ぐらさい日記   作:長之助

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ウィッチクラフト、いいかしら?

「本日のゲストはマギサさんです」

 

「ふふ、マギサよ」

 

「早速なんだけどいい?」

 

「何かしら?」

 

「クリスマスの衣装どうしてベルトを締めたの」

 

 グランは開幕、はっきりといえば酷いことを聞いていた。しかし、マギサは一切表情を崩さないまま……その答えをはっきりとグランに返す。

 

「そっちの方が団長さんも興奮すると思って」

 

「よく分かってるじゃないか」

 

「私は団長さんのためならなんだってするわよ?」

 

「……」

 

 マギサの言葉に黙り込むグラン。てっきり大きな何かしらのリアクションを返してくれると思っていたので、マギサは不思議に思い首を傾げていた。

 しかし、グランの表情をよく見ると浮かんでいたのは複雑そうな表情だった。

 

「うーん……」

 

「あら……もしかして私はあまりお気に召さないのかしら……?」

 

「いや、そうじゃなくて……ただ……」

 

「ただ?」

 

「大体の女性団員からそれ言われてるせいで、あまりドキドキしなくなってきた自分の感覚が少し怖く感じてきてる」

 

「感覚麻痺って怖いわねぇ」

 

 大体の女性団員から迫られている事実に、マギサは少し嫉妬しながらも、表情は崩さないままグランとの対話を続けていく。多少体を寄せたりしてアピールするくらいである。

 

「さて、早速だけど……お便り紹介といきましょう。1通目『アルルメイヤさんと仲が悪いって本当ですか?』」

 

「……なんでそんな噂が流れてるのかしら……? むしろ私とアルルは仲がいい方よ?」

 

「あれじゃない? クリスマス辺りから2人とも俺を挟んで腕の引っ張り合いしてること多いし……物理的な意味で」

 

 クリスマスの時のことを、グランはふと思い出していた。アルルメイヤとマギサの2人で、グランの取り合いがよく行われていたのだ。マギサは自分の体をグランに押し付けての誘惑、アルルメイヤは自分の体全体をグランの腕に押し付けて誘惑と、大人の魅力全開でグランを誘惑していた。

 結果は芳しくなかったのだが、その光景がどうも仲が悪いと認識されていたようである。

 

「あの時ね……一応、言っておくけれど……私とアルルはとても仲がいいわ。何せ、未来予知ができる者同士……馬があったんだもの」

 

「確かに、よくアルルに相談とかしてるもんね」

 

「そうよ、私のもアルルのも……見たら基本的に外れることがないもの。団長さんが絡んだ時に限っては、例外が起こることもあるのだけど」

 

「あぁ、なんかアルルとマギサの2人で見てる予知の内容が微妙に違っていたってのはそれが理由?」

 

「恐らくは……だけれどね。結局予知って言うのは『その時点のまま進んだ場合どうなるか』の道中を見せられてるだけだもの」

 

 クリスマスの日、マギサとアルルメイヤはとある予知を見ていた。『グランが空の底へ落下する』という予知である。しかし違っているところがあり、マギサはグランがアルルメイヤと一緒にいて落下する予知夢を、アルルメイヤは逆にマギサがグランと一緒にいる時に起きている予知を見ていたのだ。

 これが要するに『グランが関わった場合の例外』という事だろう。

 

「にしても不思議だよなぁ、なんで俺が関わると微妙に結果とか過程が変わってくるんだろうな?」

 

「そりゃあ……」

 

 サンダルフォン達が言う『特異点』それが理由なのは明白なのだが、グランも分かっていてそう言っているのだろうとマギサは考え直して特に何も言うことは無かった。

 実際、それ以上の事はサンダルフォン達にも分からないだろう。とりあえず『特異点だから』としか言いようのないことが多すぎるのだ。

 

「……まぁ、いいじゃない? それだけ自分が不思議な存在だと思えばいいのよ」

 

「まぁそれくらいの認識の方が楽でいいか!」

 

「そうそう」

 

 マギサは単純に褒めているつもりなのだが、実際のところ傍から見たらグランは特に何も考えていないのでは無いのだろうか、とさえ思えてくるあほ面をさらけだしていた。

 

「……っと、とりあえず話はここまでにしておいて2通目にいこう。『予知の精度はどれくらいですか?』」

 

「団長さんが絡まなければ100%よ、それだけは断言できるわ」

 

「俺が絡むと?」

 

「0%」

 

「うーん、何度聴いてもピンキリがすぎる」

 

「まぁ0%は言い過ぎだけど……団長さんが絡むと確率がぐっと落ちるのは本当よ?」

 

「例えば?」

 

「そうね……団長さんが『右足から歩き始めるか左足から歩き始めるか』程度の事だったら外さないのだけど、大きいことは変わってくるのよね……クリスマスの時が一番いい例かしら」

 

 アルルメイヤも同じように言っているので、基本的に外さないというのは本当なのだろう。そして、グランが絡むと確率が落ちるというのも本当なのだろう。

 

「なぁに? 信じてないの?」

 

「予知は信用してるけど、俺は俺がやりたいことをしているだけだから……自分のせいで……いやおかげで? どっちでもいいけど……とりあえず俺が関係すると、途端に予知がズレてしまうって言うのはよく分からないんだよな。実感がわかないというか」

 

「……まぁ、こればっかりは実際に予知をしている私たちじゃないと分からない感覚よ」

 

