ぐらさい日記   作:長之助

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ステルスハロウィン

 走れ、風より早く。駆け抜けろ、イナズマの如く。心臓を騎空艇の動力部のように、炎の様に稼働させていけ。そして、水のようになめらかに人々の間を縫っていき、鳥のように空を滑空するといい。

 

「━━━まだだ、まだ追われている……!」

 

 グランはひたすらに逃げていた。真っ直ぐで、グランサイファーよりも遠くに。出来る限り島をぐちゃぐちゃに駆け抜けていく。一直線で島の端っこまで来た場合、囲まれれば終わりだ。ならば、ぐちゃぐちゃに駆け抜けていくことで恐らくチームで分けられたグランサイファー女性陣達を各個撃破することが可能である。

 

「どこか、逃げるのに適している場所は……はっ!!」

 

 グランは逃げていく中で、とある場所を見つけた。深そうな洞窟の入口が何個も通っている採掘場のような場所である。かなり都合のいい展開ではあるが、この場所に逃げ込ませてもらおうとその洞窟に逃げ込んでいった。

 それが、彼の更なる苦難の幕開けになるとは露ほども知らずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この辺りから特異点の気配がするな」

 

「……洞窟、いえ人間達の採掘場でしょうか?」

 

 グランがそこに逃げ込んでから数分が経過した頃、とある5人組がその場所を訪れていた。その姿、そして強大な気配は少しでも戦いをこなしているものであれば察知できる気配……そう、星晶獣達がそこにいたのだった。

 

「……この採掘場、それなりに水の気配が漂っています」

 

 まず1人目、水の星晶獣エウロペ。天司ガブリエルの寵愛を受けし星晶獣であり、使徒と呼ばれている存在である。その力はほかの水の属性の力を持った星晶獣と比べてもかなり強いものでもある。因みに、ガブリエルの寵愛を受けていると聞いた時、グランは少しアレな妄想をしたこともある。事実は不明である。

 

「なるほどな……ここは私達にとっても、いい場所という事か」

 

 2人目、土の星晶獣ゴッドガード・ブローディア。天司ウリエル(マッスル)の使徒であり、防御のことに関しては彼女は随一の防御力である。だが、ウリエルの使徒だけあって偶にとてつもなく脳筋化することもあるのが偶にキズである。天然である。

 

「━━━♪」

 

 3人目、ブローディアと同じく土の星晶獣であるユグドラシルである。固形物を食すことはなく、液体を好んで食事している。因みに、彼女が苦手なものは近代……とりわけ機械関係の物が特に苦手なので、どこかで妄想でロボットになったチャラ男はまずロボットにならないことから始めないといけない。

 

「━━━」

 

 4人目、ティアマトである。三体の龍を従えている風の星晶獣であり、ラカムの事を気に入っている星晶獣でもある。グランサイファーの中でノアと取り合いになっているというルナールの妄想が偶にどこかから流れ出している時がある。だいたい原因はゴミ箱に捨てられた原稿である。

 

「……しかし、どうやって彼をあそこから出す気ですか?」

 

 5人目、アテナ。火の星晶獣であり防衛に特化した星晶獣でもある。勘違いされやすいが、アテナの防御性能は自分に振ったものではなく、守護をする対象に対しての防御性能である。ブローディアの防御性能はまた別の話であり、別にどちらが劣っているのか優れているのかということは無いのだ。

 

「まぁ待て、まずユグドラシルが一つを除いて入口を全て土と岩で封鎖して貰う」

 

「━━━!」

 

 ブローディアに言われた通り、ユグドラシルは即座にグランが入ってきた入口以外を全て封鎖する。これにより、出口は1箇所しか残されていない。

 

「そして、次に私が洞窟に入った特異点の気配を探る」

 

「つまり、彼の場所が丸わかり……と?」

 

「土の力の応用だ……こういった洞窟内にいる相手を探すことに使うとは思わなかったがな……そしてエウロペは水を地下に浸水させておいてくれ」

 

