「今回のゲストはサルナーンさんです」
「どうも……それと、僕のハニー……は映るんですかカメラに」
「いや分からねぇ……」
サルナーン、エルーンのメガネ男子である。寿命が近づいていたため、消滅寸前だったカザンという精霊に一目惚れをして、その精霊と半ば強引に契約。その影響により寿命が縮んでしまうという結果になってしまっていた。
しかし、本人は案外そこを気にしていない。気にしているのはカザン……つまりはハニーとの時間をいかに過ごすか。そしてハニーをどう生かすか位のものである。
「……うーん」
「サルナーン?」
「僕のハニーが見えているのなら、僕が語るハニーの美しさや可愛さ等を存分にかつ正確に伝えることが出来るのですが……映らないとなると、理解して貰えない可能性の方が高いと思いましてね」
「……まぁ、うん……わかる」
ぶっちゃけ見えていなければ、どれだけ細かい説明をしてもそれを確認する術はないだろう。なおかつ、勘違いが増えかねないのも原因だ。
「というか今回はお便りはハニーの分を紹介してくださいよ?」
「いや、君のハニー見えてても何言ってるかよくわからんから全然来ないっての」
精霊カザン、その言葉は人間のものとは違う。故に意思疎通をできるのは、契約を結んだサルナーン自身と星晶獣をその身に宿せるルリア、そして精霊と縁が深い人物のみとなっている。
「はぁ……仕方ありませんね……え? なんですかハニー?」
「━━━」
「ふむ……ふむふむ……」
「……ハニーなんて言ってるか説明して」
「『タピオカミルクティー飲みながら待ってるから存分に楽しんでいい』ですって!? ハニー、さすがにあんな俗物を飲ませるのは反対ですよ!?」
「タピオカミルクティー屋が激怒しそうなセリフだ……いやまぁ、それ以前の話なんだが……」
「━━━?」
「『それ以前の問題って何?』と」
「もうタピオカは流行り終わってるから続々と店が閉店してきてる」
寒くなってきたせいだろうか、そもそもの飲み物が少しづつ流行らなくなってきていた。暖かい飲み物ならいざ知らず、暖かいものに出来ないタピオカミルクティーは必然的に売れなくなってきていたのだ。
「━━━!」
「じゃあここで作れって言ってます」
「ローアインに頼むわ……作ってるのを待ってる間にお便り紹介行ってみましょう」
カメラ越しにローアインにお願いして、グランはお便り箱のダンボールを漁る。そうして、3枚取りだして内1枚を読み上げていく。
「1通目『ハニーさんの性格』」
「ハニーは素晴らしいですよ。強気でドンドン意見を言ってくれますし私にも時々辛辣な言葉を投げかけたりしますがその強気な部分も素晴らしいというかでも時々見せる私を心配する様子や言葉がその強気な部分とのギャップにつながって『あぁこれがツンデレって奴ですか』って思えた時のあの幸福感と言ったらまず私以上に幸せに感じる人はいないでしょうでも他の子達には優しく微笑んだり優しい言葉ん投げかけたりしている優しい部分がまた私の心を優しさに満ち溢れ差せていてやはり私のためを思ってくれる言葉を時々投げかけてくれるからこそハニーは愛らしいというか愛しいというかだから彼女は誰に対しても優しいのですが私に対してはツンデレというものになってくるので私にはどうしても素直になりきれないなんて言う部分が」
「━」
「キモいって酷くないですか!?」
「いやぁ、今のはしょうがなくね?」
ハニーの事になると口調が早口になる、という典型的なルナールのようなタイプのサルナーン。ハニーのこと以外はどうでもいいと考えているため、彼女以外に向けられる興味全てがハニーに注がれているとなれば確かにここまでになるのかもしれない。
「くっ……しかしそんな君が好きですよハニー」
「…………」
「ハニー?」
顔を背けるハニー。なるほどこれは可愛いとグランは納得した。なんだかんだ、この2人は仲がいいのは間違いがないことだろう。
「分かりました……要するに早口で語らなければ良いのでしょう」
「まぁそれ以前にもう二通目行くけどね」
「何故!?」
「だってサルナーンがハニーの話するとまじで三日三晩続くじゃん」
「くっ……」
「というわけで二通目『ハニーさんの魅力』」
「先程も申し上げましたが、まずハニーの魅力というのは誰にでも優しいところです。その中で私には一見辛辣な態度をとっているように見えますが、これはツンデレの前降りです。そう、私のことを心配しているからこそ出てくる辛辣な言葉……つまり彼女は誰にでも優しいというのが第1の魅力です。無論、彼女のいい所はまだあります。こんなことを言うのは俗物かもしれませんが、まず見た目がいい。見た目のことを褒めるのは3流などと言う輩もいらっしゃいますが、見た目から褒めなければ内面なんて到底褒められないでしょう。つまり、2つ目の魅力は見た目となります。見た目のどこがいいかと言われたらまずそのふわふわ感ですね。いっけん天然系ふわふわ女子に見せ掛けてきっちりとしたそのギャップで私の心はもうキュンキュンハートマイラブですよ。あぁそうそう、彼女の見た目に関してなのですが、一時期私がやさぐれていた時は少し変色していたんですよ。あれは別に私の雰囲気に合わせた彼女の優しさではなくて契約している相手の状態に合わせているという話があるんですよ。とは言っても今は吹っ切れて戻っているだけで寿命が尽きそうなことは変わらないのでいつあの状態に戻るかわからないんですけどね。まぁ簡単に言えばあの紫色になっているハニーも儚さが溢れていてとても魅力的という事ですね。あとまだまだ魅力的なことはありますが、一旦3つ目までで置いておきましょう。これ以上語るとまた何か言われかねないですからね。とりあえず3つ目の魅力なのですが」
