ぐらさい日記   作:長之助

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グランがもし誕生日だったら中編

「……は? グランの誕生日?」

 

 メーテラは1人で廊下を歩いていたが、ふとその質問をされてから顎に指を当てて少し考える。メーテラの中ではグランは所謂『いい男』の部類に入るので、プレゼントを与えるに値する男でもある。それに加えて、色々な恩もあるので渡さないと自分の心が気まずくなってしまうというのもある。

 

「んー……アタシなら……やっぱり、アタシを好き勝手できる権利とか? それを与えられるなんてグランも幸せもんでしょ」

 

 ケラケラと笑いながら、冗談めいた風にメーテラはそう告げる。だが、実際言われたら渡すくらいの気概は彼女も持ち合わせている。中々恥ずかしいものであることは間違いがないのだが。

 

「……え、好き勝手できるの意味? そりゃアンタ、あーんなことや……こーんなことをさせられる権利、って意味に決まってんじゃない」

 

 質問してきた人物に向かってそう伝えるメーテラ。相手は『そういう』意味を知らない人物なので、それとなく遠回しに教えていた。そしてふと、メーテラは質問してきた人物がなにを渡すのか気になったので、逆に聞き返すことにしたのだ。

 

「って言うかさ、アンタはグランに何渡すわけ? ……スーテラ」

 

「はい! スーテラも姉様と同じく私を好き勝手できる権利を痛っ!!」

 

 どこから取り出したのか、メーテラは真顔でスーテラの頭をハリセンで叩いていた。良い感じのしなりによって、いい音が鳴っていた。

 

「アンタ意味わかってないのにそういう事言わないの」

 

「え!?」

 

「メーテラ姉様、どういう意味なのですか?」

 

 スーテラの近くにいたアステールも、意味が気になりメーテラに聞くが、スーテラは兎も角としてもアステールはまだ子供なので、メーテラは教えることは無い。

 

「あー……まぁもうちょっと大人になったら理解できるから」

 

「そうなのです? なら、我慢するのです……」

 

「というか……プレゼントものであることは迷ってるなら、私じゃなくて他にも聞きに行ったら? 私だけだったら、考え偏るわよ」

 

「なるほど! さすが姉様です! では不詳このスーテラ! 他の団員達にも聞きに行ってきます!」

 

「スーテラ姉様! アステールも着いていくのです!!」

 

 脱兎のごとく、2人は凄まじい速度で走り抜けていった。メーテラはぶつからないことだけを祈りながら、別に向かう場所があるので歩いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ですか? ふふ、私は私というプレゼントを渡しましょう」

 

 ひとまずスーテラとアステールは、手当り次第に聞きに行ってきた。まず聞いたのは、角でばったりと会ったヘルエスである。しかし、メーテラと同じプレゼントということだけを伝えて別の人物の所へと向かう。

 

「ウチ? ウチはなぁ……プレゼントはウチ!!」

 

「ゆ、ユエルちゃんがそう言うなら……ウチもそうする……」

 

 そして、元気に自分をプレゼントするユエルとそれに対して意見を合わせてくるソシエ。メーテラとプレゼントが被っているということだけ伝えて、また別の人物の所へ向かう。

 

「プレゼント? そうねぇ……ふふ、私……かしら……あっ! いや待って今のは待っ」

 

 最初こそ大人っぽい雰囲気で、アンスリアはそう告げたが……自分が如何に恥ずかしいセリフを言っているのか気づいたのか、顔を真っ赤にして訂正を入れていた。2人はメーテラとプレゼントが被っているということだけを伝えていた。

 

「姉様! ただいま戻りました!」

 

「おかえりメーテラ、アステール。それで? プレゼント決まった?」

 

「はい、やはりここはスーテラ自身を痛っ!!」

 

 もう一度ハリセンの刑に処されているスーテラ。再び真顔なのといい音が鳴っているのはご愛嬌。

 

「え、なんでまたその意見に落ち着いたの?」

 

「いえ……聞く人聞く人皆メーテラ姉様と同じプレゼントだったので……」

 

「……」

 

 自分が言っていた事なのだが、団長へのプレゼントに自分を渡すやつばかりがいるこの団は大丈夫なのだろうか? とメーテラは少し心配になった。一日の誕生日のプレゼントでそうなったら、1週間はグランサイファーは機能停止するだろうとさえ思えてくる。

 

「いやぁ、思ってたよりやばいわこの団」

 

「へ?」

 

「あんた達は気にしなくていいけど、プレゼントが自分ってのはやめときなさい」

 

「か、かしこまりました」

 

「メーテラ姉様がそう言うなら、アステールもそうするのです」

 

 グランはよくセクハラをしていたりするが、あれでも一応15歳の思春期真っ盛りの少年である。こんな自分をプレゼントするばかりの騎空団にいたら、性癖が歪んでしまうだろう。

 

「……にしても、ほんと狙われやすいわねぇウチの団長サマは」

 

「みなから愛されてますよね」

 

「そうよねぇ……ちょっと、他にも意見聞いてきましょうか」

 

「? 姉様は既に自分をプレゼントすることが決まっているのでは?」

 

「アタシじゃないわよ、アンタらと一緒について行くって話してんの……まぁ他がどんなのあげるか気になるのよ」

 

「なるほど!」

 

 メーテラの魂胆としては、自分をプレゼントする女性達がどれだけいるか確かめたいのも大きいのだが、下手をすれば秩序による大虐殺が行われかねない為に止めないといけないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ? 私?」

 

 まず最初にメーテラ達が聞きに来たのはコルワだった。今は仕事が無いのか自室で服の絵を書いているだけだった。

 

「そうねぇ……まぁ新しい洋服かしら。私らしいプレゼントって言ったらそうなるもの」

 

