ぐらさい日記   作:長之助

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壊天災、張り切っていくぜぇ〜?

「今回のゲストはハレゼナさんです」

 

「よ、よろしく……」

 

 今この場でビクビクと震えているのはハレゼナ。彼女はドラフの女性なのだが、如何せん極度の怖がりでありそれを隠すために普段は狂ったキャラを演じている。自作の武器である壊天刃(キルデスソー)をよく振り回している。

 因みに、壊天刃で切れないものはただひとつを除いて存在しない。そのただ一つというのは、スライムである。そう、ネバネバの体液に勝てないのだこのドラフの女性は。

 

「……何でそんなに震えてんの? もっとこう、いつもみたいに振舞っていいんだぜ?」

 

「だ、だって……僕が変なことしたら……怖がられちゃう……」

 

 怖がり、かつ彼女は寂しがり屋である。周りを巻き込まないように狂ったキャラを演じてはいるものの、1度グランのように信頼出来る人物ができた場合は甘えきることが多いのだ。

 裏切られるのが怖いので、そう思ってしまった時の彼女はとても不安げになり雨の日に捨てられたチワワみたいな状態になる。

 

「……大丈夫だって」

 

「グラン……」

 

「ハレゼナの事よく知ってる奴は、ハレゼナがいつものハレゼナををしても気にしないからさ」

 

「う、うん……!」

 

 本当にそんなフォローの仕方で納得してしまうのか、と言いたくなるがこれがハレゼナである。信頼出来る人物に対する全幅の信頼は最早愛情の域である。

 ちなみに彼女、怖がらせる相手はとことん嫌いなはずなのに服装は上半身に関しては胸を覆う布1枚である。よくチンピラに絡まれるのはそれが理由なのではないだろうかと、グランはたまに思っている。

 

「ところで、ハロウィンの格好してたけど」

 

「うん」

 

「あの格好リーシャの格好に似てない?」

 

「そ、そうかな……?」

 

「いや、俺の気のせいだといいんだけどさ」

 

 実際そこまで似てないのだが、一体何がリーシャの服装とハロウィンのハレゼナの衣装を似ていると感じさせるのか、グランは分からないでいた。

 

「さて、それはそれとしてハレゼナにもいっぱいお便りがあります」

 

「わ、わ……本当にいっぱいだぁ……」

 

「クレイジー?」

 

「くれいじぃ……」

 

 嬉しそうに、いつもの狂った振りはどこに行ったのかと言わんばかりの満面の笑みを浮かべるハレゼナ。これでもグランよりも歳上である。年上系妹である。

 

「1通目『お酒は飲めますか?』」

 

「んぅ……あんまり、飲みたくない、かも……」

 

「ん? そりゃまたどうして?」

 

「お酒飲むとポカポカするけど……頭フラフラで、あんしんあんぜん、じゃない……」

 

 お酒で少し痛い思いをしたことがあるのか、ハレゼナは渋い顔をしていた。グランはまだ飲める年齢ではないので、その気持ちはわからないが飲みすぎても良くないということはわかっているので、ハレゼナのようにできれば飲まないようにしていこうという気にはなっていた。

 

「なるほど、怖くなっちゃうか」

 

「ふらふらだと……何か、落ちそうでやだ……」

 

 いつもなら照れ隠しでも、雰囲気を戻すためでもここら辺でいつものハレゼナのようにクレイジーと叫びながら壊天刃をけたたましく鳴らすのだが、今日のハレゼナは倍プッシュで弱々しくなっていた。

 

「……まだ緊張してる?」

 

「う、うん……」

 

 カメラの前、それも全員が見ていると考えてしまってどうにもハレゼナはいつもの調子が出ないようだ。要するに、極度の緊張というものだろう。

 

「そっかそっか、まぁゆっくりやっていこうな」

 

「うん……」

 

「……ってわけで話戻すけど……飲んだことあるっぽいな? その言い方的に」

 

「うん、まだグランサイファーに乗る前に……ちょっとだけ……」

 

「あぁなるほど……」

 

「こ、これ以上は恥ずかしくて、ヤダ……だから……」

 

