ぐらさい日記   作:長之助

108 / 135
親愛の妹君、今日のごはんは何かな〜?

「今日のゲストはヤイアちゃんです」

 

「はーい!」

 

 小さな手をフリフリと可愛らしく振るヤイア。そして本日のグランは目隠しをつけていた。これには実は訳がある。

 

「ところで、お兄ちゃんはどうしておめめを隠してるのー?」

 

「んー? 厳しいお姉ちゃんにおめめを隠してって言われちゃったぁ」

 

 厳しいお姉ちゃん、というのはリーシャの話である。そして、リーシャは今回のゲストがヤイアということもあって、目を隠すように伝えていたのだ。

 理由は簡単、ドラフの少女というのはとんでもなく発育がいい。低身長かつ大きな胸囲という種族のためか、胸に関しての発育速度は異常のそれであり、6歳のヤイアの時点で既に成長しきっているレベルなのだ。つまり、6際の時点でドラフの女性は成長を終えていると言っても過言ではないだろう。

 そして、6歳であるため子供らしく動き回る。本当にぴょんぴょんと動き回る。それに合わせて2つの膨らみも上下左右にバルンバルン動く。はっきり言うと、目に毒なのである。セクハラ団長グランのことを懸念したリーシャは、妥協案で目隠しをすることを提案した。

 因みに、本来であればリーシャは目隠し猿轡に椅子に何重も拘束した上で星晶獣達のパワーを使って封印するという手段まで持ち出してきていた。

 

「まったく……目を隠されたら少し困るじゃないか……」

 

「大丈夫……? お手紙読める……?」

 

 お便りのことを言っているのだろう、確かに目を隠された状態では普通は見ることは不可能だ。しかし、何やかんやでどうにかすればグランでも見ることは可能なのだ。

 

「あぁ大丈夫大丈夫」

 

 そして、この大丈夫はお便りのことだけを指して言った言葉ではない。別に目隠しをされていようが、グランはヤイアの姿かたちを認識できるということである。つまり、生粋の変態スキルが生み出した境地ということになる。

 

「さて、というわけで……お便り紹介していきます」

 

「はーい!」

 

「まず一通目……えーっと……『グランサイファー料理班はどうですか?』」

 

「ずっとお料理出来て楽しいよ?」

 

 ヤイアは、こう見えてもかなりの料理の腕前である。ローアインやヴェインもヤイアの料理スキルの高さは認めており、彼女に教えを乞う事も多々あるのだ。

 

「ヴェインちゃんもね? ローアインちゃんもね? いっぱいいっぱいお料理してくれるの! ヤイアも、みんなのご飯作ったあといっぱい食べさせてもらうんだ〜」

 

「成長期にはいっぱい食べないとね、うんうん」

 

「? うん!!」

 

 グランのセリフはよくわからなかったヤイア。少し首を傾げたが、特に意味がわからないまま頷いていた。料理は確かにできるが、一応未だ10にも満たない6歳の子供なのだ。理解できないこともあって当たり前なのである。

 

「ところで、確かお父さんはヤイアが小さい頃から病気だったらしいけど……料理は自分で調べたの?」

 

「お父さんにも教えて貰ったよ?」

 

 それでも限界があったろう、それでも娘を育てていた彼女の父親にはグランは感心するしかなかった。ヤイアの父親は、未だヤイアの家で闘病生活を送っているが、グラン達が援助をしているおかげでなんとか持ち直しているという話をシェロカルテから聞いている。もう時期回復もするだろう。

 

「ヤイアのお父さんは偉いな」

 

「うん! ヤイアお父さん大好きなの!!」

 

 屈託のない笑みを浮かべるヤイア。これが反抗期になったらと思うと、グランは今から胃に風穴が空く思いだった。こんな屈託のない笑みを浮かべる子でさえ、反抗期は来るのだ。人生とは理不尽である。

 

「……とりあえず、2通目行こっか」

 

「うん!」

 

「2通目『最近出来た思い出について』」

 

「んとね? あのね?」

 

「うん」

 

「海で大きなお魚さんがお空飛んでたこと!!」

 

 恐らくそれはどこぞのサメだろう。空を飛んだり、火を噴いたり、人語を喋ったり、大きな姿に見せるために集まったり、人間になったりとかなり忙しかった種族である。

 ハレゼナがよくさよならバイバイをしてくれたおかげで数日はサメ料理がグランサイファーに並んだのはいい思い出である。いや、当事者のグラン達はあまりいい思いをしていないのが現実なのだが。

 

「そうだな、お魚さん飛んでたな」

 

「うん! ヤイアすごくびっくりしちゃったの!」

 

「俺もびっくりだったよ」

 

 星晶獣の影響かとも当時は思ったが、実際はそんなことも無く本当に星晶獣何も関係なくあのサメが独自に進化しているだけだったのだ。

 

「クムユちゃんと遊んでてね? お魚さんが歩いてきて話しかけてきたの!」

 

「……ん?」

 

 何やら自分たちの考えていた事とは、微妙に違うことが起こっているような気がしてきたグラン。そのうち話を聞いていた方がいいと思い少しだけ聞き出すことにした。

 

「その話kwsk」

 

「フェ? あのねあのね! 頭がサメさんの姿で、お手手と足が肌色の変なサメさんだったんだよ!!」

 

「そのサメさんが話しかけてきた?」

 

「うん! 家に来ないかって優しい人だったよ!!」

 

 グランはこの場にヤイアがいなければ簡単に剣を抜いていただろう。今それほどまでに冷静に殺意を覚えていた。

 

「ヤイア、その人たちどうなったの?」

 

「んとね? リーシャちゃんとか……ランスロットちゃんとか……人がいっぱい来て連れてっちゃった!!」

 