「だよね、まともなのがいて良かったわ……」

 

「え、何? 何かあったの?」

 

「あー、いや……うちの妹達が周りにプレゼントどうするか聞いてきたみたいなんだけど……」

 

 メーテラはこれまでの経緯を説明した。全てを聞いたコルワは苦笑いを浮かべていた。当たり前である。自分をプレゼントする女性陣がそれなりにいるのだから。

 

「アタシが言うのもなんだけどさ……この団大丈夫なの?」

 

「んー……まぁ大丈夫じゃないかしら?」

 

「根拠は?」

 

「皆団長が大好きな人ばかりだからよ」

 

 メーテラはそれに少しキョトンとしたが、確かにそうだと思い軽く笑っていた。皆同じ人物が好きなのだから、ここまで暴走する者もいるのだと。

 

「姉様?」

 

「あー、うん。みんな確かに大好きだしね、アタシも好きだからこう言ってんだろうし」

 

「……珍しいわね?」

 

「ん? 何がよ」

 

「メーテラがそういう風に、自分の好意を出すのって……大体いつも『イイ男』って基準で探してるのに」

 

 コルワの言葉に、メーテラは固まる。スーテラ達はなんの事だかわからずに首を傾げていたが、メーテラは直ぐに正気になり何とかコルワの言葉を訂正しようとする……顔を真っ赤にしながら。

 

「は、はぁ? 別にそういう意味じゃないし? アタシの基準で、イイ男なのがウチの団長サマってだけだし?」

 

「へぇ、じゃあ琴線に引っかかったんだ? 『イイ男』の」

 

 コルワの言葉に、完全に反論が出来なくなってしまっているメーテラ。赤い顔でプルプルと震えているメーテラの姿を見て、コルワは妙にからかいたくなる気持ちになっていた。

 

「そ、そうよ? それだけだから、それだけだから!! 行くわよスーテラアステール!」

 

「は、はい!」

 

「待ってくださいなのです姉様!」

 

 3人が出ていったのを見て、コルワは微笑んでいた。メーテラの珍しい姿が見られたのもそうだが、それ以上にメーテラが明確な恋愛感情を持ち出してきているというのが、友人として微笑ましかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おや、あそこにいるのは十二神将のお2人ですね」

 

「ヴァジラちゃんと、アンチラちゃんなのです……」

 

「それに……アニラ、かしら? 3人で何してるのかしら」

 

 廊下を歩いていた3人、そこで十二神将の内の3人と出会っていた。アニラ、ヴァジラ、アンチラの3人である。3人の方はすぐには気づいていなかったが、近くを通りがかったらすぐに気がついていた。

 

「アンタら、こんなとこでなにしてんの?」

 

「む、メーテラ殿達か。実はの、プレゼントを考えていたのじゃ」

 

「団長殿への、ですね?」

 

「うむ……我は羊羹をあげる予定じゃ」

 

「ワシとアンチラが決まっていなくてなぁ」

 

 考え込むエルーン2人娘。さすがにアステールの様に、悪影響が入って『自分をプレゼントする』ということを言わずに済んでいるのを確認出来て、内心メーテラはほっとしていた。

 

「でも大体何あげても喜ぶんじゃないの? 勿論、プレゼントとして体をなしてたら、だけど」

 

「うーん……なら僕は一日抱きつき券!」

 

「……いやそれ、普通にどっちも負担かかるからやめときなさい」

 

「そうだぞ……とは言っても、ワシも精々天ぷらそばしかなぁ……」

 

「それでもいいと思うのです」

 

 互いにプレゼントの内容を考えていく6人。だが、何故かイマイチ納得ができず決めあぐねていた。決まっているアニラやメーテラはいいが、他四人が納得できるものが並ぶことがなかった。

 

「うーん……」

 

「悩むなぁ……」

 

「悩むのです……」

 

「姉様、やはり団長殿が好きなものを渡すべきなのでしょうか?」

 

「そうねぇ……」

 

 4人の意見を聞いてから、悩むメーテラ。そしてふと思いついたように手を叩いて口角を上げて笑みを浮かべ始める。

 

「いいこと思いついたわ、アンタら食堂行ってなさい」

 

「食堂、ですか?」

 

「そうそう、あんたらの他に悩んでる子達を呼んであげるわ」

 

「なるほどのう、三人寄れば文殊の知恵……なれどそれでも足りぬならということか」

 

「そういう事、4人で待ってたらそのうち集まってくるわよ。夕飯までまだ時間あるし、それまで駄弁ってなさい」

 

「分かりました!!」

 

 素直に受け入れるスーテラ。そしてそれに続いてアステールも食堂に向かう。あとを追うように、ヴァジラとアンチラもそれについて行く。

 

「……それにしても、他に誰を誘うつもりじゃ? お主と我は参加せんのじゃろ?」

 

「当たり前じゃない、アタシらが参加したらあの子たちすぐ聞きそうだもの」

 

「ま、たしかにの……ではこれから人数を集めてくるのかの?」

 

「そういう事、着いてくる?」

 

「面白そうじゃしの、ついて行かせてもらうのじゃ」

 

 アニラとメーテラ、あまり見ない2人の組み合わせのパーティが今ここに結成された。目的は、団長であるグランの誕生日プレゼントに悩んでいる乙女達を集めること。

 そして、最初に集めるのはそれなりに前から居たはずなのに後から来た女子たちに先を越されまくってる系美少女……クラリスの元である。

 そして、この後クラリスを誘い……また別のメンバーを集めに向かうのだが、またそれは別の話なのである。

 

「……うーん」

 

 そしてまたここに1人、プレゼントに四苦八苦している少女の姿があるのだが……彼女がプレゼント悩み隊に入るのが時間の問題なのは、誰の目から見ても明らかなのであった。

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