ぐらさい日記   作:長之助

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幼女と大人とクレイジーこむら返り

「お料理できたよー!」

 

 朝の第一声、それはヤイアの調理終了の挨拶から始まる。グランは毎日のようにその日の料理当番から言われる挨拶を聞きながら、食堂へと向かう。

 向かった先で、いつもどおりご飯を食べ、今日の予定を確認した後に団員の予定も確認してから依頼へと向かう。いつもの日常、いつもの光景……だと思っていた。

 

「クレイジー食堂へヨウコソォ!!」

 

「……」

 

 1度グランは食堂への扉を閉めた。何故か律儀に姿勢よく椅子に座って、壊天刃をフルスロットルで鳴らしてるハレゼナの姿があったが、気のせいかと思い目を擦ってから再度食堂への扉を開く。

 

「遠慮はいらねぇぜぇ!! ボクの作ったクレイジークッキングで舌を包んで撃ち込むのさぁ!!」

 

「あー、ハレゼナやハレゼナや」

 

「ふぇ?」

 

 冷静に声をかけられて、首を傾げるハレゼナ。まずグランはこの状況が特に理解出来ていなかった。

 

「この状況は一体なんぞや」

 

「ヤイアが説明するのー!」

 

「ほう、ヤイアが」

 

「カクカクシカジカゼロポチイチショウカン」

 

「なるほどなるほど、珍しく朝早起きしてきたハレゼナが料理をしているヤイアをみて料理をしたくなって簡単な料理だけを作ろうと思ったら思いのほか手際とかが良くて色々やらせてるうちに今日の分の朝食を作り終えちゃったからいっその事今日はハレゼナの料理メインってことでハレゼナがクレイジー食堂なんて名乗るのを許可してああなった

 って訳か」

 

「そうなのー!」

 

「今のでわかるなんてクレイジー……」

 

 ヤイアの簡単かつわかりやすい説明と共に、グランも事情を何となく理解する。実際並べられている料理はどれも美味しそうなものばかりであり、この美味しそうな見た目かつ匂いでまずいということはありえないだろうということだけは理解出来ていた。

 

「にしても、珍しいな……いつもだったら俺の隣に座ろうとして、ユエルとかソシエ辺りに席を取られて涙目になりかけてるけど、俺が膝上を提供して喜んで座ってるハレゼナが料理だなんて」

 

「い、一々言うなよぉ……恥ずかしいじゃんかぁ……」

 

「まあ、ハレゼナが作ったものだし貰うよ。ヤイアがいる以上まず味がおかしいなんてことはありえないと思うし」

 

 ベアトリクスでもあるまいし、決して見た目と乖離した味になっているということはなさそうなのが救いである。そう思いながら、グランはいただきますという挨拶だけを行って、サラダから手をつけていく。

 

「……」

 

「ど、どう……?」

 

 不安になりながら恐る恐る聞くハレゼナ。よくかんで飲み込んだ後……グランは勢いよく開眼し、ハレゼナに視線を向ける。それはもう迫真の勢いである。

 

「ひぅい!!」

 

「ハレゼナこれ何入れた!? 滅茶苦茶美味しいんだけど!?」

 

「ふぇ……? と、とりあえず壊天刃で野菜を切って盛り付けただけだよ……? とっても美味しくなりますように……とは思ったけど……」

 

「た、確かに滅茶苦茶美味い……壊天刃作る時とかもそうだけど……ハレゼナは滅茶苦茶なようで直感で理詰めを行うような天才肌ってことを忘れていた……!」

 

 壊天刃も、ハレゼナにしか作れないクレイジーな武器である。ただの鉄くずからも作れる壊獣すら屠れてしまう武器……それが壊天刃。そんな武器を作る彼女が、壊天刃と同じように料理を作れば……無茶苦茶なようでいて実に美味しい料理へと変貌するのだ。

 

「キヒヒヒヒッ!」

 

「褒められて喜んでいるな……」

 

「ぼ、僕料理だったら虐められることは無い、よね!?」

 

「いやこの騎空団でいじめがあったらリーシャが直ぐに駆けつけるし大丈夫だって」

 

