは目に見えている。
「多分ガルとチビ達の事だと思う。ユーステスって犬が大好きだから」
「ガルがいいのなら、撫でてもいいぞー」
「あくまでもガルの気持ちを考えないといけないからね」
「ワシ以上にイチャイチャし始めたら嫉妬するかもしれないけど!」
明るく笑い飛ばすヴァジラ。相変わらず耳が動いており、知らず知らずのうちに手を伸ばしてしまいそうだと、グランは自分の右腕を見ていた。
「ガルって大きいからさ、小さい子なら乗れそうだよね。特にハーヴィン族」
「急ぐ時とか、載せたりしてたりするよ」
「ちょっと羨ましいかもしれない……」
ガルのフカフカしてそうな体に触れた事があるであろうハーヴィンに、グランは少し羨ましがっていた。何だかんだ、動物は好きなのだ。
「とりあえず3つ目行くか……『カミオロシしている時、やはり性格変わるのじゃな』……アニラだ」
「まぁ、あれワシじゃないし……」
「神様ってどんな人?」
「人…?なのかよく分からないけど、でも少なくとも概念的なものに近いから、説明がしにくいかもしれない…」
「外見とかない?」
「ない、かなぁ……」
「なら諦める」
「それがいいと思うよ」
明るい笑顔を振りまくヴァジラ。ついに我慢が出来なくなったのか、グランはヴァジラの頭をよしよしと撫でていた。
「グ、グラン?」
「いやぁ、あれだけ目の前で耳を動かされたら頭撫でたくなっちゃうよ」
「や、やめろぉ……」
「そう言う割には笑顔だな ……やはり犬か」
「わ、ワシは犬じゃないぞぉ!!」
そう言いながらもヴァジラは満面の笑みを浮かべており、両手を顔の高さまで上げて猫の手のような形をしていた。完全に主人に服従した犬である。腹を上にして寝転ばないだけ、まだマシなのかもしれない。
「んー?でもこうされるのがいいんだろー?ほれほれ」
「や、やめろォ!なんかこういい感じに撫でるなぁ!!」
「おーおー、耳がピコピコしているぜ……お主はそういう所が可愛いのじゃ……ふぉっふぉっふぉっ」
「じ、爺さんになってる……あぁクソぉ!撫でるのすごいウマいぃ!!」
まるで甘えん坊のペットと主人のイチャつきである。これを見せられている者達は、恐らく謎の虚無感に襲われている事だろう。
「あぁ、そう言えば前にユーステスがチビ達に餌をやろうとしてたな」
「チビ達が?でもそんな話聞いてないぞ?」
「そりゃあ目もくれず、菓子作ってるベアトリクスの方に向かって歩いて行ったからな、その後何とかしてベアトリクス止めたけど……いや、犬に甘さたっぷりのお菓子はまずいって」
「食べたことないが、そんなに甘いのか?」
「いやー、もうほんと素晴らしいくらいに甘い。何作らせてもとんでもなく甘い」
過去に一度だけ食べたことがあるグランは、遠い目をしながらその時のことを思い出していた。
何故かおにぎりを作らせても激という文字が付く程には、甘さの境地に達している。
「あれほんと1種の才能だよ」
「それだけ言われると少し気になるなぁ……後で頼んでみるか」
「止めとけ、1口食べたグランサイファーお姉様組が涙を流しながらお菓子を食べていたのは凄惨な光景だったから」
「……あれだけ動いている面々でも太るのか…」
「俺は気にしない、なんて無責任な事は言えないからな……俺も太ったからレスラーになった迄ある」
レスラーの体型を思い出して、つい吹き出すヴァジラ。あの顔であの立ち方は彼女にとって笑いのツボを刺激するなにかだったらしい。
「レスラーと言えば……急に脱ぐのやめてくれんか、びっくりする」
「ダクフェからでも0.5秒あれば、レスラーになれるぞ?」
「早着替えの達人だな」
あの複雑そうな鎧をすぐさま脱げる、という所に恐ろしさ半分尊敬半分のヴァジラ。少なくとも慣れていたところで、0.5秒は流石に無理だろうと思っているので、少しは盛っているだろうとも思っていた。
「む……その目は信用していないな?なら、見せてやろう……俺の力を!!」
その場でいきなり服に手をかけるグラン。そして、そのまま上の服を脱ごうとしたところで━━━
「秩序の騎空団だ、逮捕する」
「なんでモニカさんおるん……?入団してないよね…?」
「リーシャに呼ばれてな、とりあえず逮捕だ」
手錠をかけられて無残にも連行されていくグラン。ヴァジラはその光景を見ているしかなかった。
