「本日のゲストは、フォルテさんです」
「フォルテだ、よろしく頼む」
フォルテ、騎空団『ダークドラグーン』の団長である。グランのことが気に入ったためにグランサイファーへと移っているドラフの女性である。戦闘が好きだが、面倒見がいいため影でフォルテママと呼ばれている。
「というわけで、巷では面倒を見させたら大体どうにかしてくれることで有名なフォルテが来てくれた訳だけど」
「ちょっと待て、今のは聞き捨てならないな」
「いや、事実じゃん」
「なんだと……?」
「この間、依頼から帰ってくるの遅いから迎えに行ったら何故か幼稚園の先生してたし……」
「うぐっ!!」
面倒見がいいかつ、困ってる人を見かけたら放っておけないタイプなのがフォルテである。その面倒見の良さを彼女自身は否定しているが、どこをどう見ても否定できる箇所がないのが現状である。
「母親になったら、面倒見のいい母親になりそうだよね」
「は、ははははは母親!?」
グランの何気ない一言により、とんでもなく動揺するフォルテ。何をそこまで動揺しているのかわからないグラン。しかし、フォルテが動揺するのはとても珍しいので敢えて放置していた。
「そ、そういう事なのか!? その言葉の意味はそういうことなのか!?」
「へ? いや言葉通りの意味だけど?」
「そ、そうか……そうか!!」
顔を真っ赤にしながらいつも通り喋るフォルテ。しかし顔が微妙ににやけているせいで、少しだけ面白いことになっているのでグランはそれをどうにか写真に納めたいと考えていた。
「さて、そんなダークドラグーン団長フォルテにも色々なお便りが届いているわけで」
「……ほう、ダークドラグーン団長として、か」
ダークドラグーンの名前を出された途端、雰囲気を変えるフォルテ。先ほどのニヤけ面はどこへやら、キリッとして凛とした表情と雰囲気へと変わり果てていた。
「いやフォルテを代表する肩書きで言った方がいいかなって思っただけで、中身ちゃんと確認してるわけじゃないから……ダークドラグーンとしてのお便り届いてるかはわからん」
「そ、そうか……まぁ、いいか」
少しだけ肩を落とすフォルテだったが、すぐさま仕切り直しと言わんばかりに凛とし直す。
「さて一通目『子供ができた時、何人くらい欲しいか理想ありますか?』」
「なんだその質問は!!」
「落ち着けってフォルテママ」
「私はママではない!!」
「で? 答えは?」
「……子供、か」
真面目に考え始めるフォルテ。そういったことを考えられる環境にいなかったので当たり前なのだが、普通の女の子……が考えるものかどうかはわからないが、そういったことを考えるのもまぁいいだろうと眺めていて……
「……6人?」
「おっと思ってたより多いぞ?」
「いや……それくらいの方が全員鍛え上げやすいかなって……」
「それが本音だと思いたいけど、6人ってまた大家族じゃないか……まぁフォルテは貯金ありそうだし、6人の子供は育てられるんだろうけど……」
「ん? その時には貴様にも手伝ってもらうぞ?」
「……ん? 俺?」
突然自分が指名されて聞き返してしまうグラン。妙に嫌な予感がしつつも、とりあえず聞き返してみる。聞いたらいけないような事なら、すぐさま遮ればいいだけの話なのだから。
「何を言っている? 子供を育てるんだったら父親はおま……私は何を言っている!?」
顔を真っ赤にし直すフォルテ。どうやら考え込みすぎたようで、少し妄想の世界に飛んでいってしまっていたらしい。冷静になれた様でグランは安心しながら新たなお便りを探し始める。このお便りをこれ以上続けていたらフォルテがまたおかしくなりかねないからだ。
「というわけで2通目『もし戦いから離れて誰かと結婚したら、主婦をやれてる自信ありますか?』」
「主婦? 私は守られる側ではなく守る側だ、私の方が働きに出るべきだろう」
「男らしい……でもちょっと近所のお母さんみたいな丁寧に喋ってるフォルテも見てみたい」
「……私が、主婦か……」
「おっとこれは……?」
考え込み始めるフォルテ。普段ここまで妄想激しい人物ではないはずなのだが、質問の内容のせいでこうなっているような気がしてならない。意外と、主婦願望だったり母親願望があったりするのだろうかと、グランは冷静に考えてしまっていた。
「……やはり、町内会の付き合いは厳しいのだろうか6児の母親ともなると変な目で見られないのだろうか……」
「その話結構続くね!?」
「はっ……!? ち、違うぞ!? ただ連想しただけで他意はない!!」
突っ込んではいるが、グラン自身ちょっと楽しくなってきているのかフォルテにそれっぽいことを聞いて妄想させてしまおうかと頭の中で妄想していた。
「へぇ……」
「な、なんだその目は……」
連想どころか生活を妄想し始めている辺り、相当重傷のようにグランは思えたが、フォルテはそれを完全に否定してきていた。その目で少しムキになっているのか、フォルテは怒った表情になっていた。無論、恥ずかしさで真っ赤なのであまり意味をなさないが。
「ほ、本当だ!! な、なんなら次のお便りで証明してやろう!」
「なら三通目『子供が反抗期来たらどうしますか?』」
「は、反抗期……? もうそんな時期なのか……?」
「おっと思ってた以上に即落ちして大ダメージをくらっているぞ?」
反抗期でダメージを受けるのは基本的に父親のイメージが着いているが、まさか少し男勝りなフォルテにその傾向が現れるのはグラン的にも予想外だったようだ。