 この騎空団はある意味奇跡の騎空団である。人数がかなり多く、しかも秩序の騎空団といった所謂似た者同士が集まる場所という訳でもない。

 それにもかかわらず、皆一様に仲違いを起こすことがないというのは、実に素晴らしいことなのだ。

 

「た、確かにみんなあんぜんあんしん……だから……」

 

「だろ? ヤイアだってノビノビと成長してるしな」

 

「てへへ……」

 

「……あれ?」

 

 ふと、ここでハレゼナとあることを考える。ハレゼナはヤイアより年上である。そして、年上である以上……お姉さんでないといけない。だが、ハレゼナはこう考えた。『なんかまるで僕の方が年下みたいになってないか?』と。

 

「……ん? どうしたハレゼナ? 真理を見つけたルナールみたいな顔をして」

 

「そ、その例えはよくわかんないけど……」

 

「大丈夫大丈夫、ハレゼナはお姉ちゃんなのは変わらないからな」

 

「そ、そうかな!?」

 

「そうそう」

 

「ヒィィイイイヤァァァァァアアアア!」

 

 褒められて嬉しいのか、はたまた恥ずかしいのかはわからないがハレゼナは壊天刃をけたたましくかき鳴らして、精一杯の大声をはりあげていた。

 

「……ハレゼナおねーちゃん?」

 

「はっ……!?」

 

「どうした? 3日くらい連続で履いた靴下の匂いを嗅いだ時のみぃちゃんのような表情をして」

 

「つ、ツッコミが追いつかないから……ボケないで……欲しいな」

 

 3日くらい連続で履いた靴下の匂いを嗅いだ時のみぃちゃんというのが非常に気になるハレゼナだったが、しかし今はそれを気にしている場合ではないので、話を戻していく。

 

「ハレゼナおねーちゃん! ヤイアにお料理教えてー!」

 

「ま、任せとけぇ!! おねーちゃんが全部解決してやるからなぁ!!」

 

「……ヤイアが、ハレゼナの真似か……」

 

 故郷のお父ちゃんが泣く事になりかねないが、しかし子供ののびのびとした教育は実施していきたい所存なので、グランは一旦見守ることにした。

 何だかんだ子供に悪影響があることを、ハレゼナは教える事はないだろうと━━━

 

『ヒャアアアアアアアアアア!! クレイジィィィィイイイイイイ!!』

 

『ボクの壊天刃を怖がれぇぇえええ!!』

 

『サヨナラバイバイだぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!』

 

『やだぁ……ボクをいじめないでぇ……』

 

『ふぇ……?』

 

『えへへ……あんしん、あんぜんだぁ……』

 

 ━━━ハレゼナのことを考えて、色んな面において少し不安になったグラン。特に後半3つをヤイアが覚えた場合、魔性の女になりかねない。6歳の身でハレゼナの様な被虐的可愛さを覚えてしまうのは非常に不味い気がしてきていた。

 

「……ま、スフラマール先生とエルモートいるから大丈夫かな」

 

 何だかんだ、グランサイファー教師陣に任せておけば大抵解決するかもしれないので、どっちにしろ見守ることに変わりはないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらああああ! やあああああ!」

 

「あらやだ俺泣くわこれ」

 

 格好をつけているような表情で、ヤイアは料理をしていた。どこかの弾みであちょー! とか言ってしまいそうな可愛さはあるが、うっかりすれば不良落ちしてしまいそうな感じだった。

 

「ハレゼナ、多分あれ君の真似してるよね」

 

「た、多分……」

 

「ヤイアヤイア、今日の炒飯は?」

 

「キムチ炒飯なのー! 胡椒たっぷりなのー!」

 

「音楽の趣味は?」

 

「ですめたるなのー! でもちょっとお耳が痛いからあんまり聞かないのー!」

 

「好きな言葉は?」

 

「きるあんどでーす! ところでどういう意味なのー?」

 

「……」

 

 あれ? 言うほど意味理解していないなこれ? と、グランは察した。とりあえず胡椒たっぷりのキムチ炒飯は後で貰うとして、グランはひとまずエルモートとスフラマールに任せることにした。

 