「ん、なら二通目な」

 

 普通の少女以上に、乙女乙女しているハレゼナを眺めながら、グランは微笑んでいた。その微笑みはハレゼナにはとても優しいものだったので、緊張も解けていっていた。

 

「二通目『壊天刃以外に自作したものがありますか?』」

 

「色々あるけど……でも、壊天刃が1番……」

 

「1番?」

 

「……1番、クレイジーだぜぇ!!」

 

 ようやく調子が出てきたのか、テンションの高いハレゼナが現れる……のだが、見られてることを思い出したのか、再び萎縮する。顔を真っ赤にしている所をカメラに収められてグランはとても満足していた。

 

「ところで壊天刃は何回か改良してるから分かるんだけどさ、他にどんなの作ったのさ」

 

「ふぇ?」

 

「いや、ハレゼナって直感で物を組み立てるじゃん? だから他にどんなものを作ったのか少し気になってさ」

 

「ほ、ほかだと……」

 

 思い出していくハレゼナ。色々作っているが、壊天刃が1番見た目のインパクトやら攻撃力やらで、彼女的に言うならば1番『クレイジー』なので愛着が湧いているのだ。

 

「……き、キッチン……」

 

「凄いな、キッチン作ったのか」

 

 素直に感心するグラン。ハレゼナも暖かい物が食べたくなったとかなのだろうか、彼女としては有り得なくもない話だがやはりそのものを作る技術としては一級品の天才である。

 

「……にしても、壊天刃もそうだけど……ハレゼナって……」

 

「ぼ、僕は普通にしてるだけなんだけど……シロウと羅生門博士に1番驚かされてた……」

 

 羅生門博士、並びにシロウ。羅生門研究所にいる技術者の2人である。ロボミが関係してくるが、壊天刃の改良のために一時期一緒に切磋琢磨していた時もあったのだ。

 それ以降、よくハレゼナは羅生門研究所に遊びに行っている事がある。シロウの妻であるマリエとその子供を守るために、彼女も奮起している。

 

「……だよねぇ」

 

 壊天刃は何でも切る。それこそ、どういった技術で切ってるのかわからないくらいに、よく切れるしなんでも切れる。ただ1つ、スライムだけがどう足掻いても切れなかったのだ。

 

「今まで作った、どんなクレイジーなものも……ねばねばには勝てなかった……」

 

「うーむ」

 

 ハレゼナが壊天刃を作るよりも前に、ハレゼナはスライムが苦手だったようだ。それが、壊天刃に影響してスライムだけが切れなくなったという可能性がある。

 何せ、壊天刃は壊獣すら切ってしまう凄い武器なのだから。

 

「だ、だから……武器以外のものを作っちゃうことも……あったの」

 

「なるほどなぁ……」

 

 これ以上は話しているとハレゼナが元気を失う可能性があるので、グランは新しいお便りを読み上げることにした。

 

「さて、そんな訳でラスト三通目『料理は出来ますか?』」

 

「あ、あんまり上手じゃない……手作りできる、みんなが羨ましい……僕、壊すことしか出来ないから……」

 

「そんな事ないさ、そもそもハレゼナは壊天刃を作っただろ?」

 

「そ、それは……」

 

「それだけでも、みんなを守る力になってんだからいいのさ」

 

「え、えへへ……」

 

 ハレゼナの頭を撫でるグラン。ハレゼナは嬉しそうに微笑んでいるが、ここでふとグランは壊天刃で思い出したことがあった。

 

「……そう言えば、壊天刃といえば改造のために複数台作ったことあったよな?」

 

「う、うん」

 

 羅生門研究所、そしてアルメイダ等に頼って壊天刃の改造をしていたことがあった。その時、アルメイダと協力して作っていた壊天刃の1台……その事をふとグランは思い出していた。

 

「確かアルメイダと改造していた時さ……足が着いた自立式の壊天刃作ったよな?」

 

「作った、けど……あっ」

 

 そう、ハレゼナもまたふとここで思い出した。そう言えば、その時の自立式の壊天刃は……暴走してどこかに走り去ってしまったのだと。

 