「ば、ばかな……グラーテ達はそんな子達では……」
「もう名前をつけている……」
ギャップ的に面白光景なのだが、さすがにここまで来ると普段からストレス溜め込んでしまっているのではないかと、グランも心配してしまう。
「ぐ、グラン!! どうすればいい!?」
「はい落ち着いて深呼吸して?」
「すー……はー……」
「はい貴方の名前と種族と結婚経歴教えて?」
「え……フォルテだ、ドラフ族で……未婚だが……?」
「はい、後でソフィアさんとこ案内しますね」
「……はっ!? 違うぞ!? これはまた別の話だ!!」
「ストレス溜め込んでいる人はみんなそういうんです」
「待ってくれ……いきなり敬語はやめてくれ……心に深い傷を負いそうだ……」
恥ずかしさやらなんやらで沈んでいるフォルテ。ここまで相当の反応を返してるので、グランからは完全に信用されなくなっていた。少なくとも、大丈夫だという人間に限って大丈夫じゃないというパターンのあれである。
「というか、最初に6人くらいいたら鍛えあげやすいとか言ってた癖に反抗期は怖いのか」
「育てかたが間違ってたって言われたら……今までの自分はなんだったんだとなってしまいかねない……」
「そこは自分の育児に自信持てよ」
「しかし……」
妙に弱々しくなるフォルテ。いつもの彼女ならばありえない対応である。最早中身が別人の誰かではないだろうか、とさえグランは考えてしまうほどだ。
「実は中身シャノワールだったりしない?」
「何!? 一体どういうことだ!!」
「いや、いつもと雰囲気違いすぎて……」
「そんな馬鹿な!? 私は私のままだぞ!?」
「普段育児とか考えてないでしょ」
「む……」
グランに指摘されて、少し落ち着くフォルテ。頬をかきながら、冷静になっていく。
「……確かに、戦闘以外のことはあまり考えたことがないな。なし崩し的に子供たちの世話をすることになった時は、わからないなりに何とかしたものだが……」
「なんか思う所でもあった?」
「……いや、世の母親達をみていて思うんだ。私も1人の母になったら……ああやって女性らしい振る舞いをしているのか、と」
「で、今回それを考えてたからちょっと様子がおかしかったと」
「……恐らく、そういうことだろう」
普段しない他者への願望、それがフォルテの価値観の変動によって起こってしまったということだろう。
「ま、今回の事はきっちり流れちゃってるのでこれからいじられるのは覚悟して欲しい」
「うぐ……」
「まぁ面倒みがいいのは事実だけど……フォルテはフォルテのままでいいからね。無理に変わろうとしなくても、皆フォルテの事が好きだから」
「……そうか」
心なしか嬉しそうなフォルテ。いつもは戦闘狂のような彼女だが、時折このような女の子らしい感情と表情を見せるのであれば、たまには悪くないとグランは心の中で頷いて━━━
「そうと決まれば、私は私らしくするか! この後訓練に行こう!!」
「いいだろう鍛え上げた俺の腕前見せてやるよ!!」
「ふはは! 楽しみだ!!」
「という訳でご視聴ありがとうございました!! また次回この番組でお会いしましょうさようなら!!」
「私と特訓したい者は私が直々に鍛え上げてやるからな!!」
「子供の名前がなんだって!?」
「そ、その話はもうやめろ!!」
お互いの獲物をぶつけ合いながら、2人は話を続ける。グランサイファー特訓場で激しくぶつかり合う二人は、周りから見ても感嘆の息を漏らすほどである。
「おらおら! 天下のダークドラグーン団長さんが思考を掻き乱されて負けたなんて、笑い話にもならないからな!! 」
「わかっている!!」
ぶつかり合う二人。金属同士のぶつかり合う音が響く。そんな最中、特訓場に子供たちが入ってくる。
「トリックオアトリート!!」
「……む?」
「フォルテちゃん! お菓子持ってきたよー!!」
現れたのはヤイアだった。どうやら、ハロウィンが近いということで既に仮装をしており、同時にハロウィン用のお菓子を持ってきているようだった。
「……ヤイア、トリックオアトリートというのはイタズラされるのを選ぶか、お菓子を渡すかを選べと相手に問いかけているものだ。君のように、お菓子を渡す人物が使う言葉ではない」
「ほぇ? そーなの?」
「まぁ、うんその通りなんだけど……まぁ折角持ってきてもらったし貰おうぜ」
「……まぁ、私達だけでは区切り出来なかっただろうしな。ならば貰うとするか」
二人はヤイアにお菓子を貰って、食べていく。ほんのりと甘いクッキーだったが、とても美味しかったのでついつい食べてしまう程だった。
「……悪くない」
「フォルテも気に入ったみたいだぞ」
「わーい! じゃあこれ、皆に渡してくるねぇ!!」
ヤイアはそう言って走り抜ける。その後ろ姿をみてから、グランはふとフォルテの方に視線を移す。フォルテ自身、なぜ見られているのかわからないので首を傾げていたのだが……
「ヤイアとフォルテの髪色って微妙に似てるよな?」
「それが……どうかしたのか?」
「いやまるで親子みた」
「圧倒的な力で全てを打ち砕かん! 天覇魔竜槍!」
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
突然の言葉に驚いたフォルテが、グランを吹き飛ばす。その後、しばらくの間はフォルテを母親ネタでいじるのは、暗黙の了解で禁止されるのであった。
ママ-ッ