「はいストップ」
「またですか!?」
延々としゃべり続けるサルナーン。彼のハニーに対する愛情は文字通り底なしなので、語らせ始めると本気で止まらなくなってしまう。先程と比べて多少トークの勢いは落ちているが、これは話すことが少なくなったと言うよりは早口で喋らないように抑えているというのが正しいだろう。
「凄い語るねほんと」
「逆にハニーのことで語らない私は私ではありませんよ?」
「確かに」
サルナーンが本当に重要なこと以外で、ハニー以外のことを語るのをグランは考えられなかった。実際ハニーのこと以外で語るとしたら、飯位のものである。
「しかし、今のところ2つともハニー関係ですね……つまり3つ目もハニー関係ということですね」
「いやいやそれは分からんよ」
「え、ここでハニー関係じゃなかったら寿命貰いますよ?」
「代償が重い!!」
サルナーンなりの冗談なのだが、微妙に通じなかった。というか、一時期のサルナーンは本気で寿命を子供から取ろうとしていたこともあって、微妙に冗談で済まなくなっている。
「……まぁとりあえず3つ目読み上げるよ『ハニーさんと行動している時に起こること』」
「行動している時に起こること……? 質問の意味が理解出来ないのですが……」
「とりあえず昨日一日を振り返ってみてよ」
「……そうですね━━━━」
「━━━とまぁこんな所なのですが……」
「いやぁ、ほんとに長かったね」
サンドイッチを頬張っているグラン。既にカメラの電源は切られており番組は既に終了していることを告げていた。サルナーンもそれが分からないほどでは無いので、少しだけムッとしていた。
「……人の話をしている途中に、しかも貴方が開いた番組でしょう? 長いからと言って勝手に終わらせるのはどうなんですか?」
「窓見てみ」
「……窓? おや……日の入りですか? たしかに随分と長話してたようですが……」
「日の出だけど?」
「……え?」
「いや、サルナーンが覗いてる窓から見える太陽って日の出の位置なんだよね」
「……では、私は……」
「まぁざっと12時間くらいは喋ってたね」
改めて自分が話してた長さが納得出来たのか、サルナーンは頭を抱えていた。自分がここまで長話するとは思ってもみなかったからだ。
「……しかし、止めようとは思わなかったのですか」
「いや普通一日の振り返りで半日使うとは思わねぇわ、サンドイッチはサルナーンの分もあるけど食う?」
「貰います……いえ、確かに認識してなかった私の責任かもしれませんが……サンドイッチ美味しいですね……」
「……まぁ、うんハニーへの愛情はよう伝わったからさ」
「……ところであなたに言いたいことがあるのですが」
「え、何?」
「ハニーにセクハラしたら寿命取りますからね」
「しないしない、流石に人の彼氏彼女にケチつけるマネはしないって」
そういう面に関してのグランの信用は如何程か、と言われればおそらくそこまで低くはないだろう。セクハラしないという点だけで言えば、もはや地面をのたうち回るどころか島から落下してその下の世界にまで行ってるレベルだが、他人に手を出さないという点で評価されているので、決して低くはない数値になっている。
「……ならいいでしょう、あなたが言うんだったら一応信用しておきます」
「団長への信頼が軒並み低いのはなぜ……?」
「ことセクハラという点においては貴方は信用出来ないですからね」
「まぁ大丈夫だよ、魅力的な人ってのは伝わったけどほんとに仲間の彼女だからさ」
本音としてはハニーに関しては、友人以上の目で見れないのがグランの本音である。どこまで行ってもそこまでで止まるのが、グランの本音なのである。
「ふむ……突然ですが、1ついいですか?」
「ん? 何?」
「マンドラゴラについてどう思います?」
「褐色なのにあんな格好するなんてとても性的でえっちだと思います」
「やっぱりハニーに近づけさせないようにします」
「なん……だと……?」
グランはどこぞのオサレ漫画のような顔をして驚いていた。今の一言で信用が貰えると思っているのなら、相当の阿呆だろうとサルナーンはため息をつく。
「……一先ず外の空気を吸ってきましょう、その後に本格的に朝食にしましょうか」
「お、いいね何食べる?」
「ハニーの大好きなイチゴジャムを乗せたご飯を」
「ハニーの食事がどういうものなのか気になる」
二人は駄弁りながら外に出る。その光景を、サルナーンの隣でハニーはふわふわと観察していた。
まるで自分以外に興味を持っていなかったサルナーンが、今では団の皆と親しげに会話出来ている。その光景を見て、サルナーンに気づかれないように微笑む。彼がこの団に来たのは正解だったと、確信を得ながら……またいつも通りサルナーンを軽くいじりながら彼と2人仲良くこの団で過ごしていくのであった。
サルナーンの若い頃が出てきたら完全に丸かぶりよ