「うーん……」
今ここで悩んでいる少女が1人居た。団長であるグランのためにプレゼントを考えていたのだが、如何せんそのプレゼントをどうするか……それだけがひたすら悩みの種なのだ。
「……どうしたらいいかなぁ……」
悩んでいる少女、褐色の肌に驚異的な胸囲、そして大きな角。彼女は十二神将が1人、クビラである。趣味が温泉の健康的な少女だ。
「あら……何を、悩んでるのかしら?」
「あ……イシュミール……」
そんな彼女に話しかけたのは、イシュミールだった。氷を使うドラフの女性、熱いものが好きなある意味で変わり者の女性である。
「……もしかして、グランへのプレゼント……?」
「うん、何にしようか悩んでて……」
「彼なら、なんでも喜んでくれると思う、けど……?」
「だから余計に悩んじゃうんだよ……」
なにを上げても喜ぶというのは、本当に欲しいものがわかりづらいということでもある。故に、渡しがいこそあるものの本当に欲しいものか分からないため後悔してしまわないか心配しているのだ。
「……そう言えば、貴方は何にするか決めたの?」
「私は……魔力で作った、氷……中々溶けづらいように出来てるから……1週間、バルツに置いてても溶けない……」
「へ、へぇ……」
イシュミールはイシュミールらしいプレゼントを用意出来ている。その事が、クビラを更に焦らせていく。ふと、イシュミールはクビラの腕の下に本が隠れていることに気がついた。
「それ……温泉の、本?」
「へ? う、うん……最初温泉旅行をプレゼントにしようと思ったけど……時間取られちゃうから、駄目かなって」
「温泉のチケット、は……?」
「それも考えたんだけど……チケット販売してるところは軒並み完売しちゃってて……」
「……タイミング、悪かった?」
「そんなところ……」
テーブルに突っ伏して、落ち込んでいるクビラ。こればっかりはクビラは悪くなく、そして悪いのはタイミングだけなだけにイシュミールも慰めようと言葉を考えていた。
「そういえば……他の人達は何をプレゼントするつもりなんだろう……」
「……一緒に、聞きに行く?」
「……そうだね、聞きに行ってどんなプレゼント送るのか考えてもいいかもしれないし」
こうして、イシュミールとクビラはみんなにプレゼントを聞きに行くということになったのであった。
「私? 私は……1日何でもしてあげちゃう券!」
「それは……きっとリーシャが怒るわ……」
どこかで聞いたような話を繰り広げながら、イシュミールとナルメアは話していた。そんな彼女と一緒にいたフォルテに、クビラは話しかける。
「フォルテはなにをプレゼントするの?」
「私は、特注の槍だな。さすがに私のモノ……という訳には行かないが、彼に合うように作らせた特注品だ」
「武器の特注品!? 凄く高いんじゃないの!?」
「まぁ、確かに金額は安いとは言えないかもしれないな。しかし、恩を感じているし、彼には強くなってもらいたいとも思っている。槍だけを使え……とは言わないさ。その願いを込めたものの象徴として渡すんだからな」
「そ、そうなんだ……」
「……まぁ、私が言うのもなんだが……プレゼントは金額ではないと思うぞ? そうでないと、子供達の気持ちが安っぽいものということになってしまうからな」
フォルテのプレゼントはともかく、最後の言葉には同意するクビラ。確かに、金額=気持ちではないのだ。限度はあるが、プレゼントにかけるものはお金ではなく気持ちなのだから。
「しかし……渡すものはなるべく早く決めておいた方がいいぞ?」
「どういうこと?」
「いや……プレゼントが被ってしまうと後がきついからな……主に、彼の負担が、だが」
「……あ、もしかして……食べ物で被りとかあった……?」
「あぁ……既に女性団員の中だけでもケーキで数件被りが出ている。その件には関しては、最終的に全員分のケーキを合体させた巨大ケーキで対処するようだが」
何人でケーキが被ったのかは分からないが、恐らくそれの大きさが凄まじいだろうということは、クビラにも理解出来た。そして、その大きさに関しては突っ込まない方がいいことも、なんとなく理解出来ていた。
「でも、プレゼントかぁ……」
「思いつかなければ、自分の好きな物を送ってみたらどうだ?」
「好きな物……」
クビラの好きな物を送る。その案は既に自分の中で出ており、そして自分で却下したものだ。自分のプレゼントだけ、時間を食うものになれば意味が無いから……とクビラは考えてしまっているのだ。
「確か、温泉が好きだったな?」
「確かに、好きだけど……」
「実はな……面白い依頼が入ってるんだ」
「面白い、依頼?」
「まぁ、未だに受ける人物が誰もいないというのが真実だが……恐らく、ピッタリなものだ」
「……?」
首を傾げるクビラ。内容を誤魔化すフォルテについて行って、彼女はイシュミールとナルメアの2人も連れて、バルツに向かったのであった。
依頼内容、温泉開拓。バルツに新しい温泉宿を作りたいが、人も資金も足りない。もしここを開拓してくれる人がいるならば、売上の70%は騎空団の資金にしても良い。
そういった依頼である。因みに、温泉宿が無事完成した日には好きな時に貸切にできる権利も貰えるというある意味で破格の依頼である。何せ、数が多い騎空団であればあるほど有利になれるからだ。
しかし、この依頼には未だ人が寄り付いていない。
「温泉、開拓……」
