「……くぅ……俺の作戦ミスか……」
「ただ単純にアホな事しなかったらよかっただけなのでは……?」
グランは団長室に軟禁されていた。同時に、リーシャも部屋に入れられていた。軟禁とはいったが、グランのセクハラを攻めるためだけの軟禁ではなく、グランに手が出ないようにリーシャが監視するための軟禁である。
「セクハラはともかくとして……まさか女性団員の殆どがこんなことをし始めるとは思いもよりませんでした……」
「……話を途中から聞いていたせいで、俺もなんでこうなったのか結局分からないんだよな……」
「今モニカさんが話を聞きに行っています」
「というか、リーシャはあのメンバーの中に入ってなかったんだな」
「へ? まぁはい、モニカさんも入ってない組でしたよ?」
「さすが秩序の騎空団だ……!」
秩序騎空団に対する好感度が爆上がりしたところで、グランは今話を聞きに行っているモニカが帰ってくるまで……しばらく待つ事になったのであった。
「……そうか……それは、まぁ少し同情するが……」
主犯格に話を聞きに行ったモニカ、その表情は何処か暗くモニカもつい同情してしまっていた。因みに、話を聞きに行っている際に判明した主犯格は『ヘルエス』『イルザ』『マギサ』『アルルメイヤ』の4人である。
「私たちも必死すぎてつい……」
「既成事実さえできれば……」
「こっちを向いてくれるかと思って……」
「……先に若い子に取られたら、終わりかと……」
つまりは、先にグランと既成事実さえ作ってしまえばあとはなし崩し的に責任を取らせることで、何とか自分達の幸せを掴むことが出来るのでは無いだろうか……という話だった。
「いや、まぁ……うん……分からなくはない、わからなくは無いのだが……」
「同じ条件が整いすぎてる者同士……モニカ殿、私達と組みませんか?」
「……いや、流石に秩序の騎空団である私が貴殿らに参加してしまったら、さすがにダメだろう」
「くっ……仲間に入ってくれたら心強かったのだが……」
「……というか、私たちのような……その、彼に好意を抱いている人物は何人もいるだろう。ほかの人物はダメだったのか?」
「当然誘っている……そもそも主犯格が私たちな時点で察して欲しい」
「あぁ……」
モニカはさらに同情的な視線を送ってしまっていた。数少ない秩序騎空団団員に対し、偶に『結婚しました』と手紙が届くことがある。部下や過去の友達や知り合いなどは結婚しているというのに、自分はデスクワークと結婚しているのだから毎度毎度やるせない思いが募っているだけである。
「もう部下から『結婚しました』という連絡は見たくない……」
「『私あの人と結ばれますか?』という予知の依頼も受けたくない……『未来予知したら確実に結ばれるわけじゃない』なんて言って誤魔化しているが実は結婚できるんだ……」
「『姉上はいい加減身持ちを固めたらどうですか?』とセルエルに言われるのがきついんです……」
「魔術師としての立場で既に役割が結構被ってることに危機感を覚え始めました……」
「貴殿ら素直過ぎないか? まさか星晶獣達まで協力するとは思わなかったが……」
「……あの子たちはあの子達で自分の意思でやってたわよ?」
「えっ」
固まるモニカ。女性団員のほとんどが団長であるグランに好意を向けているのは知っている。そしてそれは星晶獣達も例外ではないのだ。
「ティアマトはラカムの方が気に入ってる様だけど……他の子達はご執心だもの」
「は、初耳だぞ!?」
「だって、彼女達自分たちが抱いてる感情がなんなのか多分理解してないわよ?」
そう言えばそうだ、とモニカは納得する。星晶獣はそれぞれ作られた目的がある。その目的以外からかなり逸脱してしまう場合は彼らそのものの意思では行うことが出来ないのだ。
上位の星晶獣になればなるほど、役割以外にも対応が可能になってくる……事実天司達は人間といっても過言ではないレベルである。
「そ、そうか……そう言えば、わからなくても仕方ないのか……?」
「勿論、彼らが決められた行動しかできない……なんて冷たいことは言わないわ
でも、多分知りようがないんじゃないかしら?」
「……確かに」
前提だが、星晶獣達にも情緒は存在する。しかしそれはあくまでも前提として『星晶獣としての役割に必要』だというものがある。つまり、星晶獣達にとって『恋』というものは機能に存在しないものなのだ。
つまり、恋心を何かの形で得たとしても……それを教えてくれる人物がいなければ、彼らは知ることさえ出来ないのだ。
「……という事は、ライバルが……」
「ふふ、可愛かったわよチョコを一生懸命作ってるあの子達を見ると」
「……いや待て誤魔化されないぞ、星晶獣達の話に持っていってしまったけど……主犯格はまだいるんじゃないのか?」
「貴方、もしかして主犯格全員見つける気?」
「辞めておいた方がいい、徒労に終わる未来が見えるよ」
「あぁ、やめておいた方がいい」
「ということはまだ他にもいるんだな! 絶対に見つけてやる!!」
そう言ってモニカはどこかへと行ってしまう。残されたメンバー入ったん顔を見合わせてから、その場でガールズトークを始めるのであった。そう、ガールズトークである。
「貴殿も主犯格だな!!」
「みんながハッピーエンドになるためには必要なのよ!!」
「貴殿もか!!」
「ふっふっふ……妾は面白いことが好きなのじゃ!!」
次に見つけた主犯格はコルワとフォリアの2人だった。フォリアは楽しそうだったから参戦しただけ……モニカはそう思って呆れていたが、隣にいた彼女の付き人……のようなものである星晶獣ハクタクが溜息をつく。