 未来を知った者が未来を変えようとしても、それが変化しない。または過程こそ変化はするが結果は変わらない。最悪のものではその過程こそがその未来の原因となる……というのが創作物ではよくあるものである。アルルメイヤもマギサも、同じような気持ちを味わっているのだとグランは何となくで理解してしまっていた。

 

「まぁでも、マギサはともかくとしてもアルルメイヤはあんまり予知しなくなったんだよね。それこそ俺の事ではって話だけど」

 

「そういえばそうね……まぁアルルも私と同じように団長さんが何かしらの危機に合えば、予知はすると思うわ。だって団長さんを失うのは、死ぬことよりも怖いんだもの」

 

「そこまで行っちゃう?」

 

「行っちゃうものなのよ」

 

「へぇ……」

 

「……まぁこれ以上はアルルを混じえて3人でこっそり話し合うのが1番かもしれないわね」

 

 ニコニコと微笑みながら、マギサはそんなことを呟く。この番組を見ている1部の女性団員を除いた女性団員達に対する先制……だと、思う人は少なくなかっただろう。グランはそんなこと微塵も思いつかずに『だなぁ』と呑気に返事を返していたが。

 

「さ、3通目に行ってしまいましょう?」

 

「ゲストのお望みとあらば……3通目『いつも同じ服を来ているように思いますが、服はどうしてますか?』」

 

「案外魔法でどうにかなっているわね」

 

「結論やっぱりそうなっちゃうよね」

 

「だって私、クリスマスの時に着ていた衣装だって魔法で作ったものだもの。新しい服がクリスマスの時みたいにすぐ出来るのなら、特に縛りもなく服を変えるというのはすごく簡単に出来ることよ」

 

 クリスマスの時は魔法の力で一瞬で着替えを終えたマギサ。季節限定のイベントで着替える為に魔法を使っていたが、特に季節などのイベント事でもない縛りのない着替えともなれば、全く同じ服に変えればいいだけなので実質着替えは魔法でどうにかなっているのだ。

 

「その魔法出来れば教えて欲しいもんだなぁ、着替えに時間を割かなくていいってかなり便利そうだし」

 

「確かに魔法は、便利に使うために存在しているけど……手間がかかることだってあるのよ?」

 

「例えば?」

 

「今来ている服はどうなっているの、とかかしら? 私はずっと同じ服だからそこまで気にした事は無かったけれど……」

 

「もっと正確に教えて欲しい」

 

「あら、どうして?」

 

「依頼で日をまたぐ時とか、みんなの服簡単に綺麗にできるじゃん?」

 

 綺麗な表情でそれっぽいことを言うグラン。マギサは少し考えた後に、グランが何を考えているのかなんとなく察して、次のように言葉をなげかける。

 

「……本音は?」

 

「魔法で着替えさせたあとで、魔法を無効化とかしたらどうなるのかなと思いました」

 

 要するに魔法で作られた服を着ている時に、魔法の無効化をすることによって『きゃー、お洋服がなくなってしまったわー』的な展開をグランは期待していたのだ。そして今、それを素直に報告していた。

 

「あらあら、そんなことを考えていたのね……でも団長さん思春期だからしょうがないわよね」

 

「そうだよ」

 

 マギサは、確かに気にしていない。むしろそれくらい異性にがっつくくらいでないと……とさえ思っていた。そうマギサ『は』気にしていないのだ。

 

「秩序のものですが、少しお話があります」

 

「なんだと……? 俺はまだ何もしていない……」

 

 珍しく扉を開けて入ってくるリーシャ。グランは怪訝な顔をするが、自分のセリフで首を絞めていることに気がついてはいるのか、その顔は真っ青になっており尚且つ体は震えていた。

 

「とりあえずこちらへどうぞ」

 

「くっ……連行落ちだなんてサイテー……!」

 

「船から落下していた時と比べたらとてもマシだと思うので、安心してください」

 

 そして、グランはそのまま部屋から連れ出されてリーシャによって連れていかれるのであった。少しだけ呆然としていたマギサだったが、グランが居なくなったのでそのまま番組の〆に移り始める。

 

「……今回はここまでよ、団長さんが居なくなってしまったししょうがないわね。私に関してまだ質問がある人は、私に直接聞きに来てくれれば教えるわよ……色んなことをね。

 それじゃあ、私は今回のゲストだったけれど……団長と会えるこの番組は、また次回に続くわよ」

 

 残りの〆はだいたいマギサがやってくれたところで、カメラの電源が切られる。その後マギサは満足気な表情を浮かべながら戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長さん、あんまり滅多なことは言うもんじゃないですよ」

 

「……というと、何かあるのかいリーシャさん」

 

 指導室にて、グランはリーシャと向き合いながら話し合っていた。そのリーシャの表情は、真面目そのものであった。

 

「ハロウィン……クリスマス……その次はどんなイベントが来るか、もう分かりますよね」

 

「……まさか」

 

「そう、バレンタインです……またあのハロウィンやクリスマスの様な騒ぎを起こさない為にも……手伝ってもらいますからね」

 

 何が起こるかわからない不安と、グランだけ少しの期待を覚えながら今日も夜が更けていく。バレンタインまでの日数のカウントダウンを刻みながら……




次のバレンタインって誰なんですかね
自分の予想は
・ユエル
・フェリ
・アニラ

特にアニラを強く希望してます。十二神将にそういったイベントが来ないとわかっていても希望してます。

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

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