「神の名の元に!」
「ハニー、今日はどこに行きましょう」
サルナーンとジャンヌを眺めているグラン。その表情はなにか思うところがある様だったが、2人はそれに気づくことは無いのだ。そしてふと、グランは思いついたことがありカリオストロのところへと向かう。
「という訳でなんかこういい感じに人が分身する薬とかできない?」
「お前錬金術をなんだと思ってるんだ? んなもん出来るわけがねぇだろうが……あんまり変な事言うと、ウロボロスでゴリっと食べさせちゃうゾ☆」
「そこをなんとか出来ない? 作れたらなんでもしてやるぞ」
「言ったな?」
「言ったぞ!! さぁ何をする気だ!! ちょっとえっちなことか! ちょっとえっちなことか!!!」
「そこオープンにさらけ出すお前にびっくりだよ……まぁ、そこまで頼み込まれちゃあ仕方ねぇな……やってやるよ」
まんざらでも無いどころか、薬ができたあとグランに何してもらうかのことを考え始めているカリオストロ。そうして、普通そんなもの作ってどうするんだみたいな薬を、作り始めるのであった。
「出来たぞ」
「流石カリえもん」
「天才美少女錬金術と呼べ……この薬は飲んだ人間の魔力を抜き取って、その魔力で分身を作るんだ。だから効果は長くても24時間だ」
そして難なく薬を作り上げるカリオストロ。グランは撫でながら褒めたたえて、カリオストロの薬を持ち上げる。
「んで? その薬どう使う気なんだよ」
「ちょっとサルナーンとジャンヌにぶっ掛けてくる!!」
「えっ」
カリオストロの返事も聞かずにグランはさっさとどこかへ行ってしまう。カリオストロは止める間もなく行ってしまったグランに、少し呆れたものの次会った時に何をさせるか考える時間として、今の時間を有効活用するのであった。
「オラァ!! これが通り魔的犯行だオラァ!!」
「うわっ!?」
「ちょっ!? いきなり何するんです!?」
2人揃っている所に薬を霧吹き状にして掛けるグラン。明らかな迷惑行為だが、彼の持つ好奇心が倫理観を軽く上回ってしまったのだ。とりあえず今彼の後ろには目を見開いたリーシャが立っていた。ついでにそのままグランにチョークスリーパーを仕掛けていた。
「くっ……!? 体が熱い……!?」
「あ、あなた一体何をかけたのです……!」
「んぐぇっ……」
薬の効果で微妙に発光しながら、熱を持ち始める2人の体。グランはチョークスリーパーされているので本気でそれどころでは無くなっているのだが、すぐにそれ以上に事態が起こり始めていく。
「くっ……!? 段々と光と熱が強くなってきて……うわああああ!!」
「くっ……!?」
そして、目を瞑ってしまうほどの光量を発してその辺一帯が眩しく染まっていく。そして、光が止んだ頃には━━━
「くっ……な、何が……」
「あぁ……体が熱い……グラン、お前の体で私の熱を沈めてくれ……」
「ふへぇ……動きたくない……」
「こ、これは一体何が……」
「なっ……!? 私が2人も増えている……!?」
「……あぁハニー……君を生かすためなら……」
「……こちらも1人増えましたね」
サルナーンがいつものとやさぐれている2人になり、ジャンヌがちょっと色っぽい方と真面目な方と幼い方の3人……になったかと思われていたが……
「……いや、私よ。実は水着の私もいるぞ」
「馬鹿な!? 水着の私だと!?」
ジャンヌに関しては水着の分も増えたので4人になっていた。ジャンヌだけ増えすぎでは? と思われるかもしれないが、それが薬の効果なのだから仕方がないだろう。
「ひ、ひとまず落ち着け私たち!!」
「落ち着くためにはグランに色んなところを触ってもらわないとな……」
「く、黒い私がどうにも風紀を乱しかねないです!!」
「水着の私は、格好が恰好なだけに何も言えない……」
ジャンヌの方は4人も増えてしまったので、本気でわちゃわちゃ状態となっている。一方サルナーンたちの方は……
「ですからハニーが……」
「やはりハニーは……」
ハニーの事に関して言い争っていた。同担拒否と言うやつなのだろうか。怒りとか体の熱で真っ赤になってる2人組に対し、グランは段々と青を超えて紫から蒼白へとコロコロ顔の色が変わってきているが、誰も自分のことで手一杯になっているのでグランを助けられない。ちなみに、蒼白になってきているが最低限の呼吸ができるようにリーシャがかなり際どい調整を行っていた。
「……で、これはどう収集付けるつもりなんですか」
「げほっげほっ……すごい強そうなバハムートが見えた……じゃなくて!! いや、まさかここまでになるとは……」
「ほんとに何したかったんですか」
「いや……2人ともちょっと病んでる時期とかあったし、自分で自分のその時期を見たらどういう反応するのかなって」
「結果、サルナーンさんは自分同士で語り始めてジャンヌさんは収集が付かなくなったと」
自分同士で結論がついているサルナーンはともかく、ジャンヌは通常の時と闇落ちしている時の自身の差が激しすぎるので、難儀していた。それ以上に、ジャージジャンヌがだらけすぎて操作に難航していた。
「因みにどういう薬なんですか?」
「ぶっかけた相手が急激に変化する前、もしくはした後に別れる薬らしい。ただ衣服の変更とかじゃなくて、性格そのものの変動が起こったら分裂するんだってさ」
「ほかの方だと……」
「そうだな……例えばスタンとかは……ビビりだった時のスタン、死にたがりしてて荒んでたスタン、いい感じに好青年になったスタンの3人に分かれる」
「なるほど……」
「ジークフリートにぶっかけると、片方が暴走してる状態で出てくる」