「我が王……ハロウィンのイタズラで過激なのをしようとして日和ってしまったのを見逃しておりませんぞ」
「うるさいぞハクタク」
図星だったようで、顔を真っ赤にしてフォリアは怒っていた。ここまでくると最早年上キラーどころか女性キラーなのではないだろうか……モニカはそう思わざるを得なかった。
「……どうして我が団の団長はここまで……」
「と、とりあえず! 妾はあやつにイタズラをするからの!!」
「……ほう、日和る事はしないというのですか? 我が王よ」
「う、うるさいと言うておる!!」
何故か、お供と王女が喧嘩し始める。というよりは、図星を突かれて焦っているだけのようにしか思えない。モニカはフォリアは放っておいていいと思ってコルワの方に視線を向けて━━━
「いない!? いつの間に逃げられた!?」
「……ほんとにおらぬ!!」
どうやらフォリア自身も認識していなかったようで、逃げられたことに今更気づいていた。しかし、そこでコルワを追いかけるモニカではなかった。
「……ひとまず、貴殿も説教だ」
「なぬっ!? ただの村娘に説教するのか!?」
「ただの村娘なら存分に説教できるのでな」
「しまった……!」
「我が王……」
「ハクタク! 助けてくれ!!」
「自業自得です、存分に絞られていくと良いでしょう」
「う、裏切り者め!!!」
「……というわけで、女性団員の中でも25歳以上30歳未満の女性団員の殆どが今回のハロウィンの主犯格ということが判明しました」
こちらグランがリーシャに軟禁されている部屋である。そんな部屋で、リーシャはモニカからのお使いで資料を渡しに来た子供達から資料を受け取って、それを読み上げていた。
それの結果、主犯格メンバーがハッキリしたのであった。
「……リーシャ、ひとついい?」
「はい、何でしょうか?」
「主犯格って何だっけ?」
「団体で違反行為を行った際の中心人物ですね」
「今回、主犯格は何人いたの?」
「少なくとも5人以上はいますね」
「……ちょっと多くない?」
「あんまりそういうこと言うと馬……いえ、星晶獣オーディンの乗っている馬に蹴られますよ」
「多分死ねるなぁ!!」
机を思いっきり殴り付けて吠えるグラン。そんな中でも、リーシャは気にせずに淡々と報告を行っていく。仕事人間スイッチがONになっているようである。
「……主犯格達の、動機は……」
「みなさん言っていることは一緒ですね『30近くなってきてさすがに焦り始めてきた』」
「彼氏作りなよォ!!」
「いや無理でしょう」
「辛辣だねリーシャ!?」
「私が持っていきますので」
資料を読みながらサラッと答えるリーシャ。ツッコミの延長線上で溜息を吐くグラン。しかし、ふとリーシャの言葉が再度頭に過って真顔でリーシャの方に視線を向ける。
「今リーシャなんて」
「何も言ってないです」
「いやでも今」
「何も言ってないです」
「……『私が持っていき━━━」
「茶化すの辞めてくれますか!? 私が悪かったので復唱するのはやめてください!! 失言、失言でした!! だからやめてください!」
珍しく顔を真っ赤にして恥ずかしがるリーシャ。そんなリーシャがどうにも可愛く、そしていじるのがとても面白く感じているグランは、リーシャの言葉に耳を貸さずに弄りを続けていく。
「何!? 自分が一番になりたいってこと!? 意外と独占欲強いのねリーシャちゃん!!」
「ちょ、ホントにやめてください!」
「初心で青くて赤くてその青春が俺は羨ましいぞ! なんだ、お姉さん達に取られかけてて嫉妬してるのか! リーシャで良ければ俺がいくらでも構ってや」
「いい加減にしてください」
「はい……」
顔を真っ赤にしたリーシャの顔が真っ黒になる。それはまるで秩序の闇の深さを表しているかのような……それ程までの黒さをまとっていた。代わりに、意地悪な黒さを孕んでいたグランの顔が真っ赤に染まっていた……血で。
「……ところで、主犯格メンバーはどうするの?」
「まぁ反省書ですね……2回分」
「……2回分?」
「まぁ、女性団員達を煽ったことと……」
「煽ったことと?」
「未成年淫行防止条例違反」
「……そっか俺って未成年か!」
ハッとするグラン。まるで自分が今まで未成年だということを忘れているかのような口振りだった。まるで、1年も旅をしていないはずなのに何度もハロウィンやら夏イベントやらを楽しんでいてしかも年齢が増えていっていない気がしているのだ。
「自分をなんだと思っているんですか……」
「聞いてくれリーシャ、あまりにもハロウィンやらクリスマスやらお正月を味わっている気がしているせいか、俺最近自分のことを未成年だと言い張ってるだけのオッサンな気がしてたんだ」
「少なくとも貴方の精神は偶に未成年じゃないですね、後最近取得したジョブの色っぽさとか……」
「色っぽさ?」
「ごめんなさい今の忘れてくださいお願いします言う事を聞かないとまた刺しますよ」
「いや! そうやってまた私を刺すんでしょ! ドランクみたいに! ドランクみたいに!!」
「……」
「あっ……! ごめ、痛っ……言いすぎたから……ごめん許して……!」
突き刺すリーシャと刺されるグラン。こうやって二人でイチャイチャしていきながら楽しんでいるところを、モニカが観察していたことを知るのはまた別の話である。
ゼノディアちゃん可愛いと思わないとこの周回を勝ち上がれないような気がする