「その理由は?」

 

「万が一地下に出入口があった場合、そこから抜け出される可能性があるからな……」

 

 ブローディアはグランの気配をさぐって……その出処を察知した。その間にエウロペが指示された通り洞窟の地下を浸水させて水浸しにしておく。

 

「ヨシ……私が洞窟を崩したりしながらあの1箇所の出入口まで、誘導する。そして私が誘導している間に、ティアマトが風をあそこから送り込んでほしい」

 

「……因みに、私は?」

 

「アテナは、この洞窟が崩れないように守護を頼む」

 

「かしこまりました」

 

「よし……これで布陣が完成した……後は、他の仲間が捕まえてくれるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ……私を放置してハロウィンを楽しもうとするとは……特異点……少しばかりイタズラしてやる必要がありそうだな」

 

「えぇ……そうですわね……あなたと私のタッグ……光と闇のコンビ……おそらく今回だけですが……」

 

「「相手を欺くには丁度いい」」

 

 ブローディア達が用意したたった一つの出口、その出口からつながるように辺り一面が常闇に繋がれる。そして、その中で淡く発光する女性。

 今ここには常闇の星晶獣オリヴィエと星晶獣シュヴァリエ……その力を完全に制御しているヴィーラがいた。

 

「イタズラしてやるワン!」

 

「喉元引き裂いて四肢をもいでイタズラしてやるワン!!」

 

「こぉら、マスターにそこまでしちゃダメよ……せいぜい突撃するくらいで、ね」

 

 そして、ココとミミ……人形と間違われそうなその2人を身につけている星晶獣、ケルベロスもそこにいた。彼女もグランにイタズラを仕掛けようとしているメンツである。しかし、まだ終わりではない。

 

「あんた達……本当に怒られても知らないわよ……?」

 

「ふふ、まぁいいじゃない」

 

「これがハロウィンか……お菓子が貰えるのだろうか……」

 

 ハロウィンにどれだけやる気を出しているのかと、皆に対して呆れてため息をつく土の星晶獣メデューサ、なんだかんだ楽しめればいい派の薔薇の『お姉さん』ロゼッタこと星晶獣ローズクイーン、1人全く別の方向性で楽しもうとしている純真無垢な調停者ゾーイ……もとい、調停の星晶獣ジ・オーダー・グランデ。

 

「……というか、この闇の中で目が見えてるのは多分あんただけよオリヴィエ」

 

「私は光っているので見えますが?」

 

「あんたのことは知らないわよ!! というか眩しいのよ!」

 

「サングラスを持ってきている、みんなでかけよう」

 

 イライラしているメデューサに対して、ゾーイはサングラスを渡す。こんな状況で渡せるくらい呑気な彼女に対して、完全にメデューサは戦意を削がれていた。

 

「……まぁ、ちょっと本格的すぎるとは思うけど……」

 

「ロゼッタ……あんた、わかってるなら止めなさいよ……」

 

「あら、星晶獣が話を聞いて止まる様な性格ばかりなら空の民は苦労はしなかったわよ」

 

「はぁ……ま、そりゃそうね……」

 

「はむはむ……うん、パンプキンパイは美味しい……美味しいの調停だ……」

 

 1人楽しくパンプキンパイを食べているゾーイ。調停者というのはこんなのばかりなのだろうかと、メデューサは頭を悩ませていた。

 

「……それにしても、遅いわね彼。幾らなんでも殺す程はやってないと思うのだけど……」

 

「そこら辺は大丈夫よ、アテナの力で洞窟が崩落することは無いわ……それに、怪我しないように皆最大限の注意は払ってるしね」

 

 心配するロゼッタ、グランのことを信頼しているので特に心配もしてないメデューサ。しかし、確かに遅い事は遅いのでメデューサも何か問題があったのかと少し訝しんでしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……なんて完璧な布陣……! 完璧な正論吐かれて逆ギレするしかない状況みたいじゃないか……!」

 

