「今日のゲストは、皆のお姉ちゃんことナルメアさんです」
「ふふ、皆のお姉ちゃんだなんて……でも、それくらい頼ってくれると嬉しいな……勿論、グランちゃんもだよ?」
ナルメア、ドラフの女性の剣士である。動く際に特殊な歩き方をすることにより、まるで蝶が舞うような動きをすることが出来るのだ。しかし、彼女はそんな自分が強くないと結構ネガティブな性格をしている。
「結構頼らせてもらってるから大丈夫だよ」
「ほんとに? 怪我隠してない? 気づかないあいだに怪我してない? 背中とか怪我してたら手当できる? お風呂の時気をつけられる? お着替えできる?」
「ストップストップ、背中の傷って最早それ俺切られてるから番組してるどころじゃなくなるって」
「あ……そ、そっか……」
このように、ナルメアと親しい人物はナルメア自身がかなり過保護にしてくれる。本人は好きでやってくれているのだが、ここまで過保護なのを続けていくと本人が疲れかねない。
「そうだよね……グランちゃんはもうお姉ちゃんがいなくても……頑張れるもんね……お姉ちゃん要らないもんね……」
「ネガティブ禁止!!」
そして、先程言った通りとんでもなくネガティブである。これでもいくらかマシになってはいるのだが、少しでも手を借りないと言ったような発言をすると直ぐに落ち込むのだ。
将来、悪い男に騙されないか心配だがこれでも善悪の区別とかはついているのでおそらく大丈夫だとは思われる。
「ご、ごめんね? お姉ちゃんグランちゃんの迷惑になってて……」
「迷惑だなんてとんでもない、俺はナルメアにずっと助けられてきたし……これからも頼るよ? ただ、ナルメアに頼るばっかじゃダメになっちゃうから、自分で出来ることは自分でしたいんだ」
「グランちゃん……」
「って訳で、ナルメアお姉ちゃんが頼られている証拠としてお便りのコーナーいっちゃおう」
「う、うん!!」
「1通目『シエテさんと被ってません?』」
「前にグランちゃんに言われた事だよね……お姉ちゃん、少し前まで団長ちゃん、って呼んでたから……」
声は男女なので勿論区別は付けられるが、しけし仮に手紙とかになると細かいところまで見ないと、パッと見気付かないことがあるのだ。
「シエテもナルメアも、俺の事団長ちゃんって呼ぶし……しかも話し方結構似てるせいか文章の書き方も結構似てるよね」
「そ、そうかな……?」
「そうだよ、ある程度シエテと話したことあるだろうけど……まぁちょっと考えてみてよ」
「う、うん……」
ナルメアは、グランの言う通りに少し考え始める。少し前のグランと話す時の自分とシエテとの違いを考え始める。
『団長ちゃん団長ちゃん! お姉さんに手伝えることあるかな?』
『団長ちゃん団長ちゃん、お兄さんがなんでも手伝っちゃうよ〜』
これがナルメアとシエテである。では、口調そのままに少しだけ改変を加えてみよう。
『団長ちゃん団長ちゃん! お兄さんに手伝えることあるかな?』
『団長ちゃん団長ちゃん、お姉さんが何でも手伝っちゃうよ〜』
「あれ……あんまり違いがないかも……」
「でしょ」
そもそもの話なのだが、2人はそれなりに共通点があったりするのだ。例えば、過保護な点。ナルメアは過保護が過剰なものだが、2人とも誰かに頼られたい精神を持っている。シエテは十天衆の頭目であり、年上の部類なので年下の十天衆達に頼られたいと思っているため少し過保護気味になっている。
そして、2人とも真面目になった時に雰囲気がガラリと変わる。それはもうガラリと変わる。普段過保護気味なお姉さんと、胡散臭いお兄さんなのにも関わらず、真面目になると冷静な剣士と十天衆頭目になるのだ。
「まぁ紛らわしいから俺に対する呼び方は変えたけど、別に2人にいじわるしてるわけじゃないから……」
「う、うん! それはお姉さんも分かってるからね!! 」
「まぁとりあえず1通目の話題が終わったところで、2通目に行きましょう『誰かに世話されたいと思いますか?』」
「お姉ちゃんがお世話されたい……ってことかな……?」
「そういう事」
「……」
少し考えるナルメアだが、ぶっちゃけ答えはグランはよくわかっているのだ。彼女は、世話したがりな反面とても甘えん坊な性格である。それこそ、世話してる理由は人に甘えたいからという理屈である。最近グランの前だけでは、まるで妹のような甘えん坊っぷりを発揮しているが、それを公言するのかどうかと言われれば━━━
「グランちゃんになら甘やかされたい」
「思いのほか即答だった」
思いっきり公言していた。しかし、この程度なら秩序は動かないのでグラン的には問題なかった。ナルメアに膝枕をすることになれば、グランにもメリットがあったりあったり。
「しかしまぁ、俺に甘えたいって人多いけど……俺に甘えても何も出んよ?」
「グランちゃんの大きな愛が滲み出るよ」
「お、おう」
分かりきってる人も多いが、グランのことを好意的に見てる中でもナルメアはかなり重症な方である。一時期とある人物の事で悩んでいたナルメアに対して、助け舟を出したところそれまで以上の甘え方を発揮させてきたのだ。
「俺の愛そんなでかい?」
「皆から好かれてるんだから……大きいと思うよ?」
「そ、そうか」
友愛、恋愛、家族愛……色々なものがあるがグランが好かれているのは事実である。依存という形の人物もいなくは無いが、大体が素直な好意の示し方をしてくれる。男女問わず愛の形問わず、である。
「……って俺の話はいいよ、まぁナルメアは俺になら世話されてもいいと」
「それ以上の事でもいいよ?」