早着替えが本当にできるなら、それを見てみたいと思ったのだが、それよりも誰にも気付かれずに部屋に入った上に、即座に手錠をかけることが出来たモニカのすばやさも正直なところ評価したかったのだ。
「……なぁ、ガル……人間って凄いなぁ……」
凄くどうでもいいことで、人間の可能性を魅せられたヴァジラ。早着替えや早逮捕なんて絶対にすることがないし、されることも無いだろうがそれでも軽く尊敬の念は抱いていた。
「さて、チビ達が部屋で待ってるだろうし帰るかガル」
ガルはそのままヴァジラについて行くことになった。その際にふと部屋の中を覗いてから、再びヴァジラの方を向いて彼女の後ろをついていくのであった。
「まぁ、エヴィカツ丼でも食べようじゃないか」
「これ美味いっすね、タルタルソースが意外にもご飯とエヴィにベストマッチ」
「ふっ…前にリーシャがオススメしてくれた店からお持ち帰りしてきた」
「この時期冷めそうなのに……」
「そこはちょっと頑張った」
「服の中にでも入れたんですか?」
エヴィカツ丼を食べながら、グランはモニカと楽しそうに話をしていた。ちゃんと喋る時は、口の中のものを飲み込んでから話しているので、なんら問題はない。
「いや入れてないが……何故服?」
「だってモニカって1部に大きな膨らみがおっと危ない」
いつもなら落とされるところだが、生憎ここは秩序の騎空団の本拠地アマルティア。代わりにグランの顔のすぐ横にモニカの剣が通り過ぎる。
「秩序の騎空団にセクハラをするとは無謀極まりないな」
「んな事言っても秩序の騎空団団員は、日夜あんたの話で盛り上がってるぞ」
「……え、どんな話?」
「『お酒あげたい』『飴玉上げたい』『一緒にお風呂入りたい』『○○で××をしてその後に△△したい』『××で○○を△△して□□した後に☆☆したい』」
「も、もういい!!」
顔を真っ赤にして、モニカはグランを静止する。その様子がとてもグランの心に来た為、グランはそのまま話を続行する。身長はともかく、心とスタイルは既に成人しているというのに赤面するその様子は、グランのいらぬ嗜虐心に火をつける。
「いーや、まだまだ続けるね!ヴァジラの太ももについての話題を触れられなくなった腹いせに、耳元で無駄に低い声で言いまくって━━━」
グランは、言葉を言い終える前に鎖で体を雁字搦めにされていた。もう1つ言うのであれば、そのままよくわからない金属製の椅子に固定されていることも付け加えられる。
「団長さん、今日はここなので落とせませんが……代わりに飛びましょう」
「飛ぶって何……?」
「大丈夫です、年越しは私の部屋で過ごしてもらうだけですから」
「リーシャ……たまに思うけど君俺より強━━━」
「ではまた後で」
リーシャは手持ちのボタンを押す。その瞬間、グランを乗せた椅子は轟音を立てながらそのまま天井へと飛んでいく。だが、その天井はまるでその椅子が飛ぶことを設計されているかのように、次々に開いていく。そうして、グランは1度アマルティア上空まで飛んで行った後にアマルティアにあるリーシャの部屋まで飛んで行ったのであった。
「……何故君の部屋なんだ、リーシャ」
「団長さんと一緒に過ごしたいからです……」
赤面しながら、少し喜んだかのような表情を見せるリーシャ。モニカは、既に始めてもいないツッコミを放棄して、ただ一言『そうか』とだけ付け加えて開いた天井を見ていた。
「……私も一緒に過ごしたかったんだがなぁ……」
「へ?モニカさん何か言いましたか?」
「い、いや?なんでもないぞ?」
珍しく慌てながら、モニカはそそくさと部屋を出る。リーシャは不思議そうに首をかしげていたが、特に気にすることも無くそのまま気分を高揚させながら部屋に向かう。
「……」
自分と一緒に年越しを過ごしたいという願いは、恐らく団員以外でも持っている人は多いだろう。
都合上、グランサイファーに乗ってみるのもいいかもしれないとモニカは思いながら一人部屋へと戻っていくのであった。
あけましておめでとうございます。今回はヴァジラです。
ほんとに彼女は14歳なのでしょうか。
途中モニカです。本当に彼女は30を超えているのでしょうか。
年齢というのは簡単にはわからないものだと思いますね。因みにお正月ガチャチケットはクレイモアでした。
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