 グランは手当たり次第に剣を振り回して洞窟内の石ころひとつでも調達出来ないか試していた。全くできなかったので、速攻で諦めた。

 

「……外に出るしか、無いのか」

 

 ほかの出口は無いどころか、まず出口が1箇所しかない。風が外から流れ込んできていあので、この風を渡って歩いていけば簡単にたどり着くことができるだろう。

 

「……けど、それは罠だ」

 

 簡単に騙されるグランでは無い。だが、いつまでもここに篭城するわけにはいかない。もしこの洞窟が、ブローディアとユグドラシルによって全て金属に変えられた後に、シヴァにでも変更されてしまえば……一気に熱地獄である。

 

「くっ……どれだけ俺にイタズラをしたい……の、か……?」

 

 頭の中で電球が弾けて割れた。それほどまでに衝撃的な考えが今のグランに浮かんでいた。そう、今宵はハロウィンなのだ。グランは逃げ惑っていてばかりで簡単に忘れてしまっていたが、よく考えたらとグランにもイタズラをする権利はあるのだ。

 

「そうだよ……よく考えたら、俺がイタズラしては行けない理由はないだろう……しかもここまでされてんだ……正当防衛にもなるんじゃないか……!? 我ながら自分の考えが恐ろしいぜ……!」

 

 悪辣な笑みを浮かべるグラン。こんなのがみなに愛されているグランサイファーの団長だと考えると、やはり世の中は理不尽なのだろうと、他の者が見た場合そう思ってしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出てきたぞ、特異点だ」

 

「ではいきますよ……ハロウィンなら、ハロウィンらしく━━━」

 

「「「「「トリックオア━━━」」」」」

 

 まずはオリヴィエ達が、外にまるで砲弾のように飛び出してきたグランに対して、ハロウィンの挨拶を行おうとする。しかしそれをさえぎってグランは先制攻撃を入れる。

 

「ノートリックオアノートリック!! イタズラされたくなければイタズラすんじゃねぇ!!」

 

「何……!?」

 

「しまった……これではイタズラが出来ない……」

 

 世間知らずの星晶獣故か、グランの言うことを簡単に受け入れてしまうオリヴィエとゾーイ。だが、こんなものでグランの反撃は終わらない。

 

「アダルトトリックオアアダルトトリック! 俺にイタズラしたけりゃあエロい目にあってもらうぜ!!」

 

「んなっ! んななななな!?」

 

 顔を真っ赤にするメデューサ。しかし、その表情をグランは見ていない。それどころかまずグランは誰がいるのかもよく理解していない。最初に声を聞いたのが全員まとめて話してたとこともにも起因している。

 

「メデューサがいるようだな!! そしてメデューサがいるならばどこかにアテナがいるな!? アテナがいるならば、ブローディアもいるだろう!! ブローディアがいるなら仲のいいエウロペも確実にいる! そしてブローディアと同じ土つながりでユグドラシル、ユグドラシルと仲のいいティアマト!! 

 この常闇はオリヴィエでさっきから俺の頬をグリグリもふもふしてくるのはココミミ……つまりケルベロス!! そしてそこで光ってんのはヴィーラだ!!」

 

 小さな情報から、大体の情報を引き出せたグラン。この事実に驚きながらも、星晶獣達は武器を構える。尚、ブローディア達はそのやり取りに参加できていないので詳しい状況はわかっていない。

 

「さぁ! どうする!!」

 

「リーシャさん、呼ばせてもらいますね」

 

「ごめんなさい……お願い許して……」

 

 そして、ヴィーラの簡単な脅しに屈して、グランは星晶獣組に捕まってしまうのだった。まず戻った時にどうなるのか……グランはそれだけが気になっているのであった。




年甲斐もなくはしゃいでいるハロウィンモニカとハロウィンシルヴァとハロウィンイルザはまだですか?三十路間近の女性たちが恥ずかしがりながらハロウィンの格好しているのを見てみたいんですよ

偶には長編とか書いて欲しい

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