「おっとそれ以上の話題は秩序が来るので禁止だぞ?」
最近どこからともなく現れるため、ワープ機能でも追加されたのかも思いたくなるほどになったリーシャ。グランは最近秩序状態のリーシャに恐怖を覚え始めていた。
「……しかしまぁ、答えはそれってことで……とりあえず三通目行ってみよう『そんなに長い刀使ってて大丈夫ですか?』」
「へ? う、うん……慣れれば全く問題ないよ……?」
「いやぁ、自分の背の丈レベルの刀は早々使いこなせるもんじゃないよ」
ナルメアはドラフなので、ただでさえ身長が低いのにも関わらず刀身が長い刀を利用している。にも関わらず、きちんと刀を使った戦術ができている辺り、相当な訓練が必要だったはずだが……ナルメアは基準値がとても高いので『使えて当たり前』と言うふうになっているのだろう。因みに、彼女の中で天才の部類は十天衆のオクトーらしい。
「そ、そうかな……?」
「いやぁ、そういうもんだと……」
サビルバラ、自分よりも大きな刀の帯刀。オクトー、流石に彼自身がドラフの男性のために身長よりは大きくないが、それでもかなり長い長刀を愛用。ミリン、刀を使っているが彼女に関しては別に身長より長い訳では無い。
「……そういうもんだと思うよ!!」
「そっかぁ……」
思ってたより長い刀を愛用している人物が多かったが、グランは気にしない方向でいくことにした。気にしていたら、多分いつまでたっても終わらないと判断したためだ。
「けど、刀って長いのが特徴というか……それが強みなところあるもんね」
「そうなんだよね……」
刀は、通常の剣より切れ味が鋭い。鋭いために長くするとそれだけ相手が切りやすくなるというものである。ただ、剣と違って使うのに少し癖があるのも特徴的だが。
「うーん……」
「どうした?」
「皆、刀の良さをもっと知って欲しいなぁって」
「ま、まぁどの武器使うかは人それぞれだしね」
「……確かに、そうだよね!」
ナルメアに対して、それっぽいことを言うとだいたい信じてくれるのはグラン的には助かるのだが、ここまで遠慮なく信用されてしまうとグランの良心に微妙に後ろめたさが出てしまう。
「ナルメアはナルメアで刀を使ってくれた方が……綺麗だし特徴的だよ?」
「グランちゃん……!」
大変嬉しそうにするナルメア。グラン的には偶にポーズとして取っている胸の谷間と太ももの間に刀を挟む仕草は、刀じゃないと出来ないと思っているので、それもまたこんなことを言う理由の一つとなっている。ナルメアには全く分からない事情だが。
「さて、もうそろろそお時間となりました」
「え!? もう終わりなの!?」
「まぁそろそろ終わらせておかないと、時間がいくらあっても足りないからね」
「うぅ……ならお姉さん諦めるよ……」
グランに諭されて、ナルメアは諦める。そこでほっと一息付いたグランだったが、すぐに今が番組終了間際だということを思い出して締めに回る。
「というわけで、ご視聴ありがとうございました。また次回この番組でお会いしましょう、さようなら」
「お姉さんはいつでも頼ってくれていいからねぇ!!」
グランがカメラの電源を落とした後、ナルメアは大きなため息をひとつ出していた。それは、番組が終わったことによる疲れ……などというものでは決してなく、終わって欲しくなかったが為の物であった。
「もっともっと色々おしゃべりしたかったなぁ……」
「まぁまぁ……話すことが目的の一つとはいえ、本来の目的はゲストがどう言った人かの紹介だし……」
番組の主題は、ゲストがどんな人物なのかを視聴者達に分かりやすく教える為に、グランとの会話を通じて知ってもらおうという企画である。
お喋りをするのは目的と言うよりは、その目的を達成するための方法の一つと言うだけなので、それだけで延々と時間を浪費するわけにはいかないのだ。
「ナルメアより後に入って来た人達に対しての番組だし、これでナルメアの魅力が伝われば万々歳と言うやつだよ」
「……明日から、お姉ちゃんがもっと頼られるってことかな……?」
「そうそう、頼られる場面は増えてくると思うよ」
世話焼きお姉ちゃんとしての面、剣士としての面。そのどちらも軽く触れた程度だが、紹介はできているだろうとグランは思っている。あとは、ナルメアがどれだけ輪を広げられるか……そこにかかっているというだけなのだ。
「……なら、嬉しいかな……」
楽しみに微笑むナルメア。グランもそれに合わせて嬉しそうな表情となる。別に、ナルメアは初対面の相手に話しかけにいかない……または警戒心MAXになる訳でもない。ルナールのように、初対面の人相手に話しかけづらい性格をしているならともかく……
「……ナルメアなら、大丈夫でしょ」
「ほぇ?」
グランの言葉に対して、首を可愛く傾げる様な性格ならば問題は無いだろうとグランは謎の自信によって納得していた。天然かつ、甘えん坊の世話焼き。それがナルメアという女性を表す言葉なのだ。
「さ、これから依頼に行こうか」
「うん! お姉ちゃんも手伝うよ!」
「ありがと、んじゃまさっさと行くぞー」
「おー!」
グランに説得され、安心したナルメア。これからも彼女は世話をやき続け世話を焼かれ続ける生活を送るだろう。しかし、それは彼女が彼女たる所以なので……その点は変わることの無い安心出来るところなのであった。
二三年くらい前のお正月ボイスで、開幕おもち……なのは未だに忘れられない
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