「お前……メンドクセェ事してくれたなぁ……」

 

「エルモートみたいに面倒見がいいから案外いいかと」

 

「俺を基準にしてんじゃねーよ……まぁ、意味よく理解してねぇみてぇだから構わねぇけどよ」

 

「ふふふ! ほんとにエルモート君は面倒見がいいわね!」

 

「ですよね」

 

「貴方は後でお話をたっぷり聞かせてもらいますからね」

 

「うぃっす」

 

「キムチ炒飯は私とエルモート君で食べるわ」

 

「後生です先生それだけは!! 味が気になって仕方ないんです!!」

 

 妙に人気のあるキムチ炒飯はともかくとして、エルモートとスフラマールはヤイアの強制に入る。まだ染まっていないどころか皮を被ってる所謂ファッション状態なので、簡単に戻すことが出来たという。

 

「……なぁ、そんなに食べたいの? キムチ炒飯」

 

「俺は食べたいね!!」

 

「……辛いのはあんしん、あんぜんなの……?」

 

 ……完全に放置されているハレゼナは呆然としていたが、とりあえずみんなが欲しがっているキムチ炒飯のことを聞いていた。それ以外頭に残っていなかったからだ。

 

「……ボクは、普通の炒飯が食べたいなぁ……」

 

 そんなことを呟きながら、ハレゼナは目の前の光景をただただ眺めているだけだった。それと、彼女は1つ学んだ。『小さい子供にはクレイジーにならないでおこう』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近ハレゼナなんか大人しくない?」

 

「き、気のせいだと思うよ……」

 

 グランの部屋で、ハレゼナはグランと話していた。グランの近くに居るのがあんしんあんぜんだと判断しているので、ハレゼナはよくグランの部屋に来ては甘えているのだ。

 因みに、グランの部屋に来るのはグランサイファーのほとんどの女性陣である。

 

「やっぱり……あんしんあんぜんだぁ……」

 

「……」

 

 グランは正直、ハレゼナがお姉ちゃんするのは素晴らしい成長だと思っていた。この成長を糧に、ハレゼナがもっと団のみんなと打ち解けてくれたらいいかなって思っていた。

 

「すいません、入ってよろしいですか?」

 

「ん? リーシャ? いいよいいよ」

 

 外から聞こえたリーシャの声。いつもの様に入ってくればいいものを、今回は珍しく声をかけていた。とりあえず、入っていいことだけを伝えて、リーシャを中に入れる。

 

「次の依頼の話なんですけど……」

 

「あー、それか……メンバー集まりそうにない?」

 

「いえ、けれど少しあの辺に奇妙な噂が……」

 

 依頼の話をし始めるグランとリーシャ。邪魔をしては行けないと思い、こっそり部屋から出ようとするハレゼナ。その姿を確認したグランは、ふと思いついた。

 

「あ、ハレゼナ少しいい?」

 

「な、何?」

 

「次の依頼、ハレゼナの力を借りることになるかもしれないから」

 

「へ……ぼ、僕の?」

 

 首を傾げるハレゼナに、グランは説明を始めようとして……リーシャが変わりに説明を始める。

 

「明日行く依頼の場所ですが、表皮が非常に硬い魔物が出る可能性があるのです。だから、ハレゼナさんに一緒に来てもらえば助かるかなと」

 

 ハレゼナの攻撃力の高さを、グランとリーシャは頼っていた。そして、ハレゼナも自分が頼られているということがわかったので……少しの間ぽかんとしていたが、すぐさまテンションが爆上がりしていた。

 

「任せてきなァ!! ボクの壊天刃があれば、全部全部バラバラのサヨナラバイバイさァ!!」

 

 頼もしいハレゼナの姿を見たところで、グラン達は準備に取り掛かる。次の依頼に、頼られているとわかっているハレゼナは準備にもいつも以上に積極的になっていた。

 まだお姉ちゃんという頼られ方は出来ないかもしれないが、ハレゼナは自分が団の誰かに頼られている存在になっていることを理解して、より成長していくのであった。




ドラフ同士の間に挟まれてみたい人生だった。
炒飯食べたい
あと次回長編ハロウィン編です
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