「……あれ、どうしたんだっけ?」

 

「……わ、忘れてた……」

 

 壊天刃の攻撃力はピカイチだ。それこそ、回転する刃の部分を振り回されたら確実に人は真っ二つになってしまうほどである。

 

「ど、どうしよう……!」

 

「お、落ち着けって……特に問題は聞いてないから多分どっかに落ちちゃったんだろ? バルツで作ったんだし、もしかしたら溶岩に落ちたかもしれないじゃないか」

 

「……そうかな、そうかも……」

 

 実際、壊天刃による被害は特にあれ以降で聞いた覚えはないので……グランは大丈夫だと思っていた。無論一抹の不安こそあるが、きっと大丈夫だろうと自分の中で解決させていた。

 

「……いや、ホントそうだといいけど……」

 

「うぅ……」

 

 後でシェロカルテに聞いて、目撃情報がないか調べてもらおうと内心決めたグラン。ハレゼナがバルツに再び来た時に怖がられないようにしないといけないので、死活問題である。

 

「ね、ねぇ! グランは……僕を怒らないの?」

 

「……? 壊天刃の改造で怒ることなんて何一つないけど……? あれはハレゼナの努力の証だからな」

 

「そ、そっか……!」

 

 褒められたことで明るくなるハレゼナ。普段はテンション高い状態を維持していて、そこが可愛いとグランは思っているのだがたまに出てくる弱気な部分もまた可愛いので、本日の相談室はグランは内心ずっとハレゼナを心の中で愛でていた。

 

「さて、今回はここまでです」

 

「も、もう終わりなの?」

 

「楽しかったか?」

 

「う、うん!」

 

「まぁ機会があればまた呼んでやるからな」

 

「わかった……! 待ってる!」

 

「……という訳で、今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。また次回この番組でおあいしましょう……さようなら」

 

「僕の壊天刃を見たいやつはいつでも見せてやるからなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても、今日はほんと大人しかったな」

 

「か、カメラはなんか……緊張しちゃう……」

 

「なれほど、ハレゼナはそういうタイプか」

 

 カメラの前で妙に固くなる、という人間はそれなりにいる。ハレゼナもその類だったということだろう。それ以上に、番組という形なのが余計に緊張を煽っていたのかもしれない。

 

「とりあえず依頼行こうか、魔物退治の依頼があるだろうし」

 

「う、うん!!」

 

「よし、今日も頼むぞハレゼナ」

 

「任せて! 僕の壊天刃が魔物の1匹や2匹……いや全部まとめてサヨナラバイバイしてやるからさぁ!!」

 

 壊天刃をの轟音鳴らしながら、ハレゼナは高らかに笑う。番組が終わった途端にこれなので、緊張の糸が解けてしまったのだろう。だが、いつも通りのハレゼナなので別に問題は無いのだ。

 

「よーし、頼りにしてるからな!!」

 

「任せてよ!」

 

「あ、ちょっといいですか」

 

「ひっ!?」

 

 突如現れたリーシャに驚くハレゼナ、慣れてしまったの驚かないグラン。別段セクハラも何もしていないのに、何故リーシャが現れたのかの方が気になったグランは、首を傾げていた。

 

「ハレゼナさんの壊天刃ですけど、保管場所考え直してもらうようにお願いできますか?」

 

「……ふぇ?」

 

「いえ、その形なので……万が一落下したら困りますし」

 

 確かに、とグランは納得した。ハレゼナも別に裸で壊天刃を置いている訳では無いが、木箱に入れているだけでは万が一落下した場合貫く可能性もある。何せ切れ味はとても抜群なのだから。

 

「わ、わかった……考え直すよ」

 

「すいません、お願いします」

 

「……さ、依頼に行くぞ!!」

 

「おー!」

 

「はい!」

 

 ちゃっかりリーシャも着いてきていたが、その後の依頼は特に何事もなく終わり……そしてハレゼナは壊天刃を棚の1番下に入れて保管することにしたのであった。




19歳だからお酒飲んだらダメだけど、出会う前なら案外間違えて飲んでそう

偶には長編とか書いて欲しい

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