「なるほど」
簡単すぎるが、これ以上無い説明の仕方にリーシャは納得する。要するに、碌でもない薬というのだけは理解できるということである。
「それで? 本当にどう収集つけるつもりなんですか?」
「まぁそのうち居なくなるから、大丈夫でしょ」
グランの適当さにリーシャもため息をつく。しかし、ちょっと荒んでいた時期とはいえ元々団に乗ってる仲間。別段こちらに危害を加えることは無いだろうと、リーシャも安心していた。
「ふふ……なぁグラン? 私の体の火照り……2人きりで沈めないか?」
「なっ!? おい私! 何を言っている!!」
「は、ハレンチですよ!?」
「そ、そうだぞ!?」
「おや……水着の私も言っていたじゃないか……『グランを甘やかしたい、ナルメアが羨ましい』と」
「い、言っていない!!」
「すやぁ……」
「なんなら俺は全員相手でも一向に構わなぎっ」
グランに手刀を入れつつ、リーシャは確信していた。『止めないと駄目だ』と。仲間に危害は加えなくてもこんな不本意な形で、ルート決定されるのはリーシャにとっても不服なのだ。勿論、ジャンヌもだが。
「今から全員分身が消えるまで部屋にいてもらいます」
「俺は?」
「貴方は部屋で大人しくしててください」
ちゃっかり復活したグラン、リーシャに冷たい態度を取られて仕方なくすごすごと下がっていった。だが、リーシャはこれだけでは安心できなかった。何せ、闇ジャンヌがあまりにも風紀を乱しすぎるのだ。
「黒いジャンヌさんはしばらく別室にいてもらっていいですか?」
「なんだ……私だけ省くのか……?」
「相応の罰だと思ってください……ところでこの分身って……ご飯とか食べるのでしょうか……?」
ちょっとした疑問、グランもその辺は聞いていなかったので少し考えていた。食べる必要があるのか、それとも無いのか。そのへんがよく分からなかったため、グランは一旦カリオストロを呼び出して話を聞くことにした。
「……は? 分身なのに飯いると思ってんのか?」
「だったら食べなくてもいいということですね?」
「要するにそういうことだな」
「単純明快だな……」
「そもそも消化器官を再現してるわけねぇからな、まず空腹にすらならねぇよ……それに、意思があるように見えるが別にそういう物じゃない。ただ『それっぽい』動きをトレースしてるだけだ」
「……というと?」
「見た目だけ完全に一緒、服は脱げないし行動は本物っぽいだけ。飯も食わねぇなら夜も眠らない……あれだ、動くフィギュアだ」
「なるほど」
簡単な説明をつけて、グランとリーシャは共に納得していた。つまり、極論監禁してても特に問題は無いという事である。あくまで極論なので、グランたちはする気は無いが。
「ただそれっぽい動きはするからな……グランの童の貞が奪われるのは癪だしな……よし、俺様が黒いジャンヌを見張っててやるよ」
「いいのですか?」
「別に、本来この体は眠る必要性すらねぇよ。ただ精神的な問題もあるから寝てるだけだしな」
「そうだったんですか……」
「任せろ……俺様が作った薬に、俺様が作ったこの完璧なボディ……何一つ負ける要素なんてねぇからな」
その言葉はフラグではないだろうか、とグランはふと考えたが辞めることにした。これを口に出したら最後……ほんとにフラグが立ちかねないし、ぶっちゃけグランは童の貞を失うことに何も恐怖は抱いていないのだ。つまりは、ぶっちゃけ襲われてもグラン敵にはオールオッケーという訳である。
襲われたところで、リーシャに裁断されるだけなのだ。ナニがとは言わないが。
「カリオストロさん!?」
翌日、カリオストロは闇ジャンヌを軟禁している部屋の中で倒れていた。その衣装はなんかいい感じにはだけていて、正直なことを言えば事後にしか見えないそれである。
「何があったんですか!?」
「気、気をつけろ……ジャンヌ……闇のジャンヌ……俺様の、力を吸い取っていきやがった……」
「ど、どうやって……」
「口から直接……」
「よくある漫画とかである奴みたいに吸われたのか!? どうなんだカリオストロ!? 詳しく聞かせてギュッ」
突然現れたグランに手刀を入れながら、リーシャは一気に警戒レベルを高くする。まさか女性にまで手を出すとは思っていなかったのだ。
「くっ……何とかしなければ……!」
以後、グランサイファー内で謎の通り魔事件が相次いで起こるようになった。犯人はジャンヌ……とは言っても、闇の方なのだが。何故かグランを直接襲うようなことはせず、周りの者からひたすら力を奪って生きのび続けているのだ。
何故こんなことをしているのか、カリオストロでさえ原因がわからないという。ただ、予測をつけるとするならば……闇に落ちている時に溢れているグランへの思いが、妙な化学反応を起こして自己を確立させてしまったのだとかなんとか。
「まぁ怪我人がでなくて何よりじゃねぇか」
「しかし、団内の風紀の乱れはまずいですよ」
「いいだろ? 別に吸われたやつの性癖が歪んだわけでもあるまいし」
「団内の男の子達が襲われました」
「……」
「何とかしましょう」
「そうだな」
さらに後日、何とか捕まった闇ジャンヌ。その時の最後の一言がこうだったという。
『グランとの練習為だった』と。ぶっちゃけキスだけしかしてないので、そんな所は普通のジャンヌを引き継いだのかもしれない……とカリオストロは後に呆れて思っていたのだった。
書いてる時に新しいジャンヌ出されて困惑してるのは僕です。
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