 事実はグランサイファー大人組のほぼ全員でその男を連れ去ったと言うだけの話なので、それさえわかってしまえばグランは殺意を出すことも必要ないと考えたのでそのまま落ち着いていた。

 

「そっか、その後戻ってきたか?」

 

「ううん、パーシヴァルちゃんが『仕事があるからともう戻っていった』って!!」

 

「なるほど、後でパーシヴァルにはいちごをプレゼントしてやらないとな」

 

 どっさりと大量のいちごをパーシヴァルに渡そうと、グランは決めるのであった。

 

「……さて、三通目行こっか」

 

「はーい!」

 

「というわけで3通目『フライパンのお手入れはしていますか?』」

 

「うん! 毎日ピカピカ!!」

 

 お手入れされているかどうか、それに関してはただフライパンを洗うだけではなく、錆がないかどこか曲がっていたりしないかなど色々あるのだが、正直全く無問題だろう。

 何せここはグランサイファー、騎士団長や姫様もいる騎空艇だ。ガラドアなどの鉄関係の職業を生業としている職人もいるので、ヤイアのフライパンの手入れをするには全く問題がないのだ。

 

「ガラドアちゃんが毎日見てくれてるの!」

 

「ガラドア……」

 

 今度加工しがいのある金属をガラドアにあげようとグランは考えた。ヤイアの面倒を見てくれているだけで、グランは大変感謝しているのだ。

 

「おかげで全然壊れないの! 毎日ピカピカ!!」

 

「……ん? ヤイア、お手入れって毎日してもらっているのか?」

 

「ふぇ? うん!!」

 

 ふと、グランは気になったことがある。ただ手入れしているだけならともかく、毎日修理を行っているのであればその金額は如何程なのかと。

 別段、子供たちのためであれば全くそうしてもらって構わないのだが、グランサイファーにもお財布事情というものがある。そのお財布事情を1度見直さないといけないような……グランはそんな気がした。

 

「……まぁ、綺麗になってるからいい事だもんな!」

 

「うん!!」

 

 ここでふと、グランは気づいた。そう言えばグランサイファーのキッチン用具も1度手入れしないといけないなと。恐らくされているのだろうけど、ガラドアも人間だ。抜けがあったりそもそも見えてない位置にあったりする可能性もあるので、確認しないといけない。

 

「あ、そう言えばね? ガラドアちゃんがヤイアの為に包丁作ってくれたの!」

 

「え、包丁……?」

 

 いくら料理ができるとはいえ、ヤイアに包丁を渡すのは如何なものかと、グランは内心心配になっていた。ヤイアはその包丁を持ってきていたのか、懐から取り出す……のだがその包丁は金属製ではなかった。

 

「……む、白い……鉄じゃないのか……?」

 

「えっと……プラスチック? って言うのを作ってるんだって! 簡単に切れるのに、安全な代物なんだって!」

 

「へえ……」

 

 確かに良く切れそうな見た目をしているが、軽く扱いやすい点は金属製のものと比べてはるかに子供向けである。金属製のものよりも、子供のあいだはこちらを使わせていた方がいいだろうとグランも理解した。

 

「いいもの貰ったな」

 

「うん!」

 

「……さて、と。今回はここまでです」

 

「もうおしまいなの……?」

 

「まあまあ、後で話したかったら俺の部屋に来な」

 

「うん!!」

 

 頭を撫でると、ヤイアは満面の笑みを浮かべていた。グランとはもっと話したいお年頃なのだろう。というわけで、グランとお話するためにグランはヤイアを部屋に誘っていた。別に変な意味で誘っていた訳では無いのだが、はっきりいって事案である。

 

「今の言葉の意味について詳しく教えてもらいましょうか」

 

「げえっ! リーシャ!!」

 

 突如として音もなく入ってくるリーシャ。グランは部屋に入って来たことは驚かなかったが、リーシャが現れたことに驚いていた。彼女が現れるということは秩序執行する時だからだ。

 

「彼女と話をする前に私とお話をしましょうか」

 

「ま、待ってくれ……後生だ……!」

 

「問題ありません、時間ならたっぷりあります」

 

「くっ……」

 

 悔しそうな顔を浮かべながら、首根っこ掴まれるグラン。引きずられていきながら、ふと思い出したかのようにカメラに向かって視線を向ける。

 

「はっ……! ご視聴ありがとうございました!! また次回この番組でお会いしましょう!! さようならぁ!!!」

 

 そして、そのセリフとともにグランはフェードアウトする。ヤイアはトコトコと歩いてカメラの電源を切ってから部屋から出ていく。最後に視聴者が目撃したのはヤイアの大きな大きな2つの実った果実であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遂に幼女を部屋に連れ込む程に落ちぶれてしまいましたか」

 

「違うんだ……勘違いだ……ちゃんと調べてくれ……」

 

「もしルリアさんが大の男に『ご飯あげるから部屋に来ない?』なんて言われてたらどうします?」

 

「その話しかけた男がルリアに食べられないか心配になる」

 

「ごめんなさい例えが悪かったですね」

 

 その後、グランはリーシャによってお説教をされていた。しかし、グランは事案ということは認めてもそんな意味は無いという供述を繰り返しており、説教は長引きそうになっていた。

 因みに、目隠しをつけている癖にずっとヤイアの胸元に視線を寄せていたという事実が映像としてきっちり残ってしまっている為、最終的に反省文を書かされるだけでグランは釈放となった。

 400字400枚文字数ピッタリで書ききらないと解放されないので、グランはめったに使わない頭をフル活用して書ききったという話はまた別の話である。

 実を言うと、この時例えに出したルリアもきっちり話を聞いていたのでちゃっかりグランはヒュゴウされたのだとか。




背徳感の暴力

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。