「そ、でも未だに開けてなくてな。原因は2つある」
「……ここの地下の温泉源が多すぎて、下手につつくと地盤が崩れかねないこと。でも、安易な力でやっても砕けない地面の硬さ……その2つ、だよね?」
「流石だな。すぐに察したか」
「……でも、ここは力任せに崩せない……」
地面の硬さを確認しながら、クビラは思案する。確かに、ここの温泉を開拓できればグランには最高のプレゼントになる。騎空団そのもので貸切にできるのだから、その日にゆっくりとパーティを開催することができるからだ。
「……人手を集める……?」
しかし、こんな時に集まる人手はなかなかいないだろうとクビラは首を横に振る。団長であるグランの誕生日。他もプレゼント選びや準備、それに依頼も他に受けているからそこまでゆっくりしている人物はそうそういないのだ。
「なんとかならないかなぁ……」
悩むクビラ……そこに、とある人物が近寄っていた。クビラと同じように大きな角と胸囲を揃えており、もふもふの格好をしている女性……そう、クビラと同じ十二神将が1人アニラだった。
「困っておるようじゃのう」
「……アニラ? どうしたの?」
「くっふっふ、お主の助けになりそうな人物達……すぐに集められるやもしれんぞ?」
「ほんと!?」
「うむ、ただしまだ少し人数が足らんのでな……少しばかり集める必要があるのじゃ」
「私、がんばるよ!!」
「その意気じゃ! 我も手伝うからの!」
こうして、クビラはプレゼント悩み隊という部隊にいつの間にか入隊することになったのであった。
「……どうしよう……」
「早速じゃな……」
「あれ……メリッサベル……? どうしたの?」
グランサイファーに戻った一同。その中で、クビラとアニラはメリッサベルと出会っていた。自身の髪を自在に操れる能力を持ったハーヴィンの女性である。これでも一応20歳は超えているので、ちゃんとお酒も飲める年齢である。
「それが……プレゼント、決まってなくて……」
「あぁ、誕生日プレゼント……私も決まってないんだ」
「ほんと? ごめん、一緒に考えて欲しかったんだけど……」
「それがのう、メリッサベルよ……我らはプレゼントを思いついていない同士を集めておる最中なのじゃ」
「同士、を……?」
「そうじゃ、メリッサベル……どうじゃ? お主も混ぜってみては」
「……わかった、ちょっと考えてみる。それに、同じく思いついてない人達も集めたいし」
「うむうむ! 人手が多いほどいいからのう!」
満面の笑みのアニラ、少し首を傾げているメリッサベルだったが、しかしプレゼントのことで話し合えるのならいい事だと思い直して、そのまま走り去っていく。
「そういえば……団長いつ帰ってくるの?」
「もうそろそろじゃと思うんじゃがな……一応、バレないように気をつけておくのじゃぞ? サプライズ、という訳では無いが……プレゼントのことを話し合ってるなんて耳に入ったら、気が気でないじゃろうし」
「確かに……うん、わかったバレないようにしておくよ」
アニラの忠告も受けて、クビラは再度先程の場所まで向かっていく。もう一度、あの地をちゃんと開拓できるかどうか……それを確認しておきたかったのであった。
その頃、噂の団長であるグランはと言うと……
「朱雀朱雀朱雀朱雀朱雀! 玄武玄武玄武玄武! 白虎白虎白虎白虎白虎! 青龍青龍青龍青龍青龍青龍!! これで全員か!?」
「グラン! 青龍1回多いです! 玄武は1回少ないです!!」
とある場所で、四象と呼ばれる星晶獣達を狩っていた。死に物狂いで、ひたすらに、真っ直ぐに、一生懸命に。
「まだまだァ!!」
「君たちも愛でてあげよう」
「光栄に思いなさい」
「うるせぇてめぇらの仕事は俺に狩られる事だ!!」
「愉快だわあなた達」
「うるせぇ!!」
時には目の前でイチャついているカップルを燃え盛らせたり━━━
「力と力をぶつけあおう!!」
「筋肉筋肉ムッキムキ!! 筋肉一貫星晶獣!!」
時にはマッチョを狩るマッチョハンターとなりて、荒野を駆け巡る狂戦士に堕ちていたり━━━
「行くぞ━━━」
「うるせぇ!! なに両脇に変なランタンみたいなの出してんだ!! 壊すぞ!!」
燃え盛る主人公のような星晶獣と戦って、ちょっと引火しながらもなんとか勝利を掴んだり━━━
「っ……!? っ……!?!?!!!?」
「やっと邪魔するものはいなくなった……さぁお楽しみタイムだ!!」
「はわわぁ」
龍っぽいお供を排除された後に、グランに攻められて涙目になりかけてた星晶獣を、ルリアが助けたりと色々あった。因みに、最後のに関してはルリアは威圧だけでグランを圧倒していた。
「これで……いいのか……?」
「次は麒麟と黒麒麟ですぅ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして、最後に黄色と黒の星晶獣を相手どらないと行けないことに気づき、発狂したりもしていた。だが、これでグランの戦いが終わった訳では無い。
頑張れグラン、負けるなグラン、君の戦いは割とこのあとも結構長い間続いてしまうぞ。
「助けて……ジークフリート……助けて…………」
「ジークフリートさんは今フェードラッヘでお仕事があるので忙しいらしいですぅ」
━━━ルリアの容赦ない一言により、さらに心が粉砕されたグランの明日はどっちに向かうのかは、多分誰も分からないだろう。
PROUDのことプロウドって呼んでしまう英語初心者ですどうも